第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午後101~105】

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次の文を読み100~102の問いに答えよ。
 A君 (5歳)は父親 (40歳) 母親 (38歳) と兄 (10歳) の4人家族である。 A君は生後6か月のときに白血病と診断され化学療法で寛解し、退院後は幼稚園に登園していた。4歳になって再発し、兄を骨髄ドナーとした造血幹細胞移植を受けた。

問題101 A君の造血幹細胞移植は無事に終了したが、終了後6か月で2度目の再発をし、化学療法が行われたが寛解しなかった。医師から両親にA君が終末期にあること、余命2か月程度であることが伝えられた。両親は「2度目の再発と聞いて覚悟をしていた。延命するための治療はしなくてよいと考えています。在宅療養に切り替えてAと家で過ごしたいが、できることとできないことを教えてほしいです」と話した。
 両親への看護師の返答で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.「遊園地には行けません」
2.「幼稚園に登園できます」
3.「食べ物の制限はありません」
4.「痛みが出た場合、自宅では痛みを和らげる治療はできません」
5.「感染対策のため、お兄ちゃんとの接触をできるだけ制限してください」

解答2・3

解説

本症例のポイント

・A君 (5歳、生後6か月:白血病
・4人家族:父親 (40歳)、 母親 (38歳) 、兄 (10歳)
・造血幹細胞移植終了後6か月:2度目の再発、化学療法が行われたが寛解せず。
・医師から両親に「A君が終末期にあること、余命2か月程度である」と。
・両親「2度目の再発と聞いて覚悟をしていた。延命するための治療はしなくてよいと考えています。在宅療養に切り替えてAと家で過ごしたいが、できることとできないことを教えてほしいです」と。
→化学療法とは、抗がん剤を用いて癌を治療することをいう。抗がん剤には、癌細胞の増殖を抑えたり、再発や転移を防いだりする効果がある。また、骨肉腫(悪性腫瘍)の場合、好中球やマクロファージによる貪食細胞機能やオプソニン効果の低下や液性・細胞性免疫、抗原提示能が障害されており、通常健常人には感染をおこさない病原性の弱い病原菌による感染(日和見感染)を生じやすいため。他にも、糖尿病・肝硬変・腎不全・低栄養・無ガンマグロブリン血症などの基礎疾患をもつ患者や、重症外傷・広範囲熱傷患者、ステロイド・抗癌剤・免疫抑制剤の投与、放射線治療を受けた患者などは注意が必要である。

1.× 「遊園地には行けません」と伝える必要はない。なぜなら、本症例は、終末期で余命2か月程度であるため。終末期看護の役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。本症例が、もし遊園地への希望があった際は、どのように安全に行けるか?指導すべきかチームで考えていく。
2.〇 正しい。「幼稚園に登園できます」と伝える。本症例が希望した場合は、安全に登園できるようにチームで検討していく。
3.〇 正しい。「食べ物の制限はありません」と伝える。本症例は、未成年であるため酒、たばこなどは摂取することはないが、刺激物(暖かいものも含む)は吐き気を誘発するため控える必要がある。医師や専門職と相談しながら、具体的に伝える必要がある。
4.× 「痛みが出た場合、自宅では痛みを和らげる治療はできません」と伝える必要はない。なぜなら、自宅においても内服によって、疼痛コントロールすることができるため。
5.× 「感染対策のため、お兄ちゃんとの接触をできるだけ制限してください」と伝える必要はない。なぜなら、本症例は、終末期で余命2か月程度であるため。終末期看護の役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。兄も弟もこれまでの入院で、さみしかったはずである。

終末期とは?

終末期看護の役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。患者が可能な限り前向きに生活できるような支援体制を提供するという。従来、医療・介護の現場では、終末期における治療の開始・中止・変更の問題は重要な課題のひとつである。疾病の根治を目的とせず延命のみを目的とした対症療法を一般的に延命治療と称し、人工呼吸・人工栄養(経管栄養)、人工透析などが含まれる。しかし、終末期患者では意思疎通の困難な場合も多く、患者の意思に反する治療(延命)になりかねない。治療・ケア内容に関する患者や家族の意思や希望を病状などに応じて繰り返し確認し、それを患者・家族・医療者で共有し、方針を見いだすことが非常に重要である。

 

 

 

 

 

