第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午前111~115】

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次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aさん(68歳、男性、自営業)は、妻(73歳)と2人暮らし。Aさんの就寝時刻は21時で、入眠後90分以上が経過した睡眠中に、大声で叫び、腕や足を振り回し暴れる行動が繰り返しみられたが、昼寝では夜間のような行動はみられない。日中、台所で子どもが遊んでいると言い、妻が台所を確認しても誰もいないことが何度かあった。心配になった妻がAさんとともに病院を受診し、Lewy<レビー>小体型認知症と診断された。

111 Aさんの入院中に妻は自営業の仕事を減らし、自宅でAさんを介護する準備を整えた。Aさんが退院し、3か月が経過したころ、Aさんの妻が3週間程度の予定で入院して手術をすることになった。Aさんは杖を使用し散歩ができるが、入浴や食事については妻が介護を行っていた。
 妻の入院中にAさんに必要なサービスはどれか。

1.短期入所<ショートステイ>
2.精神科病院への入院
3.重度訪問介護
4.同行援護

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさんが退院。
・3か月が経過:妻が手術予定3週間程度
・Aさん:杖にて散歩可能、入浴や食事(妻が介護)
→妻がいない3週間程度の期間を、Aさんの入浴や食事の介助をしてもらえるサービスを選択する。

1.〇 正しい。短期入所<ショートステイ>は、妻の入院中にAさんに必要なサービスである。短期入所とは、利用者が可能な限り自己の生活している居宅において、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるように、利用者に短期間入所してもらい、入浴、排泄、食事などの介護や日常生活上の世話及び機能訓練を行うサービスである。
2.× 精神科病院への入院の優先度は低い。なぜなら、Aさんは精神疾患の悪化はみられていないため。退院し、3か月無事に経過していることからもレビー小体型認知症の症状も比較的安定しているとも考えられる。
3.× 重度訪問介護とは、重度の肢体不自由または知的障害もしくは精神障害があり常に介護を必要とする方に対して、ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの介護、調理、洗濯、掃除などの家事、生活等に関する相談や助言など、生活全般にわたる援助や外出時における移動中の介護を総合的に行う『障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律』の障害福祉サービスである。重度の肢体不自由者で常時介護を必要とする人を対象とした居宅介護である。
4.× 同行援護とは、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の当該障害者等が外出する際の必要な援助を行う。【対象者】視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等であって、同行援護アセスメント調査票による、調査項目中「視力障害」、「視野障害」及び「夜盲」のいずれかが1点以上であり、かつ、「移動障害」の点数が1点以上の者とされている。

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(23歳、女性)は大学を卒業後、会社に就職して1人暮らしを始めた。入社後に「会社の制服が似合うようになりたい」とダイエットを始め、次第にるいそうが目立つようになった。「太るのが怖い」と言って食事を拒否するようになり、体重は1年間で10kg減少した。しかし、本人は「まだ太っているから、痩せないといけない」と話していた。久しぶりにAさんと会った母親が、過度のるいそうを心配して、内科受診を勧めた。内科ではるいそう以外に大きな異常を認めず、精神科受診を勧められた。精神科では神経性無食欲症と診断され、外来通院を開始した。その後、低血糖によるふらつきのため職場で頻回に転倒するようになった。それでも食事を十分に摂らないため、精神科病棟へ入院した。入院時、身長166cm、体重36kgであった。入院後、食事のほかに点滴による栄養補給が始まった。

112 治療開始早期に看護師が最も注意すべき観察項目はどれか。

1.脱毛
2.浮腫
3.抑うつ
4.嚥下障害

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(23歳、女性、神経性無食欲症
・大学卒業後:会社に就職して1人暮らしを始めた。
・入社後ダイエットを始め、次第にるいそうが目立つ。
・太ることへの恐怖、体重減少(1年10kg減)
・Aさん「まだ太っているから、痩せないといけない」と
・内科ではるいそう以外に大きな異常を認めない。
・低血糖によるふらつき、頻回に転倒する。
【精神科病棟へ入院】。
・入院時:身長166cm体重36kg(BMI:13)
・入院後:食事と、点滴による栄養補給が始まった。
→神経性無食欲症とは、思春期~青年期の若い女性に発症しやすい。神経性無食欲症の主な特徴は以下の通りである。①病的な痩せ願望、②ボディーイメージのゆがみ、③極端な食べ物制限と下剤などの乱用、④月経の停止、うぶげの増加、⑤乳房委縮はみられない、⑥性格的には頑固で競争心が強い、⑦母親との心的葛藤をみることがある。

