第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午前26~30】

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26 正常な心臓で心拍出量が減少するのはどれか。

1.心拍数の増加
2.大動脈圧の上昇
3.静脈還流量の増加
4.心筋収縮力の上昇

解答2

解説
1.× 心拍数は、「増加」ではなく減少で、心拍出量が減少する。心拍出量は、「1回心拍数」×「心拍数」である。心拍出量とは、1分当たりに心臓から全身へ送り出される血液量である。一回拍出量は、基礎収縮力、前負荷・後負荷の影響を受ける。運動開始から軽い運動中は、主に一回拍出量の増加に伴った心拍出量の増加が起こっている。
2.〇 正しい。大動脈圧の上昇(心臓の後負荷)は、心拍出量が減少する。後負荷とは、心室が末梢血管の抵抗に逆らって血液を送り出すために必要な圧力である。
3.× 静脈還流量(心臓の前負荷)は、「増加」ではなく減少で、心拍出量が減少する。前負荷とは、血液が心臓に流入する際に心臓にかかる負荷のことである。静脈還流量(心臓の前負荷)が増大することで、心拍出量も増加し、筋などの運動器への血流量の増加に貢献する。
4.× 心筋収縮力は、「上昇」ではなく低下で、心拍出量が減少する。Frank-Starlingの法則(フランクスターリングの法則)とは、心筋は伸展されればされるほど、収縮力が増加することである。

 

 

 

 

 

27 ワクチン接種後の抗体産生について正しいのはどれか。

1.ワクチン内の抗原を提示するのは好中球である。
2.抗原に対して最初に産生される抗体はIgAである。
3.抗原に対して血中濃度が最も高くなる抗体はIgMである。
4.同じワクチンを2回接種すると抗原に対する抗体の産生量が増加する。

解答4

解説
1.× ワクチン内の抗原を提示するのは、「好中球」ではなく抗原提示細胞(マクロファージなど)である。マクロファージとは、単球から分化し、貧食能を有する。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。ちなみに、好中球は、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。
2.× 抗原に対して最初に産生される抗体は、「IgA」ではなくIgMである。ちなみに、IgAとは、体内では2番目に多い免疫グロブリンで、鼻汁、涙腺、唾液、消化管、膣など、全身の粘膜に存在している。IgAは、粘膜の表面で病原体やウイルスと結合し、病原体やウイルスが持っている毒素を無効化して感染しないように阻止する働きがある。
3.× 抗原に対して血中濃度が最も高くなる抗体は「IgM」ではなくIgGである。IgGとは、IgMが生成された後に生成され始める。一般的に抗体検査というとこのIgGを調べることが多い。比較的長期間持続されるとされており、その期間は数ヶ月〜数年とウイルスによって異なる。
4.〇 正しい。同じワクチンを2回接種すると抗原に対する抗体の産生量が増加する。これを二次免疫応答という。IgGは最も多い型の抗体で、過去に出会った抗原に再び遭遇したときに作られる。この反応は二次免疫反応と呼ばれ、一次免疫反応時に比べ、多くの抗体が作られる。二次応答に対して、1回目の反応のことを一次応答という。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

28 B細胞が抗原認識によって分化した抗体産生細胞はどれか。

1.マクロファージ
2.形質細胞
3.肥満細胞
4.T細胞

解答2

解説
1.× マクロファージとは、単球から分化し、貧食能を有する。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。
2.〇 正しい。形質細胞は、B細胞が抗原認識によって分化した抗体産生細胞である。形質細胞とは、B細胞が成熟したもので、抗体を作って自然免疫の働きを助ける。つまり、体に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する作用を持つ蛋白質(抗体)を産生する。ちなみに、メモリーB細胞とは、一度侵入した減病態の情報を記憶し、病気にかかりにくい状態を作る働きを持つ。
3.× 肥満細胞(マスト細胞)とは、アレルギー反応に関与している組織である。肥満細胞は体中の血管周囲、特に皮膚や皮下組織、肺、消化管、肝臓などに広く存在し、IgE抗体を結合し、Ⅰ型(即時型)アレルギー反応を引き起こす。
4.× T細胞とは、血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種である。胸腺(thymus)でつくられるため、頭文字を取ってT細胞と名付けられた。T細胞は膠原特異的な免疫応答である獲得免疫に関与する。免疫応答を促進するヘルパーT細胞、逆に免疫反応を抑制するサプレッサーT細胞、病原体に感染した細胞や癌細胞を直接殺すキラーT細胞などに分類される。

 

 

 

 

 

