第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午前41~45】

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41 急性期患者の生体反応で正しいのはどれか。

1.異化が亢進する。
2.症状の変化は緩やかである。
3.サイトカイン分泌が低下する。
4.副腎皮質ホルモンの分泌が低下する。

解答1

解説

急性期とは?

急性期とは、症状が急に現れる時期、病気になり始めの時期である。急性期は、全身の生体反応と機能低下が起こり、合併症が発現するおそれがある。このため、回復過程における経過を予測して系統的な観察を行い、正常範囲に経過しているのか、それとも逸脱して悪化していくおそれがあるのかを判断し、異常を察知すれば早期に対処する必要がある。

1.〇 正しい。異化が亢進する(異化亢進)。異化とは、外界から取り込んだ物質(糖質や脂質など)もしくは、生体内にある複雑な物質を分解し、簡単な物質(水や二酸化炭素)に変えるとともにエネルギー(ATP)を取り出す過程を指す。つまり、体内のタンパク質、脂質、グリコーゲンなどを分解し、エネルギーを産生することとイメージすると良い。身体への侵襲により損傷した組織を修復するために異化が亢進する。
2.× 症状の変化は、「緩やか」ではなく急速である。なぜなら、急性期は全身の生体反応機能低下が起こり、合併症が発現するおそれがあるため。このため、回復過程における経過を予測して系統的な観察を行い、正常範囲に経過しているのか、それとも逸脱して悪化していくおそれがあるのかを判断し、異常を察知すれば早期に対処する必要がある。
3.× サイトカイン分泌は、「低下」ではなく亢進する。特に、炎症性サイトカインが亢進する。これは炎症反応を促進する働きを持つサイトカインのことである。サイトカインとは、細胞から分泌される低分子のタンパク質で生理活性物質の総称のことで、 生理活性蛋白質とも呼ばれ、細胞間相互作用に関与し周囲の細胞に影響を与える。
4.× 副腎皮質ホルモンの分泌は、「低下」ではなく亢進する。なぜなら、生体へのストレス負荷によるため。副腎皮質ホルモンとは、副腎皮質より産生されるホルモンの総称で、①アルドステロン、②コルチゾール、③アンドロゲンがある。炎症の制御、炭水化物の代謝、タンパク質の異化、血液の電解質のレベル、免疫反応など広範囲の生理学系に関わっている。

 

 

 

 

 

42 砕石位による手術で起こりやすい合併症はどれか。

1.猿手
2.尖足
3.下垂手
4.腸骨部の褥瘡

解答2

解説

砕石位とは?

砕石位(読み:さいせきい)は、仰臥位で膝部を曲げ、下腿部を開脚し挙上した体位である。泌尿器科や産婦人科の診察などで用いられる体位である。手術時間中両側を支持台に乗せて固定しなければならないため、腓骨頭の浅層に走行する総腓骨神経が支脚台に長時間圧迫され、総腓骨神経麻痺に注意する必要がある。

1.× 猿手は、正中神経障害によって生じる。猿手とは、母指球が萎縮し、母指が内転位となり、母指とその他の手指との対立運動が不能となる状態である。
2.〇 正しい。尖足が最も砕石位による手術で起こりやすい。なぜなら、手術時間中両側を支持台に乗せて固定しなければならないため、腓骨頭の浅層に走行する総腓骨神経が支脚台に長時間圧迫され、総腓骨神経麻痺に注意する必要がある。総腓骨神経麻痺は、下垂足(尖足)となり、鶏歩がみられる。
3.× 下垂手は、橈骨神経障害によって生じる。下垂手とは、手関節・手指の伸筋群と、長母指外転筋・短母指伸筋の麻痺により、手関節背屈、示指から小指のMP関節伸展、母指伸展・外転が困難となる。
4.× 腸骨部の褥瘡は、側臥位で生じやすい合併症である。栄養状態を反映する血清アルブミン値が低下することで膠質浸透圧が下がり、浮腫が生じることで、褥瘡が起こりやすくなる。

