第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午後46~50】

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問題46 臨死期にある患者の家族から「のどがゴロゴロと鳴っていて苦しんでいます。この苦痛をとってあげたい」 と相談された。看護師が、呼吸音を聴取すると咽頭に雑音を認めた。
 患者の苦痛を緩和するための対応で適切なのはどれか。

1.顔を横に向ける。
2.気管支拡張薬を用いる。
3.口腔内をガーゼで拭く。
4.雑音が消失するまで吸引する。

解答

解説

本症例のポイント

臨死期にある患者。
・家族「のどがゴロゴロと鳴っていて苦しんでいます。この苦痛をとってあげたい」 と。
・看護師:呼吸音を聴取すると咽頭に雑音を認めた。
→本症例から、死前喘鳴が聞かれる。死前喘鳴とは、呼吸気時に咽頭や喉頭の分泌物が振動して発生する「ゼィゼィ・ゴロゴロ」という呼吸音のことである。死前喘鳴は終末期がん患者の40~70%程度に出現し、家族や介護者の80%以上が死前喘鳴に対して苦痛を感じていたという報告もあり、家族のケアも重要となる。原因として、咽頭の後方部分での唾液の貯留で生じているため、対処法として、頭部を高くしたり、顔を横に向け、貯留物の移動を促す(体位ドレナージ)。

(※図引用:「illustAC様」)

1.〇 正しい。顔を横に向ける。本症例から、死前喘鳴が聞かれる。死前喘鳴とは、呼吸気時に咽頭や喉頭の分泌物が振動して発生する「ゼィゼィ・ゴロゴロ」という呼吸音のことである。死前喘鳴は終末期がん患者の40~70%程度に出現し、家族や介護者の80%以上が死前喘鳴に対して苦痛を感じていたという報告もあり、家族のケアも重要となる。原因として、咽頭の後方部分での唾液の貯留で生じているため、対処法として、頭部を高くしたり、顔を横に向け、貯留物の移動を促す(体位ドレナージ)。
2.× 気管支拡張薬を用いる必要はない。気管支拡張薬は、気道の狭窄を改善するために使用される薬であるため。主な副作用として、手の震え、動悸、脈が速くなる、筋肉がつるなどの症状である。
3.× 口腔内をガーゼで拭く必要はない。本症例に死前喘鳴が見られている。死前喘鳴の原因は、咽頭の後方部分での唾液の貯留で生じている。口腔内をガーゼで拭いても効果はない。
4.× 雑音が消失するまで吸引する必要はない。なぜなら、過度な吸引は、患者に不快感や痛みを与えるため。本症例は、臨死期(臨終が差し迫った時期)であるため、患者の負担を最小限にしたり、家族の意向や希望を聞きながら医療を提供していかなければならない。

臨死期に起こる症状

臨死期とは、臨終が差し迫った時期である。

症状として、るい痩、ADL(日常生活活動)低下、食欲低下、水分摂取量減少、尿量減少、皮膚虚血、意識レベルの低下、死前喘鳴、下顎呼吸、末梢チアノーゼ、チェーンストークス呼吸、橈骨動脈触知不可などが見られる。

 

 

 

 

 

問題47 成人の気管支喘息に対する副腎皮質ステロイド薬の吸入で正しいのはどれか。

1.糖尿病の患者への投与は禁忌である。
2.副作用(有害事象)に不整脈がある。
3.重積発作の際に使用する。
4.吸入後は含嗽を促す。

解答

解説

気管支喘息とは?

【症状】
喘鳴、呼吸困難、呼気延長など(1秒率の低下)、アレルギー反応やウイルス感染が誘引となる。

【治療】気道の炎症を抑えて、発作が起きない状態にする。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。

