第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午後111~115】

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次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aさん(22歳、女性、会社員)は、昼食後、自室に大量のお菓子とお酒を持ち込み、食べて飲んでいたところを母親に注意をされたことに腹を立て、母親の目の前でリストカットを始めた。慌てた母親は、父親とともにAさんを連れて救急外来に来院した。医師が傷の処置をしようとすると「死んでやる。触るな」と大声で騒ぎ暴れ始めたため、精神科病棟に緊急入院となった。

111 入院後3週、Aさんの精神状態は落ち着き、職場に早く戻りたいと意欲があったため、退院に向けての準備をすることになった。自傷行為は、入院前の1回のみだった。Aさんは「また過食をしないか心配だ」と看護師に訴えた。そのため主治医はAさんと話し合い認知行動療法が開始となった。
 Aさんの退院に向けて、医師、看護師のチームと連携するメンバーで最も適切なのはどれか。

1.栄養士
2.薬剤師
3.臨床心理士
4.ゲートキーパー
5.精神保健福祉相談員

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(22歳、女性、会社員、神経性過食症
・入院後3週:精神状態は落ち着き、職場に早く戻りたいと意欲があり。
・退院に向けての準備をすることになった。
・自傷行為:入院前の1回のみ。
・Aさん「また過食をしないか心配だ」と。
認知行動療法が開始。
→認知行動療法とは、ベックによって精神科臨床に適応された治療法である。例えば、うつ病患者の否定的思考を認知の歪みと考え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図る。認知行動療法の中に、系統的脱感作法がある。系統的脱感作法とは、患者に不安を引き起こす刺激を順に挙げてもらい(不安階層表の作成)、最小限の不安をまず想像してもらう。不安が生じなかったら徐々に階層を上げていき、最終的に源泉となる不安が消失する(脱感作)ことを目指す手法である。

1~2.× 栄養士/薬剤師より優先度が高いものが他にある。なぜなら、Aさん「また過食をしないか心配だ」と栄養や薬物に関した発言は聞かれないため。ちなみに、栄養士とは、都道府県知事の免許を受けた資格で、主に健康な方を対象にして栄養指導や給食の運営を行う。また、薬剤師とは、厚生労働大臣の免許を受けた国家資格で、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどる職種である。
3.〇 正しい。臨床心理士との連携が最も適切である。臨床心理士とは、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間のこころの問題にアプローチする心の専門家である。認知行動療法は、医師やカウンセラー、臨床心理士のもとで受けることができる。
4.× ゲートキーパーより優先度が高いものが他にある。ゲートキーパーとは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことをいう。つまり、「命の門番」とも位置付けられる人のことである。 自殺対策では、悩んでいる人に寄り添い、関わりを通して「孤立・孤独」を防ぎ、支援することが重要である。
5.× 精神保健福祉相談員より優先度が高いものが他にある。精神保健福祉相談員とは、主に保健所や精神保健センターに勤務し、精神障害者やその家族が安定した生活を送るために、必要な住居や就職先についての相談業務などに従事する。Aさんの現時点の課題は、退院後の家庭や職場環境への不安などではない。

摂食障害とは?

摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用、抑うつの症状がみられる。特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。

①神経性無食欲症は、思春期~青年期の若い女性に発症しやすい。神経性無食欲症の主な特徴は以下の通りである。①病的な痩せ願望、②ボディーイメージのゆがみ、③極端な食べ物制限と下剤などの乱用、④月経の停止、うぶげの増加、⑤乳房委縮はみられない、⑥性格的には頑固で競争心が強い、⑦母親との心的葛藤をみることがある。

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(43歳、男性、会社員)は、妻(38歳)と2人暮らし。1年前から、仕事上の失敗を上司から叱責されることが続いていた。半年前からAさんの飲酒量は次第に増えていき、最近では酒気を帯びたままの出勤や、飲酒を原因とした遅刻や欠勤をすることが増えていた。ある夜、Aさんは居酒屋で多量に飲酒し、その場で意識が消失したため、救急車で救命救急センターへ搬送され、入院となった。器質的検査および生理的検査では異常が認められなかったが、入院翌日に飲酒の問題について同じ病院内の精神科を受診した結果、Aさんはアルコール依存症と診断された。

112 入院後3日までにAさんに出現する可能性が高い症状はどれか。2つ選べ。

1.観念奔逸
2.緘黙
3.強迫症状
4.幻覚
5.振戦

解答4・5

解説

本症例のポイント

・Aさん(43歳、男性、会社員、アルコール依存症
・妻(38歳)と2人暮らし。
・1年前:仕事上の失敗を上司から叱責されることが続く。
・半年前:飲酒が原因で、遅刻や欠勤をすることが増えていた。
・ある夜:多量に飲酒し、意識が消失し、入院。
→アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。最終飲酒後72時間頃までに症状が最も激しくなるのは、アルコール離脱症状である。

