第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午前96~100】

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次の文を読み94~96の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、女性、美容師) はゴルフが趣味である。 同居しているパートナーと1週前にゴルフに行った後から、顔面の紅斑、微熱、 全身倦怠感および手指の関節痛が現れた。病院を受診したところ、 全身性エリテマトーデス 〈SLE:systemic lupus erythematosus〉と診断され入院した。Aさんは看護師に「これまで病気をしたことがなかったので、驚いています」と話した。
 【バイタルサイン】体温 37.4℃、呼吸数18/分、脈拍64/分、整、血圧110/60mmHg。
 【血液所見】赤血球260万/μL、Hb9.0 g/dL、白血球7,600/μL、血小板18万/μL、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、CRP0.7mg/dL、直接Coombs〈クームス〉試験陽性。
 尿所見:尿蛋白(-)、尿潜血(-)。
 神経学的検査:異常所見なし。
 12誘導心電図:異常所見なし。
 胸部エックス線写真:異常所見なし。

問題96 Aさんは外来で副腎皮質ステロイド薬の内服治療を継続することになった。 Aさんは「病気を悪化させないために退院後はどのような生活がよいでしょうか」と看護師に質問した。
 Aさんへの退院指導で適切なのはどれか。

1.「すぐに復職できます」
2.「避妊は必要ありません」
3.「身体を冷やさないでください」
4.「くもりなら屋外でゴルフができます」

解答

解説

MEMO

全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。日常生活における注意点として、紫外線、感染症を避け予防することが大切である。したがって、長時間の直射日光は避け、帽子、長袖の服、日焼け止めをしっかりと使う。マスクの着用や手洗い、うがいなどの一般的な感染予防も大切である。

1.× 「すぐに復職できます」と断言することはできない。本症例は、美容師であり長時間立位のうえ、手指運動が豊富な仕事である。看護師だけの判断ではなく、職場の理解、医療チーム、患者などとの相談し、疾患の活動性など考慮しながら、復職を目指していく必要がある。
2.× 「避妊は必要ありません」と断言することはできない。なぜなら、妊娠は全身性エリテマトーデスの増悪因子であるため。全身性エリテマトーデスでも妊娠はできるが、病気が落ち着かない状態で妊娠した場合、流産や早産になりやすく、全身性エリテマトーデス自体の症状の悪化もおこしやすいことが知られている。このため、治療により病気が安定し、それが少なくとも6か月以上維持された状態で妊娠することが望ましい。
3.〇 正しい。「身体を冷やさないでください」と指導する。なぜなら、全身性エリテマトーデスの合併症の一つにレイノー現象があげられるため。レイノー現象とは、四肢(特に手指)が蒼白化、チアノーゼを起こす現象である。手指の皮膚が寒冷刺激や精神的ストレスにより蒼白になり、それから紫色を経て赤色になり、元の色調に戻る一連の現象をいう。
4.× 「くもりなら屋外でゴルフができます」と断言することはできない。くもりといれども、紫外線には注意を図る必要がある。長時間の直射日光は避け、帽子、長袖の服、日焼け止めをしっかりと使う必要がある。ゴルフに関しては、主治医と相談して決めることである。

 

 

 

 

次の文を読み97~99の問いに答えよ。
 Aさん(81歳、女性)は夫 (86歳)と2人で暮らしている。高血圧症で内服治療をしているが、血圧のコントロールはできている。両眼に老人性白内障があり、老人性難聴のために補聴器を使用している。認知機能は問題なく、日常生活動作〈ADL〉はほぼ自立している。1年前から両眼の羞明、霧視が強くなり、視力が低下して趣味の編み物ができなくなってきた。また、家の中を移動するときに小さな段差につまずいたりドアにぶつかるなど、歩行時の転倒の危険性が増えた。Aさんは自宅での生活を安全に送りたい、趣味を続けたいという希望があり、10日間程度の入院で両眼の超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術を行うことになった。

問題97 入院当日、病棟の看護師がAさんに対してパンフレットを用いて手術前オリエンテーションを行うことになった。
 Aさんへのオリエンテーションの方法で適切なのはどれか。

1.耳元で大きな声で説明する。
2.Aさんの身体に触れてから話しかける。
3.窓際の明るい場所でパンフレットを見せる。
4.手術後の注意点はパンフレットに赤色の太い文字で書く。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(81歳、女性、高血圧症、両眼老人性白内障
・2人暮らし(夫 、86歳)
老人性難聴(補聴器使用)
・認知機能:問題なし、ADL:ほぼ自立。
・1年前:両眼の羞明、霧視、視力低下、趣味の編み物困難。
・歩行時の転倒の危険性あり。
・Aさんの希望:自宅での生活を安全に送りたい、趣味を続けたい。
・予定:両眼の超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術を行う。
→白内障とは、水晶体が年齢とともに白く濁って視力が低下する病気である。主な原因は加齢である。他にも、糖尿病や妊娠初期の風疹ウイルス感染などにより生じる。
→老人性難聴とは、加齢によって耳(内耳)と脳(聴覚中枢)が障害されて聴こえにくくなっている状態である。老人性難聴は、高音域の聴力から障害される。他にも、語音弁別能や周波数選択性の低下、補充現象などの症状が複数現れる。ちなみに、補充現象とは、聞こえが悪いのに、音を大きくすると大きくした比率以上に大きく聞こえる現象である。

