第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午前31~35】

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問題31 社会保険制度と根拠法令の組合せで正しいのはどれか。

1.医療保険:健康保険法
2.介護保険:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関寸法律〈高齢者虐待防止法〉
3.雇用保険:社会福祉法
4.年金保険:生活困窮者自立支援法

解答

解説
1.〇 正しい。医療保険の根拠法令は、健康保険法である。健康保険法とは、労働者及びその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する医療保険給付等について定めた日本の法律である。ちなみに、(公的)医療保険とは、私たちやその家族が、病気やケガをしたときに医療費の一部を公的な機関が負担する制度のことである。日本では「国民皆保険」といって、すべての人が何らかの公的医療保険に加入しているが、その種類によって保障内容に若干の差がある。
2.× 介護保険の根拠法令は、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関寸法律〈高齢者虐待防止法〉」ではなく介護保険法である。介護保険とは、平成12年4月から開始された介護を必要とする方に費用を給付し、適切なサービスを受けられるようにサポートする保険制度である。40歳以上の人は、介護保険の被保険者となり、①65歳以上の人(第1号被保険者)と、②40~64歳までの医療保険に加入している人(第2号被保険者)になる。ちなみに、高齢者虐待防止法とは、在宅や施設内において、高齢者の人権を無視して、身体的への暴行、心理的な外傷を与える行為、養護の著しい怠慢、財産の不当な処分等を行う法律である。
3.× 雇用保険の根拠法令は、「社会福祉法」ではなく雇用保険法である。雇用保険法とは、「労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ること」(第1条)を目的として制定された、日本の法律である。つまり、失業・雇用継続等に関する保険の制度である。保険者は日本政府(国:厚生労働省)。財源は雇用者と雇用主が社会保険として負担するほか、国費投入もされている。つまり雇用保険は、労働保険のひとつで、いわゆる失業保険を中心とするものである。ちなみに、社会福祉法とは、社会福祉について規定している日本の法律である。所管官庁は、厚生労働省である。
4.× 年金保険の根拠法令は、「生活困窮者自立支援法」ではなく国民年金法厚生年金保険法である。国民年金法とは、国民年金制度に関する日本の法律で、厚生年金保険法とは、日本の労働者が加入する年金保険について定めた法律である。ちなみに、生活困窮者自立支援法とは、生活保護に至る前あるいは保護脱却の段階での自立支援の強化を図るための日本の法律である。

 

 

 

 

 

問題32 老人福祉法と介護保険法のいずれにも位置付けられている施設はどれか。

1.介護医療院
2.介護老人保健施設
3.老人福祉センター
4.老人デイサービスセンター

解答

解説
1.× 介護医療院は、『介護保険法』に定められている。介護医療院とは、要介護高齢者の長期療養・生活のための施設である。目的として、要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護および機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことである。
2.× 介護老人保健施設は、『介護保険法』に定められている介護医療院とは、要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護・医学的管理のもと、介護および機能訓練その他必要な医療ならびに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設である。
3.× 老人福祉センターは、『老人福祉法』に定められている老人福祉施設である。老人福祉センターとは、老人の生活、住宅、身上等に関する相談に応じ、適当な援助、指導を行う。また、老人の疾病の予防、治療に関する相談に応じ、適当な援助、指導を行い、老人の健康増進を図るための栄養、運動等の指導を行う。ちなみに、老人福祉法とは、老人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、老人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ、もって老人の福祉を図ることを目的として制定された法律である。
4.〇 正しい。老人デイサービスセンターは、老人福祉法(第20条2の2)と介護保険法(8条7項)のいずれにも位置付けられている施設である。ほかにも、両法に位置付けられている施設は、老人短期入所施設や特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)である。ちなみに、老人デイサービスセンターとは、65歳以上で身体上、または精神上の障害があるため、日常生活を営むのに支障がある人などが日中通い、入浴や食事、機能訓練、介護方法の指導などを提供することを目的とする施設である。また、健康チェックや日常生活動作(ADL)訓練、生活指導、レクリエーション、アクティビティなどのサービスを行っている。

 

 

 

 

 

問題33 ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症について正しいのはどれか。

1.令和2年(2020年)の新規感染者数は10年前に比べ増加している。
2.日本では異性間の性的接触による感染が最も多い。
3.早期に発見して治療を開始すれば完治する。
4.保健所でのHIV検査は匿名で受けられる。

解答

解説

ヒト免疫不全ウイルス感染症とは?

ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。後天性免疫不全症候群(AIDS)の状態にあると判断できる疾患(エイズ指標疾患)は、23種類ある。AIDS指標疾患としてもっとも頻度が高いのは、ニューモシスチス肺炎(39.3%)、ついでサイトメガロウイルス感染症(13.4%)、カンジダ症(13.1%)、活動性結核(7.1%)、カポジ肉腫(4.5%)、非結核性抗酸菌症(3.8%)の順であった。

(※図引用:「令和3(2021)年エイズ発生動向–概要–」厚生労働省エイズ動向委員会)

1.× 令和2年(2020年)の新規感染者数は10年前に比べ、「増加」ではなく減少している。HIV 感染者年間新規報告数は、近年減少傾向となっていた中で、2020年は前年から153件減と大きく減少し、2021年は前年から8件減少し742件となった。AIDS患者年間新規報告数は、2020年に4年ぶりに前年より増加したが、2021年は315件であり、再び前年から減少した。HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数に占める AIDS 患者の割合は29.8%であり、前年(31.5%)より減少したものの、2019年(26.9%)と比較し高い水準であった(※引用データ:「令和3(2021)年エイズ発生動向–概要–」厚生労働省エイズ動向委員会)。
2.× 日本では、「異性間(12.3%)」ではなく同性間(71.6%)の性的接触による感染が最も多い。2021年新規報告を感染経路別にみると、HIV感染者、AIDS患者のいずれにおいても、同性間性的接触が半数以上を占めた。母子感染が1件、静注薬物使用が1件(その他に含まれる他の感染経路と静注薬物使用の両者の可能性があるものを合わせると計4件)報告された。2021年新規報告を年齢階級別にみると、HIV感染者では30-34歳が最も多く、次いで25-29歳が多かった。AIDS患者では40-44歳が最も多く、次いで45-49歳が多かった(図7-a,b)。年齢の高い層およびAIDS患者では、若年層およびHIV感染者と比較して同性間性的接触(男性)以外の感染経路の割合が高い傾向があった。(※引用:「令和3(2021)年エイズ発生動向–概要–」厚生労働省エイズ動向委員会)。
3.× 早期に発見して治療を開始しても、「完治しない」。なぜなら、現時点では、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症は完治する治療法ないため。ただし、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。
4.〇 正しい。保健所でのHIV検査は匿名で受けられる。HIV検査は、全国のほとんどの保健所や自治体の特設検査施設(東京都南新宿検査・相談室など)で、無料・匿名で受けることができる。自分の居住地以外の保健所でも検査は受けられる。また、有料(自費診療の場合、5000円〜10000円くらい)ではあるが、医療機関でもHIV検査を希望すれば受けることができる。

(※引用データ:「令和3(2021)年エイズ発生動向–概要–」厚生労働省エイズ動向委員会)。

 

 

 

 

 

 

問題34 医療計画について正しいのはどれか。

1.基準病床数を定める。
2.5年ごとに見直しを行う。
3.特定機能病院の基準を定める。
4.一次、二次および三次医療圏を設定する。

解答

解説

医療計画とは?

医療計画とは、地域における体系的な医療の提供を実現することを目的として、都道府県が策定する計画である。医療計画は6年ごと(平成29年度までは5年ごと)に見直される。

~医療計画の記載事項~
【5疾病】①がん、②脳卒中、③心筋梗塞などの心血管疾患、④糖尿病、⑤精神疾患
【5事業】①救急医療、②災害医療、③へき地医療、④周産期医療、⑤ 小児医療(小児救急を含む)

【記載事項】
①5疾病の治療または予防に係る事業、5事業の医療の確保に必要な事業。
②5疾病5事業に関する目標、医療連携体制(施設間の機能分担・業務連携の確保)、情報提供の推進。
③居宅等における医療の確保。
④地域医療構想に関する事項。
⑤地域医療構想の達成に向けた病床の機能の分化及び連携の推進。
⑥病床の機能に関する情報提供の推進。
⑦外来医療の確保。
⑧医師の確保。
⑨医療従事者(医師を除く)の確保
⑩医療の安全の確保
⑪医療圏の設定(二次、三次医療圏を定める)
⑫医師少数区域等の設定
⑬基準病床数(一般病床、療養病床、結核病床、精神病床、感染症病床)
⑭地域医療支援病院等の整備目標。
⑮その他医療提供体制の確保に関する必要事項。