【合併しやすい病状】
①離脱症状
②アルコール幻覚症
③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)
④健忘症候群(Korsakoff症候群)
⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など

1.× 観念奔逸とは、考えが次から次へとほとばしり出ることで、繰状態の患者によくみられる症状である。
2.× 緘黙とは、口を閉じて、しゃべらないこと。おしだまること。だんまり。無言。また、発声器官には問題がなく言語理解も出来ているのに、離せなくなってしまう精神疾患のことである。5歳前後で発症することが多いが、話す機会の増える学校に入学するまで症状が顕在化しないことが多い。まれに成人でも発症し、特定の場面に限られるとき選択性緘黙という。(※読み:かんもく)
3.× 強迫症状とは、不合理性の自覚はありながらもある考えが頭から消えず、それを打ち消すために同じ行為を繰り返し行ってしまうことである。例えば、何度も手を洗ったりすること。治療として、①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、②森田療法、③認知行動療法などである。作業療法では、他のことに目を向けさせることによりこだわりを軽減することを目的とする。強迫性障害などの不安障害の患者にみられる症状である。
4.〇 正しい。幻覚は、アルコール離脱症状でみられる。断酒2~3日後には、振戦せん妄が生じる。
せん妄(様々な程度の意識混濁に見当識障害、不安感、恐怖感などを伴う)の他には、幻視(特に小動物や小人の幻視)が主にみられる。
5.〇 正しい。振戦は、アルコール離脱症状でみられる。断酒後数時間以内に、発汗、いらつき、不安、手指振戦、不眠などの症状が出現する。初めは手指の振戦が出現するが、次第に全身性の振戦が出現する。

アルコール断酒後に起こる離脱せん妄

①断酒後数時間以内:発汗、いらつき、不安、手指振戦、不眠などの症状が出現する。
②断酒2~3日後には、振戦せん妄が生じる。
③せん妄(様々な程度の意識混濁に見当識障害、不安感、恐怖感などを伴う)と幻視(特に小動物や小人の幻視)が主にみられる。
④一週間以内に症状が治まることが多いが、回復しないままWernicke脳症(①意識障害、②眼症状(動眼神経麻痺)、③失調性歩行)やKorsakoff症候群(①最近の記憶の障害、②見当識障害、③作話)に移行する場合もある。

 

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(43歳、男性、会社員)は、妻(38歳)と2人暮らし。1年前から、仕事上の失敗を上司から叱責されることが続いていた。半年前からAさんの飲酒量は次第に増えていき、最近では酒気を帯びたままの出勤や、飲酒を原因とした遅刻や欠勤をすることが増えていた。ある夜、Aさんは居酒屋で多量に飲酒し、その場で意識が消失したため、救急車で救命救急センターへ搬送され、入院となった。器質的検査および生理的検査では異常が認められなかったが、入院翌日に飲酒の問題について同じ病院内の精神科を受診した結果、Aさんはアルコール依存症と診断された。

113 入院後3日。面会に来た妻は、飲酒によって多くのトラブルを抱えているAさんへの対応に困っており、Aさんの飲酒行動に対する関わり方について、今後どのようにすればよいか看護師に相談した。
 Aさんの妻に対する助言で適切なのはどれか。

1.「飲酒による仕事上の失敗についてAさんと議論しましょう」
2.「飲酒したいというAさんの気持ちは聞かないようにしましょう」
3.「Aさんが飲酒したことがわかっても注意はしないようにしましょう」
4.「Aさんの飲酒によるトラブルを代わりに解決しないようにしましょう」

解答4

解説

本症例のポイント

・入院後3日。
・妻:飲酒によって多くのトラブルを抱えているAさんへの対応に困っている。
・「Aさんの飲酒行動に対する関わり方について、今後どのようにすればよいか」助言する。
→アルコール依存症は、イネイブラー(enabler)である家族と患者との共依存が問題となる疾患である。アルコール依存症者が飲み続けることを可能にする(周囲の人の)行為を「イネイブリング(enabling)」、それをしてしまう人(後援者)のことを「イネイブラー(enabler)」という。責任の肩代わりをすると本人が感じるべき後悔や痛みを軽減してしまうため、本人は嫌な思いをせずに済む。その結果、「喉元過ぎれば」で、飲み続けることを可能にしてしまう悪循環になる。家族、友人、同僚、上司など、本人のことを大切に思っている人ほど「イネイブラー(enabler)」になりやすい。つまり、イネーブリングとは、薬物やアルコール、ギャンブルなどの嗜癖行動をやめて欲しいと思いながら、その行動を後押ししてしまう態度のことである。

