第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午後61~65】

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61 妊婦健康診査を受診する時間を確保するために妊婦が事業主に請求できることを規定している法律はどれか。

1.母子保健法
2.労働基準法
3.育児介護休業法
4.雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律〈男女雇用機会均等法〉

解答4

解説
1.× 母子保健法とは、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。
2.× 労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。
3.× 育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)とは、育児・介護に携わる労働者について定めた日本の法律である。①労働者の育児休業、②介護休業、③子の看護休暇、④介護休暇などが規定されている。
4.〇 正しい。雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律〈男女雇用機会均等法〉は、妊婦健康診査を受診する時間を確保するために妊婦が事業主に請求できることを規定している。「(妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置)第十二条 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない(※引用:「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」e-GOV法令検索様HPより)」と規定されている。男女雇用機会均等法とは、職場における性的な言動に起因する問題(セクシャル・ハラスメント)と、職場における妊娠・出産などに関する言動に起因する問題(マタニティ・ハラスメント)について事業主が雇用管理上必要な措置を講じなければならないことが定められている。他にも、時差出勤などの措置や、女性労働者の婚姻、妊娠、出産を理由とした解雇の禁止などを定めている。

妊婦健康診査の望ましい基準

①妊娠23週まで:4週間に1回
②24週~35週:2週間に1回
③36週~出産まで:1週間に1回

 

 

 

 

 

 

62 アルコールを多飲する人によくみられ、意識障害、眼球運動障害および歩行障害を特徴とするのはどれか。

1.肝性脳症
2.ペラグラ
3.Wernicke〈ウェルニッケ〉脳症
4.Creutzfeldt-Jakob〈クロイツフェルト・ヤコブ〉病

解答3

解説
1.× 肝性脳症とは、体内に発生した、もしくは腸管から吸収された中毒性物質が、肝硬変や門脈-大循環シャントにより、肝臓で解毒されることなく中枢神経に到達することで、さまざまな精神・神経症状が生じる症候群をいう。つまり、正常な肝なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる合併症である。主な症状として、意識障害、異常行動、はばたき振戦などである。
2.× ペラグラとは、ナイアシン欠乏症のことで、手足や顔、首に皮膚炎が起こる。他の症状として、下痢や頭痛、進行していくと脳の機能に障害(意識障害など)が起こす。アルコール依存の患者に多くみられ、治療として、ニコチン酸アミドを毎日服用する。
3.〇 正しい。Wernicke〈ウェルニッケ〉脳症は、アルコールを多飲する人によくみられ、意識障害、眼球運動障害(童顔神経麻痺)および歩行障害(失調性歩行)を特徴とする。ビタミンB1欠乏によって生じ、アルコール大量摂取が原因となることが多い。したがって、ビタミンB1を早期に投与すると回復する場合がある。
4.× Creutzfeldt-Jakob〈クロイツフェルト・ヤコブ〉病とは、異常なプリオン蛋白が脳に蓄積する致死性神経感染症である。初期には精神症状(健忘症、抑うつなど)、視覚障害、歩行障害、運動失調などで発症し、進行すると精神症状が急速に悪化し、高度の認知症に発展する。会話、自発語不能となり、四肢のミオクローヌスも特徴的所見である。様々な症状を呈して、多くは数ヶ月から半年以内、長くとも2年以内で死亡する。

 

 

 

 

63 精神障害者保健福祉手帳で正しいのはどれか。

1.知的障害も交付対象である。
2.取得すると住民税の控除対象となる。
3.交付によって生活保護費の支給が開始される。
4.疾病によって障害が永続する人が対象である。

解答2

解説

精神障害者保健福祉手帳とは、精神障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的としてつくられたものである。障害者手帳は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼称であり、 制度の根拠となる法律等はそれぞれ異なる。ちなみに、精神障害者保健福祉手帳を取得することで、①生活の助けとなるサービス(自治体ごとに公共料金などの割引、税金の免除・減免など)や、②働くことへのサービス(障害者求人へ応募できることや就労に関する支援の対象となるなど)を受けることができる。

1.× 知的障害は交付対象でない。精神障害者保健福祉手帳の対象は、何らかの精神障害(てんかん、発達障害などを含む)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約があるものである。ちなみに、知的障害の場合は、療育手帳の対象となる。発達障害と知的障害を両方有する場合は、両方の手帳を受けることができる。
2.〇 正しい。取得すると住民税の控除対象となる。精神障害者保健福祉手帳を取得することで、①生活の助けとなるサービス(自治体ごとに公共料金などの割引、税金の免除・減免など)や、②働くことへのサービス(障害者求人へ応募できることや就労に関する支援の対象となるなど)を受けることができる。
3.× 精神障害者保健福祉手帳の交付によって、生活保護費の受給が開始されるということはない。生活保護を受給している場合には、障害者加算が行われることがある。障害者加算とは、障害があることによって余計にかかる生活費(障害需要)への補填が目的である。認定は、1級か2級に該当する障害基礎年金の証書か身体障害者手帳、これらを所有していない場合は主治医などの診断書などによって行われる。
4.× 障害の永続は条件ではない。手帳を受けるためには、その精神障害による初診日から6か月以上経過していることが必要となる。精神障害者保健福祉手帳の対象は、何らかの精神障害(てんかん、発達障害などを含む)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約があるものである。具体的精神疾患として、統合失調症、うつ病、てんかん、高次脳機能障害、発達障害などがあげられる。手帳の有効期限は交付日から2年であり、2年ごとに都道府県知事の認定を受けなければならない。

