11 Aさん(35歳、男性、会社員)は身長170cm、体重60kgである。事業所の保健師は、Aさんから「先日、潰瘍性大腸炎と診断され、外来通院で治療することになりました。会社の食堂で食事をすることが多いため、気を付けることはありますか」と相談を受けた。
Aさんに対する保健指導で適切なのはどれか。
1.「脂肪の制限はありません」
2.「低蛋白質の食事を選んでください」
3.「食物繊維が少ない食事を選んでください」
4.「カロリーが高くならないようにしてください」
解答3
解説
潰瘍性大腸炎とは、主に大腸の粘膜を侵し、再燃と寛解を繰り返す慢性のびまん性炎症性腸疾患である。症状として、繰り返す粘血便・下痢・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。したがって、潰瘍性大腸炎の食事は、易消化性で高エネルギー、高タンパク、低脂肪、低残渣食を基本とする。
1.× 脂肪を制限する必要がある。なぜなら、脂質は、消化・吸収に時間がかかり、腸管への負担が大きいため。
2.× 「低蛋白質」ではなく「高蛋白質」の食事を選択する。なぜなら、粘膜組織の再生を促すため。潰瘍性大腸炎とは、主に大腸の粘膜を侵し、再燃と寛解を繰り返す慢性のびまん性炎症性腸疾患である。症状として、繰り返す粘血便・下痢・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。したがって、潰瘍性大腸炎の食事は、易消化性で高エネルギー、高タンパク、低脂肪、低残渣食を基本とする。
3.〇 正しい。食物繊維が少ない食事を選ぶ。なぜなら、食物繊維は消化・吸収されにくく残澄物として残り、腸管に負担をかけるため。
4.× カロリーを高くする必要がある。症状として、繰り返す粘血便・下痢・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。したがって、カロリーが不足して低栄養状態になりやすい。
12 平成30年(2018年)の日本におけるHIV感染者の患者動向で正しいのはどれか。
1.新規感染の約60%は性的接触である。
2.発生の総数は2008年から増加している。
3.男性では外国籍の者が半数以上を占めている。
4.日本国籍女性の感染経路は異性間の性的接触が最も多い。
解答4
解説
1.× 新規感染の性的接触の割合は、約60%ではなく「87.2%」である。
2.× 発生の総数は2008年から、「増加」ではなく「減少」している。令和元(2019)年の新規報告数は、HIV 感染者と AIDS 患者を合わせて 1,236 件(前年 1,317 件)であった。HIV 感染者と AIDS 患者を合わせた新規報告数に占める AIDS 患者の割合は 26.9%(前年 28.6%)であった。HIV 感染者の年間新規報告数は 2008 年の 1,126 件をピークとし、AIDS 患者の年間新規報告数は 2013 年の 484 件をピークとし、HIV 感染者と AIDS 患者を合わせた年間新規報告数は 2013 年の 1,590 件をピークとし、ともに減少傾向となっている。
3.× 男性では、「外国籍」ではなく「日本国籍」の者が半数以上を占めている。令和元(2019)年の新規報告の性別、国籍別では、HIV 感染者および AIDS 患者のいずれにおいても日本国籍男性が 80%以上を占めた。日本国籍男性の年間新規報告数は HIV 感染者は 2008 年をピークとし、AIDS 患者は 2013 年をピークとし、HIV 感染者と AIDS 患者の合計は 2013 年をピークとし減少傾向である。次に多い外国国籍男性の年間新規報告数は、HIV 感染者および AIDS 患者のいずれにおいても 10%以上を占め、HIV 感染者で近年増加傾向であったが、この 2 年間はほぼ横ばい、AIDS 患者では前年より増加した。女性は令和元(2019)年の HIV 感染者新規報告数の 5.1%、AIDS 患者新規報告数の4.5%、HIV 感染者と AIDS 患者を合わせた新規報告数の 4.9%を占めた。
4.〇 正しい。日本国籍女性の感染経路は異性間の性的接触(81.2%)が最も多い。令和元(2019)年新規報告を感染経路別にみると、HIV 感染者、AIDS 患者のいずれにおいても、同性間性的接触が半数以上を占め、HIV 感染者ではその割合はさらに高かった。母子感染が日本国籍で 1件、静注薬物使用が日本国籍男性 3 件(その他に含まれる他の感染経路と静注薬物使用の両者の可能性があるものを合わせると計 9 件)報告された。令和元(2019)年新規報告を年齢階級別にみると、HIV 感染者では 25~29 歳が最も多く、AIDS 患者では 45~49 歳が最も多かった。HIV 感染者新規報告において特に 20~39 歳で同性間性的接触(男性)の占める割合が高かった。それより年齢の高い層およびAIDS 患者では、若年層および HIV 感染者と比較して同性間性的接触(男性)以外の感染経路の割合が高い傾向があった。
(※データ引用:「令和元(2019)年エイズ発生動向年報(1月1日~12月31日)」厚生労働省エイズ動向委員会様HPより)
13 乳幼児の予防接種が任意接種である疾病はどれか。
1.B型肝炎
2.急性灰白髄炎
3.流行性耳下腺炎
4.ロタウイルス感染症
解答3
解説
予防接種法とは、公衆衛生の観点から伝染のおそれがある疾病の発生・まん延を予防するためにワクチンの予防接種を行うとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的として制定された日本の法律である。予防接種法に基づく予防接種には、①定期予防接種と②臨時予防接種があり、定期予防接種の対象疾患には、①A類疾病と②B類疾病がある。さらに同法に基づかない任意接種もある。
A類疾病:主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点を置き、国の積極的な勧奨があり、本人(保護者)に努力義務がある。
疾患:結核、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、ヒブ(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、ヒトパピローマウイルス感染症、B型肝炎
B類疾病:主に個人予防に重点を置き、国の積極的な勧奨なく、本人(保護者)に努力義務はない。
