第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午後96~100】

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次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(38歳、会社員、女性)は夫と2人暮らし。通勤中に突然の頭痛を訴えて倒れ、救急搬送された。入院後に行った頭部CT検査および頭部MRI検査で、脳腫瘍と診断された。Aさんは脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた。

96 放射線療法と化学療法が開始されて10日が経過した。Aさんはガーデニングの趣味があり、庭が気になるため週末の外泊を希望し、主治医から許可が出た。
 外泊にあたりAさんへの説明として適切なのはどれか。2つ選べ。

1.「入浴は控えてください」
2.「食べ物の制限はありません」
3.「ガーデニングの時は手袋をしてください」
4.「発熱を伴わない咳は様子を見てください」
5.「性交渉の時はコンドームを使用してください」

解答3・5

解説

本症例のポイント

・放射線療法と化学療法が開始10日。
・趣味:ガーデニング
・希望:庭が気になるため週末の外泊
・主治医から許可が出た。
→本症例は、①放射線療法をしていること、②頭皮のかゆみのため、副腎皮質ステロイド軟膏が処方されていることから、副作用でもある皮膚炎が考えられる。日常生活で増悪しないよう指導・支援する必要がある。

(図引用:「頭頸部の放射線治療を受ける方へ」宇都宮セントラルクリニック様HPより)

1.× 入浴を控える必要はない。ただし、熱い湯、長時間の入浴、入浴剤の使用は避けたり、低刺激(弱酸性)の石けんで、よく泡立ててからなでるように洗うように指導する。
2.× 食べ物の制限をする。酒、たばこ、刺激物(暖かいものも含む)は吐き気を誘発するため控える必要があるが、栄養のバランスが取れた食生活を心掛ける。
3.〇 正しい。「ガーデニングの時は手袋をしてください」と伝える。なぜなら、皮膚炎により傷がつきやすい状態で、そこから感染炎症が増悪する可能性があるため。したがって、治療部位は皮膚が弱っているため、直射日光を当てないようにして、温泉、プール、サウナ、岩盤浴、海水浴は禁止にする。また、身体がだるく、疲れやすくなることがあるので、十分な休息を心掛ける。
4.× 発熱を伴わない咳は、「経過観察」ではなく対応が必要である。なぜなら、発熱を伴った場合、症状が増悪する可能性が高いため。特に治療後の数ヶ月、発熱や咳、息苦しさ、だるさなどの症状に注意する必要がある。もし、症状がみられたら、早めに病院を受診する。
5.〇 正しい。「性交渉の時はコンドームを使用してください」と伝える。なぜなら、妊娠初期では、胎児に小頭症などの奇形を起こす危険性が高くなり、放射線治療が行えなくなるため。ただし、放射線治療後も妊孕性(にんようせい:妊娠するための力)が保たれ妊娠した場合には、放射線による胎児への影響はない。

 

 

 

 

次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
 Aさん(82歳、女性)は息子(57歳、会社員)と息子の妻(55歳、パート勤務)との3人暮らし。3年前にAlzheimer<アルツハイマー>型認知症と診断され、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅱb、要介護2である。Aさんの介護は、主に息子の妻が行っていた。Aさんは、声かけがあれば日常生活動作<ADL>を自分で行うことができた。しかし、Aさんは徐々に認知症が重度化し、1人で外出すると帰ってくることができなくなり、夜間に落ちつきなく動き回ることが多くなった。息子と息子の妻はAさんの介護について介護支援専門員に相談していたが、息子の妻は睡眠不足となり、体調を崩してしまった。そのため、Aさんは介護老人保健施設に入所することになった。

97 看護師からAさんに施設について説明したが、その後もAさんは「ここはどこ」と繰り返し聞いていた。息子の妻は「私がやらなければいけないことは何ですか」と聞いてきた。
 息子の妻に対する看護師の対応で最も適切なのはどれか。

1.「面会に来てください」
2.「家族会に参加しましょう」
3.「まずは休息をとりましょう」
4.「認知症への対応を覚えましょう」

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(82歳、女性、3年前:アルツハイマー型認知症
・3人暮らし:息子(57歳、会社員)と息子の妻(55歳、パート勤務)。
・認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅱb、要介護2。
・Aさんの介護:主に息子の妻。
・AさんのADL:声かけがあれば行える。
・最近:認知症が重度化、1人で外出すると帰ってくることができなくなり、夜間に落ちつきなく動き回ることが多くなった。
・息子の妻:睡眠不足体調を崩してしまった
・予定:介護老人保健施設に入所する。
→アルツハイマー型認知症とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

