第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午前46~50】

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46 高齢者の自立度を手段的日常生活動作〈IADL〉尺度を用いて評価した。
 この尺度にある項目はどれか。

1.コミュニケーション
2.自分の服薬管理
3.トイレ動作
4.階段昇降

解答2

解説

手段的日常生活動作とは?

手段的日常生活動作(IADL:Instrumental Activities of Daily Living)とは、日常生活動作(ADL)のなかでも、道具を使う、段取りを考えて行うなど、複雑で判断力を要する身体活動のことである。
ADLは、①BADL(基本的日常生活動作)と、②IADL(手段的日常生活動作)に大別される。
①BADL:食事、排泄、入浴、整容など基本的な欲求を満たす身の回りの動作。
②IADL:買い物、洗濯、電話、服薬管理などの道具を用いる複雑な動作。

1.3~4.× コミュニケーション/トイレ動作(排泄)/階段昇降(移動)は、基本的日常生活活動(BADL)に含まれる。基本的日常生活活動(BADL)とは、食事、排泄、入浴、整容など基本的な欲求を満たす身の回りの動作のことである。
2.〇 正しい。自分の服薬管理は、手段的日常生活動作〈IADL〉に含まれる。服薬管理は、薬剤の種類や1回量・服薬時間・回数・服薬方法など複数の情報を組み合わせて適切に行う必要がある動作である。

 

 

 

 

 

 

47 加齢の影響を受けにくく、高齢になっても維持されやすい認知機能はどれか。

1.感覚記憶
2.短期記憶
3.結晶性知能
4.流動性知能

解答3

解説

(※図引用:知能の複数の下位側面(佐藤眞一(2006)2)より)

1.× 感覚記憶は、加齢に伴い低下する。感覚記憶とは、短期記憶がなされる前に、感覚器官(耳・鼻など)に瞬間的に保存されるもので、記憶の保持期間は1秒以内である記憶のことである。
2.× 短期記憶は、加齢に伴い低下する。短期記憶とは、数秒~1分程度の記憶を記憶のことをいう。
3.〇 正しい。結晶性知能は、高齢になっても維持されやすい認知機能である。結晶性知能とは、理解力・洞察力といった、経験や学習などから長期にわたり獲得していく知能である。60歳手前でピークを迎え、それ以降は緩やかに低下する特徴がある。また、老年期にも維持されやすい認知機能といえる。
4.× 流動性知能は、加齢に伴い低下する。流動性知能とは、情報処理のスピードや、その状況の法則性を発見する能力など、新しい環境に適応するための能力のことである。20歳頃にピークを迎え60歳頃より急激に低下する。

加齢による精神機能の変化

①流動性知能は、加齢とともに低下する。
②結晶性知能は、加齢でもあまり低下しない。
③機械的記憶能力は、加齢とともに低下する。
④論理的記憶能力は、加齢でもあまり低下しない。
④意欲・行動力は、加齢により低下する。

 

 

 

 

48 Aさん(80歳、男性)は、1人暮らし。高血圧症で内服治療をしているが健康状態や認知機能に問題はなく、日常生活動作〈ADL〉は自立している。毎朝30分の散歩と買い物を日課とし、週1回は老人クラブでゲートボールをしている。Aさんは受診の際に看護師に「最近、昼食後に居眠りをしてしまう。今は大丈夫だが、このままだと夜眠れなくなるのではないか」と話した。
 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.昼食後にも散歩を促す。
2.主治医に相談するよう勧める。
3.老人クラブの参加回数を増やすよう勧める。
4.30分程度の昼寝は夜の睡眠に影響はないと伝える。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(80歳、男性、1人暮らし)
高血圧症:内服治療中。
・健康状態、認知機能、日常生活動作:自立。
・日課:毎朝30分の散歩買い物
・週1回:老人クラブでゲートボール。
・Aさん「最近、昼食後に居眠りをしてしまう。今は大丈夫だが、このままだと夜眠れなくなるのではないか」と。
→本症例は、睡眠についての不安・悩みがある。加齢に伴い、睡眠の変化も変化する。深いノンレム睡眠が減少し、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒が生じやすくなる。また、高齢者や高血圧症患者は、加齢変化などで血圧調節機能が低下しているため、食後の血圧に影響が生じる。

 

1.× 昼食後にも散歩を促す必要はない。なぜなら、本症例は、毎朝30分の散歩と買い物を日課とし、週1回は老人クラブでゲートボールをしているため。十分な運動を行っていると考えられる。また、食後は、消化に必要な血液が腸に集まるため、血圧調節予備能が低下した高血圧症患者は食後低血圧が起こりやすい。したがって、昼食後の散歩は、転倒リスクが高まるため不適切である。
2.× 主治医に相談するよう勧める必要はない。なぜなら、本症例は「今は大丈夫だが、このままだと夜眠れなくなるのではないか?」という睡眠に対する不安が聞かれているだけであるため。まずは、現状の睡眠の様子、睡眠に対する不安の背景要因や状況を評価し、加齢に伴う睡眠の変化や生活上の対応策を説明する必要がある。
3.× 老人クラブの参加回数を増やすよう勧める必要はない。なぜなら、本症例の睡眠に対する不安は、主に「昼食後の眠気」であるため。「昼食後の眠気」と「老人クラブの参加回数の変化」の関係性は薄いく、加齢に伴う睡眠の変化や食後低血圧が関係している可能性が高い。
4.〇 正しい。30分程度の昼寝は夜の睡眠に影響はないと伝える。なぜなら、本症例は「最近、昼食後に居眠りをしてしまう。今は大丈夫だが、このままだと夜眠れなくなるのではないか」と睡眠に対する不安が聞き取れるため。また、夜間の睡眠周期は約90分であるため、30分程度の昼寝は、深いノンレム睡眠に至らないので夜の睡眠に影響はない。むしろ一般的な高齢者は夜間の睡眠効率が低下するため、短時間の昼寝で夜間の睡眠不足を補う必要がある。