1.× 「飲酒による仕事上の失敗についてAさんと議論しましょう」と伝える必要はない。なぜなら、Aさんは「Aさんの飲酒行動に対する関わり方」について聞いているため。飲酒による仕事上の失敗は、患者自身の問題である。ちなみに、依存症に対し、患者を責めることで、より飲酒(依存性増大)を招くおそれもある。
2.× 「飲酒したいというAさんの気持ちは聞かないようにしましょう」と伝える必要はない。なぜなら、依存症は、周りのサポートが重要であるため。周りの人は、①叱責や処罰は逆効果になったり、②一人で抱え込まないよう支援していく必要がある。つらい気持ちをわかってもらう場がなくなるため、ストレスから、再飲酒につながるおそれがある。
3.× 「Aさんが飲酒したことがわかっても注意はしないようにしましょう」と伝える優先度は低い。なぜなら、飲酒によって多くのトラブルを抱えているAさんへの対応に困っているため。「多くのトラブル」に対しての対応方法を妻は聞きたがっている。ちなみに、依存症は、注意や叱責、脅しでは、依存症者の飲酒は止まらない。飲酒したことに気づいても家族は毅然(きぜん:自分の信念を貫くしっかりした態度で臨む様子)とした態度で接し、干渉や批判、攻撃などを行わないよう指導する。
4.〇 正しい。「Aさんの飲酒によるトラブルを代わりに解決しないようにしましょう」と伝える。なぜなら、患者の飲酒によるトラブルを解決することは、患者が飲酒を継続できるように意図せず支えること(イネーブリング)になってしまうため。アルコール依存症は、イネイブラー(enabler)である家族と患者との共依存が問題となる疾患である。アルコール依存症者が飲み続けることを可能にする(周囲の人の)行為を「イネイブリング(enabling)」、それをしてしまう人(後援者)のことを「イネイブラー(enabler)」という。責任の肩代わりをすると本人が感じるべき後悔や痛みを軽減してしまうため、本人は嫌な思いをせずに済む。その結果、「喉元過ぎれば」で、飲み続けることを可能にしてしまう悪循環になる。家族、友人、同僚、上司など、本人のことを大切に思っている人ほど「イネイブラー(enabler)」になりやすい。つまり、イネーブリングとは、薬物やアルコール、ギャンブルなどの嗜癖行動をやめて欲しいと思いながら、その行動を後押ししてしまう態度のことである。

 

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(43歳、男性、会社員)は、妻(38歳)と2人暮らし。1年前から、仕事上の失敗を上司から叱責されることが続いていた。半年前からAさんの飲酒量は次第に増えていき、最近では酒気を帯びたままの出勤や、飲酒を原因とした遅刻や欠勤をすることが増えていた。ある夜、Aさんは居酒屋で多量に飲酒し、その場で意識が消失したため、救急車で救命救急センターへ搬送され、入院となった。器質的検査および生理的検査では異常が認められなかったが、入院翌日に飲酒の問題について同じ病院内の精神科を受診した結果、Aさんはアルコール依存症と診断された。

114 入院中にAさんは、退院後に再び飲酒してしまうのではないかという不安を看護師に訴えた。
 Aさんの断酒を支援するための看護師の提案で適切なのはどれか。

1.共同生活援助(グループホーム)への入居
2.セルフヘルプグループへの参加
3.行動援護の利用
4.生活訓練の利用

解答2

解説

本症例のポイント

入院中にAさん「退院後に再び飲酒してしまうのではないか」という不安。
→アルコール依存症の治療として、自助グループがあげられる。アルコール依存症の集団精神療法では、自己の飲酒問題を認め、断酒の継続を行うことが治療上極めて有効である。自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていく。断酒継続のための自助グループ(当事者グループ)としてよく知られているものに、断酒会とAA(Alcoholics Anonymous:アルコール依存症者匿名の会)がある。断酒会は日本独自のもので、参加者は実名を名乗り、家族の参加も可能である。AAはアメリカで始まり、世界各地にある。匿名で参加し、家族は原則として同席しない。