1.× 糖尿病の患者への投与は、禁忌とはいえない。副腎皮質ステロイド薬の吸入は、血糖値の上昇の影響が少ないため糖尿病患者にも投与できる。ただし、内服によるステロイドの場合、副作用として、糖尿病があげられているため注意が必要である。
2.× 副作用(有害事象)に、不整脈はあげられていない。吸入ステロイド薬の副作用として、口の中に残ると粘膜の免疫を抑制するため、カンジダというカビの一種が増えることがある。それを防ぐため、吸入後には必ずうがいを推奨する。
3.× 重積発作の際に使用するのは、「吸入」ではなく「投与(注射)」である。重積発作とは、喘息発作が 24時間以上持続するものと定義され、急性呼吸不全につながり人工呼吸管理が必要となる場合が多い。重積発作の際には、急速に気道を開くために短時間作用型のβ2刺激薬や全身投与の副腎皮質ステロイド薬を用いる。
4.〇 正しい。吸入後は含嗽を促す。なぜなら、副腎皮質ステロイド薬の抗炎症作用(副作用:易感染性など)により、不快感、刺激感、嗄声(しわがれ声)、口腔カンジダ症などの副作用を起こす恐れがあるため。ちなみに、カンジダ症とは、カンジダ属の真菌による感染症である。接触感染の感染経路をとり、個室隔離の必要はない。症状として、発疹、鱗屑、かゆみ、腫れなどがみられる。湿潤部位の皮膚で発生しやすい傾向がある。境界のあまりはっきりしない、ジクジクした紅斑で、その中や周囲に小さい水ぶくれや膿が多数見られる。

副腎皮質ステロイド薬とは?

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

 

 

 

 

問題48 Aさん(43歳、男性)は胆道狭窄のため内視鏡的逆行性胆管膵管造影〈ERCP〉検査を受けた。検査後に心窩部痛が出現したため血液検査を行い、禁食、抗菌薬および蛋白分解酵素阻害薬による治療を行うことになった。
 血液検査の項目でAさんに生じた合併症を判断できるのはどれか。

1.アミラーゼ〈AMY〉
2.アルブミン〈Alb〉
3.カリウム〈K〉
4.クレアチンキナーゼ〈CK〉

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(43歳、男性)
胆道狭窄のため内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査を受けた。
・検査後:心窩部痛が出現したため血液検査。
・禁食、抗菌薬および蛋白分解酵素阻害薬による治療を行うことになった。
→本症例は、ERCP検査後の心窩部痛や治療からも急性膵炎が疑われる。内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP:endoscopic retrograde cholangiopancreatography)とは、内視鏡(カメラ)を口から入れて食道・胃を通り十二指腸まで進め、胆管や膵管に直接細いチューブを介して造影剤を注入して、胆嚢や胆管及び膵管の異常を詳しく調べる検査である。検査後の合併症として最も多いものが膵炎である。検査後の膵炎は全体の2~7%に起こるとされている。

1.〇 正しい。アミラーゼ〈AMY〉は、Aさんに生じた合併症を判断できる。なぜなら、本症例は、ERCP検査後の心窩部痛や治療からも急性膵炎が疑われるため。アミラーゼとは、でんぷんを分解して糖にする酵素である。体内では主に、膵臓、耳下腺(唾液腺)から分泌される。膵細胞が破壊されると、アミラーゼが高値となる。したがって、高値の場合、急性膵炎、慢性膵炎、膵がん、膵嚢胞等の膵疾患のほか、イレウス(腸閉塞)、卵巣腫瘍、肝炎、腎不全等が疑われる。
2.× アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。
3.× カリウムとは、ナトリウムとともに、細胞の浸透圧を維持しているほか、酸・塩基平衡の維持、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節などの働きをしている。高カリウム血症とは、血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることである。通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。原因としては、①カリウム摂取の増加、②腎臓からのカリウム排泄を障害する薬剤、③急性腎障害または慢性腎臓病などで起こりえる。症状として、悪心、嘔吐などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などが現れる。
4.× クレアチンキナーゼとは、骨格筋・心筋・脳などの損傷の程度を推測する指標である。筋肉細胞に含まれており、筋肉細胞の障害により高クレアチンキナーゼ血症となる。発症時の自覚症状としては、筋痛・しびれ・腫脹が生じ、筋壊死の結果として脱力・赤褐色尿(ミオグロビン尿)が生じ、腎不全症状が加わると無尿・乏尿・浮腫が生じる。

急性膵炎とは?

急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。男性では50歳代に多く、女性では70歳代に多い。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。
検査:膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。
【治療】
軽症例:保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)
重症例:集中治療[臓器不全対策、輸液管理、栄養管理(早期経腸栄養)、感染予防、腹部コンパートメント症候群対策]

(※参考:「急性膵炎」MSDマニュアル家庭版より)

 

 

 

 

 

問題49 パッチテストで皮膚反応を観察するタイミングはどれか。

1.12時間後
2.24時間後
3.36時間後
4.48時間後

解答

解説

パッチテストとは?

