第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午後66~70】

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66 Aさん(85歳、女性)は、1人暮らし。日常生活は自立しており、健康のために毎日20〜30分のウォーキングをしている。夜間は、廊下を歩いて1、2回トイレに行く。
 Aさんの現時点での家屋環境の整備で最も優先されるのはどれか。

1.便座の高さを高くする。
2.廊下に手すりを設置する。
3.トイレの扉を引き戸にする。
4.廊下に足元照明を設置する。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(85歳、女性、1人暮らし)
・日常生活:自立
・健康目的:毎日20〜30分のウォーキング。
・夜間:廊下を歩いて1、2回トイレに行く。
→高齢者の転倒の原因として、①内的要因:加齢変化、疾患・障害、使用中の薬物など、②外的要因:屋内外の生活環境、履き物、衣服などがあげられる。

【高齢者の転倒による骨折】
①大腿骨近位部骨折
②脊椎圧迫骨折
③上腕骨近位部骨折
④橈骨遠位端骨折

1.× 便座の高さを高くするのは、時期尚早である。座面が高いと立ち上がりやすくなるが、Aさんは、健康のために毎日20〜30分のウォーキングをしている。立ち上がりの危険性は低いと考えられる。
2.× 廊下に手すりを設置するのは、時期尚早である。廊下に手すりを設置すると転倒しにくくなるが、Aさんは、健康のために毎日20〜30分のウォーキングをしている。
3.× トイレの扉を引き戸にするのは、時期尚早である。引き戸は方向転換しなくて済むため転倒のリスクが軽減するが、引き戸への検討は歩行介助や歩行補助具を使用しているときに優先度が高い。また、選択肢1~3は、住宅改修に分類される介入であり、介護保険をもっていると1~3割で行うことができる。本症例の場合、身体機能だけでなく、介護保険に関して未記載であるため優先度が低い。
4.〇 正しい。廊下に足元照明を設置する。足元灯とは、廊下や階段、寝室など足元に設置する低ワットの常夜灯のことでフットライトともいう。 ほんのりした灯で、階段や廊下などで足元を照らしてくれるので、夜間でも安心して行動することができる。

 

 

 

 

 

 

67 Aさん(52歳、男性、独身)は、銀行員。切除不能の大腸癌と診断され、外来で抗癌薬の点滴静脈内注射を受けることになった。Aさんは「治療を受けながら仕事を続けたいのですが、どうすれば良いか教えてください」と外来看護師に相談した。
 外来看護師が行うAさんへの助言で最も適切なのはどれか。

1.「所属部署の変更を上司に申し出ましょう」
2.「副作用が出てから対応を考えましょう」
3.「会社の健康管理部門に相談しましょう」
4.「有給休暇を使って治療を受けましょう」

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(52歳、男性、独身、銀行員
・診断:切除不能の大腸癌
・外来:抗癌薬の点滴静脈内注射を受ける。
・Aさん「治療を受けながら仕事を続けたい」と。

1.× 所属部署の変更を上司に申し出るよう勧める必要はない。なぜなら、Aさんは銀行員という記載はあるが、どの部署であるか情報がないため。また、Aさんは治療をしながら仕事を続けたいと話しており、現在の部署で治療と両立できるかについては判断できない。
2.× 副作用が「出てから」ではなく出る前に対応を考える必要がある。なぜなら、副作用が出てからでは、一緒に働いている人たちにも業務を通して迷惑をかける可能性が出てくるため。本症例は、すでに抗癌薬を用いることは説明されており、副作用が出る可能性は高い。抗がん薬治療により副作用が起こることはすでに予測される。ちなみに、細胞障害性抗がん薬の副作用には、治療直後にあらわれるアレルギー反応や、治療から1~2週間程度の期間にみられる吐き気や食欲低下、だるさ、口内炎、下痢などの症状の他、2週間以降からみられる脱毛や手足のしびれ、皮膚の異常(色素沈着や乾燥など)などが生じる。
3.〇 正しい。「会社の健康管理部門に相談しましょう」とAさんに助言する。なぜなら、治療を受けながら仕事を続けることは会社側の協力も欠かせないため。まずは、会社の健康管理部門などに対し相談するようにすすめ、それをもとに必要に応じて協力をする必要がある。健康管理部門とは、企業における産業保健スタッフが在籍する健康管理のための部門である。従業員の身体的な健康、そしてメンタルヘルスをサポートするのが健康管理室の役割である。
4.× 有給休暇を使って治療を受ける必要はない。なぜなら、有給休暇には限りがあるため。年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことである(※参考:「年次有給休暇とはどのような制度ですか」厚生労働省HPより)。

 

 

 

 