疾患:季節性インフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症
(参考:「予防接種とは?」東京都医師会HPより)
1~2.4.× B型肝炎/急性灰白髄炎/ロタウイルス感染症は、定期予防接種のA類疾病である。A類疾病では、疾病の発生およびまん延の予防を目的(集団予防目的)としている。努力義務であり、予防接種対象者およびその保護者は。接種を受けるよう努めなければならない。ほかにも、インフルエンザ菌b型感染症、肺炎球菌感染症、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ(急性灰白髄炎)、結核、麻疹・風疹、水痘、日本脳炎、ヒトパピローマウイルス感染症である。
3.〇 正しい。流行性耳下腺炎は、乳幼児の予防接種が任意接種である疾病である。流行性耳下腺炎は、2~3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症である。通常1~2 週間で軽快する。 最も多い合併症は髄膜炎であり、その他髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを認める場合がある。
14 平成30年(2018年)の特別支援教育の状況で正しいのはどれか。
1.訪問教育を受けている児童生徒は小学生が最も多い。
2.特別支援学級の児童生徒の障害は知的障害が最も多い。
3.義務教育段階の児童生徒のうち特別支援学校に在籍している割合は全児童生徒の3%である。
4.特別支援教育が開始された平成19年(2007年)に比べて対象となる児童生徒数は減少している。
解答1
解説
障害のある子供については、障害の状態に応じて、その可能性を最大限に伸ばし、自立と社会参加に必要な力を培うため、一人一人の教育的ニーズを把握し、適切な指導及び必要な支援を行う必要がある。このため、障害の状態等に応じ、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級 、通級による指導等において、特別の教育課程、少人数の学級編制、特別な配慮の下に作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備などを活用した指導や支援が行われている。特別支援教育は、発達障害のある子供も含めて、障害により特別な支援を必要とする子供が在籍する全ての学校において実施されるものである。(引用:「日本の特別支援教育の状況について」文部科学省様HPより)
1.〇 正しい。訪問教育を受けている児童生徒は小学生が最も多い。中学部、高等部と年齢を重ねるほど減っていく。訪問教育とは、障害のため通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対して教員を派遣して教育を行う場合を指す。教育では、障害の状態や学習環境などに応じて、指導方法や指導体制を工夫し、学習活動が効果的に行われるようにすることと定められている
2.× 特別支援学級の児童生徒の障害は、知的障害ではなく「自閉症・情緒障害」が最も多い。H29年以前は、1位:知的障害、2位:自閉症・情緒障害であったが、H30年以降から逆転している。
3.× 義務教育段階の児童生徒のうち特別支援学校に在籍している割合は、全児童生徒の「3%」ではなく「0.8%」である。
4.× 特別支援教育が開始された平成19年(2007年)に比べて対象となる児童生徒数は、「減少」ではなく「増加」している。
(参考:「日本の特別支援教育の状況について」文部科学省様HPより)
15 学校給食に関する養護教諭の職務はどれか。
1.食中毒の予防
2.献立の栄養管理
3.調理場の衛生管理
4.食に関する指導に係る全体計画の作成
解答1
解説
養護教諭とは主に、小・中・高校に配属されている「保健室の先生」のことである。 学校でケガをしたり体調を崩したりしたとき、保健室に行くと対応してくれるのが養護教諭である。養護教諭がいることで、生徒たちが安心して学校に通える環境が整えられている。
①保健管理:救急処置、健康診断(実施計画立案、準備、指導、評価)、感染症予防、経過観察・配慮を必要とする子どもの支援、環境管理。
②保健教育:授業への参画、保健指導(個別の児童・生徒と保護者への指導・助言、集団への指導)
③健康相談:心身の健康問題への対応・支援
④保健室経営:保健室経営計画の作成、備品の管理
⑤保健組織活動学校保健委員会 等
⑥学校保健計画・学校安全計画策定への参画
1.〇 正しい。食中毒の予防は、学校給食に関する養護教諭の職務である。特に、①保健管理:救急処置、健康診断(実施計画立案、準備、指導、評価)、感染症予防、経過観察・配慮を必要とする子どもの支援、環境管理に当てはまる。
2.× 献立の栄養管理は、栄養教諭などが作成する。学校給食実施基準に規定されている。ちなみに、栄養教諭とは、児童・生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる教員のことである。小中学校に勤務し、児童・生徒の食生活・栄養やアレルギーなどに対する個別的な指導、学級活動などの機会を使ったクラス単位での食事・栄養指導などを行っている。
3.× 調理場の衛生管理は、衛生管理責任者(栄養教諭や学校給食調理員など)が行っている。また、学校給食の衛生管理は、教育委員会(私立学校の場合は設置者)が自らの責任において行い、栄養教諭または学校栄養職員が衛生管理責任者となる。
4.× 食に関する指導に係る全体計画の作成は、学校長が行う。
学校全体で食育を組織的、計画的に推進するためには、各学校において食に関する指導に係る全体計画(以下「全体計画」という)を作成することが必要です。国の第3次食育推進基本計画(平成 28 年3月作成)においても、「食に関する指導の時間が十分確保されるよう、栄養教諭を中心とした教職員の連携・協働による学校の食に関する指導に係る全体計画の作成を推進する。」と、各学校で全体計画を作成することの必要性を挙げています。
また、学校給食法の第 10 条に「校長は、当該指導が効果的に行われるよう、学校給食と関連付けつつ当該義務教育諸学校における食に関する指導の全体的な計画を作成することその他の必要な措置を講ずるものとする。」と規定されています。(抜粋:食に関する指導に係る全体計画の作成の必要性)