第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午前101~105】

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次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aちゃん(生後24日、女児)は両親と3人暮らし。母親が母子健康手帳の便色カードを見て、Aちゃんの便色が気になったため、Aちゃんを連れて近所の小児科医院を受診した。Aちゃんは在胎39週、出生体重3,100g、出生時に異常はない。
 現在、混合栄養で体重は3,700gである。体温37.2℃、呼吸数36/分、心拍数108/分、整、血圧78/44mmHg。眼球結膜に黄染を認める。
 血液検査結果:Hb12.6g/dL、白血球7,800/μL、血小板21万/μL、プロトロンビン時間〈PT〉88%、総ビリルビン11.3mg/dL、直接ビリルビン9.5mg/dL、AST96U/L、ALT126U/L。
 紹介先の病院で腹部超音波検査を実施した結果、Aちゃんは胆道閉鎖症の疑いがあり入院した。

101 Aちゃんは入院7日に術中胆道造影検査で胆道閉鎖症と確定診断された。手術は無事に終了した。術後は絶食となり、腹腔ドレーンが挿入され、持続的点滴静脈内注射が行われている。母親は疾患や治療について理解している。術後3日、付き添っていた母親は看護師に「Aはおなかが空いて泣き止まないし、私はAを抱っこもできず、何もしてあげられません。つらいです」と涙を浮かべて話した。
 看護師の母親への対応で、最も適切なのはどれか。

1.話しかけやおしゃぶりの活用など母親ができることを伝える。
2.早期発見だったのでAちゃんは早く退院できると説明する。
3.心療内科の受診を勧める。
4.患者家族会を紹介する。

解答1

解説

1.〇 正しい。話しかけやおしゃぶりの活用など母親ができることを伝える。なぜなら、術後3日の母親は、「Aはおなかが空いて泣き止まないし、私はAを抱っこもできず、何もしてあげられませんつらいです」と涙を浮かべているため。母親は、なにもしてあげられない無力感に自責していると考えられる。看護師として、その気持ちを傾聴共感し、なにかできることを提示することが大切である。
2.× 早期発見だったのでAちゃんは「早く退院できる」と説明するべきではない。なぜなら、退院の判断は主に医師によるため。また、手術は無事に終了し、経過良好であっても、今後、症状が悪化する可能性もある。揉める原因ともなるため、安易な慰めはするべきではない。
3.× 心療内科の受診を勧める必要はない。なぜなら、母親に精神的な疾患の兆候は見られないため。ちなみに、心療内科とは、様々なストレスが要因で、身体に症状が現れる症状を扱う診療科である。また、もしそのような症状がみられたとしても、直接母親に言うのではなく、チームアプローチであるため医師やその他の専門職に報告・相談・連絡する必要がある。
4.× 患者家族会を紹介する必要はない。なぜなら、家族会とは、精神障害者(例えば、アルコール依存症など)を家族にもつ人たちが、お互いに悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあう会であるため。 支えあいを通して、地域で安心して生活できるための活動を行っている。一方的に講談するのではなく、それぞれが相互的に話し合う会である。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aちゃん(生後24日、女児)は両親と3人暮らし。母親が母子健康手帳の便色カードを見て、Aちゃんの便色が気になったため、Aちゃんを連れて近所の小児科医院を受診した。Aちゃんは在胎39週、出生体重3,100g、出生時に異常はない。
 現在、混合栄養で体重は3,700gである。体温37.2℃、呼吸数36/分、心拍数108/分、整、血圧78/44mmHg。眼球結膜に黄染を認める。
 血液検査結果:Hb12.6g/dL、白血球7,800/μL、血小板21万/μL、プロトロンビン時間〈PT〉88%、総ビリルビン11.3mg/dL、直接ビリルビン9.5mg/dL、AST96U/L、ALT126U/L。
 紹介先の病院で腹部超音波検査を実施した結果、Aちゃんは胆道閉鎖症の疑いがあり入院した。

102 術後5日、Aちゃんは経口摂取が可能になり順調に経過している。医師から母親に、胆汁の排泄を促すために利胆薬の内服が重要であると説明があり、散剤が処方された。母親から看護師に「赤ちゃんに粉の薬をどうやって飲ませたらよいのでしょうか」と質問があった。看護師は散剤を( )に混ぜて飲ませることを説明した。
 ( )に入るのはどれか。

