第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午前36~40】

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36 患者の状態と寝衣の特徴との組合せで適切なのはどれか。

1.発熱がある患者:防水性のもの
2.開腹術直後の患者:上着とズボンに分かれたもの
3.意識障害のある患者:前開きのもの
4.下肢に浮腫のある患者:足首にゴムが入っているもの

解答3

解説

1.× 発熱がある患者は、「防水性のもの」ではなく吸水性の高い素材のものがよい。なぜなら、発熱がある患者の場合は発汗が予測されるため。ちなみに、吸湿性が高い素材はコットン、リネン、絹、羊毛、レーヨン、キュプラなどである。
2.× 開腹術直後の患者は、「上着とズボンに分かれたもの」ではなく、寝衣は前開きのものが望ましい。なぜなら、ドレーンやカテーテルが留置されていることが多く、創部の観察・処置をしやすくするため。開腹術とは、腹壁を切開して腹腔内の治療を行う手術方法である。大腸がんの手術などに適応となる。
3.〇 正しい。意識障害のある患者は、前開きのものが望ましい。なぜなら、前開きのものは、間接に負担がかからず着脱でき、身体の観察や清潔ケアなども行えるため。ちなみに、意識障害とは、意識が清明ではない状態のことを示し、覚醒度あるいは自分自身と周りの認識のいずれかが障害されていることである。意識障害のある患者は自立して動けないことも多く、身体の観察や清潔ケアなど看護師の援助を受けている状態であると考えられるため。
4.× 下肢に浮腫のある患者は、足首にゴムが入っているものは選択しない。なぜなら、ゴムにより浮腫のある部位を圧迫し、循環の阻害となるため。浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。

 

 

 

 

 

 

37 成人の前腕に静脈留置針を穿刺するときの刺入角度で適切なのはどれか。

1.10~20度
2.30~40度
3.50~60度
4.70~80度

解答1

解説

注射部位の深さ

深さ:表皮→真皮→皮下組織→静脈→筋肉の順に深くなる。
角度:皮内(ほぼ水平)→皮下注射(10~30度)→筋肉内注射(45~90度)である。

注射部位が浅ければ刺入角度を小さくし、注射部位が深ければ刺入角度を大きくする。

静脈留置針の穿刺角度は、15~20度を目安にする。したがって、選択肢1.10~20度が正しい。静脈の走行に沿って平行に刺入することで、血管を突き抜く危険性を減らすことができる。ちなみに、留置針とは、動静脈の血管内に留置できる注射針のことである。主に静脈における長時間の点滴の際に用いられる。通常、点滴チューブなどで目的の輸液に接続後、留置針が固定される。外針は柔らかいカテーテルなので、腕や体の多少の動きでも痛みを感じることは少ない。一方、欠点として、患者によっては留置針による血管確保が難しく、患者への苦痛が大きい場合がある。また、内針を引き抜く際、血液の漏れが起こったり、医療従事者自身の手などに針を刺してしまう「針刺し事故」が起きたりすることが課題となっている。

 

 

 

 

38 生体検査はどれか。

1.喀痰検査
2.脳波検査
3.便潜血検査
4.血液培養検査

解答2

解説

臨床検査

①検体検査:患者さんから採取された検体(血液、尿、便など)を用いて行う検査のこと。
【検査対象】血液、尿、便、痰、体液、内視鏡や手術で採取した細胞、組織など。

②生体検査:直接患者さん自身が対象となる心電図や腹部・心臓エコー検査、脳波検査などのこと
【検査対象】心電図、脳波、心エコー図検査、エックス線検査など。

(※参考「臨床検査とは」名寄市立総合病院様HPより)

1.× 喀痰検査は、検体検査である。生体から採取した喀痰(検体)を検査する。喀痰検査とは、痰を採取して、その中にどのような病的な成分が含まれているかを顕微鏡で観察する検査である。痰は呼吸器系の粘膜からしみ出る分泌物で、その成分には、肺や気管支、咽喉頭など気道からはがれた細胞も含まれている。これらの細胞に異常があったり、異物(細菌、ウイルス、ほこりなど)や血液成分が混じっていたりすると、痰に変化があらわれる。痰の検査の中では、感染症の有無や病原体を特定する細菌検査と、がん細胞の有無を見るための細胞診の 2つが重要である。2.〇 正しい。脳波検査は、生体検査である。人体(患者)を対象に機器を使って身体の機能や状態について検査を行う。脳波検査の適応疾患として、てんかんなどの発作性意識障害の鑑別、脳腫瘍や脳梗塞・脳出血などの脳血管障害、頭部外傷などで中枢神経系の異常を疑う場合、薬物等による中毒やそれらに伴う意識障害の時などに行われる。
3.× 便潜血検査は、検体検査である。生体から採取した便(検体)について検査する。潰瘍、がん、ポリープ、痔などで出血があると陽性になり、 大腸がんの早期診断のためのスクリーニング検査としても用いられる。
4.× 血液培養検査は、検体検査である。生体から採取した血液(検体)について検査する。主に、敗血症が疑われる場合に行われる。敗血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは、組織灌流が危機的に減少する。肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。

