第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前26~30】

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26 三叉神経を求心路として起こるのはどれか。

1.瞬目反射
2.対光反射
3.追跡運動
4.輻輳反射

解答1

解説

MEMO

三叉神経は、主に咀嚼筋の咀嚼運動と顔面の皮膚感覚を司る。運動神経と感覚神経を含む。咀嚼筋とは、下顎骨の運動(主に咀嚼運動)に関わる筋肉の総称である。咀嚼筋は一般的に、咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4種類が挙げられる。咀嚼筋は、主にⅤ:三叉神経支配である。

1.〇 正しい。瞬目反射(※読み:しゅんもくはんしゃ)は、三叉神経を求心路として起こる。瞬目反射とは、結膜や角膜に異物が接触すると迅速に閉眼して眼球を防御する反射である。遠心路は顔面神経で眼輪筋が収縮して閉眼する。瞬目反射の有無は、こよりなど柔らかい物で角膜を刺激する
2.× 対光反射とは、強い光に対して瞳孔が収縮してまぶしさを防ぐ反射である。【求心路】視神経、【遠心路】動眼神経である。
3.× 追跡運動とは、ゆっくりと動く視覚対象物の動きに合わせて視線を滑らかに動かす運動である。【求心路】視神経、【遠心路】動眼神経、滑車神経、外転神経である。
4.× 輻輳反射とは、瞳孔反射の一つで、近くの物を見る時に両眼が内転(輻輳運動)し、あわせて瞳孔が収縮する反射のことをいう。いわゆるより目である【求心路】視神経、【遠心路】動眼神経である。患者の正面、約50cmのところに示指を立てて見つめてもらい、その指を15cmくらいまで近づけると両方の目が寄り目になる(左右の目がそれぞれ内転する)反射のことであり、動眼神経の障害を検査する。(※読み:ふくそうはんしゃ)

 

 

 

 

27 人工弁置換術の術後合併症で早期離床による予防効果が高いのはどれか。

1.反回神経麻痺
2.術後出血
3.縦隔炎
4.肺炎

解答4

解説

1.× 反回神経麻痺は、早期離床で予防できるものではない。反回神経麻痺の症状として、嗄声や呼吸困難などの症状がみられる。嗄声とは、声帯を振動させて声を出すとき、声帯に異常が起こり「かすれた声」になっている状態である。嗄声の原因は、①声帯自体に問題がある場合と、②声帯を動かす神経(反回神経)に問題がある場合がある。反回神経は迷走神経の分枝であり、気管と食道の間を上行して、喉頭に入る。左側は大動脈を迂回するので長く、また麻痺の頻度も多い。②声帯を動かす神経(反回神経)に問題がある場合の例として、肺癌、甲状腺癌、大動脈瘤などがあげられる。他にも、甲状腺、心臓、食道の手術後に術後性麻痺を伴うこともある。
2.× 術後出血は、早期離床で予防できるものではない。術後出血とは、ドレーンから明らかな血液が100ml/時間以上流出している場合を指すことが多い。術後出血は、もともと出血素因があって侵襲によって素因が増悪した場合や、抗凝固剤を手術前に内服していた場合、手術による止血が不十分であった場合、また手術侵襲によって凝固機能低下が生じた結果出血してしまう場合などに起こる。
3.× 縦隔炎(※読み:じゅうかくえん)は、早期離床で予防できるものではない。縦隔炎とは、心臓・大血管手術後に生じる感染性合併症の一つである。縦隔とは、左右の肺と胸椎・胸骨に囲まれた部分を指す。手術部位である心臓や大血管の周囲に感染を発症し、膿が貯留する。
4.〇 正しい。肺炎は、人工弁置換術の術後合併症で早期離床による予防効果が高い。肺炎とは、主に細菌やウイルスなどの病原体に感染することで、肺に炎症が起こっている状態である。早期離床や早期の積極的リハビリテーションを行うと、呼吸・嚥下・消化・排泄・免疫・認知の維持・回復が促進できる。

廃用症候群とは?

 廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

 

 

 

 

28 成人の鼠径ヘルニアで正しいのはどれか。

1.内鼠径ヘルニアと外鼠径ヘルニアに分けられる。
2.患者の男女比は約1:3である。
3.やせている人に多い。
4.保存的治療を行う。

解答1

解説

鼠径ヘルニアとは?

