第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前11~15】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

11 平成18年(2006年)の介護保険法改正で、地域住民の保健医療の向上および福祉の増進を支援することを目的として市町村に設置されたのはどれか。

1.保健所
2.市町村保健センター
3.地域包括支援センター
4.訪問看護ステーション

解答3

解説

(※図引用:「介護保険制度改正の概要及び地域包括ケアの理念 」厚生労働省HPより)

1.× 保健所の設置は、『地域保健法』により定められている。地域保健法とは、地域保健対策の推進に関する基本指針、保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定めることにより、母子保健法その他の地域保健対策に関する法律による対策が地域において総合的に推進されることを確保し、地域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的として制定された法律である。ちなみに、保健所とは、精神保健福祉・健康・生活衛生など地域保健法に定められた14の事業(主に疾病予防・健康増進・環境衛生などの公衆衛生活動)を中心に行っている。保健所では保健師や精神保健福祉士、医師などが生活面や社会復帰について相談にのってくれる。都道府県・政令指定都市・中核市・特別区等で設置できる。
2.× 市町村保健センターは、『地域保健法』により定められている。地域保健法とは、地域保健対策の推進に関する基本指針、保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定めることにより、母子保健法その他の地域保健対策に関する法律による対策が地域において総合的に推進されることを確保し、地域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的として制定された法律である。ちなみに、市町村保健センターとは、健康相談、保健指導、健康診査など、地域保健に関する事業を地域住民に行うための施設である。地域保健法に基づいて多くの市町村に設置されている。産前・産後の事業も行われている。市町村が設置することができる。
3.〇 正しい。地域包括支援センターは、平成18年(2006年)の介護保険法改正で、地域住民の保健医療の向上および福祉の増進を支援することを目的として市町村に設置された。地域包括支援センターとは、介護保険法に基づき各市町村によって設置されており、地域の高齢者の医療・福祉・介護・虐待など様々な事柄に関する相談窓口となっている。地域包括支援センターの人員基準は、「第1号被保険者(65歳以上の高齢者)3000人~6000人ごとに、保健師、社会福祉士及び主任介護支援専門員(準ずる者を含む)を最低限それぞれ各1人」である。
4.× 訪問看護ステーションは、介護保険が開始される前から設置されており、健康保険などの医療保険介護保険とで使われる。訪問看護ステーションとは、住み慣れた自宅で療養生活が送れるように、医師や他の医療専門職、ケアマネジャーなどと連携し、訪問看護サービスを提供すること業所である。看護ケアを提供することで患者の療養生活をサポートするとともに、自立を目指した支援も行っている。訪問看護制度をもとに、医師の指示を受け、看護を必要とする人の居宅に看護師や保健師などを派遣する機関である。

 

 

 

 

 

12 胆汁の作用はどれか。

1.殺菌
2.脂肪の乳化
3.蛋白質の分解
4.炭水化物の分解

解答2

解説

胆汁とは?

肝臓で合成されるアルカリ性の物質で、胆嚢で濃縮されたうえ、貯蔵される。胆汁中には消化酵素は存在しない。しかし、胆汁中に含まれる胆汁酸は乳化作用とミセル形成作用を有するため、脂肪の消化吸収に重要な役割を果たす。胆汁はビリルビン、胆汁酸、コレステロール、リン脂質からなり、消化酵素は含まれない。胆汁は消化酵素の働きを助ける作用がある。胆汁酸の働きは、脂肪を乳化し、消化・吸収させやすい形に変化させ、脂肪を分解吸収しやすくする。 さらに水に溶けない脂溶性ビタミンの吸収を助ける。排出された胆汁の大部分は小腸から吸収されて、他の吸収された栄養分と一緒に血管を通って肝臓に戻り、再利用される。 これを腸肝循環という。

1.× 殺菌作用は、唾液などに有する。
2.〇 正しい。脂肪の乳化は、胆汁作用がある。胆汁中の胆汁酸は、胆汁酸の働きは、脂肪を乳化し、消化・吸収させやすい形に変化させ、脂肪を分解吸収しやすくする。 さらに水に溶けない脂溶性ビタミンの吸収を助ける。排出された胆汁の大部分は小腸から吸収されて、他の吸収された栄養分と一緒に血管を通って肝臓に戻り、再利用される。 これを腸肝循環という。
3.× タンパク質の分解は、①胃液(ペプシン)、②膵液(トリプシンやエラスターゼ)、③腸液(アミノペプチターゼN)などに有する。
4.× 炭水化物は、①唾液膵液(アミラーゼ)、②腸液(サッカラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、ラクターゼなど)などに有する。

腸肝循環とは?