1.× 共同生活援助(グループホーム)への入居の優先度が低い。なぜなら、Aさんの日常生活は自立していると考えられるため。共同生活援助<グループホーム>とは、『障害者総合支援法』の訓練等給付のひとつであり、ひとりで生活できない障害者が共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を受けるものである。主に夜間や休日に精神障害者が共同生活を営む住居で、食事の世話・服薬指導など、相談や日常生活の援助を行う。
2.〇 正しい。セルフヘルプグループへの参加が、看護師の提案で適切である。セルフヘルプグループとは、同じ悩みや問題をもつ者同士が集まり語り合い、問題解決を目指す団体である。自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)ともいう。例えば、青年期のひきこもり状態にある者の支援として、同じような健康課題への対処能力を高めるために活動するグループをつくることが有効である。
3.× 行動援護の利用は適応外である。なぜなら、Aさんは、知的障害や精神障害により行動上著しい困難を生じるものとはいいがたいため。行動援護とは、知的障害または精神障害により行動上かなりの介助を要し、常時介護が必要なものに対して、外出時に同行し援護するサービスである。例えば、外出時の食事や排泄などである。対象は、障害支援区分が区分3以上である。
4.× 生活訓練の利用の優先度は低い。なぜなら、Aさんは自立した生活が送れると考えられるため。生活訓練(自立訓練)とは、知的障害者・精神障害者に対して、自立した日常生活ができるように訓練や助言をするものである。障害者総合支援法5条14項で就労継続支援は「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう」と定められている。

セルフヘルプグループとは?

自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていくものである。同じ悩みをかかえる人々がコミュニティをつくって交流するもので、例えば、青年期のひきこもり状態にある者の支援として、同じような健康課題への対処能力を高めるために活動するグループをつくることが有効である。

 

 

 

 

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 Aさん(75歳、男性)は、妻(70歳)と2人暮らし。2型糖尿病の治療中で、2年前から1日2回朝・夕食前に混合型インスリン注射が開始となった。その後、糖尿病性網膜症による視力障害が進んだため、現在は妻と一緒に単位数や針の確認をし、インスリンの自己注射を実施している。

115 外来受診時にAさんの妻から外来看護師に「2人で協力してインスリン注射することには慣れてきました。たまには夜に夫とゆっくり和食を食べに行きたいのですが、外出時の注射で気を付けることを教えてほしい」と相談があった。
 Aさんと妻への外来看護師の指導内容で適切なのはどれか。

1.「お店に着いたらすぐに注射を打ちましょう」
2.「インスリンを常温で持ち運ぶことはできません」
3.「注射ができる場所をお店の人に確認しましょう」
4.「普段よりもインスリン量を増やす必要があります」

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(75歳、男性、2型糖尿病
・2人暮らし:妻(70歳)
・糖尿病性網膜症による視力障害あり。
・現在:妻と確認しながら、インスリンの自己注射中
・妻から「2人で協力してインスリン注射することには慣れてきました。たまには夜に夫とゆっくり和食を食べに行きたいのですが、外出時の注射で気を付けることを教えてほしい」と相談があった。
→インスリン注射にはそれぞれ種類があり、①手順、②タイミング、③部位など覚えておく必要がある。その中でも回数・タイミングは、使用する製剤や人によって異なる。医師の指示に従って、決められたタイミング・接種回数を守るよう指導する。

1.× 注射を打つタイミングは、「お店に着いたらすぐに」ではなく、使用する製剤や人によって異なる。速効型インスリンの場合は、食事に合わせて打たなければならない。また、中間型インスリンの場合は、一日のうち決まった時間に打たなければならない。また、混合型インスリン製剤(超速効型インスリン、速効型インスリンの混合)の場合は、食事に合わせて打たなければならない。どんなお店か?待ち時間はあるか?コースメニューなどで予約しているか?などによっても、適切なタイミングで注射を打つ必要がある。
2.× インスリンは、常温で持ち運ぶことができる。ただし、変性する可能性があるため、30℃以上の高温や凍結は避けるように注意する。夏に自動車を使用する場合は、保冷剤パック、保冷剤、タオルなどで工夫して持ち運ぶ必要がある。
3.〇 正しい。「注射ができる場所をお店の人に確認しましょう」と、Aさんと妻へ指導する。なぜなら、注射部位は、お腹、太もも、おしり、腕などに皮下注射を行わなければならないため。肌を露出するため、なるべく清潔でプライバシーを確保できるところで行う必要がある。
4.× 普段よりもインスリン量を増やす必要はない。なぜなら、薬剤が効きすぎて副作用として、低血糖症状をきたす恐れがあるため。また、看護師が独断で薬の量を変更できる権限はない。心配であれば、前もって主治医や薬剤師、栄養士にインスリン量を相談することも大切である。

低血糖症状

血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

 

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