1.× 「脱毛」もみられることはあるが、主な症状としてはうぶげの増加である。なぜなら、食べずにやせ細った体を守るためである。脱毛にしても生命に関連しないため、そこまで優先的に観察すべき項目ではない。
2.〇 正しい。浮腫は、治療開始早期に看護師が最も注意すべき観察項目である。神経性無食欲症で見られるむくみの原因は、低アルブミン血症、つまり栄養失調によるものである。体重が著しく減少すると、腎臓の機能が低下してむくみの原因となる。利尿剤を使った場合は、低カリウム血症になる恐れがあるため注意が必要である。また、再栄養症候群(リフィーディング症候群)にも配慮しなければならない。再栄養症候群とは、慢性的な栄養障害がある状態に対して、急激に栄養補給を行うと発症する、代謝性の合併症です。 飢餓状態が長く続いたあとに急に栄養補給されると、心不全や呼吸不全、腎不全、肝機能障害ほか多彩な症状を呈することがある。
3.× 抑うつは、生命に関連しないため、そこまで優先的に観察すべき項目ではない。低栄養や体重減少によって、また大食や嘔吐によって抑うつ気分や不安、強迫、性格の変化、自己嫌悪、無気力などの精神症状を引き起こすことがある。
4.× 嚥下障害は生じない。

摂食障害とは?

摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用、抑うつの症状がみられる。特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。

①神経性無食欲症は、思春期~青年期の若い女性に発症しやすい。神経性無食欲症の主な特徴は以下の通りである。①病的な痩せ願望、②ボディーイメージのゆがみ、③極端な食べ物制限と下剤などの乱用、④月経の停止、うぶげの増加、⑤乳房委縮はみられない、⑥性格的には頑固で競争心が強い、⑦母親との心的葛藤をみることがある。

 

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(23歳、女性)は大学を卒業後、会社に就職して1人暮らしを始めた。入社後に「会社の制服が似合うようになりたい」とダイエットを始め、次第にるいそうが目立つようになった。「太るのが怖い」と言って食事を拒否するようになり、体重は1年間で10kg減少した。しかし、本人は「まだ太っているから、痩せないといけない」と話していた。久しぶりにAさんと会った母親が、過度のるいそうを心配して、内科受診を勧めた。内科ではるいそう以外に大きな異常を認めず、精神科受診を勧められた。精神科では神経性無食欲症と診断され、外来通院を開始した。その後、低血糖によるふらつきのため職場で頻回に転倒するようになった。それでも食事を十分に摂らないため、精神科病棟へ入院した。入院時、身長166cm、体重36kgであった。入院後、食事のほかに点滴による栄養補給が始まった。

113 入院後2週が経過した。食事のときにAさんは食べ物を細かく刻み、1時間以上時間をかけるが、摂取量は全体の25%程度である。時間があるとベッド上でいつもストレッチを行っている。Aさんと話し合ったところ「私はこの病棟で太っているほうだから少しでも痩せなきゃ」と話した。
 看護師の関わりとして適切なのはどれか。

1.体重測定の回数を増やす。
2.鏡でAさんの全身を映して見せる。
3.痩せたいと思う気持ちについて話し合う。
4.Aさんは他の患者よりも痩せていると伝える。

解答3

解説

本症例のポイント

・入院後2週
・食事(摂取量25%程度):1時間以上時間をかける。
・時間があるとベッド上でストレッチを行う(過活動)。
・Aさん「私はこの病棟で太っているほうだから少しでも痩せなきゃ」と。
→神経性無食欲症は、思春期~青年期の若い女性に発症しやすい。神経性無食欲症の主な特徴は以下の通りである。①病的な痩せ願望、②ボディーイメージのゆがみ、③極端な食べ物制限と下剤などの乱用、④月経の停止、うぶげの増加、⑤乳房委縮はみられない、⑥性格的には頑固で競争心が強い、⑦母親との心的葛藤をみることがある。

【接し方のポイント】
①ストレス解消、②食べ物以外へ関心を向ける、③自信の回復(自己表出、他者からの共感、自己管理)、④過度の活動をさせない、⑤身体症状、行動化に注意する。

1.× 体重測定の回数を増やす必要はない。むしろ回数を決めたり、減らす約束はかえって症状を悪化させる。一般的に、神経性無食欲症の患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。体重・食べ物以外へ関心を向けるよう支援する。
2.× 鏡でAさんの全身を映して見せる必要はない。なぜなら、鏡で見てもボディーイメージのゆがみ(身体像の障害)の改善は見込めないため。ボディイメージとは、人間が身体について持つイメージのことである。 または身体に対してその人が持つ意識的または無意識的な認識のことでもある。つまり、ボディイメージの歪みとは、自分の体型や体重に対する正しい認識ができなくなり、著しい低体重にもかかわらず、「まだ太っている」と感じてしまうことである。
3.〇 正しい。痩せたいと思う気持ちについて話し合う。なぜなら、肥満恐怖という症状もあるが、性格において、自己評価が低いこともあげられる。自信の回復(自己表出、他者からの共感、自己管理)のため話し合うことも大切である。
4.× Aさんは他の患者よりも痩せていると伝える必要はない。むしろ他者と比較する発言はかえって症状を悪化させる。一般的に、神経性無食欲症の患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。体重・食べ物以外へ関心を向けるよう支援する。

