第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午後91~95】

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次の文を読み91~93の問いに答えよ。
 Aさん(64歳、女性、主婦)は、50歳で高血圧症と診断され、降圧薬を服用している。栄養指導を受け、食事療法も実施している。趣味はサイクリングと海外旅行である。数か月前からサイクリング中に息苦しさやめまいを感じるようになったため、かかりつけ医から紹介された病院を受診した。外来受診時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍40/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(room air)。

91 Aさんは完全房室ブロックが疑われた。
 Aさんに行われる検査で優先されるのはどれか。

1.心臓超音波検査
2.12誘導心電図検査
3.心臓カテーテル検査
4.運動負荷心電図検査

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(64歳、女性、主婦)
・50歳:高血圧症、降圧薬を服用。
・栄養指導、食事療法も実施。
・数か月前:サイクリング中に息苦しさめまい出現。
・外来受診時:体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍40/分(徐脈)、血圧96/52mmHg、SpO2:98%
完全房室ブロックが疑われた。
→完全房室ブロックは、心房興奮が心室にまったく伝わらなくなった状態である。重度となれば、眼前暗黒感、失神、呼吸困難がみられる。高度徐脈となるためペースメーカー植込みが必要になる。現時点でのAさんは、完全房室ブロックが疑われた状態であるため、確定診断するための検査を選択する。

1.× 心臓超音波検査(心エコー検査)は優先度が低い。心臓超音波検査(心エコー検査)とは、超音波を当てて心臓の大きさ、動き、弁の状態、血液の流れなどを観察し、ポンプが正常に働いているかどうかを判断する検査である。心筋梗塞心臓肥大弁膜症先天性疾患などが発見できる。
2.〇 正しい。12誘導心電図検査は、Aさんに行われる検査で優先される。なぜなら、現時点では、Aさんは完全房室ブロックが疑われた状態であり、確定診断できる検査であるため。12誘導心電図検査とは、胸部6ヶ所と両手首・両足首に合計10個の電極を付けて、心臓の電気的な活動・変化を記録する検査である。完全房室ブロックの心電図の特徴として、PP間隔、RR間隔は等しいがPR間隔が不規則であり、P派とQRS派が連動せず無関係に出現している。
3.× 心臓カテーテル検査は優先度が低い。心臓カテーテル検査とは、狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症、先天性心疾患、 大動脈疾患などの心血管系疾患の確定診断を行い、病気の程度を判定して手術適応などの治療方針を決定するための侵襲的検査(直接に身体に傷をつけて行う検査)である。
4.× 運動負荷心電図検査は優先度が低い。運動負荷心電図検査は、運動中の心臓の状態を調べ、安静時にはわからない心臓の異常を見つける検査である。安静時には症状のない労作性狭心症の診断に用いられることが多い。ちなみに、労作性狭心症とは、心臓に栄養を送る血管である冠動脈の一部が動脈硬化によって75%以上狭窄し、血流の流れが悪くなってしまう状態である。症状として、胸痛発作の頻度(数回/周以下)、持続時間(数分以内)、強度などが一定であることや、一定以上の運動や動作によって発作が出現する。その4大危険因子は、「①喫煙、②脂質異常症、③糖尿病、④高血圧」である。そのほかにも、加齢・肥満・家族歴・メタボリックシンドロームなどがある。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み91~93の問いに答えよ。
 Aさん(64歳、女性、主婦)は、50歳で高血圧症と診断され、降圧薬を服用している。栄養指導を受け、食事療法も実施している。趣味はサイクリングと海外旅行である。数か月前からサイクリング中に息苦しさやめまいを感じるようになったため、かかりつけ医から紹介された病院を受診した。外来受診時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍40/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(room air)。

92 検査の結果、Aさんは完全房室ブロックと診断された。
 今後、Aさんに起こりやすいのはどれか。

1.脳虚血
2.肺塞栓症
3.不安定狭心症
4.心タンポナーデ

解答1

解説

完全房室ブロックとは?

完全房室ブロックは、心房興奮が心室にまったく伝わらなくなった状態である。重度となれば、眼前暗黒感、失神、呼吸困難がみられる。高度徐脈となるためペースメーカー植込みが必要になる。

