第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午前81~85】

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81 交感神経の作用はどれか。2つ選べ。

1.散瞳
2.精神性発汗
3.腸蠕動の促進
4.排尿筋の収縮
5.グリコーゲン合成の促進

解答1・2

解説

1.〇 正しい。散瞳は、交感神経の作用である。一方、副交感神経優位で縮瞳となる。
2.〇 正しい。精神性発汗は、交感神経の作用である。精神性発汗とは、ストレスや緊張、不安などの精神的な要因によって引き起こされる発汗のことである。精神性発汗は、通常の汗とは異なり、手足や顔など全身に広がる。また、発汗量も通常より多くなる。
3.× 腸蠕動の促進は、副交感神経の作用である。一方、交感神経優位で抑制となる。ちなみに、腸蠕動とは、腸管内にある蠕虫状の筋肉が収縮し、食物を移動させることによって引き起こされる。正常な消化のために不可欠な動きであるが、異常に頻繁に起こったり、遅れたりすることがあり、それが原因で腹痛や下痢などの症状を引き起こすことがある。
4.× 排尿筋の収縮は、副交感神経の作用である。一方、交感神経優位で弛緩となる。
5.× グリコーゲン合成の促進は、副交感神経の作用である。一方、交感神経優位で抑制となる。ちなみに、グリコーゲンは、交感神経の作用により肝臓で分解が促進される。

”二重支配一覧”

・血管(交:収縮、副:弛緩)
・涙腺(交:涙出ない、副:涙する)
・瞳孔(交:拡大、副:縮小)
・唾液腺(交:濃い、副:薄い)
・肺、気管(交:拡張、副:縮小)
・心臓(交:増加、副:減少)
・肝臓(交:分解、副:合成)
・膵臓(交:分泌減少、副:分泌増加)
・胃(交:消化抑制、副:消化促進)
・大腸~直腸(交:蠕動抑制、副:蠕動促進)
・膀胱(交:蓄尿、副:放尿)

 

 

 

 

 

82 気管で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.軟骨は筒状である。
2.胸骨角の高さで分岐する。
3.交感神経の働きで収縮する。
4.吸息相の気管内圧は陰圧である。
5.頸部では食道の背側に位置する。

解答2・4

解説

気管とは?

気管とは、呼吸器系の一部で、鼻腔から気管支に分岐し、肺につながる管状の構造物で、2cmほどの太さで常に開いた管で、軟骨と平滑筋からなっている。役割として、鼻腔から入った空気を肺に送り、排出する。気管軟骨は、気管~気管支の気道内腔を虚脱から守っている。

(※図引用:「illustAC様」)

1.× (気管)軟骨は、「筒状」ではなく、前方に向かって凸型のU字形(馬蹄形)である。気管の背側壁(後壁)は、軟骨を欠く部分で、平滑筋で構成されており、膜性壁と呼ばれる。
2.〇 正しい。気管は、胸骨角の高さで分岐する。胸骨角とは、胸の中央で鎖骨よりやや足側にある突起で、 胸骨柄と胸骨体の結合部であり、第2肋骨が付着する。気管分岐部の位置は、腹側が胸骨角、背側が第4~第5胸椎に一致する。
3.× 気管は、「交感神経の働き」ではなく、副交感神経の働きで収縮する。一方、交感神経の働きで拡張する。
4.〇 正しい。吸息相の気管内圧は、陰圧である。なぜなら、吸息相では、横隔膜が収縮することにより肺が拡張し、空気が気道内に流れ込む。したがって、気道内が外気に比べ陰圧になる。
5.× 頸部では、「食道の背側」ではなく、食道の腹側(最腹部)に位置する。

呼吸時における陰圧と陽圧

呼吸時における陰圧と陽圧とは、呼吸動作における気圧の差を指す。

陰圧とは、呼吸時に胸腔や肺内の気圧が低下することを指す。呼吸時には、胸腔や肺内の筋肉が収縮することで胸腔や肺が拡大し、空気を吸入するために陰圧が発生する。一方、陽圧は、呼吸時に胸腔や肺内の気圧が上昇することを指す。呼吸時には、胸腔や肺内の筋肉が収縮しなくなり、胸腔や肺が縮小し、空気を排出するために陽圧が発生する。陰圧と陽圧は、呼吸動作において相反する動きをするために必要な気圧の差であり、正常な呼吸にはこのバランスが必要である。異常な陰圧や陽圧は、呼吸障害や肺疾患などの症状を引き起こすことがある。

 

 

 

 

83 食道癌で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.女性に多い。
2.日本では腺癌が多い。
3.放射線感受性は低い。
4.飲酒は危険因子である。
5.胸部中部食道に好発する。

解答4・5

解説

食道癌とは?

食道癌は、食道に発生した上皮性腫瘍のことである。組織学的に約90%が扁平上皮癌である。好発部位は、胸部中部食道、胸部下部食道の順で、胸部中部食道が約50%を占める。アルコール、喫煙、熱い食事、Barret食道、アカラシアなどが誘因である。

