第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午前81~85】

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81 心電図を下に示す。心電図の記録速度は25mm/秒である。
 心電図波形によって計測した心拍数で正しいのはどれか。

1.30/分以上、50/分未満
2.50/分以上、70/分未満
3.70/分以上、90/分未満
4.90/分以上、100/分未満
5.100/分以上、110/分未満

解答2

解説

心電図の記録速度は、25mm/秒であり、記録用紙の大きいマス目5つ分で1秒を示している。心拍数は、「心拍数(回/分)= 60(秒) ÷ RR間隔(秒)」という式で求められる。また、簡易的には、「心拍数 = 300 ÷ 大きいマス数」で求められ、1マスに1個心拍があれば300/分、2マスに1個で150/分、3マスに1個で100/分,4マスに1個で75/分、5マスに1個で60/分、6マスに1個で50/分となる。したがって、設問の図は1秒に1回みられることから、選択肢2.50/分以上、70/分未満といえる。

(図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

 

 

 

 

 

82 急性大動脈解離において緊急手術を行うかどうかの観点で用いる分類はどれか。

1.NYHA分類
2.スタンフォード分類
3.Killip<キリップ>分類
4.DeBakey<ドベーキー>分類
5.Forrester<フォレスター>分類

解答2

解説

NYHA心機能分類

Ⅰ度:心疾患があるが、身体活動には特に制約がなく日常労作により、特に不当な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの。
Ⅱ度:心疾患があり、身体活動が軽度に制約されるもの。安静時または軽労作時には障害がないが、日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)によって、上記の愁訴が発言するもの。
Ⅲ度:心疾患があり、身体活動が著しく制約されるもの。安静時には愁訴はないが、比較的軽い日常労作でも、上記の主訴が出現するもの。
Ⅳ度:心疾患があり、いかなる程度の身体労作の際にも上記愁訴が出現し、また、心不全症状、または、狭心症症候群が安静時においてもみられ、労作によりそれらが増強するもの。

1.× NYHA分類(New York Heart Association)は、心不全の重症度分類である。自覚症状から判断する心不全の重症度分類である。労作時の自覚症状に基づき、Ⅰ度からⅣ度の4段階で判定する。
2.〇 正しい。スタンフォード分類は、急性大動脈解離において緊急手術を行うかどうかの観点で用いる分類である。上行大動脈に解離が及んでいるA型、解離が及んでいないB型に分類される。上行大動脈に解離があるスタンフォードA型では、命に関わる致命的な合併症を生じやすいため、緊急手術となる。解離を起こしている範囲に応じて、人工血管を用いた置換術を行う。
3.× Killip<キリップ>分類は、理学的所見に基づいた急性心筋梗塞の重症度分類である。
4.× DeBakey<ドベーキー>分類とは、大動脈解離の亀裂の位置と解離範囲による病型分類である。①発症時期による分類、②解離範囲による分類、③偽腔血流の状態による分類、などにより分類する。ちなみに、大動脈解離とは、大動脈内膜に生じた亀裂(エントリー)から血液が流入し、中膜部分が解離した状態である。
5.× Forrester<フォレスター>分類は、心係数と肺動脈襖入圧に基づいて心不全の評価を行う分類である。分類はⅠ群~Ⅳ群の4つに分けられる。

Killip分類(キリップ分類)

ClassⅠ:肺野にラ音なく、かつ聴診でⅢ音を聴取しないもの、心不全兆候なし。
ClassⅡ:肺野の50%未満の領域にラ音を聴取するもの、軽音~中等度心不全。
ClassⅢ:肺野の50%以上の領域にラ音を聴取するもの、肺水腫、重症右心不全。
ClassⅣ:心原性ショック、血圧≦90mmHg、尿量減少。

 

 

 

 

83 タイムアウトによって予防できるのはどれか。

1.患者の誤認
2.抗癌薬の曝露
3.個人情報の漏洩
4.ベッドからの転落
5.血液を媒介とする感染

解答1

解説

タイムアウトとは?

タイムアウトとは、手術にかかわる医師や看護師などのメンバー全員が、いっせいに手を止めて患者および手術部位を確認しあうことである。手術患者手術部位の誤認防止を目的としており、手術時の安全対策のひとつである。

1.〇 正しい。患者の誤認は、タイムアウトによって予防できる。タイムアウトとは、手術にかかわる医師や看護師などのメンバー全員が、いっせいに手を止めて患者および手術部位を確認しあうことである。手術患者や手術部位の誤認防止を目的としており、手術時の安全対策のひとつである。
2.× 抗癌薬の曝露は、タイムアウトによって予防できない。ちなみに、曝露とは、がんが出来ている組織に対して、薬剤が効果を発揮していると考えられる状態をいう。その曝露状態の効果を曝露反応という。曝露(読み:ばくろ)
3.× 個人情報の漏洩は、タイムアウトによって予防できない。個人情報の漏洩とは、個人情報が漏洩・流出することである。個人情報の漏洩の予防としては、①カルテ・メモは院外へ持ち歩かないことなどがあげられる。漏洩(読み:ろうえい)
4.× ベッドからの転落は、タイムアウトによって予防できない。ベッドからの転落の予防としては、柵の設置などである。
5.× 血液を媒介とする感染は、タイムアウトによって予防できない。血液が感染経路によって引き起こされる病気には、AIDS(HIVによる後天性免疫不全症候群)、HCV(C型肝炎)、HBV(B型肝炎)、梅毒があげられる。

個人情報とは?

