第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前56~60】

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56 軽度の老人性難聴の特徴はどれか。

1.ゆっくり話すと聞き取りにくい。
2.母音よりも子音が聞き分けにくい。
3.高音よりも低音が聞き取りにくい。
4.イントネーションが理解しにくい。

解答2

解説

老人性難聴とは?

老人性難聴とは、加齢によって耳(内耳)と脳(聴覚中枢)が障害されて聴こえにくくなっている状態である。老人性難聴は、高音域の聴力から障害される。他にも、語音弁別能や周波数選択性の低下、補充現象などの症状が複数現れる。ちなみに、補充現象とは、聞こえが悪いのに、音を大きくすると大きくした比率以上に大きく聞こえる現象である。

1.× ゆっくり話すと、「聞き取りにくい」のではなく聞き取りやすい。なぜなら、老人性難聴は、語音弁別能が低下するため。語音弁別能が低下すると、声は聞こえても話の内容が理解できないといったことが起こる。
2.〇 正しい。母音よりも子音が聞き分けにくい。なぜなら、老人性難聴は、語音弁別能が低下するため。音のゆがみによる語音弁別能の低下は、サ行→ハ行に、タ行→カ行に混同するなどである。「しんぶん」が「ひんぶん」に聞こえる。ちなみに、母音とは、口腔内で空気の流れが妨げられずに発せられる音のことである。一方、子音はそれ以外の、口腔内で空気の流れが妨げられて発せられる音である。唇や舌、歯などを用いて出す。つまり、日本語における母音は「ア・イ・ウ・エ・オ」の5音である。
3.× 逆である。「低音」よりも「高音」が聞き取りにくい。老人性難聴は、高音域の聴力から障害される。これは、蝸牛におけるコルチ器の有毛細胞(高音域を識別する部位)が、加齢に伴い変性・減少していくためといわれている。
4.× イントネーション(音の高低、抑揚、音調)が「理解しにくい」のではなく比較的に保たれる。単調に話すより、イントネーション(音の高低、抑揚、音調)のある方が理解しやすい。

 

 

 

 

 

57 Aさん(90歳、男性)は、脳梗塞による軽度の左半身麻痺がある。要介護1。最近、娘(65歳)とその家族と同居を始めた。Aさんの受診に付き添ってきた娘が看護師に「同居を始めてから疲れます」と話した。
 この時の娘に対する看護師の対応で最も適切なのはどれか。

1.心療内科の受診を勧める。
2.娘の幼少期の親子関係を聞く。
3.Aさんの介護老人保健施設への入所を勧める。
4.同居後に家族の生活がどのように変化したかを聞く。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(90歳、男性、要介護1
・脳梗塞:軽度の左半身麻痺
・最近:娘(65歳)とその家族と同居を始めた。
・娘が「同居を始めてから疲れます」と話した。
→介護者の介護疲れは、DVやうつ病を引き起こしてしまうこともある。具体的に何が疲労の原因なのか?まずは決めつけを行わず、良く話を聞くべきである。

1.× 心療内科の受診を勧めると判断するのは時期尚早である。なぜなら、娘が「同居を始めてから疲れます」と話しただけで、具体的に何が疲労の原因なのかまだ分からないため。まず、疲れの状態とそれをもたらす要因について知るために、よく話を聞くことが必要である。ちなみに、心療内科とは、様々なストレスが要因で、身体に症状が現れる症状を扱う診療科である。また、もしそのような症状がみられたとしても、直接母親に言うのではなく、チームアプローチであるため医師やその他の専門職に報告・相談・連絡する必要がある。
2.× 娘の幼少期の親子関係を聞く優先度は高くない。なぜなら、「娘の幼少期の親子関係」と「現在の介護疲れ」の関連性は薄いため。また、設問から、娘はAさんの受診に付き添ってきているため、親子の関係性が悪いということは読み取れない。
3.× Aさんの介護老人保健施設への入所を勧めると判断するのは時期尚早である。なぜなら、娘が「同居を始めてから疲れます」と話しただけで、具体的に何が疲労の原因なのかまだ分からないため。また、娘が介護老人保健施設への入所を希望しても、Aさんの希望を聞いていない。まず、疲れの状態とそれをもたらす要因について知るために、よく話を聞くことが必要である。ちなみに、介護老人保健施設とは、要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護・医学的管理のもと、介護および機能訓練その他必要な医療ならびに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設である。
4.〇 正しい。同居後に家族の生活がどのように変化したかを聞く。娘が「同居を始めてから疲れます」と話していることから、同居後に生活に変化が起きたことが読み取れる。介護者の介護疲れは、DVやうつ病を引き起こしてしまうこともある。具体的に何が疲労の原因なのか?まずは決めつけを行わず、良く話を聞くべきである。必要であればサービスにつなげるなどの支援や助言が必要である。

 

 

 

 

58 Aさん(75歳、女性)は、腰部脊柱管狭窄症と診断されており、要介護1、障害高齢者の日常生活自立度判定基準A-1である。
 Aさんが介護保険による貸与を受けられる福祉用具はどれか。

1.車椅子
2.歩行器
3.電動ベッド
4.入浴用椅子

解答2

解説

(※図引用:「障害高齢者の日常生活自立度判定基準」厚生労働省HPより)

