第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午後91~95】

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次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(50歳、男性、会社員)は半年ほど前から労作時に胸痛と呼吸困難感があり、狭心症と診断され内服治療を受けている。本日明け方から胸部に圧迫感があった。出勤途中に強い胸痛を自覚し、自ら救急車を要請した。救急外来到着時のバイタルサインは、体温35.8℃、呼吸数30/分、脈拍112/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>93%(酸素2L/分)。意識は清明。12誘導心電図はV1〜V4でST上昇、Ⅱ、Ⅲ、aVFでST低下がみられた。

91 救急外来到着時にAさんの状態をアセスメントするために優先度が高い血液検査項目はどれか。

1.トロポニンT
2.乳酸脱水素酵素
3.血清クレアチニン
4.アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(50歳、男性、会社員、狭心症
・半年ほど前:労作時に胸痛と呼吸困難感があり。
・本日明け方:胸部に圧迫感。
・出勤途中に強い胸痛を自覚。
・救急外来到着時:体温35.8℃、呼吸数30/分、脈拍112/分、血圧96/52mmHg、SpO2:93%(酸素2L/分)、意識清明。
・12誘導心電図:V1〜V4でST上昇、Ⅱ、Ⅲ、aVFでST低下
→Aさんは、①労作性狭心症の既往、②出勤途中に強い胸痛を自覚していることからも、急性心筋梗塞が疑われる。急性心筋梗塞とは、冠状動脈内に血栓が形成され、動脈を閉塞し心筋が壊死することである。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。ちなみに、労作性狭心症とは、心臓に栄養を送る血管である冠動脈の一部が動脈硬化によって75%以上狭窄し、血流の流れが悪くなってしまう状態である。症状として、胸痛発作の頻度(数回/周以下)、持続時間(数分以内)、強度などが一定であることや、一定以上の運動や動作によって発作が出現する。その4大危険因子は、「①喫煙、②脂質異常症、③糖尿病、④高血圧」である。そのほかにも、加齢・肥満・家族歴・メタボリックシンドロームなどがある。

※第Ⅱ誘導が四肢誘導で、波形が最も明瞭に描かれ、一般的によく見る心電図の波形となる。

1.〇 正しい。トロポニンTは、優先度が高い血液検査項目である。なぜなら、トロポニンTは、3~4時間上昇し、12~18時間で最大値を示す特徴を持ち、簡便な迅速判定キットで検査できるため。トロポニンTとは、横紋筋の薄いフィラメント上でトロポニンI・Cとともにトロポニン複合体を形成し、筋収縮の調節に関与している分子量39,000の蛋白である。 平滑筋には存在せず、しかも構造が心筋と骨格筋とで異なるため、両者を明確に識別することが可能となり、現在最も特異的な心筋障害のマーカーと考えられている。トロポニンは、心筋の構成成分であるため、これが血液中に出現する場合には、急性心筋梗塞などの心筋傷害を意味する。
2.× 乳酸脱水素酵素とは、12~24時間上昇し、2〜3日で最高値をむかえる。発症晩期の指標となる。ちなみに、そもそも乳酸脱水素酵素(LD)とは、体内でブドウ糖がエネルギーに変化するときに働く、血清中にある酵素である。主に肝臓、心臓、腎臓、骨格筋、血球に異常が生じると、血液中に流れ出るため、数値が高くなる。
3.× 血清クレアチニンとは、腎臓の機能の低下とともに値は高くなる。血清クレアチニンは、筋量に影響を受け、筋肉に含まれているタンパク質の老廃物である。本来は、尿素窒素と同様に腎臓の糸球体で濾過され尿中に排泄されるが、腎臓の機能が低下すると尿中に排泄される量が減少し、血液中にクレアチニンが溜まる。
4.× アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼとは、6~12時間上昇する。酵素の一種で、心臓の筋肉や骨格筋、肝臓に多く含まれ、心臓や肝臓などの臓器に障害・損傷があると、血液中にアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼが漏れ出し値が上昇する。

急性心筋梗塞後に上昇する血液検査所見

【血液検査】
・WBC:2~3時間上昇(7日に正常化)
・CK:2~4時間上昇(3~7日に正常化)
・トロポニンT:3~4時間上昇(14~21日に正常化)
・AST:6~12時間上昇(3~7日に正常化)
・LD(LDH):12~24時間上昇(8~14日に正常化)
・CRP:1~3日上昇(21日に正常化)
・ESR:2~3日上昇(5~6週)

 ※急性心筋梗塞を来した場合、血液検査にて心筋壊死所見を示すデータがみられるのは、通常、発症2時間以降である。WBC、CKの異常が最も早く出現する。

 

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(50歳、男性、会社員)は半年ほど前から労作時に胸痛と呼吸困難感があり、狭心症と診断され内服治療を受けている。本日明け方から胸部に圧迫感があった。出勤途中に強い胸痛を自覚し、自ら救急車を要請した。救急外来到着時のバイタルサインは、体温35.8℃、呼吸数30/分、脈拍112/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>93%(酸素2L/分)。意識は清明。12誘導心電図はV1〜V4でST上昇、Ⅱ、Ⅲ、aVFでST低下がみられた。