(※参考:「医療計画について」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。基準病床数を定める。医療計画の記載事項である⑬基準病床数(一般病床、療養病床、結核病床、精神病床、感染症病床)に該当する。
2.× 「5年ごと」ではなく6年ごとに見直しを行う。ちなみに、平成29年度までは5年ごとであった。
3.× 特定機能病院の基準を定めるのは、医療法である。特定機能病院とは、高度の医療の提供、高度の医療技術の開発及び高度の医療に関する研修を実施する能力等を備えた病院である。1992年6月改正、1993年4月施行の医療法の第2次改正によって制度化された日本の医療機関の機能別区分のうちのひとつで、あらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が承認する必要がある。
4.× 「一次、二次および三次医療圏」ではなく二次および三次医療圏を設定する。医療計画の記載事項である⑪医療圏の設定(二次、三次医療圏を定める)に該当する。一次医療圏とは、医療圏の中でもっとも小さい単位で、健康管理、予防、一般的な病気や怪我などに対応して住民の日常生活に密着した医療、保健、福祉サービスを提供する区域のこと。一般的には市区町村の単位で設定されている。

医療法とは?

医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

 

 

 

 

 

問題35 ノロウイルス感染症に罹患した患者の嘔吐物が床に飛び散っているこの処理に使用する消毒薬で適切なのはどれか。

1.70%エタノール
2.ポビドンヨード
3.塩化ベンザルコニウム
4.次亜塩素酸ナトリウム

解答

解説
1.× 70%エタノールとは、広く消毒液として用いられる。皮膚や手術部位の消毒、医療器具の洗浄消毒などに用いられ、粘膜への使用は禁忌である。ノロウイルスには十分な効果は得られない。
2.× ポビドンヨードとは、世界中で感染対策に使われている代表的な殺菌消毒剤の有効成分のひとつである。施設に感染症が流行していない場合は、ポビドンヨードやアルコール溶液などで断端を消毒することは勧められていない。
3.× 塩化ベンザルコニウムとは、一般細菌・真菌類に抗菌作用を示す。使用出来る用途が幅広く、手指の殺菌・消毒をはじめ、創傷面・口腔内の殺菌・消毒から理容室・美容室での消毒や食器・器具類,家屋・乗物等、ゴミ箱・冷蔵庫等,幅広い箇所の消毒に使用できる。ただし、低水準消毒薬であるため、ノロウイルスに有効とは言えない。 
4.〇 正しい。次亜塩素酸ナトリウムは、ノロウイルス感染症に罹患した患者の嘔吐物が床に飛び散っているこの処理に使用する消毒薬である。ノロウイルスの消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。ただし、次亜塩素酸ナトリウムの注意点として、毒性が強く、吸い込んでしまったり、目に入ってしまった場合には呼吸器や粘膜へ損傷を与える危険を伴う。

ノロウイルスとは?

ノロウイルスは、もっとも一般的な胃腸炎の原因である。感染者の症状は、非血性下痢、嘔吐、胃痛(悪心・嘔吐、水様性下痢腹痛、発熱等の急性胃腸炎)が特徴である。発熱や頭痛も発生する可能性がある。症状は、通常ウイルス曝露後12〜48時間で発症し、回復は通常1〜3日以内である。合併症はまれだが、特に若人、年配者、他の健康上の問題を抱えている人では、脱水症状が起こることがある。原因として、①カキ等の二枚貝、②感染者の嘔吐物等への接触や飛沫による二次感染である。感染経路は、経口感染、接触感染、飛沫感染、空気(飛沫核)感染による。

【予防・拡大防止】
①感染源となる二枚貝等は、中心部まで十分に加熱(85~95℃以上、90秒以上)する。
②消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。
③ノロウイルスは乾燥に強く、感染者の嘔吐物等が乾燥して空気中に飛散することで感染拡大するため完全に拭き取る。
④嘔吐物等の処理時には手袋、ガウンマスクを装着する。

(※参考:「ノロウイルスに関するQ&A」厚生労働省HPより)

 

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