1.× 「女性」ではなく、60歳以上の男性に多い。男女比は、約6:1である。
2.× 日本では、「腺癌」ではなく、扁平上皮癌が多い。扁平上皮癌とは、最上層が薄くて平らな細胞よりなる上皮からなる癌をいう。特徴として、分化度の異なる不均一からなる細胞から構成され、欠陥分布も均一性を欠く。
3.× 放射線感受性は、「低い」のではなく高い。放射線感受性とは、細胞や組織が放射線に対してどの程度に敏感であるかを示す物理的な指標である。放射線治療において、癌細胞が高い放射線感受性を持つほど、効果的に放射線によって殺すことができるため、放射線治療は高感受性の細胞に対して特に効果的である。一方で、正常細胞は低感受性を持ち、放射線治療による副作用を起こしにくい。
4.〇 正しい。飲酒は危険因子である。他にも、喫煙、熱い食事などの生活習慣があげられる。
5.〇 正しい。胸部中部食道に好発する。腹部を走行する食道は腹部食道と呼ばれ、胸部食道は気管分岐部(気管が左右に枝分かれする部分)までが上部胸部食道、気管分岐部から横隔膜までの食道の上半分が胸部中部食道、下半分が胸部下部食道という名称で呼ばれている。

 

 

 

 

 

84 急性膵炎で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.成因はアルコール性より胆石性が多い。
2.重症度判定には造影CTが重要である。
3.血中アミラーゼ値が低下する。
4.鎮痛薬の投与は禁忌である。
5.初発症状は上腹部痛である。

解答2・5

解説

急性膵炎とは?

急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。男性では50歳代に多く、女性では70歳代に多い。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。
検査:膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。
【治療】
軽症例:保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)
重症例:集中治療[臓器不全対策、輸液管理、栄養管理(早期経腸栄養)、感染予防、腹部コンパートメント症候群対策]

(※参考:「急性膵炎」MSDマニュアル家庭版より)

1.× 逆である。成因(原因)は、「胆石性(26.9%)」より「アルコール性(33.5%)」が多い。ただし、性別にみると、男性ではアルコール性が多く、女性では胆石性が多い。また、原因不明の特発性が16.7%を占めている。
2.〇 正しい。急性膵炎の重症度判定には造影CTが重要である。重症度判定のひとつに造影CTグレード(炎症の波及の程度)評価がある。造影CTグレード評価として、①炎症の膵外進展度、②膵の造影不良域(膵頭部、体部、尾部)、③【①+②】の合計点と重症度で重症度を判定する。
3.× 血中アミラーゼ値は、「低下」ではなく上昇する。他にも、尿中アミラーゼの値も上昇する。膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。ちなみに、血中アミラーゼ値とは、血液中のアミラーゼの濃度を示す数値である。アミラーゼは主に腎臓と膵腺から分泌されるため、膵腺の炎症や腫瘍、腎臓の異常などが原因で血中アミラーゼ値が上昇することがある。
4.× 鎮痛薬の投与は、「禁忌」ではなく使用する。なぜなら、治療において、軽症例であれば、保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)となるため。
5.〇 正しい。初発症状は、上腹部痛である。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。疼痛が強い場合には胸膝位(猫のポーズ:両ひざ、両ひじをつき、お尻を出来るだけ高く持ち上げる肢位)を推奨される。

 

 

 

 

85 もやもや病で正しいのはどれか。2つ選べ。(※不適切問題:解答3つ)

1.指定難病ではない。
2.遺伝的要因が関与する。
3.病変はくも膜下腔にある。
4.進行性の脳血管閉塞症である。
5.ウイルス感染によって誘発される。

解答2・3・4(複数の解答を採点)
理由:3つの選択肢が正解であるため

解説

もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)とは?
もやもや病とは、日本人に多発する原因不明の進行性脳血管閉塞症であり、脳血管撮影検査で両側の内頚動脈終末部に狭窄ないしは閉塞とその周囲に異常血管網を認めるものをいう。発症には遺伝的要因が関与する。家庭内発症を10~20%に認め、男女比は1:2.5とされる。好発年齢は、二峰性分布を示し5~10歳を中心とする高い山と、30~40歳を中心とする低い山を認める。機序としては徐々に内頚動脈終末部が狭窄・閉塞し、それに伴い非常に細い血管径の異常血管網、いわゆるもやもや血管が増生する。
(※参考:「もやもや病(指定難病22)」難病情報センター様HPより)
 
 
1.× もやもや病は、指定難病である。指定難病とは、「難病のうち患者の置かれている状況からみて、良質かつ適切な医療の確保を図る必要性が高いものとして、①患者数が一定の人数に達しない、②客観的な診断基準が確立しているという2つの要件を満たす疾病」である。つまり、「難病法に定められた難病のうち、医療費助成の対象となる難病」のことを指定難病という。

2.〇 正しい。遺伝的要因が関与する。2011年に、RNF213遺伝子がもやもや病の感受性遺伝子であることが確認された。同遺伝子多型p.R4810Kは、日本人患者の80~90%が保因しているが、日本人健常者の1~2%も同様に保因していることがわかっている。つまり大部分の多型保因者はもやもや病を発症しておらず、同遺伝子だけでなく、炎症などの何らかの二次的要因も発症に強く関与する多因子疾患と考えられる。
3.〇 正しい。病変はくも膜下腔にある。なぜなら、内頭動脈終末部はくも膜下腔に存在するため。脳血管撮影検査で両側の内頚動脈終末部に狭窄ないしは閉塞と、その周囲に異常血管網(もやもや血管)を認める。
4.〇 正しい。進行性の脳血管閉塞症である。もやもや病とは、日本人に多発する原因不明の進行性脳血管閉塞症であり、脳血管撮影検査で両側の内頚動脈終末部に狭窄ないしは閉塞とその周囲に異常血管網を認めるものをいう。
5.× 誘発されるのは、「ウイルス感染」ではなく炎症などである。大部分の多型保因者は、もやもや病を発症しておらず、炎症などの何らかの二次的要因も発症に強く関与する多因子疾患と考えられる。したがって、ウイルス感染と本疾患との関連は指摘されていない

 

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