1.× 耳元で大きな声で説明することの優先度は低い。なぜなら、本症例は補聴器を使用しているため。補聴器の問題点として、周りの音(増幅したくない音)まで増幅してしまう。あまり見耳元で大きな声で説明することはかえってストレスとなりやすい。
2.× Aさんの身体に触れてから話しかけることの優先度は低い。なぜなら、本症例は認知症の疑いはないため。ユマニチュードの方法の一つである。ユマニチュードとは、認知力の向上を目指すケア・コミュニケーション技法である。 主に認知能力が低下した高齢者や認知症患者に対して行い、 「見る」「話す」「触れる」の3つのケア方法に「立つ」というケア方法を加える。「患者の尊厳をそこなわないようになべきである」とするケアの技法である。
3.× 窓際の明るい場所でパンフレットを見せることの優先度は低い。なぜなら、本症例は白内障(羞明)を呈しているため。羞明とは、強い光を受けた際に、不快感や眼の痛みなどを生じることをいう。したがって、病室を暗めに設定する必要がある。
4.〇 正しい。手術後の注意点はパンフレットに赤色の太い文字で書く。なぜなら、本症例は白内障(羞明)を呈しているため。赤色で太く書かれた文字は、見やすく注意を促すことができる。

 

 

 

 

 

次の文を読み97~99の問いに答えよ。
 Aさん (81歳、女性)は夫 (86歳)と2人で暮らしている。高血圧症で内服治療をしているが、血圧のコントロールはできている。 両眼に老人性白内障があり、老人性難聴のために補聴器を使用している。認知機能は問題なく、日常生活動作〈ADL〉はほぼ自立している。 1年前から両眼の羞明、 霧視が強くなり、視力が低下して趣味の編み物ができなくなってきた。 また、家の中を移動するときに小さな段差につまずいたりドアにぶつかるなど、歩行時の転倒の危険性が増えた。 Aさんは自宅での生活を安全に送りたい、趣味を続けたいという希望があり、10日間程度の入院で両眼の超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術を行うことになった。

問題98 Aさんの手術は局所麻酔下で行われ、10分程度で終了した。手術中および手術直後のバイタルサインに問題はなく、病室に戻ってきた。Aさんは眼痛や頭痛、気分不快などの症状はなく、「無事に終わって良かった」と話している。
 手術後のAさんへの説明で適切なのはどれか。

1.手術直後から点眼する。
2.洗顔は手術の翌日から行う。
3.手術後24時間はベッド上で安静にする。
4.医師の許可があるまでは頭を振る動作をしない。

解答

解説

本症例のポイント

・両眼の超音波水晶体乳化吸引術、眼内レンズ挿入術。
・局所麻酔下で行われ、10分程度で終了。
・その後も問題ない。

1.× 「手術直後」ではなく手術翌日から点眼する。翌日から、クラビットを1日4回(朝・昼・夕・寝る前)に1滴ずつ行う。
2.× 洗顔は手術の「翌日」ではなく1週間後から行う。なぜなら、感染の危険性が伴うため。ちなみに、手術翌日からたばこは吸ってよい病院もある。
3.× 手術後24時間はベッド上で安静にする必要はない。1時間程度の安静後、病棟内歩行を許可することが多い。
4.〇 正しい。医師の許可があるまでは頭を振る動作をしない。なぜなら、頭を振る動作は、眼圧の変動が激しいため。他にも、入浴やスポーツ、重たいものを持つ重労働などは、先生の支持が下りるまで(1週間程度は)控えたほうが良い。

 

 

 

 

 

次の文を読み97~99の問いに答えよ。
 Aさん (81歳、女性)は夫 (86歳)と2人で暮らしている。高血圧症で内服治療をしているが、血圧のコントロールはできている。 両眼に老人性白内障があり、老人性難聴のために補聴器を使用している。認知機能は問題なく、日常生活動作〈ADL〉はほぼ自立している。 1年前から両眼の羞明、 霧視が強くなり、視力が低下して趣味の編み物ができなくなってきた。 また、家の中を移動するときに小さな段差につまずいたりドアにぶつかるなど、歩行時の転倒の危険性が増えた。 Aさんは自宅での生活を安全に送りたい、趣味を続けたいという希望があり、10日間程度の入院で両眼の超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術を行うことになった。

