第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午前56~60】

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56 Aさん(83歳)は寝たきり状態で、便意を訴えるが3日間排便がみられない。認知機能に問題はない。昨晩下剤を内服したところ、今朝、紙オムツに水様便が少量付着しており、残便感を訴えている。
 このときのAさんの状態で考えられるのはどれか。

1.嵌入便
2.器質性便秘
3.切迫性便失禁
4.非急性感染性下痢

解答1

解説

本症例のポイント

83歳寝たきり状態(認知機能:問題なし)
便意あり
・3日間:排便なし。
・昨晩:下剤を内服。
・今朝:紙オムツに水様便が少量付着、残便感あり。
→本症例は、83歳と高齢で寝たきり状態である。便意があっても排便できない便秘の種類を選択する。ちなみに、加齢により、消化管は消化液の分泌低下、蠕動運動の低下、の運動低下、腹筋の弛緩、直腸内圧閾値上昇により、便秘傾向になる。また、寝たきりにより、重力により便が肛門におりにくく便秘になりやすい。

1.〇 正しい。嵌入便(読み:かんにゅうべん)が、Aさんの状態で考えられる。嵌入便とは、肛門の手前で固い便が貯まってしまい、自力で出すことができなくなった状態である。便意があっても訴えられない人や寝たきりの人などに多く見られる。
2.× 器質性便秘とは、胃や小腸、大腸、肛門などに何らかの疾患(大腸癌などの腫瘍性病変、腸閉塞、Crohn病に伴う狭窄など)があり、それが原因で便秘になっている状態をいう。
3.× 切迫性便失禁とは、便意は感じるものの、短い時間でも排便を我慢できずに、結果的にトイレにたどり着く前に便が漏れてしまうものである。原因には、肛門括約筋の衰え、肛門括約筋の運動を支配する末梢神経の障害、直腸で便を貯める機能の低下などがあげられる。
4.× 非急性感染性下痢とは、病原微生物により、便が軟便・泥状・水様となり、排便回数が1日に3回以上に増加する場合である。しばしば、嘔気嘔吐腹痛発熱などの症状を伴う。

加齢による便秘の原因

①身体活動や食事摂取量の低下(腸内容の減少、腸管壁への物理的 ・ 拡張刺激の減弱、腸局所血流の低下、腸管の緊張や蠕動運動の低下)
②腸管筋層の萎縮、結合織の増加(大腸を支える組織の緊張・運動の低下)
③大腸憩室の増加(腸管壁緊張低下の助長)
④腸の神経の変化
⑤腸管の分泌低下(便硬度の増大)
⑥腸がおならを吸収する機能の低下(腸管内腔の拡張、腸がおなかの中で曲がる部分の異常)
⑦直腸壁の感受性低下(排便反射の低下~消失)
⑧排便に関する筋力の低下(腹筋・横隔膜筋・骨盤底筋群等)
⑨高齢者に多くみられる疾患との関連(脳血管障害、肺気腫、心不全)
⑩高齢者のライフスタイルと心理的要因(少ない食事量)
⑪繊維成分の少ない食事内容、水分摂取の低下、便意の抑制
⑫浣腸や下剤の習慣性

(※引用:「便秘」健康長寿ネット様HPより)

 

 

 

 

 

57 発育と発達に遅れのない生後6か月の男児。BCG接種の翌日に接種部位が赤く腫れ次第に増悪して膿がみられたため、母親は接種後4日目に医療機関に電話で相談し、看護師が対応した。児に発熱はなく、哺乳や機嫌は良好である。
 このときの看護師の説明で適切なのはどれか。

1.「通常の反応です」
2.「速やかに来院してください」
3.「1週間後にまた電話をください」
4.「患部をアルコール消毒してください」

解答2

解説

本症例のポイント

・生後6か月男児(発育・発達:遅れなし)
・BCG接種の翌日:接種部位が赤く腫れ次第に増悪して膿がみられた。
・接種後4日目:医療機関に電話で相談し、看護師が対応。
・児:発熱はなく、哺乳や機嫌は良好である。
→BCG接種とは、結核による重い病気を予防する生ワクチンである。ワクチンの液を左腕に1滴たらし、はんこ型の注射を2回押して接種する。生後1歳になる前までに1回接種する。BCG接種は『予防接種法施行令』により生後1歳未満に1回接種を行うことが規定されている。BCG接種後の経過:通常、BCG接種後10日から2週間が経過したのちに発赤が出現し、接種1~2か月後に化膿巣ができ、瘢痕化する。一方で、結核に感染している乳児にBCG接種をした場合、10日以内に針痕部位に、発赤・化膿・腫れなどの反応が現れる。これをコッホ現象という。

