第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午後36~40】

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36 入浴時に全身の血液循環を促進する作用はどれか。

1.鎮静作用
2.浮力作用
3.抗酸化作用
4.静水圧作用

解答4

解説

水治療法の生理学的作用

温熱寒冷作用
浮力による作用
静水圧による作用
同水圧による作用
精神作用

1.× 鎮静作用とは、中枢神経に働きかけて興奮を抑える作用である。ぬるめの湯での入浴では副交感神経が刺激されるため、鎮静作用を得られる。他にも、鎮静効果を有する代表的なものとして、①アルコール、②ベンゾジアゼピン系薬物、③バルビタール系薬物などがあげられる。
2.× 浮力作用とは、水により重力が軽減される作用である。お湯に入ると身体は、浮力を受け、水中では空気中に比べて約1/9程度の重さになる。したがって、身体を支えるための緊張していた筋肉もほぐれやすいといわれている。
3.× 抗酸化作用とは、生体内でできる活性酸素を抑制する働きのことである。抗酸化作用のある栄養素は、ビタミンCやビタミンE、ポリフェノール類、ミネラル類や、美容効果で話題のカロテノイドなどが挙げられる。
4.〇 正しい。静水圧作用は、全身の血液循環を促進する。静水圧作用とは、静かな水の中における圧力である。静水圧は、水面から深いほど水圧がかかり、水中で立位をとると下肢に強い圧力がかかり、静脈血が押し出され、静脈還流量は増加する。

 

 

 

 

 

37 1回換気量に関係なく吸入酸素濃度を調節できる器具はどれか。

1.鼻カニューレ
2.フェイスマスク
3.ベンチュリーマスク
4.リザーバー付酸素マスク

解答3

解説

(※写真:ベンチュリーマスク)

1回換気量とは?

一回換気量とは、一回の呼吸運動(呼気と吸気)で気道・肺に出入りするガスの量のことを指す。単位はmL。1回換気量のうち、ガス交換が可能な領域(呼吸細気管支と肺胞)を出入りする分が「有効換気量(350mL)」であり、ガス交換が行われない領域(鼻腔・口腔・気管・気管支・終末細気管支)を出入りする分は、「死腔換気量(150mL)」である。したがって、有効換気量+死腔換気量で健康な成人の1回換気量を求めることができる。

1~2.× 鼻カニューレ/フェイスマスク(酸素マスク)は、低流量システムである。安定した酸素濃度が不必要な場合に低流量システムが用いられる。そのため、患者の1回換気量によって吸入酸素濃度が変化する。酸素の流量以外の空気は室内の空気を吸入しているため、1回換気量が変化すると吸入酸素濃度は変化する。
3.〇 正しい。ベンチュリーマスクは、1回換気量に関係なく吸入酸素濃度を調節できる器具である。ベンチュリーマスクとは、患者の換気量に関わらず、設定した濃度の酸素量を送気できるよう設計された酸素マスクのことで、ダイリューターと呼ばれる酸素濃度調整器具によってベンチュリー効果を生み出す酸素吸入器具である。ダイリューターという酸素濃度調整器具の選択によって、24~50%に吸入酸素濃度を調整することができる。ちなみに、ベンチュリー効果とは、空気や水が狭い部分を通るときに流速が増加して、陰圧を生じることをいう。ベンチュリーマスクのような高流量システムではこれを利用し、室内空気を取り込んで酸素濃度とトータルフローを調整している。
4.× リザーバー付酸素マスクは、低流量システムである。リザーバー付酸素マスクとは、酸素吸入が60%以上必要な場合に用いられる。吸気時にリザーバー内に貯めた酸素をチューブから送られた酸素と一緒に吸入する。酸素吸入には、鼻カニューレ、フェイスマスク、ベンチュリーマスク、リザーバー付き酸素マスクなどの種類がある。