次の文を読み100~102の問いに答えよ。
 A君 (5歳)は父親 (40歳) 母親 (38歳) と兄 (10歳) の4人家族である。 A君は生後6か月のときに白血病と診断され化学療法で寛解し、退院後は幼稚園に登園していた。4歳になって再発し、兄を骨髄ドナーとした造血幹細胞移植を受けた。

問題102 数日後、両親から「Aが亡くなることをAの兄にどのように説明したらよいでしょうか。私たちでは、うまく説明できません」と相談があった。
 看護師の両親への対応で適切なのはどれか。

1.「お兄ちゃんが病状を尋ねてくるのを待ちましょう」
2.「頑張っているA君のために、お兄ちゃんには治ると説明しましょう」
3.「看護師も同席してお兄ちゃんに説明する機会を設けることができます」
4.「ドナーになったお兄ちゃんががっかりするので説明しないでおきましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・A君 (5歳、生後6か月:白血病)
・4人家族:父親 (40歳)、 母親 (38歳) 、兄 (10歳)
・造血幹細胞移植終了後6か月:2度目の再発、化学療法が行われたが寛解せず。
・医師から両親に「A君が終末期にあること、余命2か月程度である」と。
・数日後、両親「Aが亡くなることをAの兄にどのように説明したらよいでしょうか。私たちでは、うまく説明できません」と。
→一般的に、10~11歳の子どもは、死の最終性や普遍性を認知できるようになるが、その理解はまだしっかりしたものではない。場合によっては、12歳でもこれらの概念の理解が難しい子がいる。この発達や理解に応じた臨機応変な分かりやすい説明が求められるため、場合によっては感情が強く入りやすい両親の説明では子どもの理解が追い付かない可能性もある。したがって、専門的な知識を持った人の同席の必要性が高い。

1.× 「お兄ちゃんが病状を尋ねてくるのを待ちましょう」と伝える必要はない。なぜなら、本症例の余命は2か月程度であるため。兄としても「やりたいこと」や「伝えたいこと」、「心構え」を準備しておく必要があるかもしれない。また、両親を困らせたくないなどの理由からも、病状を尋ねない可能性もある。
2.× 「頑張っているA君のために、お兄ちゃんには治ると説明しましょう」伝える必要はない。なぜなら、うそを伝えることになるため。場合によっては両親への信頼を失いかねず、亡くなった時のショックが強くなってしまう可能性があげられる。

3.〇 正しい。「看護師も同席してお兄ちゃんに説明する機会を設けることができます」と伝える。一般的に、10~11歳の子どもは、死の最終性や普遍性を認知できるようになるが、その理解はまだしっかりしたものではない。場合によっては、12歳でもこれらの概念の理解が難しい子がいる。この発達や理解に応じた臨機応変な分かりやすい説明が求められるため、場合によっては感情が強く入りやすい両親の説明では子どもの理解が追い付かない可能性もある。したがって、専門的な知識を持った人の同席の必要性が高い。
4.× 「ドナーになったお兄ちゃんががっかりするので説明しないでおきましょう」伝える必要はない。なぜなら、両親の発言から、「兄に説明したい」方針が伝わってくる。具体的にどのように伝えるかが課題である。また、ドナーになった兄が「がっかりする」と看護師が一方的な決めつけをしている。どのような伝え方でそのように感じさせないか?も検討していく必要がある。

 

 

 

 

 

次の文を読み103~105の問いに答えよ。
 A君(11歳)は両親と3人で暮らしている。5歳で気管支喘息と診断され、現在は抗アレルギー薬とステロイドの吸入薬が処方されている。本日、学校から帰ってきた後から咳嗽がみられ元気がなかった。夕食はあまり食べずに就寝した。夜間になり「苦しくて眠れない」と訴え、母親と救急外来を受診した。口元での喘鳴が著明であり、問診すると途切れ途切れに話した。受診時のバイタルサインは、体温36.9℃、呼吸数32/分、心拍数120/分、経皮的動脈血酸素飽和度 92%(room air)であった。

