第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前21~25】

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21 黄色のバイオハザードマークが表示された感染性廃棄物の廃棄容器に入れるのはどれか。

1.病理廃棄物
2.使用済み手袋
3.使用済み注射針
4.血液が付着したガーゼ

解答3

解説

バイオハザードマークとは?

バイオハザードマークとは、感染性廃棄物を表す全国共通のマークである。専用のポリエチレン袋やテープにプリントされている。

・赤:①内容物(液状、泥状のもの)、②例(血液、体液、血液製剤)、③保管・収納容器(プラスチック容器)
・橙:①内容物(血液や汚染物が付着した固形状のもの)、②例(ガーゼ、紙くず、紙おむつ)、③保管・収納容器(二重のビニール袋)
黄:①内容物(血液や汚染物が付着した鋭利なもの)、②例(注射器、メス)、③保管・収納容器(プラスチック容器)

1.× 病理廃棄物は、赤色のバイオハザードマークが表示された容器に廃棄する。赤色は、①内容物(液状、泥状のもの)、②例(血液、体液、血液製剤)、③保管・収納容器(プラスチック容器)を廃棄する。ちなみに、病理廃棄物とは、手術等に伴って発生する廃棄物のことを指し、例えば摘出又は切除された臓器、組織、郭清に伴う皮膚等のことをいう。
2.4.× 使用済み手袋/血液が付着したガーゼ(固形状)は、橙色のバイオハザードマークが表示された容器に廃棄する。橙色は、①内容物(血液や汚染物が付着した固形状のもの)、②例(ガーゼ、紙くず、紙おむつ)、③保管・収納容器(二重のビニール袋)を廃棄する。
3.〇 正しい。使用済み注射針(鋭利な物)は、黄色のバイオハザードマークが表示された容器に廃棄する。黄色は、①内容物(血液や汚染物が付着した鋭利なもの)、②例(注射器、メス)、③保管・収納容器(プラスチック容器)を廃棄する。

(参考:「廃棄物処理法に基づく 感染性廃棄物処理マニュアル」環境省HPより)

 

 

 

 

 

22 成人の採血検査で最も用いられるのはどれか。

1.外頸静脈
2.大腿静脈
3.大伏在静脈
4.肘正中皮静脈

解答4

解説

採血検査

採血する血管は、静脈が選択される。なぜなら、静脈は血液が流れやすく、血管壁が薄いため、穿刺しやすく、血液採取量も多いため。静脈の中でも、静脈採血を行う場合には、弾力性があり、太くまっすぐな血管が適している。また、神経損傷の可能性があるため、深部にある血管は避け、表在性の静脈を選択する。

1.× 外頸静脈は、頸部で不快感が強いだけでなく、血管が細いため採血に適していない。外頸静脈とは、頭蓋外側および顔面深部からの血液の大部分を受け取る静脈で、下顎後静脈の後部と後耳介静脈の接合部より始まる。
2.× 大腿静脈は、深部にあるため採血に適していない。大腿静脈とは、膝窩静脈から大腿三角の筋膜の下へとつながる静脈である。
3.× 大伏在静脈より採血に用いられる血管が他にある。大伏在静脈とは、大腿付け根 から出る表在血管である。最も採血に用いられる静脈は、肘正中皮静脈であり、次いで多いのは橈骨側静脈尺側皮静脈、ついで、大伏在静脈が選ばれやすい。
4.〇 正しい。肘正中皮静脈が、成人の採血検査で最も用いられる。肘正中皮静脈とは、上腕肘窩の中央付近に位置する表在性の血管である。なぜなら、静脈の中でも、静脈採血を行う場合には、弾力性があり、太くまっすぐな血管が適しているため。

 

 

 

23 感染を伴わない創傷の治癒を促進させる方法で適切なのはどれか。

1.乾燥
2.消毒
3.洗浄
4.ガーゼ保護

解答3

解説

(※図引用:「これからの正しい創傷治療―湿潤療法の取り組み―」安藤 善郎)

