第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前81~85】

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81 ネグレクトを受けている児の一時保護を決定するのはどれか。

1.家庭裁判所長
2.児童相談所長
3.保健所長
4.警察署長
5.市町村長

解答2

解説

ネグレクトとは?

ネグレクトとは、養育拒否・怠慢のことをさし、子どもに食事を与えなかったり、病気になっても病院に連れて行かなかったりすることをいう。

1/3~5.× 家庭裁判所長/保健所長/警察署長/市町村長は、ネグレクトを受けている児の一時保護を決定することができない
2.〇 正しい。児童相談所長がネグレクトを受けている児の一時保護を決定する。これは、児童福祉法第33条に「児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる」と記載されている(※一部引用:「児童福祉法」e-GOV法令検索様HPより)。

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①市町村への援助(市町村相互間の連絡調整、情報提供、研修その他必要な援助)
②児童・その家庭の相談のうち、専門的な知識・技術を必要とする者への対応
③児童・その家庭の必要な調査、医学的、心理学的、教育学的、社会学的、精神保健上の判定
④調査、判定に基づいた児童の健康・発達に関する専門的な指導
⑤児童の一時保護
⑥児童福祉施設等への入所措置
⑦一時保護解除後の家庭・その他の環境調整,児童の状況把握・その他の措置による児童の安全確保
⑧里親に関する業務
⑨養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

 

 

82 新生児の殿部の写真を下図に示す。
 考えられるのはどれか。

1.ポートワイン母斑
2.サーモンパッチ
3.ウンナ母斑
4.太田母斑
5.蒙古斑

解答5

解説

1.× ポートワイン母斑(毛細血管奇形、単純性血管腫)とは、出生時からみられる血管奇形で、境界明瞭な赤色斑である。局所的な毛細血管の膨張や増加によって、血管を通る血液が皮膚の下に集まり、あざは赤く見える。基本的に自然消退しないためレーザー照射が主な治療法となる。

2.× サーモンパッチ(正中部母斑)とは、ポートワイン母斑の特殊な病変で、新生児の顔面などにみられる赤色斑である。原因は皮膚の真皮毛細血管の増加と拡張で、自然に消えることが多い。
3.× ウンナ母斑とは、ポートワイン母斑の特殊な病変で、新生児の項部(うなじ)などにみられる淡い紅斑である。3歳ごろまでには自然消退することが多く、もしあざが残っていた場合は、レーザーで治療を行う。
4.× 太田母斑とは、顔面(三叉神経第1枝、第2枝領域)にみられる青色斑である。1939年に日本人の太田正雄が世界で初めて報告した青あざの一種である。日本人を含む黄色人種の女性に特に多いと言われている。原因は、メラノサイトが増殖しており、メラニンの量が通常と比べて増加することから発症する。基本的に自然消退しないためレーザー照射が主な治療法となる。
5.〇 正しい。蒙古斑が考えられる。蒙古斑とは、新生児の腰殿部や仙骨部に青色斑を呈する真皮メラノサイト系母斑である。日本人などの黄色人種のほとんどの新生児にみられる母斑で、10歳前後に消失する。

 

 

 

 

83 排便反射の反射弓を構成するのはどれか。2つ選べ。

1.下腸間膜神経節
2.腹腔神経節
3.骨盤神経
4.腰髄
5.仙髄

解答3・5

解説

1.× 下腸間膜神経節は、交感神経の神経節である。
2.× 腹腔神経節は、交感神経の神経節である。
3.5.〇 正しい。骨盤神経/仙髄が、排便反射の反射弓を構成する。便が直腸に入り、直腸内壁が便により伸展すると、その刺激が仙髄の排便中枢に伝達され、直腸の収縮、内・外肛門括約筋の弛緩が起こって排便が起こる(排便反射)。
4.× 「腰髄」ではなく、仙髄が、排便反射の反射弓を構成する。

 

 

 

 

 

84 アセチルコリンで収縮するのはどれか。2つ選べ。

1.心筋
2.排尿筋
3.腓腹筋
4.立毛筋
5.瞳孔散大筋

解答2・3

解説

アセチルコリンとは?