本症例のポイント

・Aさん(75歳、女性、腰部脊柱管狭窄症、要介護1
・障害高齢者の日常生活自立度判定基準A-1
ランクA:屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない。
1.介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する。

1.3.× 車椅子/電動ベッドは、要介護2以上で貸与を受けられる。
2.〇 正しい。歩行器は、要支援1~2、要介護1~5のすべてで貸与を受けられる。
4.× 入浴用椅子は、「貸与は行えず」、購入することができる。要支援1~2、要介護1~5のすべてが対象である。排泄や入浴に関するものは購入の対象である。【購入の対象】①腰掛け便座、②自動排泄処理装置の交換可能部分、③入浴補助用具、④簡易浴槽⑤移動用リフトの吊り具の部分などである。

貸与の対象(要介護2~5)

①車椅子
②車椅子付属品
③特殊寝台
④特殊寝台付属品
⑤床ずれ防止用具
⑥体位変換器
⑦手すり
⑧スロープ
⑨歩行器
⑩歩行補助杖(T字杖を除く)
⑪認知症老人徘徊感知機器
⑫移動用リフト(つり具の部分を除く)
⑬自動排泄処理装置

 

 

 

 

 

59 乳幼児健康診査を規定しているのはどれか。

1.母子保健法
2.児童福祉法
3.次世代育成支援対策推進法
4.児童虐待の防止等に関する法律

解答1

解説

乳幼児健康診査とは?

乳幼児健康診査は、母子保健法(第12条及び第13条)により規定されている。乳幼児健康診査とは、市町村が乳幼児に対して行う健康診査であり、乳幼児健康診断や乳幼児健診とも呼ばれる。乳幼児健診は、身長、体重、胸囲、頭囲を測定し、成長曲線と照らし合わせながら、成長度合いを確認する。身体的な健診に限らず、粗大運動・微細運動・精神面を含めた発達、疾患の有無に関しても確認する。また、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の有無を診るため、股関節開排制限や大腿皮膚溝、鼠径皮膚溝の非対称を確認する。

1.〇 正しい。母子保健法は、乳幼児健康診査を規定している。母子保健法とは、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。
2.× 児童福祉法とは、児童の福祉を担当する公的機関の組織や、各種施設及び事業に関する基本原則を定める日本の法律である。児童が良好な環境において生まれ、且つ、心身ともに健やかに育成されるよう、保育、母子保護、児童虐待防止対策を含むすべての児童の福祉を支援する法律である。
3.× 次世代育成支援対策推進法とは、次世代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ育成される環境整備を図るための次世代育成支援対策の基本理念を定めた法律である。都道府県・市町村の行動計画、一般事業主の行動計画を次世代育成支援対策推進センターなどで規定している。
4.× 児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)とは、児童虐待防止に関する施策を促進し、児童の権利・利益を擁護することを目的としている。児童に対する虐待の禁止、虐待に関する地方自治体の責務、児童の保護措置などが規定されている。

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①市町村への援助(市町村相互間の連絡調整、情報提供、研修その他必要な援助)
②児童・その家庭の相談のうち、専門的な知識・技術を必要とする者への対応
③児童・その家庭の必要な調査、医学的、心理学的、教育学的、社会学的、精神保健上の判定
④調査、判定に基づいた児童の健康・発達に関する専門的な指導
⑤児童の一時保護
⑥児童福祉施設等への入所措置
⑦一時保護解除後の家庭・その他の環境調整,児童の状況把握・その他の措置による児童の安全確保
⑧里親に関する業務
⑨養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

 

60 小児の呼吸法が、腹式呼吸から成人と同じ胸式呼吸に変化する時期はどれか。

1.生後6か月
2.3歳
3.7歳
4.12歳

解答3

解説

呼吸運動

腹式呼吸は、乳児期における呼吸の型である。なぜなら、新生児は、肋骨の角度が水平で呼吸筋が未発達のためである。肋骨の傾斜が成人に近づき、呼吸筋が発達してくるのに合わせて、2歳ごろから胸腹式呼吸となり、6歳ごろまでに胸式呼吸となる。胸式呼吸とは、肋間筋の働きで胸郭を広げることによって行う呼吸運動である。

1.× 生後6か月(乳児期)は、腹式呼吸を行う。なぜなら、新生児は、肋骨の角度が水平で呼吸筋が未発達のためである。
2.× 3歳(2歳~幼児期後期)は、胸腹式呼吸を行う。胸腹式呼吸は、胸郭と呼吸筋の発達に伴い、胸部と腹部を同時に使う呼吸の型である。発達に伴い、次第に肋骨が斜めに走行するようになる。
3.〇 正しい。7歳(学童期以降)は、腹式呼吸から成人と同じ胸式呼吸に変化する時期である。胸式呼吸とは、肋間筋の働きで胸郭を広げることによって行う呼吸運動である。胸郭の形がより成人に近づき、さらに呼吸筋も発達する。
4.× 12歳は、成人と同様の胸式呼吸が確立している。

 

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