第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午前76~80】

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76 眼球に入る光の量を調節するのはどれか。

1.角膜
2.虹彩
3.瞳孔
4.水晶体
5.毛様体

解答2

解説

(※図引用:「看護roo!様HP~看護師イラスト集~」より)

視覚について

ものを見るとき光は、①角膜→②前房→③房水→④瞳孔→⑤水晶体→⑥硝子体→⑦網膜→⑧視神経→⑨視交叉→⑩視索→⑪外側膝状体→⑪視放線→⑫後頭葉視覚領域へと伝わる。硝子体は、眼球内の大部分を占める透明なゼリー状の組織で、眼球の形態を保ち、角膜や水晶体で屈折された光を網膜まで透過させる働きがある。水晶体は、凸レンズの形をしており、外から入ってくる光を屈折させることで、網膜にピントの合った像を映すという役割をもつ。

1.× 角膜の役割は、外界からの光線の通過・屈折である。水晶体の外側に覆う薄い膜である。
2.〇 正しい。虹彩の役割は、瞳孔の大きさを調整し眼球に入る光の量の調節である。これは、虹彩にある瞳孔括約筋と瞳孔散大筋の働きによる。
3.× 瞳孔とは、虹彩の中心の孔である。虹彩にある瞳孔括約筋と瞳孔散大筋により瞳孔の大きさが変化し、結果として光量が調節されることになるが、瞳孔自体に光量の調節などの特定の機能はない
4.× 水晶体の役割は、角膜とともに外界からの光線の通過・屈折である。
5.× 毛様体の役割は、房水を作りだし眼内に栄養を与える。また、水晶体の厚さを変化させる。ちなみに、毛様体筋は、眼の遠近調節を行う筋である。毛様体筋は近くを見るときに収縮する。ちなみに近くで見るとき、毛様体小帯が弛緩し、水晶体が厚くなる。

 

 

 

 

 

77 最終代謝産物に尿酸が含まれるのはどれか。

1.核酸
2.リン脂質
3.中性脂肪
4.グルコース
5.コレステロール

解答1

解説

高尿酸血症の原因

ヒトが生きていくうえで必要なエネルギーや、核酸などの原料になるプリン体という物質である。尿酸は、プリン体を代謝した際に最終産物として産生される物質である。プリン体とは、プリン塩基と呼ばれる化学構造をもつ物質の総称である。尿酸は、プリン体がエネルギーとして使われて不要となった老廃物の1つである。通常、尿酸は、血液中と尿中に溶け、常に一定量に保たれている。しかし、生活習慣で体内に蓄積される尿酸の量が増え、高尿酸血症になるというしくみである。

1.〇 正しい。核酸は、最終代謝産物に尿酸が含まれる。核酸とは、尿酸のもととなるデオキシリボ核酸〔DNA〕とリボ核酸〔RNA〕の総称で、ヌクレオチド(塩基+糖+リン酸)により構成される。動物や植物の細胞核の中に存在し、ヒトの遺伝情報に関係するはたらきがある。
2.× リン脂質とは、細胞膜を形成する主な成分で、体内で脂肪が運搬・貯蔵される際にたんぱく質と結びつける役割を担い、情報伝達にも関わる。リン酸と脂質から構成されている。
3.× 中性脂肪(トリグリセリド)とは、脂肪酸が3本、グリセロールと呼ばれる物質で束ねられた構造をしている。中性脂肪は、エネルギー源となったり体温を一定に保つ役割をしており、人間の身体にとってなくてはならないものである。しかし中性脂肪が増えすぎると、余ったものは肝臓や脂肪組織に蓄積し、脂肪肝、肥満の原因である。
4.× グルコース(ブドウ糖)とは、エネルギー産生のもととなる自然界に最も多く存在している単糖類である。
5.× コレステロールとは、脂質の一種でコレステロール骨格をもつ化合物である。血中脂質とは、血液中に含まれる脂肪分のこと。 LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)などの総称となる。

痛風とは?

 痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足趾関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

 

 

 

 

78 排尿時に収縮するのはどれか。

1.尿管
2.尿道
3.膀胱平滑筋
4.内尿道括約筋
5.外尿道括約筋

解答3

解説

(※図引用:「イラストボックス様」より)

1.× 尿管とは、腎臓(腎盂)から膀胱まで蠕動運動により尿を輸送する器官である。したがって、平滑筋である。
2.× 尿道とは、排尿において膀胱から外尿道口までの排泄路である。尿道平滑筋に存在する交感神経の働きにより、蓄尿時には収縮し、排尿時には弛緩する。
3.〇 正しい。膀胱平滑筋は、排尿時に収縮する。膀胱平滑筋とは、膀胱の壁を構成する筋肉のことである。膀胱は、尿を収容するための結合組織によって形成され、その内壁には平滑筋肉が存在する。蓄尿時は、交感神経により膀胱収縮筋は弛緩し、尿道括約筋は収縮して尿道を閉める。排尿時は、副交感神経により膀胱収縮筋が収縮し、尿道括約筋が弛緩する。
4.× 内尿道括約筋とは、蓄尿時に収縮し、排尿時に弛緩する。内尿道括約筋は、排尿時は骨盤神経(副交感神経)・随意的に尿を止めるときは下腹神経(交感神経)である。
5.× 外尿道括約筋とは、蓄尿時に収縮し、排尿時に弛緩する。外尿道括約筋は、陰部神経(体性神経)である。蓄尿時には内・外尿道括約筋が収縮し蓄尿を維持し、排尿時には、内・外尿道括約筋が弛緩することで尿が尿道を通り排泄される。

