第109回(R8) 助産師国家試験 解説【午前11~15】

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11 分娩第1期の産婦の言動で注意が必要なのはどれか。

1.感情の表出がない。
2.分娩の進行状態について質問している。
3.パートナーに休憩してくるよう勧めている。
4.産痛緩和について助産師に要望を伝えている。

解答

解説

分娩期

【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。

・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。

・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。

・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。

1.〇 正しい。感情の表出がない場合は注意が必要である。なぜなら、感情の表出がないことは、分娩への適応困難(強い不安や恐怖、抑うつ、孤立感など)を示している可能性があるため。特に、過去の出産トラウマ、性被害歴、家庭内暴力、精神疾患、支援者不在などが背景にある場合、感情表出が乏しくなることがある。

2.× 分娩の進行状態について質問している場合は、自然な反応である。なぜなら、産婦が自分の状況を理解し、見通しを持とうとしている行動であるため。一般的に、見通しが持てると、不安が軽減し、呼吸法やリラックス法に取り組みやすくなる。

3.× パートナーに休憩してくるよう勧めている場合は、注意が必要な言動とはいえない。なぜなら、産婦がパートナーの疲労にも目を向け気が使えている発言と言えるため。つまり、支援者とともに分娩を乗り越えようとしている行動も受け取れる。

4.× 産痛緩和について助産師に要望を伝えている場合は、適切な自己表現である。なぜなら、産婦が自分の痛みや希望を表現し、主体的に分娩に参加している行動であるため。助産師は、産婦の希望を聞きながら、マッサージ、温罨法、体位変換、呼吸法、リラクゼーション、必要時の医療的鎮痛などを検討する。

 

 

 

 

 

12 胎盤剝離徴候と名称の組合せで正しいのはどれか。

1.子宮底が徐々に上昇し、多くは右に傾く。:Küstner〈キュストナー〉徴候
2.子宮底を軽打すると、衝動が臍帯に伝わる。:Strassmann〈ストラスマン〉徴候
3.恥骨結合上の腹壁を圧したとき、臍帯が下降する。:Ahlfeld〈アールフェルド〉徴候
4.陰裂から下垂している臍帯を挟んだ鉗子が下降する。:Schröder〈シュレーダー〉徴候

解答

解説
1.× 子宮底が徐々に上昇し、多くは右に傾くことは、「Küstner〈キュストナー〉徴候」ではなくSchröder〈シュレーダー〉徴候である。
・シュレーダー徴候(Schroder徴候):児娩出後ほぼ臍高にあった子宮底が胎盤剥離するとやや上昇し右に傾く。

2.〇 正しい。子宮底を軽打すると、衝動が臍帯に伝わる。:Strassmann〈ストラスマン〉徴候
・シュトラスマン徴候(Strassmann徴候):一方の手で臍帯を持ち、他方の手で子宮底を叩いても手に響かない。癒着しているときは手に響く。

3.× 恥骨結合上の腹壁を圧したとき、臍帯が下降することは、「Ahlfeld〈アールフェルド〉徴候」ではなくKüstner〈キュストナー〉徴候である。
・キュストナー徴候とは、胎児娩出後に恥骨結合上から子宮下方を骨盤内に圧すると臍帯が圧出される状態である。

4.× 陰裂から下垂している臍帯を挟んだ鉗子が下降することは、「Schröder〈シュレーダー〉徴候」ではなくAhlfeld〈アールフェルド〉徴候である。
・アールフェルド徴候とは、胎児娩出直後に臍帯の腟入口に位置する部に止血鉗子で目じるしをつけておくと、胎盤が剥離下降してくるとこの目じるしが10〜15cm外方へ下垂する現象である。

 

 

 

 

 

13 Aさん(32歳、初産婦)は40週4日で3,200gの男児を正常分娩で出産し、母児同室で過ごしている。産後3日の夜、助産師に「授乳するたびに右の乳首が痛くて我慢できません」と話した。観察すると両乳房とも緊満しており、右乳頭はやや短めで10時~12時の方向に損傷を認めた。痂皮が形成されており、出血はない。児の口腔内に異常は見られず、本日の体重は3,050gである。
 助産師がAさんに行うケアで適切なのはどれか。