脂肪の消化、吸収という役目を果たした胆汁は、一部が便や尿として排泄されるが、90〜99%は小腸の下部で吸収され、門脈を通って肝臓に戻る。そして、再び胆汁として分泌され、胆嚢に蓄えられることになる。こうして胆汁がリサイクルされることを腸肝循環という。

 

 

 

 

13 チアノーゼで増加しているのはどれか。

1.血中酸素分圧
2.還元ヘモグロビン
3.酸化ヘモグロビン
4.血中二酸化炭素分圧

解答2

解説

チアノーゼとは?

チアノーゼとは、皮膚や粘膜が青紫色である状態をいう。 一般に、血液中の酸素が不足することをきっかけとし、 血液中の酸素濃度が低下した際に、爪床や口唇周囲に表れやすい。毛細血管血液中の還元ヘモグロビンが、5g/dL以上に増加すると出現する皮膚の青紫調変化である。

1.× 血中酸素分圧は、チアノーゼにより低下傾向である。なぜなら、血中酸素分圧は血中酸素飽和度と相関するため。血中酸素分圧とは、全体の動脈血うち酸素が占める圧を指す。単位はTorr(mmHg)で、基準値は80~100Torrである。
2.〇 正しい。還元ヘモグロビンは、チアノーゼにより増加する。還元ヘモグロビンとは、酸素と結合していないヘモグロビンのことを指す。ヘモグロビンは、全身の組織に酸素を運ぶという赤血球の働きを持ち、ヘモグロビンが肺で酸素に触れると、これと結合して酸化ヘモグロビンとなる。赤血球が血液に乗って酸素の少ない組織に行くと、ヘモグロビンから酸素が放出される。この酸素を放出したヘモグロビンのことを、還元型ヘモグロビンという。
3.× 酸化ヘモグロビンは、チアノーゼにより減少する。ヘモグロビンは、全身の組織に酸素を運ぶという赤血球の働きを持ち、ヘモグロビンが肺で酸素に触れると、これと結合して酸化ヘモグロビンとなる。チアノーゼでは、酸素と結合した酸化ヘモグロビンが減少し、脱酸素化した還元ヘモグロビンが増加する。
4.× 血中二酸化炭素分圧は、チアノーゼにより正常のままである。血中二酸化炭素分圧とは、全体の動脈血うち二酸化炭素が占める圧を指す。単位はTorr(mmHg)で、基準値は35~45Torrである。

 

 

 

 

 

14 鮮紅色の下血が見られた時の出血部位で正しいのはどれか。

1.胃
2.食道
3.直腸
4.十二指腸

解答3

解説

1.2.4.× 胃/食道/十二指腸からの出血の場合、タール便(黒色)となる。なぜなら、ヘモグロビンの鉄が胃酸で酸化されるため。タール便(黒色軟便)とは、胃潰瘍など上部消化管出血のときに排出される血便の一種である。一般的に食道、胃、十二指腸からの出血は、ヘモグロビンの鉄が胃酸で酸化されるため起こる。
3.〇 正しい。直腸からの出血の場合、鮮紅色となる。なぜなら、ヘモグロビンの鉄が酸化されず、血液そのままの色を維持するため。黒色軟便(タール便)となるのは、下部消化管出血ではなく上部消化管出血である。下部消化管とは小腸および大腸を指す。ちなみに、右側結腸から口側の消化管出血で、黒色便がみられる。一方で、左側結腸より肛門側の消化管出血で、赤色便がみられる。

 

 

 

 

15 感染症の潜伏期間で最も長いのはどれか。

1.インフルエンザ
2.結核
3.ノロウイルス性胃腸炎
4.流行性耳下腺炎

解答2

解説

潜伏期間とは?

潜伏期間とは、病原体に感染してから、体に症状が出るまでの期間、あるいは感染性を持つようになるまでの期間のことである。病原体の種類によって異なる。

1.× インフルエンザの潜伏期間は、1~3日である。インフルエンザとは、インフルエンザウイルスへの感染を原因に発症する。A型、B型、C型の3種類があり、このうち冬季に流行する「季節性インフルエンザ」はA型とB型によるものである。症状として、38度以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。
2.〇 正しい。結核は、選択肢の中で潜伏期間が最も長い。潜伏期間は、一般的に半年から2年である。肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。
3.× ノロウイルス性胃腸炎(いわゆるノロウイルス)の潜伏期間は、1~2日である。あらゆる年齢の人に急性胃腸炎を起こし、ウイルス量が100個以下の極少量でも感染するほど、感染力の強いウイルスである。特に冬場(主に11~2月)に流行する。 症状として、下痢、嘔吐、発熱などの症状が見られる。
4.× 流行性耳下腺炎(ムンプス/おたふくかぜ)の潜伏期間は、2~3週間である。片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症 であり、通常1~2 週間で軽快する。 最も多い合併症は髄膜炎であり、その他髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを認める場合がある。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)