第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午後26~30】

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問題26 心周期に伴う心臓の変化で、収縮期の初期には心室の容積は変わらずに内圧が上昇していく。
 このときの心臓で正しいのはどれか。

1.僧房弁は開いている。
2.大動脈弁は開いている。
3.左心室の容積は最小である。
4.左心室の内圧は大動脈圧よりも低い。

解答

解説

心周期とは?

心周期とは、心臓の収縮と弛緩からなる、心臓ポンプの1回の心拍動のことである。心周期は5つに分けられる。

①心房収縮期(心房が収縮し、左右の房室弁が開くことで、心房内の血液が心室に送られる)
②等容性収縮期(心室の収縮が始まる段階。心室内圧は上昇し、すべての弁は閉じる。血液に動きはない。)
③駆出期(さらに心室が収縮し、心室内圧が動脈内圧を上まわる。動脈弁が開き、心室内の血液は動脈へと流れる。)
④等容性拡張期(心室筋が弛緩して拡張が始まる段階。血液が動脈へと流れ出た後、心室圧は低下する。心室圧が動脈圧を下回ると、すべての弁が閉じる。心房には血液が流れ込み始める。)
⑤充満期(心房と心室がさらに拡張し、心室内圧が低下して房室弁が開き、心房の血液が心室に流れ込む。)

(※図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

1~2.× 僧房弁(僧帽弁)/大動脈弁は、「開いている」のではなく閉じている。これにより血液の逆流を防いでいる。収縮期の初期(等容性収縮期)は、心室の収縮が始まる段階に該当し、心室内圧は上昇し、すべての弁は閉じる。血液に動きはないことが特徴である。
3.× 左心室の容積は、「最小」ではなく最大である。左心室の容積が最小となるのは、等容性拡張期である。この時期は、心室筋が弛緩して拡張が始まる段階である。血液が動脈へと流れ出た後、心室圧は低下する。心室圧が動脈圧を下回ると、すべての弁が閉じる。心房には血液が流れ込み始める。
4.〇 正しい。左心室の内圧は大動脈圧よりも低い。したがって、血液の逆流を防ぐため大動脈弁が閉じる。左心室の圧力が大動脈圧を上回ると、大動脈弁が開く。収縮期の初期(等容性収縮期)は、心室の収縮が始まる段階に該当し、心室内圧は上昇し、すべての弁は閉じる。血液に動きはないことが特徴である。

 

 

 

 

 

問題27 リンパの流れで正しいのはどれか。

1.成人の胸管を流れる量は1日約10Lである。
2.右上半身のリンパは胸管に流入する。
3.中枢から末梢への一方向に流れる。
4.筋運動を行うと流量は増加する。

解答

解説

胸管とは?

胸管とは、最大のリンパ管である。下半身と左上半身のリンパを集める全長35~40cmのリンパ管である。胸管は鎖骨下静脈に接続し、リンパ液を血液中に戻す。 またリンパ液は、組織中の異物(細菌など)、がん細胞、死んだ細胞や損傷した細胞などを廃棄するためにリンパ管やリンパ器官に運ぶ役割も担っている。

1.× 成人の胸管を流れる量は、「1日約10L」ではなく「1日2~4L」である。
2.× 右上半身のリンパは、「胸管」ではなく右リンパ管に流入する。ちなみに、胸管は、下半身と左上半身のリンパを集める。
3.× 「中枢から末梢へ」ではなく、末梢から中枢への一方向に流れる。ちなみに、中枢から末梢へ流れるものは動脈である。
4.〇 正しい。筋運動を行うと流量は増加する。筋ポンプ作用で血流やリンパ流が増え、浮腫の改善が期待できる。

 

 

 

 

 

問題28 肥大型心筋症について正しいのはどれか。

1.ウイルス感染が主な病因である。
2.拡張障害が問題となる。
3.左室内腔は拡大する。
4.弁膜に肥厚を認める。

解答

解説

肥大型心筋症とは?

肥大型心筋症とは、肥大心筋の硬化に伴う拡張機能障害(拡張期充満圧の上昇を招く)である。拡張期に心室内の血液充填が十分に行われず、心拍出量が低下、血圧の低下などが起こる。症状を有する場合には、不整脈に伴う動悸やめまい、運動時の呼吸困難・胸の圧迫感などが起こる。

1.× 「ウイルス感染」ではなく遺伝的要因が主な病因である。心筋細胞の中に、心筋の収縮に関わるサルコメア蛋白という一群が存在し、この蛋白をコードしている遺伝子の変異が主な原因とされている。
2.〇 正しい。拡張障害が問題となる。肥大型心筋症とは、肥大心筋の硬化に伴う拡張機能障害(拡張期充満圧の上昇を招く)である。拡張期に心室内の血液充填が十分に行われず、心拍出量が低下、血圧の低下などが起こる。症状を有する場合には、不整脈に伴う動悸やめまい、運動時の呼吸困難・胸の圧迫感などが起こる。
3.× 左室内腔は、「拡大」ではなく縮小する。なぜなら、心筋が肥厚し、左心室壁が厚くなるため。ちなみに、左室内腔の拡大が起こるのは、拡張型心筋症である。ちなみに、拡張型心筋症とは、心臓(特に左心室、時として両心室)の筋肉の収縮する能力が進行性に低下することにより左心室が通常よりも大きくなってしまい、血液を適切に全身に送ることができなくなって心不全や不整脈を生じる病気である。
4.× 弁膜に肥厚を認めるのは、「肥大型心筋症」ではなく心弁膜症である。心弁膜症は、生活習慣や老化など様々な原因によって起こるため、発症した場合、塩分や水分の摂り過ぎに気をつけ、お酒やタバコはやめるよう指導する必要がある。

心周期とは?