1.縦抱きでの授乳姿勢を勧める。
2.乳頭の乾燥を図り、日光に当てる。
3.授乳前に乳輪をほぐすよう搾乳する。
4.夜間は人工乳を補足してAさんを休ませる。

解答

解説

ポイント

・Aさん(32歳、初産婦)
・40週4日:3,200gの男児を正常分娩で出産し、母児同室で過ごしている。
産後3日の夜:助産師に「授乳するたびに右の乳首が痛くて我慢できません」と話した。
・観察すると両乳房とも緊満しており、右乳頭はやや短めで10時~12時の方向に損傷を認めた。
痂皮が形成されており、出血はない。
・児の口腔内に異常は見られず、本日の体重は3,050gである。
→ほかの選択肢が消去できる理由をあげられるようにしよう。

1.× 縦抱きでの授乳姿勢を勧めるより優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんの主な問題は乳房緊満により乳輪が硬くなり、児が深く吸着できていないことであるため。
ちなみに、縦抱きで行うよう指導するのは、主に乳房の形:Ⅰ型である。
【乳房の形と抱きやすい姿勢】
Ⅰ型(a<b):縦抱き
Ⅱa型(a≒b):横抱き
Ⅱb型(a>b):フットボール抱き(脇抱き)
Ⅲ型(a>>b):添え乳(or脇抱き)

2.× 乳頭の乾燥を図り、日光に当てる「必要はない」。なぜなら、乳頭損傷部を乾燥させると皮膚の柔軟性が低下し、亀裂や疼痛が悪化する可能性があるため。

3.〇 正しい。授乳前に乳輪をほぐすよう搾乳する。なぜなら、本症例は乳房緊満で乳輪が硬くなっているため。授乳前に少量搾乳して乳輪を軟らかくすると、児が深く吸着しやすくなる。
・乳房ケアとは、赤ちゃんが飲みやすいおっぱいにするため、乳輪と乳頭の伸びが良く、やわらかいおっぱいを目指し、乳頭をやわらかくするような手入れを行うことである。【方 法】①乳輪を親指、人さし指、中指で押すようにつまむ。②3本指で痛くない程度の強さで圧迫する。角度を変えて何度か圧迫する。③痛くなければ3本指でつかんだまま少し前方に引き出し、3本の指のはらでもみほぐす。

4.× 夜間は人工乳を補足してAさんを休ませるより優先されるものが他にある。なぜなら、児(産後3日)の体重減少は、出生時3,200gから3,050gで約4.7%であり正常範囲内であるため。人工乳とは、何らかの理由で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。

【新生児の生理的体重の変化】
正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は、出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷ 出生時の体重 × 100」で算出される。

 

 

 

 

 

14 新生児の水分・体液成分で正しいのはどれか。

1.成人と比べて高張尿である。
2.尿量と比べて摂取水分量が多い。
3.成人と比べて細胞外水分量が多い。
4.出生時の総水分量は体重の50%である。

解答

解説
1.× 成人と比べて、「高張尿」ではなく低張尿である。なぜなら、新生児の腎臓は未熟で、尿濃縮力が成人より低いため。
・高張尿とは、体液より濃い尿、つまり水分を節約して濃縮された尿のことである。成人では脱水時に腎臓が尿を濃縮して水分喪失を抑えるが、新生児は腎機能が未熟でこの調節が十分ではない。そのため、新生児は水分摂取が少ない、発熱する、哺乳不良がある、下痢や嘔吐があると、成人より脱水になりやすい。

2.× 尿量と比べて摂取水分量が「多い」ではなく少ない。なぜなら、新生児では、不感蒸泄や細胞外液の変動が大きいため。これは、新生児は皮膚が薄く、体表面積が体重に比べて大きいため。したがって、皮膚や呼吸から失われる水分、つまり不感蒸泄が多い。
・不感蒸泄とは、発汗のように自覚されない水分の蒸散(呼吸など)のことである。