1.× 面会に来てもらう必要はない。なぜなら、体調を崩している状態であるため。本症例は、3人暮らしで、息子(57歳、会社員)もいるため、息子に予定を合わせて同席してもらうこともできる。
2.× 家族会に参加する優先度は低い。家族会とは、精神障害者(例えば、アルコール依存症など)を家族にもつ人たちが、お互いに悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあう会である。 支えあいを通して、地域で安心して生活できるための活動を行っている。それぞれが相互的に話し合う会である。
3.〇 正しい。「まずは休息をとりましょう」と息子の妻に伝える。なぜなら、現在、息子の妻は睡眠不足、体調を崩している状態であるため。また、介護老人保健施設に入所することも決定した。介護老人保健施設とは、要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護・医学的管理のもと、介護および機能訓練その他必要な医療ならびに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設である。
4.× 「認知症への対応を覚えましょう」と伝えるのは時期尚早である。なぜなら、体調を崩している状態であるため。また、息子の妻の体調不良は、あたかも認知症への対応が「できていなかったことが原因だ」と伝わりやすく、息子の妻が自責してしまう可能性も考えられる。

 

 

 

 

 

次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
 Aさん(82歳、女性)は息子(57歳、会社員)と息子の妻(55歳、パート勤務)との3人暮らし。3年前にAlzheimer<アルツハイマー>型認知症と診断され、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅱb、要介護2である。Aさんの介護は、主に息子の妻が行っていた。Aさんは、声かけがあれば日常生活動作<ADL>を自分で行うことができた。しかし、Aさんは徐々に認知症が重度化し、1人で外出すると帰ってくることができなくなり、夜間に落ちつきなく動き回ることが多くなった。息子と息子の妻はAさんの介護について介護支援専門員に相談していたが、息子の妻は睡眠不足となり、体調を崩してしまった。そのため、Aさんは介護老人保健施設に入所することになった。

98 入所した日の夕方、Aさんは自分の荷物をまとめて「夕食を作らなければいけないので、家に帰ります」と施設内を歩いている。
 Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

1.「他の入所者と話をしましょう」
2.「椅子に座ってお話ししませんか」
3.「入所中なので家には帰れません」
4.「歩くのは危ないのでやめましょう」

解答2

解説
1.× 他の入所者と話をする必要はない。なぜなら、Aさんは他の入所者と話がしたいと希望している状態ではないため。Aさんは、①夕食を作りたい、②家に帰りたいことを理由に施設内を歩いている。
2.〇 正しい。「椅子に座ってお話ししませんか」と伝える。なぜなら、まずは実際にゆっくり話を聞いて、Aさんが現状どのように考えているか?見当識や記憶、不安状態なども含め評価が必要である。
3.× 「入所中なので家には帰れません」と一方的に伝える必要はない。なぜなら、入所を理由に家に帰れないことを伝えても、現状Aさんが置かれた状況を理解すること、記憶しておくことが困難と考えられるため。また、Aさんは入所前から「認知症が重度化、1人で外出すると帰ってくることができなくなり、夜間に落ちつきなく動き回ることが多く」なっていた。
4.× 「歩くのは危ないのでやめましょう」と伝える必要はない。なぜなら、看護師の主観の発言であるため。Aさんは、①夕食を作りたい、②家に帰りたいことを理由に施設内を歩いている。歩行を禁止されても、さらに不安や孤独感が増強してしまう可能性が考えられる。

認知症の主な症状

①中核症状:神経細胞の障害で起こる症状
(例:記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、失語・失行など)

②周辺症状:中核症状+(環境要因や身体要因や心理要因)などの相互作用で起こる様々な症状
(例:徘徊、幻覚、異食、せん妄、妄想、不安など)

 

 

 

 

 

次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
 Aさん(82歳、女性)は息子(57歳、会社員)と息子の妻(55歳、パート勤務)との3人暮らし。3年前にAlzheimer<アルツハイマー>型認知症と診断され、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅱb、要介護2である。Aさんの介護は、主に息子の妻が行っていた。Aさんは、声かけがあれば日常生活動作<ADL>を自分で行うことができた。しかし、Aさんは徐々に認知症が重度化し、1人で外出すると帰ってくることができなくなり、夜間に落ちつきなく動き回ることが多くなった。息子と息子の妻はAさんの介護について介護支援専門員に相談していたが、息子の妻は睡眠不足となり、体調を崩してしまった。そのため、Aさんは介護老人保健施設に入所することになった。

99 入所して1週後。Aさんは、朝、声をかけられてもなかなか目を覚まさない。午前中は看護師が他の入所者と交流することを目的に共有スペースに誘導するが、Aさんは共有スペースの椅子に座ったまま眠ってしまい、レクリエーションへ誘われても参加はしない。夕方から夜間にかけてAさんは活動的となり、施設の廊下を歩き職員に話しかけている。
 Aさんへの看護師の対応で最も適切なのはどれか。

1.朝の入浴を勧める。
2.日中の散歩に誘う。
3.朝はAさんが自分で起きるまで待つ。
4.日中は椅子に座って過ごしてもらう。

解答2

解説

本症例のポイント

・入所1週後。
・朝:声をかけられてもなかなか目を覚まさない
・午前中:共有スペースの椅子に座ったまま眠ってしまい、レクリエーションへ誘われても参加はしない。
・夕方から夜間:活動的となり、施設の廊下を歩き職員に話しかけている。
→Aさんにみられているのは、環境変化を契機としたせん妄が疑われ、睡眠障害(昼夜逆転)傾向にあると考えられる。せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。