 

 

 

 

 

79 重症筋無力症で正しいのはどれか。

1.男性に多い。
2.心肥大を生じる。
3.朝に症状が強くなる。
4.自己免疫疾患である。
5.70歳以上に好発する。

解答4

解説

 

重症筋無力症とは?

 重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用される。

(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)

1.× 「男性」ではなく女性に多い。男女比は、1:1.15である。
2.× 心肥大は生じない。重症筋無力症の合併症には、胸腺の過形成胸腺腫がある。胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用される。また、ほかの合併症としてバセドウ病や橋本病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどがある。
3.× 朝に症状が軽く、夕方になるにつれ強くなる。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。朝よりも夕方に易疲労感・眼険下垂や複視といった症状が強くなる。
4.〇 正しい。自己免疫疾患である。主に、抗アセチルコリン受容体抗体という自己抗体がつくられる。ちなみに、自己免疫疾患とは、免疫システムが自分自身の体内の細胞や組織を誤って攻撃する疾患のことである。
5.× 好発年齢は「70歳以上」ではなく、小児、20~30歳、50~60歳である。 5歳未満に一度ピークがあり、女性では30歳代から50歳代男性では女性より高く50歳代から60歳代に好発する。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

80 成人の気管内吸引の方法で適切なのはどれか。

1.実施前に咽頭部の分泌物を吸引する。
2.吸引圧は-40kPa(300mmHg)に調整する。
3.気管チューブと同じ内径のカテーテルを用いる。
4.カテーテルの挿入開始から終了まで30秒で行う。
5.カテーテルは気管分岐部より深い位置まで挿入する。

解答1

解説

口腔内・鼻腔内吸引の注意事項

「気管吸引とは、人工気道を含む気道からカテーテルを用いて機械的に分泌物を除去するための準備、手技の実施、 実施後の観察、アセスメントと感染管理を含む一連の流れのこと」と定義されている。(※引用:気管吸引ガイドライン2013)

【目的】口腔内・鼻腔内吸引は気道内の貯留物や異物を取り除くこと。

①人工呼吸器関連肺炎などの感染リスクを回避する。(ディスポーザブル手袋を着用、管吸引前には口腔及びカフ上部の吸引を行う)
②吸引中は無呼吸となるため必ずモニター等でSpO2の確認しながら、カフ圧は-20kPa(150mmHg)以内に保ち、1回の吸引時間は10秒以内とする。
③カテーテル挿入時は陰圧をかけず、自発呼吸がある場合は、患者さんの吸気に合わせて吸引を行う。
④終了後は気道内の分泌物がきちんと吸引できたか、呼吸音等で確認する。

(※参考:「吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コツ」ナース専科様HPより)

1.〇 正しい。実施前に咽頭部の分泌物を吸引する。なぜなら、誤嚥防止のため。気管吸引に伴い、咳嗽で分泌物が下気道に流れ込むと、肺炎を起こすおそれがある。
2.× 吸引圧は、「-40kPa(300mmHg)」ではなく、-20kPa(150mmHg)を超えないように調整する。吸引圧が高すぎた場合、気道粘膜の損傷肺胞虚脱のおそれがある。ちなみに、気管吸引前には口腔及びカフ上部の吸引を行い、カフ圧は2~2.9kPaに保つようにする。
3.× 気管チューブと同じ内径のカテーテルを用いることはない。なぜなら、吸引カテーテルのサイズが大きいと、気道内に過度の陰圧がかかり、気道粘膜の損傷肺胞虚脱のおそれがあるため。気管チューブとは、気管挿管の際に気管内に挿入する気道確保のためのチューブをさす。吸引カテーテルのサイズ(外径)は、気管チューブ内径の1/2以下を用いる。
4.× カテーテルの挿入開始から終了まで、「30秒」ではなく15秒以内(1回の吸引時間は10秒以内)で行う。なぜなら、吸引中は無呼吸となるため。必ずモニター等でSpO2の確認しながら実施する。
5.× カテーテルは、「気管分岐部より深い位置」ではなく「気管分岐部に当たらない位置」まで挿入する。気管チューブは、気管分岐部から3~5cm上に先端が来るように留置されている。深く挿入すると無気肺や出血、肉芽形成を合併する恐れがある。

 

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