高齢者の睡眠の特徴

高齢者は、社会的な刺激が少ない状況におかれ、身体的・精神的活動能力が低下しているため、日中の活動量は減り、熟睡が困難になる。また、身体的要因や疾患のために夜間睡眠が妨げられやすくなる。さらに、加齢や脳の器質的障害に伴うサーカディアンリズムの変化が生じる。

 

 

 

 

 

 

49 加齢に伴う血管壁の硬化による血圧への影響はどれか。

1.収縮期血圧は上昇し、拡張期血圧は低下する。
2.収縮期血圧は低下し、拡張期血圧は上昇する。
3.収縮期血圧も拡張期血圧も上昇する。
4.収縮期血圧も拡張期血圧も低下する。

解答1

解説

血圧とは?

血圧は心拍出量と末梢血管抵抗の積で規定される。
収縮期血圧:心臓が収縮しているときの最大血圧である。この短時間の強い圧力により弾性血管である大動脈は拡張し、血液を貯留する。
拡張期血圧:心臓の拡張期の最小血圧である。心臓が拡張している間、大動脈に貯留された血液が末梢に送られ、拡張期血圧を形成する。

(※「年を取ると血圧が高くなるのはなぜ?」日本高血圧協会様HPより)

 加齢に伴い動脈硬化が進展すると、大動脈壁の弾力性は低下する。したがって、収縮期に心臓から拍出された血液は、大動脈に十分に貯留されずに末梢に送られるため収縮期血圧は上昇する。一方、拡張期は、大動脈から末梢へ送られる血液量が減少するため、拡張期血圧は低下する。したがって、選択肢1.収縮期血圧は上昇し、拡張期血圧は低下するのが正しい。ちなみに、加齢により近位大動脈の動脈硬化が進行するため、一般的に加齢とともに収縮期血圧は上昇し、拡張期血圧は低下するため、その差である脈圧は増大する。

 

 

 

 

50 加齢によって高齢者に便秘が起こりやすくなる原因で適切なのはどれか。

1.経口摂取量の低下
2.味覚の閾値の低下
3.腸管での水分吸収の低下
4.直腸内圧感受性の閾値の低下

解答1

解説

加齢による便秘の原因

①身体活動や食事摂取量の低下(腸内容の減少、腸管壁への物理的 ・ 拡張刺激の減弱、腸局所血流の低下、腸管の緊張や蠕動運動の低下)
②腸管筋層の萎縮、結合織の増加(大腸を支える組織の緊張・運動の低下)
③大腸憩室の増加(腸管壁緊張低下の助長)
④腸の神経の変化
⑤腸管の分泌低下(便硬度の増大)
⑥腸がおならを吸収する機能の低下(腸管内腔の拡張、腸がおなかの中で曲がる部分の異常)
⑦直腸壁の感受性低下(排便反射の低下~消失)
⑧排便に関する筋力の低下(腹筋・横隔膜筋・骨盤底筋群等)
⑨高齢者に多くみられる疾患との関連(脳血管障害、肺気腫、心不全)
高齢者のライフスタイルと心理的要因(少ない食事量)
⑪繊維成分の少ない食事内容、水分摂取の低下、便意の抑制
⑫浣腸や下剤の習慣性

(※引用:「便秘」健康長寿ネット様HPより)

1.〇 正しい。経口摂取量の低下は、便秘が起こりやすくなる原因である。なぜなら、経口(食事)摂取量が減少すると、便容量が少なくなるため。他にも様々な理由で便秘となる。
2.× 味覚の閾値の低下は、便秘が起こりやすくなる原因とはいえない。ちなみに、加齢に伴って味覚の閾値は上昇する。ちなみに、閾値とは、感覚や反応や興奮を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの(物理)量である。したがって閾値が高いと(上がると)、 感覚を感じにくくなることをさす。
3.× 腸管での水分吸収の低下は、便秘が起こりやすくなる原因とはいえない。むしろ、腸管での水分吸収の低下は下痢の原因である。ちなみに、加齢に伴い腸管の嬬動運動が低下すると、腸内容が停滞し、弛緩性便秘を引き起こす要因となる。
4.× 直腸内圧感受性の閾値の低下は、便秘が起こりやすくなる原因とはいえない。加齢に伴って直腸内圧感受性の闘値は上昇するため、排便反射が起こりにくく直腸性の便秘を引き起こしやすい。

 

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