問題103 A君の気管支喘息の発作強度はどれか。

1.小発作
2.中発作
3.大発作
4.呼吸不全

解答

解説

本症例のポイント

・A君 (11歳、5歳で気管支喘息
・3人暮らし(両親)
・現在:抗アレルギー薬、ステロイドの吸入薬が処方。
・本日:咳嗽がみられ元気がなかった。
・夕食:あまり食べずに就寝。
・夜間:「苦しくて眠れない」と訴え母親と受診。
・口元での喘鳴が著明、途切れ途切れに話した。
・【バイタルサイン】体温36.9℃、呼吸数32/分、心拍数120/分、経皮的動脈血酸素飽和度92%
→気管支喘息とは、主に気管支に炎症が起きている状態である。炎症により気管支が狭くなったり(狭窄)、刺激に対して過敏な反応を示したりする。喘息は乳幼児期に発症することが多く、全体の60~70%が2~3歳までに発症する。子どもの喘息の多くは思春期の頃には症状がよくなるが、そのうちの約30%は大人になっても続くといわれている。
【症状】喘鳴、呼吸困難、呼気延長など(1秒率の低下)、アレルギー反応やウイルス感染が誘引となる。

【治療】気道の炎症を抑えて、発作が起きない状態にする。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。

(※図引用:「気管支喘息発作」呼吸器内科 藤井 一彦より)

1.× 小発作は、経皮的動脈血酸素飽和度96%以上が目安である。
2.〇 正しい。中発作が、A君の気管支喘息の発作強度である。なぜなら、経皮的動脈血酸素飽和度92%であるため。途切れ途切れに話していることからも、中発作といえる。ただし、口元での喘鳴が著明であることから、大発作に発展しつつある状況であるため注意が必要である。
3.× 大発作は、経皮的動脈血酸素飽和度90%以下が目安である
4.× 呼吸不全とは、PaO2が60Torr以下で、そのうちPaCO2が正常範囲(45Torr以下)のものをⅠ型呼吸不全、45Torrを超えるものをⅡ型呼吸不全と分類する。

 

 

 

 

 

次の文を読み103~105の問いに答えよ。
 A君(11歳)は両親と3人で暮らしている。5歳で気管支喘息と診断され、現在は抗アレルギー薬とステロイドの吸入薬が処方されている。本日、学校から帰ってきた後から咳嗽がみられ元気がなかった。夕食はあまり食べずに就寝した。夜間になり「苦しくて眠れない」と訴え、母親と救急外来を受診した。口元での喘鳴が著明であり、問診すると途切れ途切れに話した。受診時のバイタルサインは、体温36.9℃、呼吸数32/分、心拍数120/分、経皮的動脈血酸素飽和度 92%(room air)であった。

問題104 救急外来で、吸入と点滴静脈内注射が行われA君の症状は軽快した。A君は、医師や看護師による問診には素直に答えているが、 心配する母親には「病院に来るほどじゃないんだよ。入院はしないからな」と発言し、反抗的な態度をとっている。
 このときの看護師の対応で適切なのはどれか。

1.A君に発言の理由を尋ねる。
2.A君ではなく母親から病状を聴取する。
3.母親への態度は問題行動であるとA君に忠告する。
4.親子関係に問題があるのではないかと母親に伝える。

解答

解説

本症例のポイント

・A君 (11歳、5歳で気管支喘息
・救急外来:吸入と点滴静脈内注射が行われ症状軽快。
・医師や看護師による問診:素直に答えている
・心配する母親には「病院に来るほどじゃないんだよ。入院はしないからな」と反抗的な態度
本症例は、11歳である。エリクソンにおけるライフステージでは「学童期」にあたるが、あくまで目安であり、個人差により早まったり短くなったりする。心理的離乳とは、思春期に親や家族に反発する第二次反抗期がみられることである。 親などから精神的に自立し、友人関係が重要となる。学童期までの親に依存する状態から脱却して、親から心理的に自立するようになる第二次反抗期と呼ばれる。それよりも、同性同年輩の友人との関係が親密となり、そのなかで自己像を見つめなおし、アイデンティティを確立させていく。

1.〇 正しい。A君に発言の理由を尋ねる。なぜなら、医師や看護師による問診には、素直に答えているため。本症例は、気管支喘息の中発作を発症していたため、今後も同じような場面が起こりえる可能性がある。その際でも適切な処置ができるよう、心情を把握しておくことが大切である。
2.× A君ではなく母親から病状を聴取する必要はない。なぜなら、医師や看護師による問診には、素直に答えているため。また、11歳という年齢からも受け答えなどは行えると考えられる。
3.× 母親への態度は「問題行動である」とA君に忠告する必要はない。なぜなら、本症例の第二反抗期な態度は、年齢から正常な行動と考えられるため。
4.× 親子関係に「問題があるのではないか」と母親に伝える必要はない。なぜなら、本症例の第二反抗期な態度は、年齢から正常な行動と考えられるため。