1.〇 正しい。脳虚血は、Aさん(完全房室ブロック)に起こりやすい。なぜなら、徐脈により脳血流が低下するため。完全房室ブロックでは、一過性心停止によるアダムス・ストークス発作、めまいや失神といった脳虚血症状(めまい、眼前暗黒感、意識消失)を起こすことが多い。
2.× 肺塞栓症とは、肺動脈に血栓が詰まる病気のこと。血栓の9割以上は脚の静脈内にでき、この血栓を「深部静脈血栓症」といい、それが血液の流れに乗って右心房、右心室を経由して肺動脈まで運ばれてきて、肺塞栓症の原因となる。肺塞栓症と深部静脈血栓症は、極めて関係が深い病気で、二つを合わせて「静脈血栓塞栓症」と呼ばれる。深部静脈血栓症患者の約50%は潜在性の肺塞栓症を有し、肺塞栓症患者の30%以上は証明可能な深部静脈血栓症患者を有すると報告されている。
3.× 不安定狭心症とは、安定性狭心症と比べて発作の回数が増えたり安静時にも胸痛がみられる重症・増悪型の狭心症である。心筋梗塞を伴わない冠動脈の急性閉塞によって生じる病態である。冠動脈内において動脈硬化に起因する不安定プラークの破綻などにより血栓が形成され、それによって急激に冠動脈内が狭窄し、心筋虚血に至った状態である。また、心臓の栄養血管である冠動脈の高度な狭窄を反映していることが多い。したがって、心筋梗塞の前兆で突然死に至る可能性があり、早急な対処が必要である。
4.× 心タンポナーデとは、心臓を包んでいる2層の膜(心膜)の間に体液などの血液が貯留し、心臓が圧迫される。その結果、血液を送り出す心臓のポンプ機能が阻害され、 典型的にはふらつきや息切れを感じ、失神することもある。心膜腔に大量の血液が貯留し、著明な心室拡張障害から静脈還流障害が生じ、血圧低下およびショック状態に至る病態である。開心術後の合併症として生じ得る。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み91~93の問いに答えよ。
 Aさん(64歳、女性、主婦)は、50歳で高血圧症と診断され、降圧薬を服用している。栄養指導を受け、食事療法も実施している。趣味はサイクリングと海外旅行である。数か月前からサイクリング中に息苦しさやめまいを感じるようになったため、かかりつけ医から紹介された病院を受診した。外来受診時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍40/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(room air)。

93 その後、Aさんにはペースメーカー植込み術が行われ、看護師は退院後の電磁干渉について説明を行った。Aさんからは「生活の中でどのようなことに注意をすれば良いですか」と質間があった。
 Aさんが最も注意する必要がある状況はどれか。

1.新幹線への乗車
2.パーソナルコンピュータの使用
3.電動アシスト付き自転車での移動
4.電子商品監視装置〈Electronic Article Surveillance:EAS〉の通過

解答4

解説

MEMO

ペースメーカー植込み術が行われた。
・退院後の電磁干渉について説明した。
・「生活の中でどのようなことに注意をすれば良いですか」
→ペースメーカーの【影響を受けるもの・場所】として、①発電設備、②大型モーター、③高電圧設備、④強力な磁場の発生する場所、⑤自動車のエンジンルームを覗き込む、⑥低周波及び高周波治療器、⑦電気風呂、⑧体脂肪計などが挙げられる。

1〜3.× 新幹線への乗車/パーソナルコンピュータの使用/電動アシスト付き自転車での移動の影響はない。他にも影響を受けない一例として、電子レンジ、電気毛布、電気コタツ、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電気バリカン、電気カミソリ、電気マッサージ器、ヘアドライヤー、テレビ、ラジオ、コピー機、補聴器などがあげられる。
4.〇 正しい。電子商品監視装置〈Electronic Article Surveillance:EAS〉の通過は、Aさんが最も注意する必要がある。なぜなら、電子商品監視装置は磁界を発生するため。電子商品監視機器とは、よくデパートやアパートの出入り口にある万引防止のための機械である。感知ラベルやタグを貼り付けた商品を、 レジカウンターで清算せずにゲート型センサーを通過したときに警報音を発して商品の不正持ち出しを防止する機器である。ペースメーカー埋め込み術をしている患者は、立ち止まらずに通路の中央をまっすぐ通過する必要がある。電子商品監視装置のそばに必要以上に留まらないことが大切である。ちなみに、電子商品監視装置のほかにも、日常生活で注意を要するものとして、IH調理器IH炊飯ジャーがある。ペースメーカーから50cm離れていれば安全といわれている。

 

 

 

 

次の文を読み94~96の問いに答えよ。
 Aさん(47歳、女性、会社員)は、夫(54歳)と2人暮らし。6か月前から月経不順になり、閉経前の症状と思い様子をみていた。しかし、徐々に普段の月経時の出血量よりも多くなり、下腹部痛が出現してきたため、病院の婦人科外来を受診した。診察後、経膣超音波検査の指示が出され、看護師はAさんに検査について説明することになった。

94 Aさんへの経膣超音波検査の説明で正しいのはどれか。

1.検査が終了するまで絶飲食にする。
2.検査前に排尿するよう促す。
3.検査は側臥位で行う。
4.検査後1時間は安静にする。

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(47歳、女性、会社員)
・2人暮らし:夫(54歳)
・6か月前:月経不順、不正出血、出血量の増加、下腹部痛
経膣超音波検査の指示が出された。
→経腟超音波検査とは、婦人科で行う超音波検査の一つで、子宮や卵巣などを観察するための検査である。小さな異常も確認することができる、婦人科では、内診と合わせて基本的な検査の一つである。経腟エコー検査では、子宮や卵巣の中の状態まで詳しく観察することができる。経腟超音波検査で見つかる代表的な疾患は、子宮がんや卵巣がん、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣のう腫、子宮内膜ポリープなどである。