MEMO

近年、創傷治療は「創面を消毒し、ガーゼをあてて乾燥させる」従来の方法から、「創面を消毒しない,乾燥させない」方法へと大きく変化している。

1.× 乾燥は、創傷治癒を遅延する。なぜなら、乾燥すると表皮の基底細胞の遊走・移動が妨げられるため。創傷治癒には創部の乾燥を防止し、創傷被覆剤を貼付するなど湿潤環境を保持することが大切である。創傷治癒を促進させるためには、ドレッシング剤などを使用し、創部の湿潤環境を維持するようにする。
2.× 消毒は、創傷治癒を遅延する。消毒薬は、細菌だけに作用するのではなく、創傷修復に必要な細胞に対しても毒性がある。そのため、過度な消毒は創傷治癒を遅延させる。創傷は、消毒よりも創傷周囲の皮膚を洗浄し、過剰な水分を取り除いた(洗浄)後、湿潤環境を保持する。
3.〇 正しい。洗浄は、創傷の治癒を促進する。創傷の清潔を保つために、生理食塩水または水道水を用いて洗浄することが推奨されている。
4.× ガーゼ保護は、創傷治癒を遅延する。なぜなら、惨出液が吸収され、創面が乾燥するため。創面を適度な湿潤環境に保つことができるドレッシング材で覆うことが推奨されている。

創傷の治癒過程とは?

①血液凝固期(術後~数時間後):出血による凝固塊が欠損をふさいで止血する時期である。
②炎症期(術直後~3日目ころ):炎症性細胞(好中球、単球、マクロファージなど)が傷に遊走して、壊死組織や挫滅組織などを攻める時期である。
③増殖期(3日目~2週間後):線維芽細胞が周辺から遊走して、細胞外マトリックスを再構築し、血管新生が起こり、肉芽組織が形成される時期である。
④成熟期(2週間~数か月後)(再構築期:リモデリング期):線維芽細胞が減り、線維細胞へと成熟し変化するじきである。コラーゲンの再構築が起き、創部の抗張力が高くなることで創傷が治癒していく。

 

 

 

 

 

24 臓器の移植に関する法律における脳死の判定基準で正しいのはどれか。

1.瞳孔径は左右とも3mm以上
2.脳波上徐波の出現
3.微弱な自発呼吸
4.脳幹反射の消失
5.浅昏睡

解答4

解説

脳死の判定基準

脳死とは、脳幹を含む全脳の機能が停止した状態である。

①深い昏睡にあること
②瞳孔が固定し一定以上開いていること(4mm以上
③刺激に対する脳幹の反射がないこと
④脳波が平坦であること
⑤自分の力で呼吸ができないこと

の5項目を行い、6時間以上経過した後に同じ一連の検査(2回目)をすることで、状態が変化せず、不可逆的であることの確認できた場合。

1.× 瞳孔径は、左右とも「3mm以上」ではなく4mm以上(散大)である。
2.× 脳波上徐波の「出現」ではなく消失(平坦)である。ちなみに、徐波とは、 α(アルファ)波より周波数が低いものをいい、①δ(デルタ)波【0.5~4.0Hz】、②θ(シータ)波【4.0~8.0Hz】に分けられる。 両者とも覚醒状態にある正常成人の安静閉眼時には、ほとんど出現しない。
3.× 「微弱な」自発呼吸ではなく、自発呼吸の停止である。
4.〇 正しい。脳幹反射の消失は、脳死の判定基準である。脳幹反射とは、対光反射、角膜反射、毛様脊髄反射、眼球頭反射、前庭反射、咽頭反射、咳反射である。
5.× 「浅昏睡」ではなく、深昏睡である。深昏睡とは、JCSで300、GCSで3である。

 

 

 

 

25 副腎皮質ステロイドの作用はどれか。

1.体重の減少
2.血糖の低下
3.血圧の低下
4.免疫の促進
5.炎症の抑制

解答5

解説

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

1.× 体重は、「減少」ではなく増加する。中心性肥満となる。副腎皮質ステロイド薬は、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールと同様の働きをもつ。副腎皮質ステロイドの副作用はこの他に、易感染、中心性肥満、満月様顔貌、高血糖、筋萎縮、赤色皮膚線条、多毛症、精神症状などがみられる。
2.× 血糖は、「低下」ではなく上昇する。ステロイド糖尿病となる。
3.× 血圧は、「低下」ではなく上昇する。なぜなら、副腎皮質ステロイドには鉱質(電解質)コルチコイド作用があるため。
4.× 免疫は、「促進」ではなく抑制する。易感染性となる。
5.〇 正しい。炎症の抑制は、副腎皮質ステロイドの作用である。そのため、自己免疫疾患やアレルギー性疾患の治療に広く用いられている。機序としては、ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

 

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