1.果汁
2.白湯
3.人工乳
4.はちみつ

解答2

解説

本症例のポイント

術後5日:経口摂取可能、経過順調。
・医師から「胆汁の排泄を促すために利胆薬(散剤:粉薬)の内服が重要である」
・母親「赤ちゃんに粉の薬をどうやって飲ませたらよいのでしょうか」と。

【小児への与薬】
①哺乳と哺乳の間や哺乳直前の空腹時に与薬をすすめる(授乳直後の満腹時に与薬すると嫌がったり、嘔吐することがあるため)
②ミルクや離乳食には決して混ぜてはならない(ミルク嫌いや偏食の原因になるため)
③散剤が処方された場合は、白湯や糖水(砂糖水)に溶解する。
〜全量が服薬できるようにするための工夫〜
・散剤の量に合わせてなるべく少量の水分で行う。
・少量の水分で練ってペースト状にしたものを頬の奥や上顎などの口腔内につけ、その後水分を飲ませて与薬をすすめる。

1.× 果汁を与えはじめるのは、一般的に生後5~6か月からである。離乳食開始の準備をするタイミングで、果物をすり潰したり搾ったりして出た水分を白湯などで薄めて与える。早い段階での果汁の投与は、消化不良から下痢を起こす恐れがある。
2.〇 正しい。白湯と混ぜて飲ませる。他にも砂糖水で飲ませても良い。全量が服薬できるようにするための工夫として、①散剤の量に合わせてなるべく少量の水分で行う。②少量の水分で練ってペースト状にしたものを頬の奥や上顎などの口腔内につけ、その後水分を飲ませて与薬をすすめることがあげられる。
3.× 人工乳と混ぜてはならない。なぜなら、散剤は苦く、主なエネルギー源であるミルクに混ぜてしまうと、ミルク嫌いになり栄養が摂取できなくなる可能性があるため。また、ミルクを残した場合に薬を全量服用できないおそれもあるため。
4.× はちみつは1歳未満に与えてはならない。なぜなら、はちみつにはボツリヌス菌が含まれているため。厚生労働省は、腸内環境が整っていない1歳未満の乳児にはちみつを与えると乳児ボツリヌス症を発生する危険性が高いため、与えないように注意喚起をしている。

ボツリヌス中毒症とは?

ハム、 キャビア、小児ではハチミツなどが原因となる。潜伏期は12~36時間で、毒素型食中毒に属し、発熱は通常目立たない。神経毒により末梢神経障害をきたし、球麻痺(発語障害、嚥下障害)、 外眼筋麻痺(複視、眼瞼下垂)、呼吸筋麻痺などをきたす。

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初産婦)はX年2月5日に妊婦健康診査のために来院した。X年2月のカレンダーにAさんの受診日と分娩予定日を示す。

103 看護師は、医師からAさんの母子健康手帳に受診時の妊娠週数と日数を記入するよう依頼された。
 Aさんの受診時の妊娠週数および日数で正しいのはどれか。

1.妊娠35週5日
2.妊娠35週6日
3.妊娠36週5日
4.妊娠36週6日

解答3

解説

一般的な分娩予定日は、妊娠40週0日目(280日目)経過後である。

①Aさんの分娩予定日は、2月28日である。

②受診日は、2月5日である。

2月5日は、一般的な分娩予定日(妊娠40週0日目)の3週間2日前であるため、選択肢3.妊娠36週5日がAさんの受診時の妊娠週数および日数である。

 

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初産婦)はX年2月5日に妊婦健康診査のために来院した。X年2月のカレンダーにAさんの受診日と分娩予定日を示す。

104 AさんにLeopold<レオポルド>触診法で触診を行ったところ、第2胎向で、子宮底付近にやや柔らかい球状の塊を、恥骨結合側に硬い球状のものを触れた。
 腹部前面を図に示す。Aさんの胎児心音聴取部位で適切なのはどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④

解答3

解説

(※画像引用:「Leopold触診法」看護roo!イラスト集)

Leopold触診法とは?