流量システム

低流量システムとは、酸素ガスの供給量が30L/分以下の場合、不足分の吸気は、マスク周囲から流入する室内気によって補われるものをいう。

高流量システムとは、ベンチュリー効果(高速で流れる流体がまわりの物を引きつける効果)を利用することで、酸素と空気を混合し30L/分以上の高流量をつくり出すものをいう。

 

 

 

 

38 成人患者への薬剤の投与方法で正しいのはどれか。

1.筋肉内注射は大殿筋に行う。
2.点眼薬は結膜囊に滴下する。
3.皮下注射は前腕内側に行う。
4.食間の指示の経口薬は食事中に服用させる。

解答2

解説

注射部位の深さ

深さ:表皮→真皮→皮下組織→静脈→筋肉の順に深くなる。
角度:皮内(ほぼ水平)→皮下注射(10~30度)→筋肉内注射(45~90度)である。

注射部位が浅ければ刺入角度を小さくし、注射部位が深ければ刺入角度を大きくする。

(図引用:「看護roo!様HP~看護師イラスト集~」より)

1.× 筋肉内注射は、「大殿筋」ではなく中殿筋に行う。他の部位としては、三角筋大腿四頭筋などがあげられる。中殿筋が選択される理由として、中殿筋が大殿筋より厚く、重要な神経や血管がなく、便や尿などで汚染されにくいためである。また、プライバシーに配慮し、不必要な露出を避けることが大切である。ちなみに、筋肉内注射とは、血管が豊富に分布する筋肉内に注射することで、薬剤の吸収を早める目的で行われる。薬剤が容易に確実に末梢血管に吸収されるため、皮下注射の約2倍の速さで効果が現れる。
2.〇 正しい。点眼薬は結膜囊に滴下する。結膜は、眼球と眼瞼を結びつける粘膜で、前部強膜および眼瞼の内面を覆っている。結膜全体を嚢状体とみなして結膜嚢といい、点眼液の貯留場所となり、眼の生理上重要な役割を果たしている。また、点眼後は、涙嚢部(内眼角)を圧迫する。なぜなら、涙嚢部(内眼角)を圧迫することで、薬液を鼻涙管へ流れるのを防ぐことができるため。ただし、点眼後は静かにまぶたを閉じて、まばたきをしないで約1分間目をつぶっていることも推奨されている。これは、鼻涙管を介して全身へ行き、副作用の原因となるためである。
3.× 皮下注射は、「前腕内側」ではなく、上腕伸側三角筋の上部(上腕後側部)に行う。なぜなら、神経や血管の分布が少ないため。皮下注射は、皮下注射は真皮と筋肉の間にある皮下組織へ注入するため、皮下脂肪が、5mm以上の部位を選択する。インスリン注射やワクチン接種などで用いられる注射法である。ちなみに、前腕内側(屈側)に行うのは、皮内注射である。
4.× 食間の指示の経口薬は、「食事中」ではなく、食事の2~3時間後に服用させる。食間とは、食事と食事の間という意味で、食事を終えてから約2時間後が目安である。空腹の状態で飲むと吸収が良い薬や、胃の粘膜を保護するための薬(消化性潰瘍治療薬など)などは食間に飲むことが多い。ちなみに、食前とは、食事の20〜30分前のことである。食べ物や胃酸の影響を受けたくない薬や、糖尿病の際に食事で高くなる血糖値を下げるための薬などは、食前に飲むことが多い。また、食後とは、食事が終わって20〜30分後までのことである。食事の後は胃の中に食べたものがあるため、胃への刺激が少なくなる。食後の薬は飲み薬の中で最も多いタイプである。主に食べ物と一緒のほうが吸収が良くなる薬や、空腹時に飲むと胃を荒らす薬などは食後に飲む。

 

 

 

 

 

