第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午後51~55】

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51 Aさん(59歳、女性)は裂孔原性網膜剝離と診断され、硝子体手術の際に硝子体腔中にガス注入を受けた。
 手術直後、病室での体位で適切なのはどれか。

1.坐位
2.腹臥位
3.仰臥位
4.側臥位

解答2

解説

(※図引用:「看護roo!様HP~看護師イラスト集~より」)

本症例のポイント

・Aさん(59歳、女性、裂孔原性網膜剝離)
・硝子体手術:硝子体腔中にガス注入を受けた。

→裂孔原性網膜剝離とは、様々な原因で生じた網膜の裂孔や円孔から液化した硝子体が網膜下へ流入することで、感覚網膜層と網膜色素上皮層との間が剥離した状態をいう。つまり、網膜の一部に裂孔と呼ばれる裂け目ができて、そこから網膜の裏側に水分が流れ込んで剥がれてしまった状態をいう。裂孔原性網膜剥離の手術には、強膜内陥術と硝子体手術がある。本問では、硝子体手術を行っている。

→硝子体手術とは、強膜に数か所小さな穴をあけて、その穴から眼の中に器具を挿入し、眼内の硝子体を除去、裂孔の周囲に網膜光凝固術を行い、硝子体の代わりに眼内にガスを入れ、網膜を復位させる。術後は数日うつ伏せ(腹臥位)になって過ごしてもらう必要がある。ガスは自然に吸収され房水に置き換わっていく。ガスは約2週間で消失する。白内障手術も同時に行うことが多い。網膜裂孔が大きい場合や、術後うつ伏せを行うことが出来ない人に対しては、シリコンオイルを眼内に入れることがある。シリコンオイルは自然には吸収されないため、約3~6か月後に抜去する手術が必要になる。

1.3~4.× 坐位/仰臥位/側臥位は、手術直後、病室での体位としては不適切である。
2.〇 正しい。腹臥位が病室での体位である。硝子体手術とは、強膜に数か所小さな穴をあけて、その穴から眼の中に器具を挿入し、眼内の硝子体を除去、裂孔の周囲に網膜光凝固術を行い、硝子体の代わりに眼内にガスを入れ、網膜を復位させる。術後は数日うつ伏せ(腹臥位)になって過ごしてもらう必要がある。

 

 

 

 

 

52 散瞳薬を用いて眼底検査を受ける成人患者への対応で適切なのはどれか。

1.検査中は室内を明るくする。
2.散瞳薬の点眼は検査直前に行う。
3.検査前に緑内障の有無を確認する。
4.検査後1時間で自動車の運転が可能になると説明する。

解答3

解説

眼底検査とは?

眼底検査とは、瞳孔を特殊な目薬(散瞳薬)で開くことにより構造を詳しく観察することができる基本的な眼科検査のひとつである。眼底出血、網膜剥離、視神経炎、黄斑変性などの病気を見つけ治療につなげていく。

散瞳薬とは、瞳孔を散大させる働きを持つ薬のことである。眼底検査の前処置等で使用する。副作用として、視界が眩しくなる羞明や目のかすみが出現する。したがって、散瞳薬使用後は、自動車等の乗り物の運転は数時間できない。禁忌は、緑内障である(さらに眼圧が上昇するため)。散瞳薬の効果は、点眼後15~30分ほどで最も大きく、薬効は6時間ほど継続する。

1.× 検査中は室内を「明るく」ではなく暗くする。なぜなら、瞳孔を散大させ精査しやすくするため。
2.× 散瞳薬の点眼は、「検査直前」ではなく、約30分前に行う。なぜなら、散瞳薬の効果は、点眼後15~30分ほどで最も大きく、薬効は6時間ほど継続するため。
3.〇 正しい。検査前に緑内障の有無を確認する。なぜなら、緑内障は絶対的禁忌であるため。ちなみに、相対的禁忌は、①白内障、②反対側の失明もしくは角膜混濁、③流行性角結膜炎などである。
4.× 検査後1時間は、自動車の運転は行えない。なぜなら、散瞳薬の効果は6時間ほど継続するため。散瞳薬の使用により散瞳しているため焦点が合わず眩しさを感じたり、平衡感覚がおかしいと感じることもある。そのため、車などの運転は危険であるため避ける。また、眼の疲労が強くなることがあるため、読書で細かい文字を見たり、細かい作業は避けた方が良い。

 

 

 

 

53 関節リウマチで長期にわたりメトトレキサートを服用している患者の副作用(有害事象)で適切なのはどれか。

1.便秘
2.不整脈
3.聴力障害
4.間質性肺炎

解答4

解説

メトトレキサートとは?