1.× 朝の入浴を勧める優先度は低い。なぜなら、基本的に入浴は行うため。朝の入浴を実施することで睡眠・覚醒リズムがさらに崩れる可能性が考えられる。また、Aさんは朝、声をかけられてもなかなか目を覚まさない状態である。入浴は危険が伴う。
2.〇 正しい。日中の散歩に誘う。なぜなら、日中に散歩することで光刺激(日光)により、覚醒を促し、睡眠・覚醒リズムの調整をするように働きかけられるため。まずは、昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をするよう支援する。
3~4.× 朝はAさんが自分で起きるまで待つ/日中は椅子に座って過ごしてもらう優先度は低い。なぜなら、Aさんの午前中は、共有スペースの椅子に座っても眠たくなってしまうため。何かしらの別の対応が必要と考えられる。

 

 

 

 

次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aさん(83歳、男性)は妻(81歳)と2人暮らし。息子夫婦は共働きで同市内に住んでいる。Aさんは自宅の廊下で倒れているところを妻に発見され、救急搬送された。Aさんは右上下肢に力が入らず、妻の声かけにうなずくが発語はなかった。頭部CTで左中大脳動脈領域の脳梗塞と診断されたため救急外来で血栓溶解療法が行われ、入院となった。血栓溶解療法による治療後2週。Aさんは右上下肢麻痺、失語などの後遺症があるが、自宅への退院を希望したため、機能訓練の目的で回復期リハビリテーション病棟に転棟した。転棟後1日。Aさんはベッドから車椅子への移乗動作の訓練を始めたが、健側の下肢筋力が低下しているため、立位のときにバランスを崩しやすい状況である。

100 Aさんへの移乗時の援助で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.ズボンのウエスト部分をつかんで引き上げる。
2.ベッドの高さを車椅子の座面より低くする。
3.床に離床センサーマットを設置する。
4.車椅子をAさんの左側に準備する。
5.移乗前に血圧測定を行う。

解答4・5

解説

本症例のポイント

・Aさん(83歳、男性)
・2人暮らし:妻(81歳)
・息子夫婦:共働き、同市内に住んでいる。
・Aさん:自宅の廊下で倒れ、救急搬送。
・右上下肢脱力、声かけにうなずくが発語なし。
・頭部CT:左中大脳動脈領域の脳梗塞(血栓溶解療法)
・治療後2週:右上下肢麻痺、失語など後遺症あり。
・希望:自宅への退院。
・機能訓練の目的で回復期リハビリテーション病棟に転棟後1日:ベッドから車椅子への移乗動作の訓練を始めたが、健側の下肢筋力が低下しているため、立位のときにバランスを崩しやすい状況である。
→Aさんは、右片麻痺と健側の筋力低下をきたし、移乗動作(立位時)にバランスを崩しやすい。安全にかつAさんの最大能力(リハビリ)を発揮できるよう支援する必要がある。ちなみに、血栓溶解療法とは、血管内に生じた血栓を薬で分解する治療法である。ST上昇型心筋梗塞、脳梗塞、重度の静脈血栓塞栓症の場合に使用される。 主な合併症は出血であり、状況によっては血栓溶解療法が適さない場合もある。

1.× ズボンの「ウエスト部分(服)」ではなく、腰もしくは背中(腋窩:身体部分)を抱えるよう引き上げる。なぜなら、ズボンのウエスト部分は、生地が伸びやすく介助しにくいため。また、下着やおむつが腎部に食い込んで不快に感じるだけでなく、ズボンを損傷するおそれもある。
2.× ベッドの高さを車椅子の座面より「低く」ではなく同じ高さもしくは高くする。なぜなら、移乗する側(今回の場合:車椅子の座面の高さ)が高い場合、立ち上がりの際に殿部を高く上げる必要があるため。つまり、しっかりした立位を経由しなくてはならない。したがって、移乗の際は、同じ高さにすることが多い。
3.× 床に離床センサーマットを設置する優先度は低い。なぜなら、Aさんは勝手に動きだしたり、精神的な不安定さは設問文からは読み取れないため。離床センサーマットとは、対象者がベッドから起き上がり、ベッド横に座って立ち上がろうと床に敷いたセンサーマットに重心をかけた際や、ベッドからずり落ちたりして、体重がかかった際に反応してナースコールなどを呼ぶものである。
4.〇 正しい。車椅子をAさんの左側に準備する。なぜなら、本症例は右上下肢麻痺であるため。健側上肢で車椅子のアームサポートを把持することができ、安全に遂行しやすくなる。
5.〇 正しい。移乗前に血圧測定を行う。なぜなら、本症例は転棟後1日であるため。以上前後に血圧測定を実施し、正常範囲内か評価することが大切である。

 

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