39 永久的止血法に含まれるのはどれか。

1.止血帯法
2.タンポン法
3.血管結紮法
4.間接圧迫止血法

解答3

解説

MEMO

止血法は、①一次的止血法(緊急時の応急止血)と、②永久的止血法(完全止血を期待できる)に大別される。①一次的止血法には、主に間接圧迫と直接圧迫に分類される。間接圧迫止血法とは、出血部より中枢側の動脈を圧迫して、出血部の血流を遮断し止血する方法である。一方で、直接圧迫止血法とは、創部を直接圧迫する方法である。②永久的止血法として、血管結紮法・熱凝固による止血・局所止血剤による止血などを指し、医療機関での専門的な処置などがあげられる。

1.× 止血帯法は、一次的止血法である。止血帯法とは、出血が激しい場合など、直接圧迫止血法でも効果がない場合に、止血帯を用いて、出血部より中枢側の動脈を圧迫して、出血部の血流を遮断し止血する方法である。神経などを痛める危険性があるため、安全かつ適切に実施できるよう、手当について十分習熟しておくことが必要である。
2.× タンポン法は、一次的止血法である。タンポン法とは、出血部位にガーゼなどを詰めて圧迫し止血する直接圧迫法のひとつである。
3.〇 正しい。血管結紮法(※読み:けっかんけっさつじゅつ)は、永久的止血法に含まれる。血管結紮法とは、止血目的で血管を結んだり、臓器摘出の際に周囲組織から分離切断する時に、断端を糸で結んで血流を止める外科的な止血法である。他にも永久止血法は、電気メスなどを用いた熱凝固による止血、局所止血剤による止血など医療機関での専門的な処置などがあげられる。
4.× 間接圧迫止血法は、一次的止血法である。間接圧迫止血法とは、出血部より中枢側の動脈を圧迫して、出血部の血流を遮断し止血する方法である。一方で、直接圧迫止血法とは、創部を直接圧迫する方法である。

 

 

 

 

40 成人に行う頭部MRI検査で正しいのはどれか。

1.造影を伴わない場合は検査直前まで飲食してよい。
2.使い捨てカイロは装着したままでよい。
3.検査中は手足を自由に動かしてよい。
4.補聴器は装着したままでよい。

解答1

解説

MRI検査とは?

核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

【MRI検査の禁忌】
①体内の電子電機部品(ペースメーカ、移植蝸牛刺激装置(人工内耳)、植込み型除細動器、神経刺激器、植込み型プログラマブル注入ポンプ):MRI対応型もあるためしっかり確認する。
②素材の確認できない脳動脈クリップ:MRI対応型もあるためしっかり確認する。
③目や脳など特定の重要臓器に迷入した鉄片などの強磁性体の破片
④眼部のインプラントや材料で強磁性金属を使用しているもの
⑤磁場によって活性化するもの(磁力で装着する義眼、磁石部分が脱着不能な義歯など)
⑥目のメークアップ用品、カラーコンタクト
⑦入れ墨
⑧補聴器
⑨いくつかの管腔内デバイス
⑩ニトログリセリン真皮浸透絆創膏

1.〇 正しい。造影を伴わない場合は、検査直前まで飲食してよい。しかし、造影剤を使用する場合は、検査前4時間程度飲食が制限(水・お茶等は検査1時間前まで自由)される。なぜなら、副作用である嘔吐が起きた場合、誤嚥する可能性が高いため。
2.× 使い捨てカイロ/補聴器は、「装着したまま」ではなく必ず外す。なぜなら、使い捨てカイロには鉄粉が含まれており、MRIの強力な磁力により発熱し、やけどする可能性や中身が飛び散る可能性があるため。また、補聴器もMRIの発生する強力な磁力により、破損する可能性がある。他にも、入れ歯・エレキバン・ベルト・アイライン・マスカラ等は火傷を発症する。したがって、化粧もなるべく指導するよう伝える。
3.× 検査中は、手足を「自由に動かしてよい」のではなく固定する(動かしてはならない)。なぜなら、撮像中に身体を動かすと正しい検査画像が得られないため。検査部位、内容によるが、検査時間は20分~1時間程度である。頭部MRI検査の場合、20~30分程度で終わるが、動きに非常に弱い検査である。

 

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