 

 

 

 

 

 

64 攻撃性の高まった成人患者への対応で正しいのはどれか。

1.患者の正面に立つ。
2.アイコンタクトは避ける。
3.身振り手振りは少なくする。
4.ボディタッチを積極的に用いる。

解答3

解説

興奮・攻撃性への対応

【挑発的な態度・振舞いを避ける】
凝視を避ける。ただし,完全に目をそらさずアイコンタクトは保つ
②淡々とした表情を保つ
③高慢,威圧的な印象を与えることを避けるため,姿勢や態度に注意する。特に,腰に手を当てたり,腕組みをしない
④ゆっくりと移動し,急な動作を行わない。身体の動きは最小限にし,身振り手振りが多過ぎることや,そわそわと身体を揺すったり,身体の重心を移動させるのを避ける。

【相手のパーソナルスペースを尊重し,自分自身が安全なポジションを保つ】
①患者に対応する前に,暴力発生を誘発したり,けがの原因になる,あるいは武器として使用される可能性のある所持品(ネクタイ,スカーフ,装飾品,ペン,ハサミ,バッジなど)を除去する
②いかなる時も相手に背を向けない
③通常より広いパーソナルスペース(最低でも腕の長さ2本分以上)を保つ
対象の真正面に立つのを避け,およそ斜め 45°の立ち位置とする
⑤両手は身体の前面に出し,手掌を相手に向けるか,下腹部の前で軽く組むなど,相手に攻撃の意思がないことを示し,万一の攻撃・暴力発生に備える
⑥出入口を確認し,自分と対象の双方の退路を保つ位置に立つ。出入口やドアの前に立ちふさがらない
⑦壁やコーナーに追い詰められないようにする
⑧警告なしに相手に触れたり,接近しない
(引用:「興奮・攻撃性への対応」日本精神科救急学会様HPより)

1.× 患者の「正面」ではなく斜め45°に立つ。なぜなら、正面に立って対応すると患者に緊張感を強め、ますます攻撃性を高めてしまうおそれがあるため。また、通常より広いパーソナルスペース(最低でも腕の長さ2本分以上)を保つことを心がける。
2.× アイコンタクトは避ける必要はない。なぜなら、会話中、適度にアイコンタクトをとることによって、患者を理解しようという姿勢を示すことができるため。ただし、挑発とも捉えられかねないため凝視を避ける。
3.〇 正しい。身振り手振りは少なくする。なぜなら、看護師の急な動作や大きな身ぶり手ぶりは、患者を驚かせたり、挑発することにつながるため。ゆっくりと移動し、急な動作を行わない。身体の動きは最小限にし、身振り手振りが多過ぎることや、そわそわと身体を揺すったり、身体の重心を移動させるのを避ける。
4.× ボディタッチを積極的に用いる必要ない。なぜなら、患者のパーソナルスペースを尊重し、看護者の安全を保つため。通常より広いパーソナルスペース(最低でも腕の長さ2本分以上)を保つことを心がける。また、警告なしに相手に触れたり、接近しないようにする。

 

 

 

 

65 Aさん(79歳、男性)は、1人暮らし。要介護2の認定を受け、訪問看護を利用することになった。初回の訪問時、Aさんは敷いたままの布団の上に座っており「便利だから生活に必要なものを手の届くところに置いているんだよ」と話した。
 Aさんの生活様式を尊重した訪問看護師のこのときの声かけで適切なのはどれか。

1.「外に出て気分転換しませんか」
2.「昼間は布団をたたみましょう」
3.「介護保険でベッドの貸与を受けましょう」
4.「必要なものを身近に置いているのですね」

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(79歳、男性、1人暮らし、要介護2
・訪問看護を利用する。
・初回の訪問時:Aさんは敷いたままの布団の上に座っており「便利だから生活に必要なものを手の届くところに置いているんだよ」と。
→訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。

1.× 外に出て気分転換する優先度が低い。なぜなら、Aさんから外出についての希望も聞かれていないため。初回訪問であることから、情報収集し、アセスメントしたうえで、支援する。訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。
2.× 昼間は布団をたたむ優先度が低い。なぜなら、Aさんは敷いたままの布団の上に座っており「便利だから生活に必要なものを手の届くところに置いているんだよ」と、昼間に布団を畳む必要のない生活を送っているため。「昼間に布団をたたまなくてはならない」という看護師の価値観の押し付けになってしまう。
3.× 介護保険でベッドの貸与を受ける優先度が低い。なぜなら、本症例は、今の生活様式に不便を感じていない状況であるため。初回訪問であることから、ベッドのレンタルの希望を含め情報収集し、アセスメントしたうえで提案する。
4.〇 正しい。「必要なものを身近に置いているのですね」はAさんの生活様式を尊重したと声がけといえる。Aさんは敷いたままの布団の上に座っており「便利だから生活に必要なものを手の届くところに置いているんだよ」と言う発言に対し、理解承認支持している対応と言える。

 

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