褥瘡の予防

①一般に2時間ごとに体位変換を行うことが基本とされる。
②30°側臥位では体圧を分散させ身体を支えることができる。
③ベッドのキャッチアップは30°まで。
④予防にマッサージは効果的。ただし、骨突出部・突起部や発赤があるところには(摩擦を加えてしまうため)行わない。
⑤円座は接触部分が逆に圧迫されてしまい褥瘡の誘因となる。

 

 

 

 

43 ペースメーカー植込みの有無を事前に確認すべき検査はどれか。

1.超音波検査
2.エックス線撮影
3.骨シンチグラフィ
4.磁気共鳴画像(MRI)

解答4

解説

1.× 超音波検査とは、「高い周波数の音」を用いる検査で、肝臓や胆のう、膵臓、腎臓、膀胱、卵巣、子宮、前立腺などの腹部にある臓器や、甲状腺や乳腺などさまざまな臓器にできたがんで検査する。主な禁忌としては、血管の疾患(血栓性静脈炎など)、急性敗血症(感染の拡大や塞栓剥れの為)、放射線療法(少なくとも6ヶ月は禁忌)、腫瘍(成長促しや転移が生じる為)、心疾患(心臓を刺激する為、星状神経節や迷走神経部位は避ける)、妊婦、成長期の子供の骨端線への照射などである。
2.× エックス線撮影とは、「エックス線(放射線の一種)」を用いる単純撮影検査である。ペースメーカーへの影響はない。ただ、測定には支障をきたさないが、わずかな被爆の影響もあることから、エックス線検査を受ける際の注意点として、妊娠中または妊娠の可能性、アレルギーや危篤な甲状腺疾患がある人など造影剤の使用できないケース、心臓ペースメーカーなどを身に付けていること、薬を服用していることは医師にあらかじめ伝えておく。
3.× 骨シンチグラフィは、「放射性同位元素(RI:アイソトープ)」を用いる検査である。放射線を発する薬品を体内に投与し、専用カメラで検出する。描出された画像をシンチグラフィと呼ぶ。禁忌として、消化管穿孔があげられる。また、禁忌ではないが、体位変換の際に、極端に体調の悪い方や意思疎通のむずかしい方場合は控えることもある。さらに、心臓病・腎臓病・妊娠中または妊娠の可能性がある場合は医師にあらかじめ伝えておく。
4.〇 正しい。磁気共鳴画像(MRI)は、ペースメーカー植込みの有無を事前に確認すべき検査である。なぜなら、検査時は、強力な磁石が組み込まれた装置の中に入るため。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

MRI検査とは?

核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

【MRI検査の禁忌】
①体内の電子電機部品(ペースメーカ、移植蝸牛刺激装置(人工内耳)、植込み型除細動器、神経刺激器、植込み型プログラマブル注入ポンプ):MRI対応型もあるためしっかり確認する。
②素材の確認できない脳動脈クリップ:MRI対応型もあるためしっかり確認する。
③目や脳など特定の重要臓器に迷入した鉄片などの強磁性体の破片
④眼部のインプラントや材料で強磁性金属を使用しているもの
⑤磁場によって活性化するもの(磁力で装着する義眼、磁石部分が脱着不能な義歯など)
⑥目のメークアップ用品、カラーコンタクト
⑦入れ墨
⑧補聴器
⑨いくつかの管腔内デバイス
⑩ニトログリセリン真皮浸透絆創膏

 

 

 

 

 

44 肝動脈塞栓術(TAE)の適応となる疾患はどれか。

1.脂肪肝
2.急性A型肝炎
3.肝細胞癌(HCC)
4.アメーバ性肝膿瘍

解答3

解説

肝動脈塞栓術とは?