鼠径ヘルニアとは、鼠径部の脆弱化した筋膜・腿膜の裂隙(すき間)から、壁側腹膜に包まれた腹腔内臓器が脱出したものである。主に2種類に大別される。①外鼠径ヘルニア、②内鼠径ヘルニアである。①外鼠径ヘルニアは、内鼠径輪からもともと存在する通路である鼠径管を通って腸管が脱出するものである。乳幼児期男児や成人男性に多い。②内鼠径ヘルニアは、横筋筋膜の脆弱化により、もともと穴が開いていない筋膜を突き破って腸管が脱出するものである。壮年期以降の男性に多い。症状として、鼠径部に膨らみができ、不快感や違和感、痛みが発生する。

1.〇 正しい。内鼠径ヘルニアと外鼠径ヘルニアに分けられる。内鼠径ヘルニアは、横筋筋膜の脆弱化により、もともと穴が開いていない筋膜を突き破って腸管が脱出するものである。壮年期以降の男性に多い。症状として、鼠径部に膨らみができ、不快感や違和感、痛みが発生する。一方、外鼠径ヘルニアは、内鼠径輪からもともと存在する通路である鼠径管を通って腸管が脱出するものである。乳幼児期男児や成人男性に多い。
2.× 患者の男女比は、「約1:3」ではなく約8:1で男性に多い。なぜなら、男性は女性よりも鼠径管が太くなっており、鼠径管を通じて腹膜(内臓をつつむ袋)が押し出されやすくなっているためとされている。
3.× やせている人に多いと一概にはいえない。リスク要因としては、高齢、るいそう、反対側のヘルニアの既往、ヘルニアの家族歴、腹圧のかかる仕事や運動、経後恥骨的前立腺摘出術の既往、慢性的な咳、腹膜透析、喫煙、プロテアーゼインヒビターの服用、腹部大動脈瘤などがあげられる。
4.× 「保存的治療」ではなく、手術的治療を行う。成人の場合は自然治癒が見込めない。

 

 

 

 

 

29 Aさん(45歳、男性)は、10年ぶりに会った友人から顔貌の変化を指摘された。
 顔貌変化を図に示す。
 Aさんの顔貌変化を引き起こしたホルモンはどれか。

1.成長ホルモン
2.副甲状腺ホルモン
3.副腎皮質ホルモン
4.甲状腺刺激ホルモン

解答1

解説

 図は、先端巨大症様顔貌に特徴的な所見である。例えば、①眉弓部の突出、②頬骨の突出、③軟部組織(鼻部や口唇など)の肥大、④下顎の前突が認められる。先端巨大症は、下垂体前葉ホルモンである成長ホルモンの過剰分泌で生じる。よって、選択肢1.成長ホルモンが正しい。

2.× 副甲状腺ホルモン(パラソルモン)は、血中カルシウム濃度を高める作用をもつ。したがって、副甲状腺機能低下症では、血中副甲状腺ホルモンの低下により、血清カルシウムが低下し、テタニー(手足のしびれ)を起こす。テタニーの症状として、手・足・口唇のしびれ感、全身強直性痙攣などがみられる。
3.× 副腎皮質ホルモンとは、副腎皮質より産生されるホルモンの総称で、①アルドステロン、②コルチゾール、③アンドロゲンがある。炎症の制御、炭水化物の代謝、タンパク質の異化、血液の電解質のレベル、免疫反応など広範囲の生理学系に関わっている。Cushing〈クッシング〉症候群は、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の過剰によって起こる症候群である。原因の多くは副腎皮質腺腫である。コルチゾール過剰によってみられる症候は、ステロイド剤の副作用と共通する。コルチゾール過剰に伴う特徴的な症候として、満月様顔貌、赤ら顔、中心性肥満、水牛様脂肪沈着(水牛様肩)、皮膚の非薄化、皮下溢血、四肢近位筋萎縮・筋力低下、赤色皮膚線条がある。
4.× 甲状腺刺激ホルモンとは、下垂体前葉から分泌され、作用は、甲状腺に働きかけ甲状腺ホルモンの分泌を促進させる。ちなみに、甲状腺ホルモンは、カラダ全体の新陳代謝を促進する働きがある。したがって、甲状腺刺激ホルモンの過剰によって引き起こされるのは、バセドウ病である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。ちなみに、眼球突出・甲状腺腫・頻脈をメルゼブルグの三徴候という。

 

 

 

 

30 低血糖時の症状はどれか。

1.発疹
2.徐脈
3.冷汗
4.多幸感

解答3

解説

低血糖症状

血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

1.× 発疹とは、肌に発現する赤い斑点や丘疹、水疱などの皮膚の異常状態を指す。さまざまな原因によって引き起こされ、感染症、アレルギー、免疫系の異常、薬剤反応、慢性の皮膚疾患などが考えられる。
2.× 「徐脈」ではなく、頻脈が生じる。
4.× 「多幸感」ではなく、不安感が生じる。ちなみに、多幸感はステロイドの副作用で生じることがある。副腎皮質ステロイド薬の副作用は、①易感染性、②骨粗鬆症、③糖尿病、④消化性潰瘍、⑤血栓症、⑥精神症状(うつ病)、⑦満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満などである。

 

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