第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午前11~15】

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問題11 健康な成人の白血球の中に占める割合が高いのはどれか。

1.単球
2.好酸球
3.好中球
4.リンパ球

解答

解説

健常人の自血球教やその内訳

健常人の末梢血には3,500~9,000/μl、すなわち1ml当り350万から900万個もの白血球が含まれている。
このうち、好中球が最も多く50~60%を占める。
ちなみに、リンパ球:20~40%、好酸球:2~7%、好塩基球:0~1%、単球:2~8%程度である。

1.× 単球とは、白血球の一種で、最も大きなタイプの白血球である。マクロファージなどへ分化し、貧食・消化・殺菌などの機能を発揮する。単球は、末梢血白血球の2~9%を占める。ちなみに、マクロファージとは、単球から分化し、貧食能を有する。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。
2.× 好酸球とは、主に寄生虫に対する免疫反応が役割である。ほかにも、アトピー性皮膚炎や薬剤アレルギー、気管支喘息などでも増加する。末梢血白血球の1~6%を占め、呼吸器や腸管などに存在する。
3.〇 正しい。好中球は、健康な成人の白血球の中に占める割合が高い。好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。細菌感染による急性炎症で最初に反応する。
4.× リンパ球とは、主に獲得免疫を担う細胞集団である。ウイルスに対する免疫反応に関与する。リンパ球とは、脊椎動物の免疫系における白血球のサブタイプの一つである。リンパ球には①ナチュラルキラー細胞、②T細胞、③B細胞がある。B細胞は体液性免疫を担当し、B細胞から活性化して形質細胞となり抗体を産生する。

細胞性免疫とは?

アレルギー反応の分類法としては、免疫反応による組織傷害の機序から分類したGellとCoombsの分類が使われることが多い。本分類はその反応に関与する抗体や細胞の違いにより分類されるが、現象的には皮膚反応出現にかかる時間と反応の性状により分けられる。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型は血清抗体が関与する体液性免疫(humoral immunity)、Ⅳ型は感作リンバ球による細胞性免疫(cellularimmunity)と大別される。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題12 体温変化をとらえ、体温調節の指令を出すのはどれか。

1.橋
2.小脳
3.視床下部
4.大脳皮質

解答

解説

(※図引用:「イラスト素材:脳」illustAC様より)

1.× 橋とは、中脳と延髄に挟まれた、脳幹の一部である。運動に関する情報を大脳から小脳に伝える役割をもつ。
2.× 小脳とは、後頭部の下方に位置し、筋緊張や身体の平衡の情報を処理し運動や姿勢の制御(運動系の統合的な調節)を行っている。
3.〇 正しい。視床下部は、体温変化をとらえ、体温調節の指令を出す。視床下部とは、間脳に位置し、内分泌や自律機能の調節を行う総合中枢である。 ヒトの場合は脳重量のわずか0.3%、4g程度の小さな組織であるが、多くの神経核から構成されており、体温調節やストレス応答、摂食行動や睡眠覚醒など多様な生理機能を協調して管理している。つまり、視床下部は自律神経の最高中枢である。
4.× 大脳皮質とは、大脳の表層を覆うシワシワの部分で、前頭葉、頭頂葉、側頭葉などと呼ばれる部位の総称である。全身から送られてくる外界の情報を処理して思考・判断を行い、随意運動の指令を送り出している。

セットポイントとは?

 セットポイントとは、設定値と直訳でき、体温調節中枢には、体温を一定に保つ働きがあり、こうして設定された体温のことを指す。体温のセットポイント(設定値)が突然高く設定された場合(つまり、通常の体温が低く寒い)と認識するため、寒冷にさらされた場合と同様に体温を上昇させる反応が起こる。

 

 

 

 

 

問題13 下血がみられる疾患はどれか。

1.肝囊胞
2.大腸癌
3.子宮体癌
4.腎細胞癌

解答

解説

下血とは?