92 心臓カテーテル検査の結果、Aさんは急性心筋梗塞と診断された。心係数2.4L/分/m2、肺動脈楔入圧20mmHgでForrester<フォレスター>分類Ⅱ群であった。
 身体所見:両側下肺野で呼吸音が減弱しており、軽度の粗い断続性副雑音が聴取される。
 心エコー検査:左室駆出率<LVEF>58%
 胸部エックス線検査:心胸郭比<CTR>48%
 このときのAさんのアセスメントで適切なのはどれか。

1.心拡大が認められる。
2.肺うっ血が起きている。
3.末梢循環不全が起きている。
4.左心室の収縮力が低下している。

解答2

解説

本症例のポイント

・心臓カテーテル検査:急性心筋梗塞と診断。
・フォレスター分類Ⅱ群:心係数2.4L/分/m2、肺動脈楔入圧20mmHg。
・身体所見:両側下肺野で呼吸音が減弱、軽度の粗い断続性副雑音あり。
・心エコー検査:左室駆出率58%
・胸部エックス線検査:心胸郭比48%
→それぞれ検査結果のカットオフ値をしっかり覚えておこう!

1.× 心拡大は認められない。なぜなら、正常範囲内の心胸郭比50%以下であるため。Aさんの心胸郭比は48%である。
2.〇 正しい。肺うっ血が起きている。なぜなら、フォレスター分類Ⅱ群に該当するため。Ⅱ群は、肺動脈楔入圧18mmHg以上、心係数2.2L/min/㎡より大で、左室の前負荷が増加し心拍出量を維持している状態であり、肺うっ血を伴うが末梢循環不全は伴わないことを指す。
3.× 末梢循環不全は起きていない。なぜなら、フォレスター分類Ⅱ群に該当するため。Ⅱ群は、肺動脈楔入圧18mmHg以上、心係数2.2L/min/㎡より大で、左室の前負荷が増加し心拍出量を維持している状態であり、肺うっ血を伴うが末梢循環不全は伴わないことを指す。
4.× 左心室の収縮力は低下していない。なぜなら、正常範囲内の左室駆出率55~90%であるため。Aさんの左室駆出率は58%である。

Forrester(フォレスタ)分類について

1977年にJ. S. Forresterが考案した。Swan-Ganzカテーテルより得られたデータに基づいて分類した、ポンプ失調の重症度分類である。本来は、急性心筋梗塞に対して用いられたが、それ以外の急性心不全、あるいは慢性心不全の増悪期にも用いられる。肺うっ血の指標として平均肺動脈楔入圧18mmHg、末梢循環不全の指標として心係数2.2L/min/㎡を基準とし、4群に分類する(図)。この分類は、病態評価と治療方針決定に非常に有用である(一部引用:循環器用語ハンドブックより)。

 

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(50歳、男性、会社員)は半年ほど前から労作時に胸痛と呼吸困難感があり、狭心症と診断され内服治療を受けている。本日明け方から胸部に圧迫感があった。出勤途中に強い胸痛を自覚し、自ら救急車を要請した。救急外来到着時のバイタルサインは、体温35.8℃、呼吸数30/分、脈拍112/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>93%(酸素2L/分)。意識は清明。12誘導心電図はV1〜V4でST上昇、Ⅱ、Ⅲ、aVFでST低下がみられた。

93 その後、Aさんは経皮的冠動脈形成術<PCI>を受けた。帰室時のバイタルサインは、体温36.2℃、呼吸数20/分、脈拍58/分、整、血圧80/40mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>95%酸素過(1L/分)。顔面は蒼白、冷汗を認めた。意識は清明である。
 このとき看護師が最初に行うことはどれか。

1.側臥位にする。
2.除細動器の準備を行う。
3.穿刺部の出血の有無を確認する。
4.鎮痛薬の処方を医師に相談する。

解答3

解説

本症例のポイント

経皮的冠動脈形成術<PCI>
・帰室時:体温36.2℃、呼吸数20/分、脈拍58/分、整、血圧80/40mmHg、SpO2:95%(酸素1L/分)
顔面蒼白冷汗、意識清明。
→経皮的冠動脈形成術とは、冠動脈内腔の狭くなった部分にカテーテルを使って拡げる治療である。主な合併症は急性心筋梗塞、急性心不全、重症不整脈、血管損傷、造影剤やその他の薬によるアレルギーなどによるショック、塞栓、出血、感染症などの可能性がある。したがって、①出血の有無、②両足背動脈の触知などを観察する必要がある。

1.× 側臥位にする優先度は低い。なぜなら、まずはなぜ顔面蒼白、冷汗が発生しているか原因を探る必要があるため。
2.× 除細動器の準備を行う必要はない。なぜなら、AED(自動体外式除細動器)とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器であるため。
3.〇 正しい。穿刺部の出血の有無を確認する。経皮的冠動脈形成術とは、冠動脈内腔の狭くなった部分にカテーテルを使って拡げる治療である。主な合併症は急性心筋梗塞、急性心不全、重症不整脈、血管損傷、造影剤やその他の薬によるアレルギーなどによるショック、塞栓、出血、感染症などの可能性がある。したがって、①出血の有無、②両足背動脈の触知などを観察する必要がある。
4.× 鎮痛薬の処方を医師に相談する必要はない。なぜなら、本症例は痛みを訴えているわけではないため。