アセチルコリンとは、代表的な神経伝達物質であり、①運動神経の神経筋接合部、②交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出される。アセチルコリンは、中枢神経で働く場合と末梢神経で働く場合で作用が異なる。①運動神経の神経筋接合部では、筋収縮に作用する。

 

1.× 心筋は、自動性があり、洞房結節から始まった興奮によって収縮が引き起こされる。心筋収縮の引き金の役割を担うのは、Ca2+である。また、心筋収縮力を増加されるものは、ノルアドレナリン、アドレナリンである。
2~3.〇 正しい。排尿筋/腓腹筋は、アセチルコリンで収縮する。アセチルコリンとは、代表的な神経伝達物質であり、①運動神経の神経筋接合部、②交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出される。アセチルコリンは、中枢神経で働く場合と末梢神経で働く場合で作用が異なる。①運動神経の神経筋接合部では、筋収縮に作用する。排尿筋(膀胱平滑筋)は、副交感神経によって収縮し、排尿が促される。腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)は、運動神経終末から放出されるアセチルコリンにより収縮する。
4.× 立毛筋は、交感神経の支配を受けており、ノルアドレナリンの作用で収縮する。
5.× 瞳孔散大筋は、交感神経の支配を受けており、ノルアドレナリンの作用で収縮する。逆の働きをする瞳孔括約筋が副交感神経支配筋であり、アセチルコリンで瞳孔は収縮(縮瞳)する。

心筋の収縮のメカニズム

①隣接する細胞が興奮すると、静止膜電位がプラスに向かい、Na+チャンネルが開き、大量のNaが細胞内に流入する。
②Na+が大量に流れ込むため、膜電位は急峻に上昇する。分極していた細胞内外が極性を失うので脱分極という。
③活動電位となった細胞内にはNa+に引き続きCa2+チャンネルが開いて、Ca2+が入ってくる。Ca2+は心筋収縮の引き金の役割とともに、プラスイオンの性質から活動電位の持続にも貢献する。
④活動電位から静止電位に戻るために、K+チャンネルが開いて、細胞内に多いK+が、細胞外に出ていく。結果的にプラスイオンを減らした細胞内は静止電位まで下がる。再び分極するので、再分極という。

 

 

 

 

85 内臓の痛みを引き起こすのはどれか。2つ選べ。

1.虚血
2.氷水の摂取
3.48℃の白湯の摂取
4.平滑筋の過度の収縮
5.内視鏡によるポリープの切除

解答1・4

解説

内臓痛とは?

内臓痛とは、内臓が何らかのダメージを受けることによって生じる痛みのことである。痛む部位がはっきりせず、鈍い痛みや押されるような痛みとして表現されることが特徴である。原因として、管腔臓器の腫瘍圧迫による閉塞、消化管内圧の上昇、固形臓器の被膜伸展により生じる。

一方、体性痛とは、体性疼痛ともいい、皮膚・骨格筋・関節・腹膜・胸膜などが物理的に刺激されて起こる痛みのことである。部位が不明瞭な持続する鋭い痛みが特徴である。持続的な鋭い痛みで圧痛点と患部が一致する。筋性防御などの腹膜刺激症状を伴うこともあり、身体を動かすことにより痛みが増強されることがある。

1.〇 正しい。虚血により内臓の痛みを引き起こす。例えば、虚血性腸炎は、左の側腹部~下腹部に強い痛み(内臓痛)が起こり、下痢・血便を伴う症状を伴う。他にも、虚血による内臓痛は、心筋梗塞や虚血性大腸炎などがあげられる。
2~3.× 氷水の摂取/48℃の白湯の摂取による痛みは、内臓痛に該当しない。なぜなら、内臓痛とは、内臓が何らかのダメージを受けることによって生じる痛みのことであるため。
4.〇 正しい。平滑筋の過度の収縮により内臓の痛みを引き起こす。内臓痛の特徴として、平滑筋の過伸展・拡張・収縮などによって生じる。体性痛にくらべて、痛みの部位や位置が不明瞭でハッキリせず、しばしば悪心・嘔吐、冷汗、血圧低下などの自律神経症状を伴う。
5.× 内視鏡によるポリープの切除時に、痛みは起こらない。なぜなら、胃や腸の粘膜には痛覚がないため。仮に、痛みが起こったとしても、体性痛に該当する。体性痛とは、皮膚・骨格筋・関節・腹膜・胸膜などが物理的に刺激されて起こる痛みのことである。

虚血性大腸炎とは?

虚血性大腸炎は、腸粘膜の局所的な虚血性変化を示すものである。原因として、腸間膜動脈の末梢枝または腸間膜静脈の閉塞・狭窄によることが多い。好発部位として、上腸間膜動脈と下腸間膜動脈の灌流領域の境目(下行結腸の前後5cm含めたあたりまで)である。症状として、突然の腹痛、しぶり腹様の腹痛、下痢、下血がみられる。予後良好である。安静・絶飲食ののち2週間ほどで自然寛解する。

 

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