メトトレキサートは、葉酸代謝拮抗機序をもち免疫抑制剤に分類される薬剤である。抗悪性腫瘍薬、抗リウマチ薬、妊娠中絶薬などとして使用される。副作用として、間質性肺炎、口内炎、肝機能障害、白血球減少、貧血、血小板減少などがみられる。

1.× 便秘の原因となる薬剤として、①抗コリン作用剤(パーキンソン病治療剤、抗うつ剤など)、②ガン疼痛に対する麻薬、③制酸剤、④カルシウム剤などがあるが、これらの服用を中止できない場合があるので、下剤を併用することになる。
2.× 不整脈は、抗不整脈薬による誘発や、三環系抗うつ薬、マクロライド系・ニューキノロン系の抗菌薬で副作用としてみられる。
3.× 聴力障害は、アミノグリコシド系抗菌薬や白金製剤(シスプラチン)などの副作用でみられる。
4.〇 正しい。間質性肺炎は、メトトレキサートの副作用でみられる。そもそも関節リウマチによって、間質に炎症が起こり、次第に繊維化し間質性肺炎となりやすい。それに拍車をかけるように、メトトレキサートが細胞の増殖を強く抑えすぎると、白血球や血小板が減少することがあり、細菌やウイルスとうまく戦えず、感染症(肺炎、尿路感染症など) にかかる。他の副作用として、口内炎、肝機能障害、白血球減少、貧血、血小板減少などがみられる。ちなみに、間質性肺炎とは、肺の間質組織の線維化が起こる疾患の総称で、慢性的かつ進行性の特徴を持つ。病因は、喫煙、職業上の曝露、感染、免疫不全などである。症状は咳、痰、呼吸困難などで、早期には特徴的な症状がないこともある。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

54 平成28年(2016年)の国民生活基礎調査で、要介護者等との続柄別にみた主な介護者の構成割合のうち、「同居の家族」が占める割合に最も近いのはどれか。

1.20%
2.40%
3.60%
4.80%

解答3

解説

(※厚生労働省HP様「平成28年(2016年)の国民生活基礎調査」)

 

 要介護者等との続柄別にみた主な介護者の構成割合のうち、「同居の家族」が占める割合が「58.7%」である。したがって、選択肢3.60%が、平成28年(2016年)の国民生活基礎調査で、要介護者等との続柄別にみた主な介護者の構成割合のうち、「同居の家族」が占める割合に最も近い。

 

 

 

 

55 老化によって減少または低下するのはどれか。

1.重心の動揺
2.糸球体の数
3.嗅覚の閾値
4.前立腺の重量

解答2

解説

1.× 重心の動揺は、老化によって増加する。つまり、「重心の動揺の増加」=「バランスが不安定」になるということである。人間のバランスは①視覚、②前庭覚、③体性感覚の情報を入力し、中枢で処理した後、運動神経を介して出力している。 その中でも視覚情報は重要な役割を果たしており、全感覚の約60%を占める。加齢に伴いそれら能力は衰退するため、重心の動揺の増加する。
2.〇 正しい。糸球体の数は、老化によって硬化が進み減少する。腎小体(糸球体+ボウマン嚢)と尿細管からなるネフロン(腎単位)は、左右の腎臓それぞれに約100万個ずつ存在する。加齢により、腎臓の働きが徐々に低下する。腎臓の糸球体は、一部が悪くなると他の糸球体が働きを補う。加齢とともに糸球体が硬化し、その結果、濾過機能が低下した糸球体が徐々に増える(正常な糸球体が減る)。
3.× 嗅覚の閾値は、老化によって増加する。閾値とは、感覚や反応や興奮を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの(物理)量である。したがって閾値が高いと(上がると)、 感覚を感じにくくなることをさす。ガス漏れなどの危険を察知できなかったり、風味を感じる能力が低下するために食事を楽しめず食事摂取不良につながったりすることもある。
4.× 前立腺の重量は、老化によって肥大増加する。これに伴い前立腺の内部を通る尿道が圧迫され、排尿障害(頻尿、尿失禁、残尿感、尿意切迫感など)を起こしたものが前立腺肥大症である。ちなみに、前立腺が肥大する原因はまだはっきりとは解明されていない。しかし、「男性ホルモンの働き」が関与しているとされ、中高年になって男性ホルモンを含む性ホルモン環境の変化が起こることにより、前立腺が肥大すると考えられている。

 

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