1.× 通常の反応とは言えない。なぜなら、通常、BCG接種後10日から2週間が経過したのちに発赤が出現し、接種1~2か月後に化膿巣ができ、瘢痕化するため。結核に感染している乳児にBCG接種をした場合、10日以内に針痕部位に、発赤・化膿・腫れなどの反応が現れる。これをコッホ現象という。
2.〇 正しい。「速やかに来院してください」と伝える。なぜなら、結核が疑われるため。結核に感染している乳児にBCG接種をした場合、10日以内に針痕部位に、発赤・化膿・腫れなどの反応が現れる。これをコッホ現象という。
3.× 1週間後へ見送る必要はない。コッホ現象が疑われる場合には、小児科受診を勧め、精密検査を受ける必要がある。
4.× 患部をアルコール消毒する必要はない。コッホ現象が出現した場合でも、接種部位を清潔に保つ以外に日常生活上の特別の処置は不要である。

 

 

 

 

58 新生児の出血性疾患で正しいのはどれか。

1.生後48時間以内には発症しない。
2.母乳栄養児は発症のリスクが高い。
3.予防としてカルシウムを内服する。
4.早期に現われる所見に蕁麻疹がある。

解答2

解説

新生児ビタミンK欠乏性出血症とは?

新生児ビタミンK欠乏性出血症とは、出生後7日以内に起きるビタミンK欠乏に基づく出血性疾患である。出血斑や注射・採血など皮膚穿刺部位の止血困難、吐血、下血が認められ、重度の場合は頭蓋内出血など致命的な出血を呈する場合もある。特に第2~4生日に起こることが多いものの出生後24時間以内に発症することもある。合併症をもつ新生児やビタミンK吸収障害をもつ母親から生まれた新生児、妊娠中にワルファリンや抗てんかん薬などの薬剤を服用していた母親から生まれた新生児では、リスクが高くなる。また、新生児でビタミンK欠乏状態に陥るのは、①母乳中のビタミンK含量が少ないこと、②ビタミンKは経胎盤移行性が悪いこと、③出生時の生体内の蓄積量が元々少ないうえ、腸内細菌叢が十分には形成されていないことが理由として考えている。

1.× 生後48時間以内には発症しないと断言できない。第2~4生日に起こることが多いものの出生後24時間以内に発症することもある。
2.〇 正しい。母乳栄養児は発症のリスクが高い。なぜなら、母乳中にはビタミンK含有量が少ないため。他にも、リスクが高くなるものとして、①合併症をもつ新生児、②ビタミンK吸収障害をもつ母親から生まれた新生児、③妊娠中にワルファリンや抗てんかん薬などの薬剤を服用していた母親から生まれた新生児などである。
3.× 予防として「カルシウム」ではなく「ビタミンK2シロップ1mL(2mg)」を内服する。ビタミンK欠乏性出血症の予防には、出生直後および生後1週間(産科退院時)ならびに生後1か月の3回、ビタミンK2シロップ1mL(2mg)をすべての合併症のない成熟新生児に投与する方式が普及している。
4.× 早期に現われる所見に、蕁麻疹は認められない。症状には、出血斑や注射・採血など皮膚穿刺部位の止血困難、吐血、下血が認められ、重度の場合は頭蓋内出血など致命的な出血を呈する場合もある。ちなみに、蕁麻疹とは、皮膚の一部が突然に赤くくっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると跡かたなく消えてしまう病気で一般に食べ物や薬に対するアレルギー反応として起こると思われることが多い。

 

 

 

 

 