心周期とは、心臓の収縮と弛緩からなる、心臓ポンプの1回の心拍動のことである。心周期は5つに分けられる。

①心房収縮期(心房が収縮し、左右の房室弁が開くことで、心房内の血液が心室に送られる)
②等容性収縮期(心室の収縮が始まる段階。心室内圧は上昇し、すべての弁は閉じる。血液に動きはない。)
③駆出期(さらに心室が収縮し、心室内圧が動脈内圧を上まわる。動脈弁が開き、心室内の血液は動脈へと流れる。)
④等容性拡張期(心室筋が弛緩して拡張が始まる段階。血液が動脈へと流れ出た後、心室圧は低下する。心室圧が動脈圧を下回ると、すべての弁が閉じる。心房には血液が流れ込み始める。)
⑤充満期(心房と心室がさらに拡張し、心室内圧が低下して房室弁が開き、心房の血液が心室に流れ込む。)

 

 

 

 

 

問題29 歯周病について正しいのはどれか。

1.原因はウイルス感染が多い。
2.発症の直接因子として飲酒がある。
3.真性ポケットが形成される歯周炎を含む。
4.破壊が歯槽骨まで及んでいるのは歯肉炎である。

解答

解説

歯周病とは?

歯周病とは、歯と歯ぐき(歯肉)のすきま(歯周ポケット)から侵入した細菌が、歯肉に炎症を引き起こし、さらには歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてグラグラにさせてしまう病気である。プラーク(歯垢)を除去するには、毎日の歯みがきが重要である。よく磨いたつもりでも、歯と歯の間は磨き残しが多く、大部分にプラークが残っている。これらのプラーク(歯垢)を除去するためには、ハブラシに加えて、歯間クリーナー(歯間ブラシやデンタルフロス)の使用が効果的と言われている。

1.× 原因は、「ウイルス感染」ではなく細菌感染が多い。歯と歯ぐき(歯肉)のすきま(歯周ポケット)から侵入する。
2.× 発症の直接因子として、「飲酒」ではなくプラーク(歯垢)がある。プラークとは、多くの種類の細菌が増殖してかたまりとなったものである。特に、歯周病細菌は酸素の少ない場所を好むため、主に歯周ポケットの中に存在し、毒素や酸素を放出して歯周組織を破壊していく。
3.〇 正しい。真性ポケットが形成される歯周炎を含む。歯周病は、歯肉炎と歯周炎の2つの主要なタイプに分類され、歯周炎では、真性ポケットが形成され、歯槽骨が破壊される。歯周炎は歯周病の進行した形態であり、歯肉炎よりも重症である。歯肉炎の場合、歯と歯肉の付着部は破壊されておらず、歯肉が腫脹することで、見かけ上、歯と歯肉の境目が深くなる。これを仮性ポケット(歯肉ポケット)という。歯周炎になると付着の喪失により、実際に歯と歯肉の境目が深くなる。これを真性ポケット(歯周ポケット)という。
4.× 破壊が歯槽骨まで及んでいるのは、「歯肉炎」ではなく歯周病である。歯肉炎とは、歯周病の軽度な形態であり、炎症は歯肉に限定される。一方、歯周炎の場合の場合は、歯槽骨の破壊が起こる。

 

 

 

 

 

問題30 帯状疱疹について正しいのはどれか。

1.運動神経麻痺は生じない。
2.感染の既往として水痘がある。
3.ウイルスは発症後1か月で消滅する。
4.単純ヘルペスウイルスの感染が原因である。

解答

解説

帯状疱疹とは?

帯状疱疹とは、身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、これに続いて赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状にあらわれる病気である。多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こる。

1.× 運動神経麻痺は生じないと断言することはできない。なぜなら、ウイルスが運動神経の細胞体を感染することにより、まれに運動神経麻痺を引き起こす可能性があるため。帯状疱疹による運動神経麻痺は、脳神経領域が多く、体幹や四肢の運動神経麻痺の頻度は帯状疱疹患者の1.5~5%と少なく、上肢に比べ下肢の運動神経麻痺はさらに少ない。
2.〇 正しい。感染の既往として水痘がある。帯状疱疹は、子供の頃にかかった水痘ウイルスが数十年の潜伏期間を経て、免疫力が低下した時などに再活性化(回帰感染)して起こる。赤い斑点や水痘、激しい痛みを生じる。
3.× ウイルスは発症後1か月で「消滅する」とはいえない。帯状疱疹の症状は通常、数週間で治まるが、ウイルス自体は体内に潜伏したまま残る。これは、水痘帯状疱疹ウイルスが神経節に潜伏する性質を持っているため。免疫力が低下した際に再発の恐れがあるため注意する。
4.× 「単純ヘルペスウイルス」ではなく水痘・帯状疱疹ウイルスの感染が原因である。単純ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスⅠ型(HSV-1)と単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV-2)がある。単純ヘルペスウイルスⅠ型(HSV-1)は、主に口の周りに感染し口腔ヘルペスの原因となる。口と口との接触、唾液、感染した皮膚表面との接触により感染を引き起こすが、性器にも伝播し口と性器との接触を通して性器ヘルペスを引き起こす。一方、単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV-2)は、性器ヘルペスウイルス感染症を引き起こし、主に性交渉時に性器の表面、感染した皮膚、体液との接触によって伝播する。

 

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