第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午前36~40】

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36 成人に経鼻経管栄養法を行う際の胃管を挿入する方法で適切なのはどれか。

1.体位は仰臥位とする。
2.管が咽頭に達したら頸部を後屈する。
3.咳嗽が生じた場合は直ちに抜去する。
4.嚥下運動よりも速い速度で挿入する。

解答3

解説

経鼻経管栄養法とは?

経鼻経管栄養は、鼻の穴からチューブを挿入して胃や腸まで通し、栄養剤を注入する方法である。特別な手術が不要で、必要な栄養素を比較的容易に摂取することが可能である。胃食道逆流や誤嚥性肺炎などの合併症を引き起こすリスクがあるため、短期間で口から栄養を摂れるまで回復すると見込まれる場合など、一時的な処置として行われる。

(※図引用:「illustAC様」)

1.× 体位は「仰臥位」ではなく、坐位もしくは半坐位(ファウラー位)とする。なぜなら、比較的安定しており、胃食道からの逆流を防止できるため。咽頭から食道がほぼ一直線となるため、気管への誤挿入を防ぐことができる。ちなみに、半坐位(ファウラー位)とは、上体を45~60度起こし、膝をやや屈曲した体位である。これは、呼吸困難や胸の苦しさを軽減する目的で行うこともある。
2.× 管が咽頭に達したら頸部を、「後屈」ではなく前屈する。なぜなら、気管に入るのを防ぎつつ、食道へ進みやすくなるため。嚥下の誤嚥防止と同じ理屈である。
3.〇 正しい。咳嗽が生じた場合は直ちに抜去する。なぜなら、咳嗽がある場合は気管への誤挿入が疑われるため。
4.× 挿入する際は、「嚥下運動よりも速い速度」ではなく、嚥下運動のタイミングに合わせて行う。そうすることにより食道へ入りやすくなる。事前に手順を説明し、唾液を飲み込む感覚を練習しておくことも効果的である。

 

 

 

 

 

37 ボディメカニクスを活用して、看護師が患者を仰臥位から側臥位に体位変換する方法で正しいのはどれか。

1.患者の支持基底面を狭くする。
2.患者の重心を看護師から離す。
3.患者の膝を伸展したままにする。
4.患者の体幹を肩から回転させる。

解答1

解説

ボディメカニクス

ボディメカニクスとは、「body=身体」と「mechanics=機械学」の造語で、人間が動作するときに骨や筋肉、関節が相互にどのように作用するかといった力学的関係を活用したものである。介護を行うときには、介護者の負担の軽減のためにも身につけておきたい。

①重心の高さは、低い方が安定する。
②支持基底面の広さは、広い方が安定する。
③摩擦抵抗の有無は、有った方が踏ん張りが効き安定する。
④支持基底面と重心の距離は、短い方が足腰への負担は少ない。

1.〇 正しい。患者の支持基底面を狭くする。なぜなら、摩擦が減り体位変換が容易になり、介助量軽減につながるため。選択肢3.患者の膝を曲げることで、支持基底面を狭くすることができる。他にも、患者の腕を胸に組んでもらったり、頭を起こしてもらうとより介助量軽減につながる。一方、介助者の支持基底面の広さは、広い方が安定する。
2.× 患者の重心を看護師から、「離す」のではなく近づける。なぜなら、支持基底面と重心の距離は、短い方が足腰への負担は少ない。
3.× 患者の膝を「伸展したまま」ではなく、膝は曲げて行う方が良い。なぜなら、患者の膝を曲げることで、患者の支持基底面を狭くなり、摩擦が減り体位変換が容易になるため。
4.× 患者の体幹を「肩から」ではなく下肢(膝)から回転させる方が良い。なぜなら、膝を曲げた状態で、下肢(膝)を操作すると、ある一定のところを過ぎると重力によって回転させることができるため。また、膝を曲げることで、肩よりモーメントアームが長いため、小さい力で回転させることができる。モーメントアームとは、てこにおける、支点から力の作用点に下ろした垂線の距離のことである。力のモーメント(トルク)は、この距離と作用点にかかる力の大きさの積で表される。

 

 

 

 

38 入浴の際に血圧が低下しやすい状況はどれか。

1.浴槽に入る前に湯を身体にかけたとき
2.浴槽の湯に肩まで浸かったとき
3.浴槽から出たとき
4.浴室から脱衣所に移動したとき

解答3

解説

起立性低血圧とは?

起立性低血圧とは、臥位や坐位から起立した際に、血圧調節機能がうまく働かず血圧が低下し、脳血流が減少して、めまいや立ちくらみなどを起こす症状である。仰臥位・坐位から立位への体位変換後3分以内に、以下のいずれかが認められるとき、起立性低血圧と診断する。①収縮期血圧が20mmHg以上低下、②収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下、③拡張期血圧が10mmHg以上低下。