59 入院中の小児のストレス因子と発達段階の組合せで正しいのはどれか。

1.見慣れない環境:新生児期
2.プライバシーの侵害:幼児期
3.病気の予後への不安:学童期
4.母子分離:思春期

解答3

解説
1.× 見慣れない環境は、「新生児期」ではなく幼児後期以降である。乳幼児とは、小学校入学前の子どもの総称である。新生児とは、生後0日から28日未満の赤ちゃんのことで、それ以降は乳児と呼ばれる。
2.× プライバシーの侵害は、「幼児期」ではなく学童期以降である。学童期とは、一般的に6歳から12歳までの小学生をさす。
3.〇 正しい。病気の予後への不安は、学童期である。6~8歳の子どもの60%は、死の概念を理解できると報告されている。
4.× 母子分離は、「思春期」ではなく乳~幼児期である。母子分離不安とは、子どもが母親と離れる際に不安を感じることを指す。母子分離不安が強まると、腹痛・頭痛・嘔吐・食欲不振・息苦しさ・夜尿のような身体的症状を引き起こす。

エリクソン発達理論

乳児期(0歳~1歳6ヶ月頃):基本的信頼感vs不信感
幼児前期(1歳6ヶ月頃~4歳):自律性vs恥・羞恥心
幼児後期(4歳~6歳):積極性(自発性)vs罪悪感
児童期・学童期(6歳~12歳):勤勉性vs劣等感
青年期(12歳~22歳):同一性(アイデンティティ)vs同一性の拡散
前成人期(就職して結婚するまでの時期):親密性vs孤立
成人期(結婚から子供が生まれる時期):生殖性vs自己没頭
壮年期(子供を産み育てる時期):世代性vs停滞性
老年期(子育てを終え、退職する時期~):自己統合(統合性)vs絶望

 

 

 

 

60 A君(小学6年生)は病院に併設された院内学級に通いながら骨肉腫の治療を続けていた。現在、肺転移があり終末期にある。呼吸障害のため鼻腔カニューレで酸素(2L/分)を吸入中である。A君の食事摂取量は減っているが意識は清明である。1週後に院内で卒業式が予定されている。A君は「卒業式に出席したい」と話している。
 看護師のA君への対応として適切なのはどれか。

1.両親に判断してもらおうと話す。
2.今の状態では出席は難しいと話す。
3.出席できるように準備しようと話す。
4.出席を決める前に体力をつけようと話す。

解答3

解説

本症例のポイント

・A君(小学6年生、骨肉腫:肺転移、終末期
・病院に併設された院内学級に通う。
・呼吸障害:鼻腔カニューレで酸素(2L/分)吸入中。
・食事摂取量:減少、意識:清明
・1週後の予定:院内での卒業式
・A君「卒業式に出席したい」と
→終末期看護の役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。患者が可能な限り前向きに生活できるような支援体制を提供するという。従来、医療・介護の現場では、終末期における治療の開始・中止・変更の問題は重要な課題のひとつである。疾病の根治を目的とせず延命のみを目的とした対症療法を一般的に延命治療と称し、人工呼吸・人工栄養(経管栄養)、人工透析などが含まれる。しかし、終末期患者では意思疎通の困難な場合も多く、患者の意思に反する治療(延命)になりかねない。治療・ケア内容に関する患者や家族の意思や希望を病状などに応じて繰り返し確認し、それを患者・家族・医療者で共有し、方針を見いだすことが非常に重要である。

1.× 両親に判断してもらおうと話すより優先度が高いものが他にある。終末期看護の役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。A君(小学6年生:12歳)は、自分で判断できる年齢である。
2.× 今の状態では出席は難しいと話す必要はない。なぜなら、看護師一人にその判断をくだす権限はないため。チーム医療であり、関係者と慎重に検討し判断すべきである。また、A君の「卒業式に出席したい」という思いを否定している。
3.〇 正しい。出席できるように準備しようと話す。A君「卒業式に出席したい」と希望しており、終末期看護の役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。仮に出席が困難と考えられても、
4.× 出席を決める前に体力をつけようと話す必要はない。なぜなら、A君の食事摂取量は減少しつつある終末期において、体力向上や身体機能の向上は見込めない可能性が高いため。無理な条件の提示は、生きる諦めにもつながりかねない。

 

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