パッチテスト(貼付試験)とは、主にⅠ型(即時型)アレルギーとⅣ型(遅延型)アレルギーの精査検査である。背部や上腕など目立たない正常な皮膚に、アレルゲン物質のテスターを貼付し、48時間経過後および72時間後にその反応を観察し、その強さを判定する。遅発性反応を起こすこともあるため、72時間後、1週間後にも判定を行うことがある。剥がした15~30分後に皮膚反応を観察する。パッチテストの陽性反応は、適切な方法でおこなっても、時に水疱やびらんなど非常に強く出るケースがある。特に、皮膚症状が高度である場合に起こりやすいため、テストを受ける際に留意する必要がある。テスト部位に痛みやひどいかゆみを生じた場合は、48時間を待たずにパッチを除去する。

1~3.× 12時間後/24時間後/36時間後は、皮膚反応を観察するタイミングではない。
4.〇 正しい。48時間後は、パッチテストで皮膚反応を観察するタイミングである。48時間後に剥がし、15~30分後に皮膚反応を観察する。パッチテストの陽性反応は、適切な方法でおこなっても、時に水疱やびらんなど非常に強く出るケースがある。特に、皮膚症状が高度である場合に起こりやすいため、テストを受ける際に留意する必要がある。テスト部位に痛みやひどいかゆみを生じた場合は、48時間を待たずにパッチを除去する。

 

 

 

 

 

問題50 シクロホスファミドを投与している患者で注意が必要なのはどれか。

1.緑内障
2.間質性肺炎
3.歯肉の肥厚
4.出血性膀胱炎

解答

解説

抗がん剤とは?

EC療法の「EC」とは、①エピルビシンと②シクロホスファミドの2種類の抗がん剤の頭文字をとった療法のことである。①エピルビシンの副作用としては、吐き気・嘔吐、口内炎、脱毛の発生頻度が高い。そのほか、頭痛や発熱、寒気、発疹、筋肉痛、肝機能や腎機能の低下がみられることがある。②シクロホスファミドの副作用として、骨髄抑制や吐き気・嘔吐、発熱、脱毛、出血性膀胱炎などが生じる。脱毛は治療が終わり薬の使用をやめれば自然に回復する。女性は無月経、男性では精子生産の停止が起こることもある。大量投与や長期投与によりめまいや動悸・息切れが生じ、骨髄抑制も増強することがある。

1.× 緑内障は、抗コリン薬や副腎皮質ステロイド薬などの副作用で生じやすい。緑内障とは、眼圧の上昇や視神経の脆弱性などにより視神経が障害され、視野障害をきたす疾患である。一般的な症状として、①見える範囲が狭くなる、②一部が見えにくくなる、③見えない部分が出現するなどが生じる。一度悪くなった視界・視野の症状は改善されることはないため、病気の種類や進行度合いなどによって薬物療法、レーザー治療、手術などが検討される。
2.× 間質性肺炎は、抗ガン薬や抗リウマチ薬などの副作用で生じやすい。間質性肺炎とは、肺の間質組織の線維化が起こる疾患の総称で、慢性的かつ進行性の特徴を持つ。病因は、喫煙、職業上の曝露、感染、免疫不全などである。症状は咳、痰、呼吸困難などで、早期には特徴的な症状がないこともある。
3.× 歯肉の肥厚は、抗てんかん薬や高血圧治療薬などの副作用で生じやすい。歯肉肥厚とは、歯が欠損している無歯部には生じず、有歯部に限局し、特に上下の前歯部に発現しやすい。辺縁歯肉や歯間乳頭部の増大が見られ、高度の場合は歯肉が歯を覆い、歯冠部が見えなくなることもある。腫脹部位は境界が鮮明で、弾性があり硬い。
4.〇 正しい。出血性膀胱炎は、シクロホスファミドを投与している患者で注意が必要である。出血性膀胱炎とは、出血を伴う膀胱炎で、尿が赤みを帯びる(血尿)という症状がみられる。出血について、膀胱粘膜の一部からというより、全体からの出血が特徴的とされる。

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

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