 

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(23歳、女性)は大学を卒業後、会社に就職して1人暮らしを始めた。入社後に「会社の制服が似合うようになりたい」とダイエットを始め、次第にるいそうが目立つようになった。「太るのが怖い」と言って食事を拒否するようになり、体重は1年間で10kg減少した。しかし、本人は「まだ太っているから、痩せないといけない」と話していた。久しぶりにAさんと会った母親が、過度のるいそうを心配して、内科受診を勧めた。内科ではるいそう以外に大きな異常を認めず、精神科受診を勧められた。精神科では神経性無食欲症と診断され、外来通院を開始した。その後、低血糖によるふらつきのため職場で頻回に転倒するようになった。それでも食事を十分に摂らないため、精神科病棟へ入院した。入院時、身長166cm、体重36kgであった。入院後、食事のほかに点滴による栄養補給が始まった。

114 入院後3か月が経過した。Aさんは体重が41kgまで増加し、主治医と相談して、退院の準備をすることになった。看護師に対して、Aさんは「退院後はすぐに仕事をしたい」と話したが、母親は「ゆっくり自宅で休養してほしい」と話した。母親の面会時に、今後の仕事や生活に関する話題が出ると、Aさんはイライラして母親と口論になることが多くなった。父親は仕事が忙しいことを理由に、面会に来たのは一度のみであった。
 今後導入する必要性が最も高いのはどれか。

1.家族療法
2.作業療法
3.自律訓練法
4.精神分析療法

解答1

解説

本症例のポイント

・入院後3か月(退院予定)
・Aさん「退院後はすぐに仕事をしたい」と。
・母親「ゆっくり自宅で休養してほしい」と。
・Aさんと母親は口論になる(今後の仕事や生活について)
・父親:面会に来たのは一度のみ(仕事が忙しい)

1.〇 正しい。家族療法が今後導入する必要性が最も高い。なぜなら、Aさんと母親とは今後の仕事と生活についての意見に相違がみられ(過干渉ぎみ?)、父親は無関心な様子がみられるため。ちなみに、家族療法とは、家族を対象とした心理療法の総称である。摂食障害・アルコール依存症の治療などに用いられる。
2.× 作業療法とは、心身の障害がある人に対して、料理や工芸といった自立に必要な作業を治療に取り入れることで、精神的・身体的・社会的能力の改善や維持に貢献する治療法である。
3.× 自律訓練法とは、自己催眠法の手続きの一つで自分に暗示をかけてリラックスを促し心身を整える方法である。主に不安性障害に用いられる。
4.× 精神分析療法とは、自由連想法により無意識のうちに抑圧されていた葛藤を意識化させ、洞察し解決に向かわせるというものである。神経症性障害に適応がある。

 

 

 

 

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 Aさん(73歳、女性)は夫(73歳)と2人暮らし。6年前にParkinson<パーキンソン>病と診断され、レボドパ<L-dopa>を1日3回内服している。Hoehn-Yahr<ホーエン・ヤール>重症度分類のステージⅢ、要介護1である。夫が付き添い神経内科外来に月1回、杖歩行で通院している。外来受診のとき、Aさんは足がすくんで転びやすくなったことを主治医に相談し、レボドパ<L-dopa>を1日4回に増量して様子を見ることになった。Aさんと夫は薬の副作用<有害事象>について外来看護師に尋ねた。

115 外来看護師がAさんと夫に説明する副作用<有害事象>の内容で正しいのはどれか。

1.低血糖
2.体重増加
3.呼吸器症状
4.不随意運動

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(73歳、女性、6年前:パーキンソン病
・2人暮らし:夫(73歳)
・Hoehn-Yahr重症度分類のステージⅢ、要介護1。
・Aさんは足がすくんで転びやすくなった。
・L-dopa:1日3回から4回に増量して様子を見ることになった。
→パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

1.× 低血糖症状は、糖尿病(インスリン)や抗不整脈薬などの副作用で生じる。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。
2.× 体重増加は、抗精神病薬(抗ヒスタミン作用)や副腎皮質ステロイド薬などの副作用で生じる。ステロイドの副作用として、軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌、重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)などがあげられる。
3.× 呼吸器症状(喘息発作の誘発など)は、降圧剤があげられる。
4.〇 正しい。不随意運動が、L-dopaの副作用<有害事象>である。脳内でドパミンに変化し、ドパミン系の神経を活性化させ、結果として体の動きがよくなり、パーキンソン病の諸症状が改善される。副作用として、ジスキネジア、起立性低血圧(立ちくらみ)、幻覚、妄想、せん妄などがある。ジスキネジアとは、自分の意志とは無関係に身体が動いてしまう不随意運動である。主に口部周辺、頚部で起こる。ちなみに、抗Parkinson病薬の長期使用による副作用として、wearing-off現象がみられる。wearing-off現象とは、薬効時間が短縮し、内服してから短時間でパーキンソニズムが出現する現象である。

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

 

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