第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前51~55】

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51 開頭術を受けた患者の看護で適切なのはどれか。

1.頭部を水平に保つ。
2.緩下薬は禁忌である。
3.髄膜炎症状の観察を行う。
4.手術後1週間は絶飲食とする。

解答3

解説

開頭術後の合併症

開頭術後の合併症には、まず頭蓋内圧亢進症状に注意する必要がある。頭蓋内圧亢進により、①頭痛、②嘔気・嘔吐、③うっ血乳頭、④複視(外転神経麻痺)などを生じる。Cushing現象(脳ヘルニアの直前状態)で、①血圧上昇、②徐脈、③緩徐深呼吸などの症状が出現する。これらは、脳幹下部の脳圧亢進による乏血状態に対する生体の代償作用である。他にも、術後出血、脳浮腫、脳血管攣縮、感染症、深部静脈血栓症・肺血栓症などがあり、早期発見や予防を考慮した観察が重要である。

【開頭手術後に起こる合併症】
①脳損傷による神経脱落症状
②術後出血や脳還流障害による脳腫脹や頭蓋内圧損傷
③長期ベッド上安静による廃用症候群など

1.× 頭部は、「水平」ではなく、30°程度挙上位に保つ。なぜなら、頭蓋内圧の上昇を防ぐことができ、頭蓋内静脈圧や髄液圧の低下を促せるため。頸部は屈曲を避け、安楽に呼吸できるよう配慮する。
2.× 緩下薬(便秘薬、下剤)は、「禁忌」ではなく使用する。なぜなら、術後は全身麻酔の影響や長期安静などにより便秘になりやすいため。ほかにも、便秘は食欲低下やいきみによる頭蓋内圧亢進につながるため、適宜、緩下剤を使用して排便コントロールを図っていく。
3.〇 正しい。髄膜炎症状の観察を行う。なぜなら、開頭手術により、皮膚の常在菌などが頭蓋内に入り込み髄膜炎になる可能性があるため。具体的な観察ポイントは、術後の発熱や創部の感染徴候、意識レベルの変化などである。細菌性髄膜炎の主な病原体は、髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌である。症状は、髄膜炎の3大症状でもある発熱、頭痛、項部硬直で、75%以上の意識障害(傾眠~昏睡と程度は様々)である。他にも、嘔吐や羞明もよくみられる。けいれんは初期症状にみられ、髄膜炎の全経過を通して20~40%に起きる。ちなみに、細菌性髄膜炎では、病原体に合わせた抗菌薬療法や、症状に応じた対症療法が行われる。
4.× 手術後1週間、「絶飲食」ではなく、積極的な食事摂取を始める。なぜなら、栄養状態の改善や廃用予防に努める必要があるため。

 

 

 

 

 

52 Aさん(47歳、男性、会社員)は、痛風の既往があり、ほぼ毎日、飲酒を伴う外食をしている。1週前に尿管結石による疝痛発作があり、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を受けた。その結果、排出された結石は尿酸結石であることがわかった。
 Aさんへの結石の再発予防に対する生活指導で適切なのはどれか。

1.「飲酒量に制限はありません」
2.「負荷の大きい運動をしましょう」
3.「1日2L程度の水分摂取をしましょう」
4.「動物性蛋白質を多く含む食品を摂取しましょう」

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(47歳、男性、会社員、痛風の既往)
・飲酒・外食:ほぼ毎日。
・1週前:尿管結石による疝痛発作があり。
・体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を受けた。
・結果:尿酸結石である。
→痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足趾関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

1.× 飲酒量の制限が必要である。なぜなら、アルコールの利尿作用により、血清尿酸値はさらに上昇するため。適量は1日に純アルコールで20gとされている。尿酸値が高い状態が続くと、血液中に溶けきれなくなった尿酸の結晶が関節に沈着する。他にも、激しい運動、ストレス、尿酸値の急激な変動などが誘因となる。
2.× 「負荷の大きい運動」ではなく有酸素運動が推奨される。なぜなら、筋トレや短距離走のような激しい運動(負荷の大きい運動)は、体内で作られるプリン体の量を増やし、尿酸を排泄する働きを抑えてしまい、血清尿酸値の上昇を招くため。一方、有酸素運動は、運動量が調整しやすく、痛風患者に合併しやすいメタボリック症候群の改善を通じて血清尿酸値低下につながる。
3.〇 正しい。1日2L程度の水分摂取を促す。なぜなら、水分不足(脱水)の場合は、血液が濃くなると血液中の尿酸の濃度が上昇し、痛風発作を起こしやすくなるため。一方、水分摂取は、尿中尿酸値の低下につながる。
4.× 動物性蛋白質(肉など)を多く含む食品は控える。なぜなら、プリン体が多く含まれ、多く摂取することで尿酸の産生が増加し、尿酸結石の再発リスクが上がるため。プリン体が多く含む食材として、豚や牛のレバー、アジやさんまの干物などがあげられる。野菜や果物、豆類などさまざまな食品をバランスよく摂取することが重要である。

 

 

 

 

53 高齢者に対する生活史の聴き方で適切なのはどれか。

1.認知機能の評価尺度を用いる。
2.事実と異なる聴取内容を訂正する。
3.話を聴く前に文書による同意を得る。
4.高齢者が話しやすい時代の思い出から聴く。

解答4

解説

回想法とは?