レオポルド触診法とは、母体の腹壁に触れることで子宮の収縮状態、子宮底の位置、胎児の数、胎向、胎位、胎勢、先進部、下降度などの観察が目的である。妊娠27週頃から可能で、児頭は固く丸く、四肢は小部分として触れる。

【触診法】
第1段法:子宮底の位置や高さ、形、胎児部分を触診する。
第2段法:一方の手で胎児小部分を確認し、他方の手で胎向を確認する。子宮の形、大きさ、緊張度、羊水量、胎動、胎向をみる。
第3段法:恥骨結合上の胎児部分を触診し、可動性(移動性)をみる。
第4段法:恥骨結合と胎児の下降部に指先を挿入して、下降部と骨盤進入度合いを確認する。

1.× ①は、第1胎向骨盤位の場合の胎児心音聴取部位である。
2.× ②は、第1胎向頭位の場合の胎児心音聴取部位である。
3.〇 正しい。が、Aさんの胎児心音聴取部位である。なぜなら、Aさんは第2胎向で、子宮底付近にやや柔らかい球状の塊(殿部)を、恥骨結合側に硬い球状のもの(頭部)を触れたため。Aさんは第2胎向頭位である。ちなみに、母親の左手側で心音が聞ければ第1胎向、一方母親の右手側で心音が聞ければ第2胎向である。
4.× ④は、第2胎向骨盤位の場合の胎児心音聴取部位である。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

 

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初産婦)はX年2月5日に妊婦健康診査のために来院した。X年2月のカレンダーにAさんの受診日と分娩予定日を示す。

105 Aさんは「自分の子どもが生まれて、どんなふうにあやすかな、とか、オムツを替えるかなと自分が子育てをしている場面を思い浮かべます」と笑顔で話している。看護師はAさんの様子をルービン,R.が示した母親役割獲得過程に当てはめてどの段階にあるかをアセスメントした。
 Aさんのアセスメントで適切なのはどれか。

1.空想
2.模倣
3.取り込み
4.ロールプレイ

解答1

解説

Rubinの母親役割

ルービン,R.による母親役割獲得過程とは、①模倣、②ロールプレイ、③空想、④取り込みー投影ー拒絶、⑤悲嘆作業の5つの認識的操作を行いながら児との心理的絆形成が進むプロセスである。

①模倣:先輩母親や専門家の行動を母親役割のモデルとし、真似をすること。
②ロールプレイ:自分のお腹にいる子どもや他者の子どもを通して、母親たちが一般的に体験していることを自分も同じように体験すること。
③空想:自分の子どもや自分自身の状況を思い描くこと。
④取り込みー投影ー拒絶:空想した行動や態度などを母親役割のモデルとして自分に投影し、それを受け入れるか拒絶するかを吟味すること。
⑤悲嘆作業:母親としての自分とは立場が異なる過去の自分について思い起こし、妊娠によってできなくなったことや今度変化すると思われることについて考え、嫌だと思ったりあきらめたりすること。

母親として適応するための褥婦の心理的過程を3つの時期に分ける。
①受容期(自分自身の基本的欲求に意識が向けられる時期):産褥1~2日目(赤ちゃんを指先で触れたり、抱っこしたりすることで自分の子供だと認識する)
②保持期(自分の体のセルフケアができ、赤ちゃんの欲求に関心がうつり、子供との関係づくりが始まる時期):産褥3~10日間(喜びと同時に、母親としての能力があるかどうか不安を抱いたり、些細な周囲の言葉が傷つく)
③解放期(ママとしての課題を果たす時期):産褥10日~1か月(子供と母親がお互い理解し合っていきますが、子供の要求が多すぎてママは応えきれずに罪悪感を抱き、自らの存在に対し否定的になることもある)
これらの3つの段階を通して、母親役割を獲得する。

1.〇 正しい。空想が該当する。空想とは、自分の子どもや自分自身の状況を思い描くこと。Aさん「自分の子どもが生まれて、どんなふうにあやすかな、とか、オムツを替えるかなと自分が子育てをしている場面を思い浮かべます」と言っていることからも空想に当てはまる。
2.× 模倣とは、先輩母親や専門家の行動を母親役割のモデルとし、真似をすることである。
3.× 取り込み(取り込みー投影ー拒絶)とは、空想した行動や態度などを母親役割のモデルとして自分に投影し、それを受け入れるか拒絶するかを吟味することである。
4.× ロールプレイとは、自分のお腹にいる子どもや他者の子どもを通して、母親たちが一般的に体験していることを自分も同じように体験することである。

 

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