3.〇 正しい。成人と比べて細胞外水分量が多い。なぜなら、新生児は身体組織が未成熟であり、体重に占める総水分量と細胞外水分の割合が高いためである。出生後は、尿や不感蒸泄などによって細胞外水分が減少する。また、胎便の排泄や哺乳量がまだ少ないことも加わり、生理的体重減少がみられる。
・細胞外水分とは、細胞の外側に存在する水分のことである。主に血液中の血漿と、細胞の周囲を満たす組織間液からなる。酸素や栄養素を細胞へ運び、老廃物を回収する役割を持つ。

4.× 出生時の総水分量は体重の「50%」ではなく約70〜80%である。なぜなら、出生時は、身体組織が未成熟で、脂肪や筋肉などの固形成分が成人より少ないため。したがって、新生児では体内水分量が多く、成長とともに割合は低下する。ちなみに、成人では総水分量はおよそ体重の60%である。

 

 

 

 

 

15 正常新生児に対する初回のビタミンK2シロップの与薬方法について正しいのはどれか。

1.与薬前に母親が母乳育児を希望しているか確認する。
2.与薬前に新生児の初回排便を確認する。
3.与薬するときは2倍に希釈する。
4.与薬後は新生児の嘔吐の有無を確認する。

解答

解説

ビタミンK2シロップの予防投与についてのご案内

ケイツーシロップは、 赤ちゃんに起こりやすい出血を防ぐためのお薬です。 ケイツーシロップ1mL あたり、 ビタミンK2を2mg含んでいます。日本の多くの産科施設では、 赤ちゃんに対してケイツーシロップを合計 3 回 (出生2~3日後:哺乳確立後、 生後1週、 生後1ヵ月時)、 各1回1mL を投与して、 ビタミンKの欠乏を防いでいます。 この方法でほとんどの赤ちゃんのビタミンK欠乏を予防できますが、 中には 3 回投与してもビタミンK欠乏性出血症を発症する赤ちゃんがいるので、 生後3か月まで毎週 1 回ケイツーシロップを投与する方法も勧められています。当院でもビタミンK欠乏をより確実に予防するために3か月法を採用しています。

新生児ビタミンK欠乏性出血症とは、生まれてから7日までに起こります。 特に生後2~4日目に起こりやすく、 消化管での出血が多いため、 血を吐いたり、便に血が混じったりします。

(※一部引用:「ビタミンK2シロップの予防投与についてのご案内」成城木下病院様HPより)

1.× 与薬前に母親が母乳育児を希望しているか確認する「必要はない」。なぜなら、ビタミンK₂シロップは母乳育児希望者だけに投与する薬ではなく、新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防を目的に新生児へ投与する薬であるため。つまり、母親が完全母乳を希望していても、混合栄養を希望していても、出生後のビタミンK₂シロップの予防投与は必要である。

2.× 与薬前に新生児の初回排便を確認する「必要はない」。なぜなら、初回ビタミンK₂シロップ投与で確認すべきなのは、「初回排便」ではなく哺乳が確立していることであるため。ビタミンK₂シロップは経口投与する薬である。そのため、児が哺乳できているか、嚥下できるか、嘔吐しにくい状態かを確認することが重要である。

3.× 与薬するときは、「2倍」ではなく10倍に希釈する。なぜなら、ビタミンK₂シロップは高浸透圧であるため。添付文書では、出生後早期の新生児への投与について、白湯で10倍程度に薄めるか、または哺乳確立後に投与するとされている。

4.〇 正しい。与薬後は新生児の嘔吐の有無を確認する。なぜなら、ビタミンK₂シロップは経口投与であり、投与後に嘔吐すると、ビタミンK₂シロップが十分に吸収されず、予防効果が不確実になるため。

 

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