1.× 検査が終了するまで絶飲食にする必要はない。なぜなら、経膣超音波検査は食事の影響はないため。ちなみに、超音波検査で絶飲食が必要なのは、胆嚢を観察する場合(腹部超音波検査)である。
2.〇 正しい。検査前に排尿するよう促すのは、経膣超音波検査の説明で正しい。なぜなら、膀胱内を空にすることで子宮や卵巣を観察しやすくするため。経膣超音波検査は、子宮や子宮付属器(卵巣・卵管)をみる検査である。子宮の腹側には膀胱があり、膀胱がふくらんでいることで観察しにくい。そのため原則、検査前に排尿をしてもらうことで、より正確に検査を行うことができる。
3.× 経腔超音波検査は「側臥位」ではなく、砕石位で行う。砕石位とは、仰臥位で膝を曲げて大腿部を持ち上げ、開脚する体位である。泌尿器科や産婦人科の診察などで用いられる体位である。(読み:さいせきい)
4.× 検査後1時間は安静にする必要はない。なぜなら、経膣超音波検査は非侵襲的であるため。血管を穿刺するカテーテル検査では一定時間(1時間)の安静を要する。これは、体を動かすことで(特に穿刺部位)、出血したり体液が体外へ流れ出ることがあるためである。また、胃カメラも検査後1時間程度安静を要する。なぜなら、鎮静剤を使用した場合は検査後に眠気が残るため。

腹部超音波検査の場合

【検査を受ける際の注意点】
①朝ご飯を食べない(お水やお茶は少量なら大丈夫)
②検査前できるだけトイレに行かない。
③お薬は、医師による中止の指示がない限り、通常通り服用する。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み94~96の問いに答えよ。
 Aさん(47歳、女性、会社員)は、夫(54歳)と2人暮らし。6か月前から月経不順になり、閉経前の症状と思い様子をみていた。しかし、徐々に普段の月経時の出血量よりも多くなり、下腹部痛が出現してきたため、病院の婦人科外来を受診した。診察後、経膣超音波検査の指示が出され、看護師はAさんに検査について説明することになった。

95 Aさんは、経膣超音波検査で異常所見が認められ、その後の精密検査で子宮体癌と診断されて準広汎子宮全摘出術と両側付属器(卵巣、卵管)切除術を受けた。術後の経過はよく、排尿障害もなく順調に回復していた。術後12日目のバイタルサイン測定時に「身体のほてりがあり、急に汗が出るようになったりして、夜もよく眠れません。そのためかイライラします」と看護師に訴えた。
 Aさんに出現している症状の原因はどれか。

1.エストロゲンの減少
2.プロラクチンの減少
3.アンドロゲンの増加
4.オキシトシンの増加
5.プロゲステロンの増加

解答1

解説

本症例のポイント

・診断:子宮体癌
準広汎子宮全摘出術と両側付属器(卵巣、卵管)切除術
・術後の経過はよく、排尿障害もなく順調に回復していた。
・術後12日目:身体のほてり発汗不眠イライラ
→Aさんは卵巣を摘出したことにより「エストロゲンの減少」が考えられる。エストロゲンの減少により、更年期障害を呈しやすくなるため観察が必要である。更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

1.〇 正しい。エストロゲンの減少は、Aさんに出現している症状の原因である。エストロゲン(女性ホルモン)は卵巣で分泌されるホルモンである。卵巣を摘出したことで、エストロゲンが減少し、更年期障害の症状(身体のほてり、発汗、不眠、イライラ)がみられていると考えられる。
2.× プロラクチンは「減少」ではなく変化しない。プロラクチン(乳汁分泌ホルモン、催乳ホルモン)は、脳下垂体前葉から分泌され、乳腺を刺激して母乳の分泌を促進する働きがある。
3.× アンドロゲンは、「増加」ではなく低下する。なぜなら、女性では、主に卵巣で産生され、Aさんは卵巣摘出しているため。アンドロゲン(男性ホルモン)は、精巣(睾丸)から分泌される。テストステロン、デヒドロエピアンドロステロンなどの成分、その代謝物(ジヒドロテストステロンなど)が含まれる。
4.× オキシトシンは「減少」ではなく変化しない。オキシトシンは、下垂体後葉から分泌されるホルモンで、乳汁排出や分娩時の子宮収縮作用がある。
5.× プロゲステロン(黄体ホルモン)は、「増加」ではなく低下する。なぜなら、女性では、主に卵巣で産生され、Aさんは卵巣摘出しているため。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、主に妊娠を維持する役割を担う。排卵を終えた卵胞が変化した黄体、もしくは妊娠中は胎盤から分泌され、子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態にすることや基礎体温を上昇させる働きがある。

 

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