29 皮膚筋炎の皮膚症状はどれか。

1.環状紅斑
2.蝶形紅斑
3.ディスコイド疹
4.ヘリオトロープ疹

解答4

解説
1.× 環状紅斑とは、環状(輪状)の赤い色をした特徴的な皮膚症状のことである。原因は様々であるが①細菌感染(溶血レンサ球菌など)やウイルス感染症に続発した感染アレルギーとして起こるもの②薬剤性のもの③ベージェット病や潰瘍性大腸炎、クローン病などの内科疾患に続発したもの④原因不明の特発性のものなどがある。
2.× 蝶形紅斑とは、顔面で、鼻を中心に頬まで左右対称に生じる鮮紅色ないし暗紫紅色のわずかに隆起した丘疹のことで、蝶が羽を広げたような形にみえる。原因として、全身性エリテマトーデ(SLE)に特徴的な所見である。ちなみに、全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。
3.× ディスコイド疹とは、痒みを伴わないかさかさした、ささくれだった赤い発疹のことを指す。顔面、耳介、頭部、関節背面などによくみられ、当初は紅斑であるが、やがて硬結、角化、瘢痕、萎縮をきたす。原因として、全身性エリテマトーデ(SLE)に特徴的な所見である。
4.〇 正しい。ヘリオトロープ疹は、皮膚筋炎の皮膚症状である。ヘリオトロープ疹とは、上眼瞼の腫れぼったい紅斑のことである。

多発性筋炎(皮膚筋炎)とは?

多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

30 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律<育児・介護休業法>における介護休業の取得で正しいのはどれか。

1.介護休業は分割して取得することはできない。
2.介護の対象者1人につき半年を限度に取得できる。
3.要介護状態にある配偶者を介護するために取得できる。
4.介護老人福祉施設に入所している家族の面会のために取得できる。

解答3

解説

育児介護休業法とは?

育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)とは、育児・介護に携わる労働者について定めた日本の法律である。①労働者の育児休業、②介護休業、③子の看護休暇、④介護休暇などが規定されている。

1.× 介護休業は分割して取得することは「できない」のではなくできる。11条1項には、「当該対象家族について三回の介護休業をした場合」は、申出をすることができないことが記載されている。つまり、3回を上限として介護休業を分割して取得できる。
2.× 介護の対象者1人につき「半年」ではなく93日を限度に取得できる。11条には、「労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、第三項に規定する介護休業開始予定日から起算して九十三日を経過する日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる」と記載されている。
3.〇 正しい。要介護状態にある配偶者を介護するために取得できる。対象家族は、配偶者(事実婚を含む)の他にも父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫が該当する。これは2条4項に記載されている。
4.× 介護老人福祉施設に入所している家族の「面会のため」には取得できない。介護休業とは、労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するための休業である。①市町村、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどへの相談、②介護サービスの手配、③家族で介護分担を決定、④民間事業者やボランティア、地域サービスなど利用できるサービスを探すことなどの活用をする。(※参考:「介護休業とは?」厚生労働省HPより)

育児介護休業法(11条)

第三章 介護休業
(介護休業の申出)
第十一条 労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、第三項に規定する介護休業開始予定日から起算して九十三日を経過する日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、介護休業をしたことがある労働者は、当該介護休業に係る対象家族が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該対象家族については、同項の規定による申出をすることができない。
一 当該対象家族について三回の介護休業をした場合
二 当該対象家族について介護休業をした日数(介護休業を開始した日から介護休業を終了した日までの日数とし、二回以上の介護休業をした場合にあっては、介護休業ごとに、当該介護休業を開始した日から当該介護休業を終了した日までの日数を合算して得た日数とする。第十五条第一項において「介護休業日数」という。)が九十三日に達している場合
3 第一項の規定による申出(以下「介護休業申出」という。)は、厚生労働省令で定めるところにより、介護休業申出に係る対象家族が要介護状態にあることを明らかにし、かつ、その期間中は当該対象家族に係る介護休業をすることとする一の期間について、その初日(以下「介護休業開始予定日」という。)及び末日(以下「介護休業終了予定日」という。)とする日を明らかにして、しなければならない。
4 第一項ただし書及び第二項(第二号を除く。)の規定は、期間を定めて雇用される者であって、その締結する労働契約の期間の末日を介護休業終了予定日(第十三条において準用する第七条第三項の規定により当該介護休業終了予定日が変更された場合にあっては、その変更後の介護休業終了予定日とされた日)とする介護休業をしているものが、当該介護休業に係る対象家族について、当該労働契約の更新に伴い、当該更新後の労働契約の期間の初日を介護休業開始予定日とする介護休業申出をする場合には、これを適用しない。

(※引用:「育児介護休業法(11条)」e-GOV法令検索様HPより)

 

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