肝動脈塞栓術(TAE)とは、肝細胞癌を栄養している肝動脈内にカテーテルを挿入し、肝動脈内に抗癌剤と塞栓物質を投与して血流を遮断し、兵糧攻めにして癌を死滅させる方法である。2年生存率は75%、5年生存率は25~50%と報告されている。副作用・合併症の発症率は低いものの、カテーテルの操作や造影剤・塞栓材料・抗がん剤などの薬物による疼痛・発熱・吐き気、穿刺部の感染、腎機能低下に伴う二次的疾患の発症などのリスクがある。

1.× 脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に多くたまった状態である。原因としては、お酒の飲みすぎや肥満、メタボリックシンドロームなどである。初期は、ほとんど症状がないが、進行した場合は、①食欲不振、②体のだるさなどの症状がみられる。治療は、飲酒制限食事療法、運動療法、減量に加えて、脂質異常症や糖尿病に対する薬物療法などがある。
2.× 急性A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。
3.〇 正しい。肝細胞癌(HCC)は、肝動脈塞栓術(TAE)の適応となる疾患である。肝細胞癌とは、肝臓の細胞ががん化したものである。肝細胞がんの発生には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などによる、肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が影響している。肝臓は、肝動脈と門脈の二重血流支配を受けており、肝細胞癌は主に肝動脈からの血流支配を受けている。そのため、肝細胞癌を支配する肝動脈を塞栓物質で血流遮断することで治療する。
4.× アメーバ性肝膿瘍とは、腸管に感染したアメーバ原虫が腸壁より血行性に肝臓に移行することで形成される腫瘍のことである。 アメーバ性肝膿瘍の発生には、性差が影響することが知られており、女性での発生は男性に比べまれである。第一選択治療は、抗原虫薬(メトロニダゾールなど)の使用である。

 

 

 

 

45 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している患者で、後天性免疫不全症候(AIDS)の状態にあると判断できる疾患はどれか。

1.季節性インフルエンザ
2.ニューモシスチス肺炎
3.ノロウイルス性腸炎
4.単純性膀胱炎

解答2

解説

ヒト免疫不全ウイルス感染症とは?

ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。後天性免疫不全症候群(AIDS)の状態にあると判断できる疾患(エイズ指標疾患)は、23種類ある。AIDS指標疾患としてもっとも頻度が高いのは、ニューモシスチス肺炎(39.3%)、ついでサイトメガロウイルス感染症(13.4%)、カンジダ症(13.1%)、活動性結核(7.1%)、カポジ肉腫(4.5%)、非結核性抗酸菌症(3.8%)の順であった。

1.× 季節性インフルエンザは、エイズ指標疾患には含まれていない。ちなみに、インフルエンザとは、インフルエンザウイルスへの感染を原因に発症する。A型、B型、C型の3種類があり、このうち冬季に流行する「季節性インフルエンザ」はA型とB型によるものである。症状として、38度以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。飛沫感染・接触感染である。
2.〇 正しい。ニューモシスチス肺炎は、後天性免疫不全症候(AIDS)の状態にあると判断できる疾患である。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染したあと数年が経過し、CD4陽性T細胞が徐々に減少し免疫不全となった状態を後天性免疫不全症候(AIDS)という。ニューモシスチス肺炎などのエイズ診断のための指標疾患のうち、ひとつ以上を認めればエイズ発症と診断される。
3.× ノロウイルス性腸炎は、エイズ指標疾患には含まれていない。ノロウイルス性腸炎とは、もっとも一般的な胃腸炎の原因である。感染者の症状は、非血性下痢、嘔吐、胃痛(悪心・嘔吐、水様性下痢腹痛、発熱等の急性胃腸炎)が特徴である。発熱や頭痛も発生する可能性がある。症状は、通常ウイルス曝露後12〜48時間で発症し、回復は通常1〜3日以内である。合併症はまれだが、特に若人、年配者、他の健康上の問題を抱えている人では、脱水症状が起こることがある。原因として、①カキ等の二枚貝、②感染者の嘔吐物等への接触や飛沫による二次感染である。感染経路は、経口感染、接触感染、飛沫感染、空気(飛沫核)感染による。
4.× 単純性膀胱炎は、エイズ指標疾患には含まれていない。単純性膀胱炎とは、機能的・形態的に尿路に異常のない人の膀胱炎である。 原因として、女性では尿意を我慢したり、冷えや月経が原因で起きることがある。また、妊娠や便秘、性交渉などが誘因となって起こる。 症状として、頻尿や残尿感などである。

 

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