 

 

 

 

 

 

39 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉において、重症急性呼吸器症候群〈SARS〉の分類はどれか。

1.一類感染症
2.二類感染症
3.三類感染症
4.四類感染症

解答2

解説

(※図引用:「感染症の範囲及び類型について」厚生労働省HPより)

1.× 一類感染症は、感染力や罹患時の重篤性において危険性がきわめて高い感染症であり原則入院となる。エボラ出血熱が有名であるが、ほかにもクリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱がある。
2.〇 正しい。重症急性呼吸器症候群〈SARS〉の分類は二類感染症である。二類感染症は、感染力・罹患時の重篤性において危険性が高い感染症であり状況に応じて入院が必要となる。他にも、急性灰白髄炎、ジフテリア、結核、鳥インフルエンザがある。
3.× 三類感染症は、特定の職種への就業によって集団発生を起こすことがある感染症であり特定職種への就業制限などの対応が行われる。腸管出血性大腸菌感染症、コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフスがある。
4.× 四類感染症は、動物・飲食物などの物件を介してヒトに感染する感染症であり、デング熱E型肝炎などがある。動物への措置を含む消毒などの措置や媒介動物の輸入規制などの対応が行われる。

(※図引用:「感染症の範囲及び類型について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

40 Aさん(63歳、男性)は、右肺癌で化学療法を受けていたが、右腕を動かしたときに上腕から肩にかけて痛みが生じるようになった。検査を行ったところ骨転移が認められ、疼痛の原因と判断された。WHO 3段階除痛ラダーに基づいてがん疼痛のコントロールを開始することになった。
 この時点でAさんに使用する鎮痛薬で適切なのはどれか。

1.非オピオイド鎮痛薬
2.弱オピオイド鎮痛薬
3.強オピオイド鎮痛薬
4.鎮痛補助薬

解答1

解説

(※図引用:「WHO方式がん疼痛治療とは」塩野義製薬様HPより)

3段階除痛ラダーとは?

 3段階除痛ラダーとは、がん性疼痛に対する薬物療法の基本的な考え方である。これは基礎および臨床研究に基づいて考案された治療法で、非オピオイド鎮痛薬とオピオイド鎮痛薬を、痛みの強さによって段階的に進めていく方法である。世界保健機関(WHO)は、がん疼痛治療法における鎮痛薬の使用法について、痛みの強さによる段階的な鎮痛薬の選択法を示した「3段階除痛ラダー」と治療に際し守るべき「鎮痛薬使用の5原則」で提唱している。

【鎮痛薬使用の5原則】①経口的に、②時刻を決めて規則正しく、③除痛ラダーにそって効力の順に、④患者ごとの個別的な量で、⑤その上で細かい配慮を

本症例のポイント

・Aさん(63歳、男性、右肺癌で化学療法)
・右腕を動かしたときに上腕から肩にかけて痛みが生じるようになった。
・骨転移が認められ、疼痛の原因と判断された。
→本症例は、骨転移と診断される以前に鎮痛薬を使用していないことから、まずは3段階除痛ラダーの第1段階である非オピオイド鎮痛薬が選択される。非オピオイド鎮痛薬には、アスピリンに代表される①非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)や②アセトアミノフェンなどが含まれる。

1.〇 正しい。非オピオイド鎮痛薬は優先度が最も高い。本症例は、骨転移と診断される以前に鎮痛薬を使用していないことから、まずは3段階除痛ラダーの第1段階である非オピオイド鎮痛薬が選択される。非オピオイド鎮痛薬には、アスピリンに代表される①非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)や②アセトアミノフェンなどが含まれる。
2.× 弱オピオイド鎮痛薬は優先度が低い。なぜなら、第1段階で痛みの残存・増強を認める場合に、第2段階である弱オピオイド鎮痛薬(コデインリン酸塩水和物やトラマドール塩酸塩)が非オピオイド鎮痛薬に「追加して」用いられるため。
3.× 強オピオイド鎮痛薬は優先度が低い。なぜなら、第2段階においても痛みの残存・増強を認める場合には、第3段階である強オピオイド鎮痛薬が弱オピオイド鎮痛薬と「変更し」、かつ非オピオイド鎮痛薬に「追加して」用いられるため。モルヒネやフェルタニルが強オピオイド鎮痛薬の代表薬である。
4.× 鎮痛補助薬は優先度が低い。なぜなら、各段階において非オピオイド鎮痛薬やオピオイドだけでは痛みを軽減できない場合に、鎮痛補助薬の併用が検討されるものであるため。鎮痛補助薬には抗うつ薬、抗けいれん薬、NMDA受容体措抗薬などが存在する。

 

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