68 家族からネグレクトを受けている高齢者について、地域包括支援センターに通報があった。
 この通報を受けた地域包括支援センターが行う業務はどれか。

1.権利擁護
2.総合相談支援
3.介護予防ケアマネジメント
4.包括的・継続的ケアマネジメント支援

解答1

解説

MEMO

・ネグレクトとは、養育拒否・怠慢のことをさし、子どもに食事を与えなかったり、病気になっても病院に連れて行かなかったりすることをいう。

・地域包括支援センターとは、介護保険法に基づき各市町村によって設置されており、地域の高齢者の医療・福祉・介護・虐待など様々な事柄に関する相談窓口となっている。業務内容には、①総合相談支援、②権利擁護、③包括的・継続的マネジメント支援、④介護予防ケアマネジメント、⑤地域ケア会議の充実が挙げられる。地域包括支援センターの人員基準は、「第1号被保険者(65歳以上の高齢者)3000人~6000人ごとに、保健師、社会福祉士及び主任介護支援専門員(準ずる者を含む)を最低限それぞれ各1人」である。

1.〇 正しい。権利擁護を優先して、地域包括支援センターが行う。家族からネグレクトを受けていることから、本人の権利が侵害されていると考えられる。地域包括支援センターとは、介護保険法に基づき各市町村によって設置されており、地域の高齢者の医療・福祉・介護・虐待など様々な事柄に関する相談窓口となっている。ちなみに、権利擁護(アドボカシー)とは、自己の権利を十分に表明することができない者の人権を尊重し、当事者の権利を代弁者として擁護し、当事者の自己決定を支え、その人らしく生活すること(自己実現)を支援することである。アドボカシーは、「擁護」、「支持」、「唱道」などの意味をもつ言葉で、保鍵師の役割において、「代弁者」として用いられることが多い。患者や家族が自身の権利や利益を守るための自己決定ができるように、看護師は、患者や家族を保護し、情報を伝え、支えることでエンパワーメント(患者・家族を強引に説得したりするのではなく、自己決定できるように働きかけること)すること、さらに医療従事者との仲裁を行い、医療者間の調整をすることであると定義づけられている。
2.× 総合相談支援とは、包括的支援事業のひとつで、初期段階の相談対応・継続的・専門的な相談支援、情報提供等の初期相談から、継続的・専門的な援助まで対応する総合的な相談・支援を行う。具体的には、関係機関や地域住民との連絡調整、介護する者に対する相談支援などがある。
3.× 介護予防ケアマネジメントとは、包括的支援事業のひとつで、支援者や基本チェックリストで事業対象の基準に該当した者に対して介護予防・日常生活支援を目的として、訪問型サービス、通所型サービス、その他の生活支援サービスなどが包括的かつ効率的に提供されるよう必要な援助を行う事業のことである。つまり、要支援者が訪問型・通所型サービスなどを利用するときに作成する。
4.× 包括的・継続的ケアマネジメント支援は、包括的支援事業のひとつで、高齢者が住み慣れた地域で暮し続けることができるよう、個々の高齢者の状況変化に応じた適切なケアマネジマントの長期的な実施、ケアマネジャーの技術向上のためケアマネジャーの日常的個別指導、支援困難事例等への指導・助言、ケアマネジメントの公正・中立性の確保を図るため、地域のケアマネジャーの後方支援をするとともに、多職種の連携・協働による長期継続ケアの支援が行われる。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、判断能力がないまたは不十分な者に対して、保護者を付すことにより契約などの法律行為を補助するものである。①法定後見制度と②任意後見制度とがある。

①法定後見制度:認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が不十分な方に対して、本人の権利を法律的に支援、保護するための制度である。本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3類型がある。

②任意後見制度:まだしっかりと自分で判断ができるうちに、自分の判断能力が衰えてきた時に備えて、あらかじめ支援者(任意後見人)を誰にするか、将来の財産管理や身の回りのことについてその人に何を支援してもらうか、自分で決めておくことができる仕組みである。

 

 

 

 

 

69 病院では、育児中の時短勤務、夜勤専従、非常勤など多様な労働時間や雇用形態の看護師が働いている。
 看護管理者が行うマネジメントで最も優先するのはどれか。

1.夜勤専従の看護師の休暇を増やす。
2.育児中の看護師の院内研修を免除する。
3.非常勤看護師は患者の受け持ちを免除する。
4.特定の看護師に仕事が集中しないよう調整する。

解答4

解説

看護管理者とは?