個人情報保護法(第2条)

『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名・生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう。

 

 

 

 

 

84 安静臥床による廃用症候群で生じるのはどれか。

1.1回換気量の増加
2.循環血液量の増加
3.基礎代謝の上昇
4.骨吸収の亢進
5.食欲の増進

解答4

解説

廃用症候群とは?

 廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

(※図引用:「廃用症候群の息切れの機序とそれに対するリハビリテーション」著:補永 薫)

1.× 1回換気量の「増加」ではなく低下である。なぜなら、廃用症候群により心肺機能が低下するため。また、臥床により胸郭の動きが制限され、胸郭にも可動域制限をきたす。ちなみに、1回換気量とは、安静時に意識せずに行っている呼吸1回あたりの換気量である。1回換気量のうち、ガス交換が可能な領域(呼吸細気管支と肺胞)を出入りする分が有効な換気量であり、ガス交換が行われない領域(鼻腔・口腔・気管・気管支・終末細気管支)を出入りする分はガス交換には無効な死腔換気量である。
2.× 循環血液量の「増加」ではなく低下である。なぜなら、廃用症候群により筋萎縮を呈し、筋ポンプ作用の機能不全をきたすため。ちなみに、足関節の底背屈運動をすると、筋収縮(筋ポンプ作用)により静脈還流を促すことができる。
3.× 基礎代謝の「上昇」ではなく減少である。なぜなら、廃用症候群により筋萎縮を呈し、骨格筋量が減少するため。ちなみに、基礎代謝とは、体温維持、心臓や呼吸など、人が生きていくために最低限必要なエネルギーのことである。基礎代謝量は、体重・体表面積・性と年齢などの要因に依存する。安静・空腹時のエネルギー消費量で、一般に女性より男性の方が高い。
4.〇 正しい。骨吸収の亢進は、安静臥床による廃用症候群で生じる。なぜなら、立位や歩行、運動などの骨への荷重(リモデリング作用)が見込めないため。骨は力学的な荷重(運動)に応じて、骨吸収と骨形成を繰り返し、自らを再構築(リモデリング)する。つまり、運動が骨を強くし、骨粗鬆症の予防が見込める。ちなみに、骨吸収とは、その名の通り骨組織の吸収であり、つまり、破骨細胞が骨の組織を分解してミネラルを放出し、骨組織から血液にカルシウムが移動するプロセスである。
5.× 食欲の「増進」ではなく減少である。なぜなら、廃用症候群により精神症状(うつ症状)もみられるため。気分的な落ち込みが顕著に現れてうつ状態になったり、前向きに取り組むやる気が減退したりと、精神的な機能低下も見られる。うつ病の主な症状には、睡眠障害、倦怠感、易疲労感、脱力感、希死念慮、頭重、体重減少、食欲低下、嘔気、性欲減退、頻尿、めまいなどがある。

 

 

 

 

85 Aさんは職場の上司に不満をぶつけたいと考えているが、それができないので、不満をぶつけやすい対象である後輩を叱責している。
 Aさんの防衛機制で正しいのはどれか。

1.解離
2.昇華
3.合理化
4.置き換え
5.反動形成

解答4

解説

防衛機制とは?

防衛機制とは、人間の持つ心理メカニズムであり、自分にとって受け入れがたい状況や実現困難な目標に対して、自我を保つために無意識で発動する心理的な機構である。防衛機制には、短期的には精神状態を安定させる作用があるが、長期的にみればかえって精神を不安定にさせてしまうものもある。

1.× 解離とは、意識あるいは人格の統合性が一時的に失われた状態のことである。例:苦悩を避けるために、統合的な自己同一感、身体運動のコントロール感、直接的感覚の意識などを部分的あるいは完全に失う。
2.× 昇華とは、性欲や支配欲などの基本的欲求を社会的に容認された方法で解消することである。例:性欲を勉学にいそしむことで紛らわす。
3.× 合理化とは、欲求が満たされないとき、その耐え難い感情をかなり強引な理屈づけを行って処理しようとすることである。例:異性に振られたとき、「あんな奴と付き合わない方が自分のためになる」などと思い込む。
4.〇 正しい。置き換え(転換)は、Aさんの防衛機制である。置き換えとは、受け入れ難い自己の感情を、対象を別のものに移すことで解消すること。例:親を攻撃する代わりに飼っているネコをいじめる。
5.× 反動形成とは、満たされない欲求を正反対の欲動によって打ち消すことである。例:好きな子をいじめる。

 

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