問題99 手術後2日、Aさんは日中はベッドに横になって過ごしている時間が多い。夜間にAさんから看護師に「手術後はゆっくり眠れていません。どうしたらよいでしょうか」という訴えがあった。
 Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

1.寝る前に温かい緑茶を飲むことを勧める。
2.日中はベッドから離れて過ごすことを促す。
3.眠れなくてもベッドに横になっていることを勧める。
4.夜はよく眠っているので様子をみましょうと伝える。

解答

解説

本症例のポイント

・手術後2日:日中ベッドに横になって過ごしている時間が多い。
・夜間のAさん「手術後はゆっくり眠れていません。どうしたらよいでしょうか」と。
→夜間に寝れていない理由を考えてみよう。基本的に、日中ベッドで横になっていれば、夜は寝れないのが当たり前である。

1.× 寝る前に温かい「緑茶」ではなく白湯や牛乳を飲むことを勧める。なぜなら、緑茶はカフェインが含まれているため。余計に寝れなくなる可能性が高まる。一方、暖かい白湯は、副交感神経を刺激する効果がある。また、牛乳にはトリプトファンが入っており、トリプトファンは睡眠物質として知られている「セロトニン」という物質を作るために重要な働きをする。
2.〇 正しい。日中はベッドから離れて過ごすことを促す。なぜなら、本症例の日中は、ベッドで横になっていることが多いため。活動量が少ないと夜に寝れないのが当たり前である。日中はできるだけ活動を促し、生活リズムを整えるように働きかける。
3.× 眠れなくてもベッドに横になっていることを勧める優先度は低い。なぜなら、本症例は、ベッドに横になっても寝れず不安な発言が聞かれているため。直接的な解決策とはならない。
4.× 夜はよく眠っているので様子をみましょうと伝える優先度は低い。なぜなら、本症例の「ゆっくり眠れていません」という発言に対して、一方的に否定されているように感じ取られかねないため。まずは傾聴や受容、共感する態度が必要である。

 

 

 

 

 

次の文を読み100~102の問いに答えよ。
 Aさん(75歳、男性)は妻 (75歳)と2人暮らしで、15年前に(パーキンソン:Parkinson)病と診断された。7年前よりレボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。 Hoehn & Yahr〈ホーエンヤール〉重症度分類のステージⅣで、要介護2である。妻は腰痛のため毎日リハビリテーション目的で通院中である。 妻の介護負担を軽減するため、 Aさんは毎月10日間、介護老人保健施設の短期入所〈ショートステイ〉を利用している。今回は妻の腰痛が増強したため、Aさんは予定を早めて入所した。Aさんは握力が低下しているが、スプーンを使用し自力で食事を摂取している。食事中に姿勢が崩れることが多く、むせや食べこぼしがある。

問題100 看護師のAさんへの食事援助で正しいのはどれか。

1.頸部を後屈した体位にする。
2.座位時の体幹を安定させる。
3.食後に嚥下体操を実施する。
4.こぼさずに摂取できるよう全介助する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(75歳、男性、15年前:パーキンソン病、要介護2)
・2人暮らし(妻、75歳)
・7年前:L-dopaを1日3回内服。
・Hoehn&Yahr重症度分類のステージ:Ⅳ
・妻:腰痛、毎日リハビリテーション目的で通院中。
・Aさん:毎月10日間、ショートステイ(妻の介護負担を軽減目的)。
・今回:妻の腰痛が増強、Aさん予定を早めて入所。
・Aさん:握力低下あり、スプーンを使用し自力で食事を摂取可能。
・食事中:姿勢が崩れることが多く、むせや食べこぼしあり。
→パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

1.× 頸部は、「後屈」ではなく前屈した体位にする。なぜなら、気管は食道の前面に位置しており、頚部を前屈すると咽頭と気管に角度がついて、食べ物が気管に入りにくくなるため。
2.〇 正しい。座位時の体幹を安定させる。なぜなら、本症例の食事中の姿勢は、崩れることが多く、むせや食べこぼしがみられるため。パーキンソン病は姿勢反射障害や前傾姿勢を呈しやすいため、体幹を安定させることが大切である。
3.× 「食後」ではなく食前に嚥下体操を実施する。嚥下体操とは、口・舌・頬・声帯・首・肩・などの動きをよくして、飲み込み(嚥下)をしやすくする体操である。食事前の数分間、毎日行うことで、口腔周囲機能向上や維持、誤嚥性予防につながる。
4.× こぼさずに摂取できるよう全介助する必要はない。なぜなら、本症例は、スプーンを使用し自力で食事を摂取可能であるため。また、こぼしている理由は、姿勢の崩れによるもので、姿勢の修正することで改善がみられると考えられる。自尊心の維持のためにも自力で行えることは自分で行ってもらう。

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

 

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