回想法とは、アルバムや昔の遊び道具や生活用品などを使い(昔懐かしい駄菓子を食べる、童謡などのなじみの歌を聴くなど)して、その当時のエピソードを思い出して話してもらい、人生を振り返り思い出を語ることにより、気持ちを安定させたり、感情・意欲を高揚させたりする方法である。

1.× 認知機能の評価尺度を用いることができない。なぜなら、認知機能の評価尺度とは、主に①HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)、②MMSE(mini mental state examination:ミニメンタルステート検査)などがあり、記憶学習・言語・注意などの機能の程度を評価するものである。生活史とは、個人の生涯の歴史である。
2.× 事実と異なる聴取内容を訂正する必要はない。なぜなら、高齢者の中には、記憶障害をきたしていたり、話したくないことを抱えていたりするため。多少事実と異なるからといって、①援助者との関係性が築くことや②気持ちの安定、③感情・意欲を高揚することを優先することが多い。
3.× 話を聴く前に文書による同意を得る必要はない。なぜなら、高齢者が話したいこと話せることを聞くことを重視するため。
4.〇 正しい。高齢者が話しやすい時代の思い出から聴く。回想法とは、アルバムや昔の遊び道具や生活用品などを使い(昔懐かしい駄菓子を食べる、童謡などのなじみの歌を聴くなど)して、その当時のエピソードを思い出して話してもらい、人生を振り返り思い出を語ることにより、気持ちを安定させたり、感情・意欲を高揚させたりする方法である。

 

 

 

 

 

54 平成28年(2016年)の国民生活基礎調査における高齢者世帯の所得構造を図に示す。
 Aはどれか。

1.稼働所得
2.財産所得
3.公的年金・恩給
4.年金以外の社会保障給付金

解答3

解説

(※図引用:「平成25年高齢者世帯の所得」内閣府HPより)

1.× 稼働所得の割合は、21.1%である。稼働所得とは、雇用者所得、事業所得、農耕・畜産所得、家内労働所得をいう。
2.× 財産所得の割合は、7.4%である。財産所得とは、財産の所有もしくは利用によって発生する所得をいう。
3.〇 正しい。Aは、公的年金・恩給の割合である。65.4%であり、最も高い。ちなみに、恩給とは、公務員が公務のために死亡した場合、公務による傷病のために退職した場合、相当年限忠実に勤務して退職した場合において、国家に身体、生命を捧げて尽くすべき関係にあった、これらの者及びその遺族の生活の支えとして給付される国家補償を基本とする年金制度である。
4.× 年金以外の社会保障給付金の割合は、0.6%である。年金以外の社会保障給付金には、医療保険、生活保護の医療扶助などの公衆衛生サービスに関する費用、社会福祉サービスに関する費用、介護保険給付などがある。

 

 

 

 

55 Aさん(80歳、男性)は、空腹時の胃の痛みが2週間続くため受診し、1週後に胃内視鏡検査を受けることになった。
 検査を受けるAさんへの看護で適切なのはどれか。

1.検査前日の夜に下剤を服用することを伝える。
2.検査前に前立腺肥大症の既往の有無を確認する。
3.検査中は仰臥位の姿勢を保持する。
4.検査後はすぐに食事ができることを説明する。

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(80歳、男性)
・空腹時の胃の痛みが2週間続く。
・1週後:胃内視鏡検査を受ける。
→胃内視鏡検査とは、口から内視鏡を挿入し、上部消化管(食道、胃、十二指腸)の観察を行う検査である。いわゆる胃カメラである。粘膜の色の変化や凹凸など性状を直接観察できるため、がんの早期発見に有効である。胃カメラ前日に出来るだけ食べない方が良いもの・飲み物として、繊維質の多い食べもの(野菜類・海藻・きのこ)、刺激物、アルコール類(お酒)などがあげられる。

1.× 検査前日の夜は、下剤を服用する必要はない。なぜなら、下剤の内服が必要なのは下部消化管(大腸など)の検査の場合であるため。ちなみに、胃内視鏡検査の検査前12時間は、禁飲食(2時間前まで飲水のみ可)とする。
2.〇 正しい。検査前に前立腺肥大症の既往の有無を確認する。なぜなら、抗コリン剤による反応(胃の嬬動運動を抑える反応)により、頻脈、口渇、羞明(まぶしさ)、排尿障害、眼圧上昇などを起こすことがあるため。つまり、抗コリン薬により、前立腺肥大症(排尿障害)や緑内障、重篤な心疾患、麻痺性イレウスなどの症状が悪化する恐れがある。事前に主治医に伝え、薬を変更してもらう必要がある。
3.× 検査中は、「仰臥位」ではなく、左側臥位の姿勢を保持する。なぜなら、胃の形状に沿って内視鏡を挿入する必要があるため。
4.× 検査後は、「すぐに食事ができず」検査後1時間でできることを説明する。なぜなら、誤嚥防止のため。検査時は、咽頭麻酔を行い、検査後も麻酔が切れるまで(検査後1時間)は食事できない。20~30分間安静を取り、動悸、めまい、冷や汗など体に異変の無いことを確認する。

イレウス(腸閉塞)とは?

 イレウス(腸閉塞)とは、何らかの原因により、腸管の通過が障害された状態である。主に、①機械的イレウス(腸閉塞とも呼び、腸内腔が機械的に閉塞されて起こる)、②機能的イレウス(腸管に分布する神経の障害により腸内容が停滞する)に大別される。

①機械的イレウスには、器質的異常を伴うものをいい、単純性イレウスと絞扼性(複雑性)イレウスに分類される。機械的イレウスは血流障害の有無によって、さらに単純性イレウスと複雑性イレウスに分類される。絞扼性(複雑性)イレウスは、腸間膜血行の停止により腸管壊死を伴うイレウスであり、急激に病状が悪化するため緊急に手術を要する。

②機能的イレウスとは、器質的な異常がなく、腸管の運動麻痺や痙攣により腸管の内容物が停滞することである。長期臥床、中枢神経疾患、腹膜炎、偽性腸閉塞が原因となることが多い。麻痺性イレウスと痙攣性イレウスに分けられる。

 

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