1~2.× 浴槽に入る前に湯を身体にかけたとき/浴槽の湯に肩まで浸かったときは、血圧上昇しやすい。なぜなら、温熱療法の生理学的作用である循環の改善がみられるため。また、浴槽の湯に肩まで湯に浸かったときは、温熱効果に加え、静水圧による身体の圧迫により静脈還流が増大する。
3.〇 正しい。浴槽から出たときは、血圧低下しやすい。なぜなら、①静水圧による身体の圧迫からの解放、②座位から立位への体位変換がおこるため。
4.× 浴室から脱衣所に移動したときより、選択肢の中で優先度が高いものが他にある。なぜなら、全部の家の構造はすべて一緒ではないため。仮に、浴室に比べて脱衣所の室温が低い場合は、ヒートショックに注意する必要がある。ヒートショックとは、急激な気温差によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかった状態のことをいう。軽度な症状であれば立ちくらみ程度で少し休むと回復するが、重度になると、心筋梗塞や脳梗塞、大動脈解離など、命にかかわる病気を発症する。寒冷療法の生理作用には、局所新陳代謝の低下、毛細血管浸透圧の減少、血管収縮とその後の拡張、感覚受容器の閾値の上昇、刺激伝達遅延による中枢への感覚インパルス減少、筋紡錘活動の低下等がある。これらの作用により、炎症や浮腫の抑制、血液循環の改善、鎮痛作用、筋スパズムの軽減が期待される。(引用:「寒冷療法」物理療法系専門領域研究部会 著:加賀谷善教)

温熱療法の目的

①組織の粘弾性の改善
②局所新陳代謝の向上
③循環の改善

慢性的な疼痛に対する温熱療法の生理学的影響として、血行の改善によるケミカルメディエーター(痛み物質)の除去、二次的な筋スパズムの軽減、疼痛閾値の上昇などがある。

 

 

 

 

 

39 輸血後、数日から数週間経過してから出現する副作用(有害事象)はどれか。

1.溶血性反応
2.末梢血管収縮反応
3.アナフィラキシー反応
4.輸血後移植片対宿主病(PT-GVHD)

解答4

解説

1.× 溶血性反応は、輸血開始直後から数時間以内に起きる。溶血性反応とは、主に輸血された赤血球の膜が破壊されて起こるものをいう。溶血して赤血球の内容物が放出され、補体活性の上昇などにより連鎖的に溶血が進み、死に至ることもある。 多くの場合、患者が持っている抗体と輸血された赤血球膜上の抗原が反応することによって溶血反応が起きる。24時間以降にそれに伴う発熱や貧血、黄疸、Hb値の低下、LDH・総ビリルビンの上昇、血色素尿などが出現する副作用を遅発性溶血性輸血副作用という。これは、重篤化することはまれであり、治療の重要度は低い。
2.× 末梢血管収縮反応は、輸血開始直後から数時間以内に起こる。末梢血管収縮反応とは、その名前の通り「末梢血管が収縮する反応」のことで、血圧が上昇する。輸血後関連循環過負荷(Transfusion Associated Circulatory Overload:TACO)とは、輸血に伴う循環負荷による心不全であり、呼吸困難、頻脈、血圧上昇などを認める。胸部X線でうっ血性の心不全の所見を認める患者に対する輸血で起こりやすい。
3.× アナフィラキシー反応は、輸血中から輸血直後に起きる。アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下(血圧低下)、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。
4.〇 正しい。輸血後移植片対宿主病(PT-GVHD:Post-transfusion graft-versus-host disease)は、輸血後数日から数週間経過してから起こる。輸血後移植片対宿主とは、輸血後に受血者の体内で供血者のリンパ球が生着し、受血者の組織を攻撃する病態である。つまり、輸血製剤中の供血者のリンパ球が増殖し、受血者の組織を攻撃する反応である。家族間の輸血で生じやすい。予防で最も効果が確実なのは、輸血用血液製剤に放射線照射を行い、血液製剤に含まれるリンパ球を排除することである。症状として、輸血後1~2週間で発熱・紅斑が出現し、肝障害・下痢・下血等の症状を伴うとともに、骨髄無形成・汎血球減少症、多臓器不全を呈して、ほとんどの症例で輸血から1カ月以内に致死的経過をたどる。

 

 

 

 

40 上部消化管内視鏡検査について適切なのはどれか。

1.2時間前から絶飲食とする。
2.前投薬には筋弛緩薬を用いる。
3.体位は左側臥位とする。
4.終了直後から飲食は可能である。

解答3

解説

上部消化管内視鏡とは?

上部消化管内視鏡とは、一般に消化器科にて用いられる内視鏡もしくは検査・治療手技のこと。食道、胃、十二指腸までの上部消化管を観察する。主な適応疾患として①逆流性食道炎、②胃炎(ピロリ菌未感染、ピロリ菌現感染、ピロリ菌既感染・除菌後)、③胃ポリープ、④十二指腸潰瘍、⑤食道がんなどである。

1.× 絶飲食とするのは、「2時間前から」ではなく前日タ食後からである。検査2時間前からは飲水を控える必要がある。
2.× 前投薬には、「筋弛緩薬」ではなく、抗コリン薬を使用する。なぜなら、胃の運動を抑えるため。ちなみに、筋弛緩剤は手術で全身麻酔をかけるときに完全に呼吸を止め、呼吸をコントロールすることや、おなかの筋肉を完全に弛緩させ手術とやりやすくする目的で使われる。
3.〇 正しい。体位は左側臥位とする。なぜなら、左側臥位の利点として、仰向けで行う時に比べて唾液を誤嚥しにくく、胃の大弯に胃液が溜まることで、胃からの逆流が起こりにくいため。
4.× 飲食は可能となるのは、「終了直後から」ではなく1時間以降からである。なぜなら、なぜなら、咽頭麻酔が残存し効いていると、誤嚥しやすいため。

 

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