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(38歳、会社員、女性)は夫と2人暮らし。通勤中に突然の頭痛を訴えて倒れ、救急搬送された。入院後に行った頭部CT検査および頭部MRI検査で、脳腫瘍と診断された。Aさんは脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた。

94 帰室後の看護として適切なのはどれか。

1.発熱時の冷罨法は禁忌である。
2.徐脈時は経過観察とする。
3.ベッドの頭側を挙上する。
4.頸部を前屈させる。

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(38歳、会社員、女性)
・2人暮らし:夫
・通勤中:突然の頭痛を訴えて倒れた。
・入院後:脳腫瘍と診断された。
・脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた。
→開頭術後の合併症には、まず頭蓋内圧亢進症状に注意する必要がある。頭蓋内圧亢進により、①頭痛、②嘔気・嘔吐、③うっ血乳頭、④複視(外転神経麻痺)などを生じる。Cushing現象(脳ヘルニアの直前状態)で、①血圧上昇、②徐脈、③緩徐深呼吸などの症状が出現する。これらは、脳幹下部の脳圧亢進による乏血状態に対する生体の代償作用である。他にも、術後出血、脳浮腫、脳血管攣縮、感染症、深部静脈血栓症・肺血栓症などがあり、早期発見や予防を考慮した観察が重要である。

1.× 発熱時の冷罨法は、「禁忌」と決まっているわけではない。むしろ、術後は炎症や発熱がみられるため、手術部の状態に応じて冷罨法を実施する。
2.× 徐脈時は、「経過観察」ではなく、医師に直ちに報告し対応する必要がある。なぜなら、徐脈はCushing現象(脳ヘルニアの直前状態)の一つであるため。他にも、血圧上昇、緩徐深呼吸などの症状が出現する。
3.〇 正しい。ベッドの頭側を挙上する。頭蓋内圧の上昇を防ぐためのケアとして、臥床時は、頭部を15~30°挙上させた体位とし、頭蓋内静脈圧や髄液圧の低下を促す。頸部は屈曲を避け、安楽に呼吸できるよう配慮する。
4.× 頸部を前屈させる必要はない。むしろ、頸部の屈曲や回旋、過伸展は内頚動脈の血流低下や静脈還流の障害を招くため控える必要がある。

 

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(38歳、会社員、女性)は夫と2人暮らし。通勤中に突然の頭痛を訴えて倒れ、救急搬送された。入院後に行った頭部CT検査および頭部MRI検査で、脳腫瘍と診断された。Aさんは脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた。

95 脳腫瘍摘出手術の結果、膠芽腫と診断され、Aさんは放射線療法と抗癌薬内服による化学療法を行うことになった。放射線療法を開始して1週後、Aさんが頭皮のかゆみを訴えたため、副腎皮質ステロイド軟膏が処方された。
 Aさんへの説明として適切なのはどれか。

1.「定期的に髪の毛をそります」
2.「かゆみが強いときは温めてください」
3.「軟膏は放射線照射前に拭き取ってください」
4.「かゆみは放射線照射の終了日にはおさまります」

解答3

解説

本症例のポイント

・脳腫瘍摘出手術の結果、膠芽腫と診断。
・予定:放射線療法と抗癌薬内服による化学療法を行う。
・放射線療法を開始して1週後:頭皮のかゆみのため、副腎皮質ステロイド軟膏が処方された。
→膠芽腫は、神経膠腫(グリオーマ)の中で成人に最も多く認められ、悪性で予後が最も悪い。手術後の平均余命は、1~2年といわれている。放射線治療や副腎皮質ステロイド軟膏の対応など安全に治療を受けられるために支援する必要がある。

1~2.× 定期的に髪の毛をそる/かゆみが強いときは温める必要はない。なぜなら、放射線治療は皮膚が赤くなり、乾燥しやすく過敏になるため。髪を剃ったり温めたりすることでより症状が悪化してしまう恐れがある。したがって、熱い湯、長時間の入浴、入浴剤の使用は避けたり、低刺激(弱酸性)の石けんで、よく泡立ててからなでるように洗うように指導する。
3.〇 正しい。「軟膏は放射線照射前に拭き取ってください」と伝える。なぜなら、軟膏が皮膚についたまま放射線を照射すると、化学物質が反応して皮膚炎を悪化させたり、線量が上がってしまう原因となるため。
4.× 「かゆみは放射線照射の終了日にはおさまります」とは限らない。むしろかゆみ(炎症)は、放射線療法終了後1週間くらいをピークに、1か月程度まで持続することが多い。また「おさまります」と断言する伝え方は、実際にそのようにならなかった場合は誤解を招くため控える必要がある。

 

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