エリクソン発達理論

乳児期(0歳~1歳6ヶ月頃):基本的信頼感vs不信感
幼児前期(1歳6ヶ月頃~4歳):自律性vs恥・羞恥心
幼児後期(4歳~6歳):積極性(自発性)vs罪悪感
児童期・学童期(6歳~12歳):勤勉性vs劣等感
青年期(12歳~22歳):同一性(アイデンティティ)vs同一性の拡散
前成人期(就職して結婚するまでの時期):親密性vs孤立
成人期(結婚から子供が生まれる時期):生殖性vs自己没頭
壮年期(子供を産み育てる時期):世代性vs停滞性
老年期(子育てを終え、退職する時期~):自己統合(統合性)vs絶望

 

 

 

 

 

次の文を読み103~105の問いに答えよ。
 A君(11歳)は両親と3人で暮らしている。5歳で気管支喘息と診断され、現在は抗アレルギー薬とステロイドの吸入薬が処方されている。本日、学校から帰ってきた後から咳嗽がみられ元気がなかった。夕食はあまり食べずに就寝した。夜間になり「苦しくて眠れない」と訴え、母親と救急外来を受診した。口元での喘鳴が著明であり、問診すると途切れ途切れに話した。受診時のバイタルサインは、体温36.9℃、呼吸数32/分、心拍数120/分、経皮的動脈血酸素飽和度 92%(room air)であった。

問題105 A君は1年前から気管支喘息の急性増悪〈発作〉を起こして救急外来の受診を繰り返していることが分かった。看護師がA君に今の症状に対する認識を確認すると「喘息発作が起きていて、家で吸入をしても治まらなかった」と答えた。学校生活や服薬については「学校は好きだけど、体育は嫌だな。吸入が面倒くさい。吸入しなくても発作が起きなければいいんでしょ」と話した。看護師は、急性増悪〈発作〉を繰り返しているA君のセルフケアへの支援をする必要があると考えた。
 A君への看護師の対応で最も適切なのはどれか。

1.毎日運動するよう勧める。
2.お薬手帳を持ち歩くよう伝える。
3.A君と服薬管理について話し合う。
4.喘息発作があったことを母親から担任の先生に伝えるよう提案する。

解答

解説

本症例のポイント

・A君 (11歳、5歳で気管支喘息
・1年前:気管支喘息の急性増悪を繰り返している。
・A君「喘息発作が起きていて、家で吸入をしても治まらなかった」と。
・学校生活や服薬について「学校は好きだけど、体育は嫌だな。吸入が面倒くさい。吸入しなくても発作が起きなければいいんでしょ」と。
→気管支喘息の治療は、気道の炎症を抑えて、発作が起きない状態にする。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。発作は、風邪、運動、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)、たばこ、気温や気圧の変化など、さまざまな刺激が原因となって起こる。

1.× 毎日運動するよう勧める必要はない。なぜなら、発作の要因になるため。また、本症例も「体育は嫌」といっていることから、その理由を推測すると、発作の要因となるためと考えられる。ちなみに、他にも発作は、風邪、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)、たばこ、気温や気圧の変化など、さまざまな刺激が原因となって起こる。
2.× お薬手帳を持ち歩くよう伝える優先度は低い。なぜなら、設問文から優先される理由は見当たらないため。お薬手帳とは、日本において導入されている個人健康情報管理の一制度で、薬の服用履歴や、既往症、アレルギーなど、医療関係者に必要な情報を記載する手帳の俗称である。 医師・歯科医師や薬剤師が、患者がどのような薬をどのくらいの期間使っているのかを確認するために使用する。
3.〇 正しい。A君と服薬管理について話し合う。なぜなら、本症例は「吸入しなくても発作が起きなければいい」と言っており、服薬管理についての理解や意識を評価する必要があるため。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。
4.× 喘息発作があったことを母親から担任の先生に伝えるよう提案する優先度は低い。なぜなら、A君にもプライバシーを保護されるべきであるため。母親が内通していることをA君(第二次性徴中)が知ると、家族との関係に支障をきたす可能性が高い。

 

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