看護管理者とは、病院内の看護部門および病棟・看護の現場をマネジメントする人のことを指す。客観的な視点から物事を把握しつつ、さまざまなリソース(財政・物質・人員)を活用しながらチームを束ね、目標達成へと導いていくのが使命である。それぞれ「病院の経営陣の1人として」「部門の責任者として」「看護師のリーダーとして」マネジメント業務を遂行する必要がある。

1.× 夜勤専従の看護師の休暇を増やす優先度は低い。なぜなら、夜勤専従の看護師にもそれぞれの家庭事情や生活状況があるため。労働基準法に違反しないこと、「夜勤専従の看護師」とひとくくりしないことなど、その人の労働希望や要望に対応することが大切である。ちなみに、労働基準法には、夜勤専従看護師の夜勤回数は、特に制限はない。ただし、「1回の勤務が8時間」、「週に40時間の労働時間を超えない」という条件がある。
2.× あえて、育児中の看護師の院内研修を免除する必要はない。なぜなら、看護師の養成につながらないため。
3.× 非常勤看護師は、患者の受け持ちを免除する優先度は低い。なぜなら、非常勤看護師の受け持ち患者を免除した場合、常勤看護師の業務量が多くなり負担となるため。ちなみに、非常勤看護師とは、パート・アルバイトのことを指す。
4.〇 正しい。特定の看護師に仕事が集中しないよう調整する。なぜなら、特定の看護師に仕事が集中した場合、負担がかかるだけでなく、事故も発生しやすくなるため。看護管理者とは、病院内の看護部門および病棟・看護の現場をマネジメントする人のことを指す。客観的な視点から物事を把握しつつ、さまざまなリソース(財政・物質・人員)を活用しながらチームを束ね、目標達成へと導いていくのが使命である。

 

 

 

 

70 診療情報の取り扱いで適切なのはどれか。

1.診療情報の開示請求は患者本人に限られる。
2.医療者は患者が情報提供を受けることを拒んでも説明する。
3.2類感染症の届出は患者本人の同意を得なければならない。
4.他院へのセカンドオピニオンを希望する患者に診療情報を提供する。

解答4

解説

診療記録とは?

診療録、カルテとは、医療に関してその診療経過等を記録したものである。 診療録には手術記録・検査記録・看護記録等を含め診療に関する記録の総称をいう。

1.× 診療情報の開示請求は、「患者本人だけ」ではなく、患者本人の同意があれば、第三者(親族、遺族など)に対して提供が可能である。
2.× 医療者は患者が情報提供を受けることを拒んだ場合、あえて「説明する」必要はない。なぜなら、診療情報は、患者の同意のもと提供することが重要であるため。
3.× 2類感染症の届出は、患者本人の同意を得る必要はない。2類感染症とは、6疾患:急性灰白髄炎(ポリオ)・結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS)あげられ、対応として、状況に応じて入院・消毒等の対物措置を行う必要がある。患者の同意がなくても、診断した医師が直ちに保健所などに報告することが必要である。
4.〇 正しい。他院へのセカンドオピニオンを希望する患者に、診療情報を提供する。セカンドオピニオンとは、診断や治療法について、患者自身が納得のいく治療法を選択するために、主治医とは別の医師など当事者以外の専門的な知識を持った第三者に意見を求めることができる「患者の権利」である。「診療情報の提供等に関する指針」において、「7診療記録の開示(1)診療記録の開示に関する原則〇医療従事者等は、患者等が患者の診療記録の開示を求めた場合には、原則としてこれに応じなければならない。〇診療記録の開示の際、患者等が補足的な説明を求めたときは、医療従事者等は、できる限り速やかにこれに応じなければならない。」と記載されている(※引用:「診療情報の提供等に関する指針」厚生労働省HPより)。

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律とは?

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法、感染症法、感染症新法)は、感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本の法律である。平成10年(1998年)に制定された。主な内容は、①1~5類感染症の分類と定義、②情報の収集・公表、③感染症(結核を含む)への対応や処置。

【「感染症法」の対象となる感染症】
①1類感染症(7疾患:エボラ出血熱 ・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう(天然痘) ・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱)
対応:原則入院・消毒等の対物措置(例外的に建物への措置,通行制限の措置も適用対象とする)

②2類感染症(6疾患:・急性灰白髄炎(ポリオ)・結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS))
対応:状況に応じて入院・消毒等の対物措置

③3類感染症(5疾患:・コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症(0157等)・腸チフス ・パラチフス)
対応:・特定職種への就業制限・消毒等の対物措置

④4類感染症(44疾患:※一部抜粋。・E型肝炎・A型肝炎 ・黄熱・Q熱・狂犬病・チクングニア熱・鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)・炭疽 ・ボツリヌス症 ・マラリア ・野兎病・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・デング熱・ジカウイルス感染症・日本脳炎・その他感染症(政令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開,提供・媒介動物の輸入規制・消毒等の対物措置

⑤5類感染症(46疾患:※一部抜粋。・インフルエンザ(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除く)・ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)・クリプトスポリジウム症・後天性免疫不全症候群(AIDS)・性器クラミジア感染症 ・梅毒・麻疹・百日咳・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症・その他感染症(省令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開情報提供

 

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