下血とは、肛門から黒い血が出ることである。血便と下血は別のものであり、血便とは、赤い血が混じっている便である。一方、下血は黒い血が混じっている便のことをいう。赤い便(血便)は、下部消化管、すなわち回腸や大腸・肛門からの出血が原因である。一方、黒い便(下血)の原因は、上部消化管、つまり食道、胃、十二指腸などの上部小腸からの出血である。

1.× 肝囊胞とは、肝臓内に袋状に水がたまる良性の腫瘤である。一般に自覚症状が少なく、無症状が多い。偶然に、または健診などで発見されることがある。40歳以上の中高年層が80%と大部分を占め、性別では女性が多いとされている。
2.〇 正しい。大腸癌は、下血がみられる疾患である。大腸がんとは、大腸の一番内側にある粘膜に発生するがんであり、70%がS状結腸と直腸に発生する。早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が出ることが多くなります。 代表的な症状として、便に血が混じる(血便や下血)、便の表面に血液が付着するなどがある。
3.× 子宮体癌とは、子宮の内側を覆う子宮内膜と呼ばれる場所に発生するがんである。主な症状は、生理中ではないのに性器から出血があったり、閉経後に性器から出血があったりするなどの不正出血である。
4.× 腎細胞癌とは、腎臓の細胞ががん化したものである。進行に伴い、血尿が出たり、背中・腰の痛み、腹部のしこり、足のむくみ、食欲不振、吐き気や便秘、おなかの痛みなどが生じたりする。

 

 

 

 

 

問題14 糖尿病の急性合併症はどれか。

1.足壊疽
2.脳血管疾患
3.糖尿病網膜症
4.ケトアシドーシス昏睡

解答

解説

低血糖症状

血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

1.× 足壊疽は、慢性合併症である。足壊疽とは、糖尿病足病変のひとつである。糖尿病足病変とは、糖尿病に生じる足のトラブルをまとめていう。糖尿病足病変には足に生じる水虫や細菌の感染、足の変形やタコ、また、ひどい状態になると足の組織が死んでしまう(足壊疽)が起こる。
2.× 脳血管疾患は、慢性合併症である。糖尿病患者の血糖値が上がりすぎると、血液がドロドロになるため血管が詰まりやすくなり、脳梗塞のリスクが高まる。 動脈硬化とも深い関係があるため、血管がもろくなり脳出血にもなりやすく、脳卒中につながる大きな要素の一つといえる。
3.× 糖尿病網膜症は、慢性合併症である。糖尿病網膜症とは、網膜の血管障害により生じ、進行すると視力低下をきたす。また、症状は不可逆性であり、進行した糖尿病網膜症は改善されない。わが国における失明原因の上位を占めている。
4.〇 正しい。ケトアシドーシス昏睡は、糖尿病の急性合併症である。
ケトアシドーシスとは、脂肪分解亢進によるケトン体の蓄積からアシドーシスが生じ、脱水・意識障害(重症になると昏睡)をきたす。糖尿病では、高度のインスリン作用不足という病態が原因である。

糖尿病性腎症とは?

糖尿病性腎症とは、糖尿病の合併症で、糖尿病によって高血糖状態が持続し、腎臓の内部に張り巡らされている細小血管が障害を受けることで発症する。悪化すると腎不全に移行し、血液透析などが必要となる。糖尿病性腎症の場合、徐々に病気が進行するため、できるだけ早期に発見し、適切な治療をすることが重要である。糖尿病性腎症が原因で透析を受けることになった人が、全透析患者のうち44.1%と最も多い割合を占めている。一般的な糖尿病の食事療法としては、標準体重と身体活動量により摂取エネルギー量を算出し、50~60%が糖質、蛋白質が20%までとし、残りは脂質とする。また、糖尿病腎症の治療には血糖・血圧コントロールが重要であり、腎症 3 期(顕性腎症)では、食塩制限に加えたんぱく質摂取量にも注意が必要である。これは、たんぱく質や塩分がさらに腎臓に対し負担をかけるためである。つまり、①エネルギー量の管理、②食塩量の制限、③タンパク質量の調整が必要となる。

 

 

 

 

 

問題15 メタボリックシンドロームの診断基準において男性の腹囲〈ウエスト周囲径〉で正しいのはどれか。

1.80cm以上
2.85cm以上
3.90cm以上
4.95cm以上

解答

解説

メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積を基盤とし、動脈硬化の危険因子を複数合併した状態のことである。

【診断基準】
①腹部肥満(ウエストサイズ 男性85cm以上 女性90cm以上) 
②中性脂肪値(HDLコレステロール値 中性脂肪値 150mg/dl以上、HDLコレステロール値 40mg/dl未満のいずれか、または両方)
③血圧(収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上のいずれか、または両方)
④血糖値(空腹時血糖値110mg/dl以上)

したがって、選択肢2.85cm以上が、メタボリックシンドロームの診断基準において男性の腹囲〈ウエスト周囲径〉である。ちなみに、女性の場合は、女性90cm以上である。

 

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