第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午後86~90】

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問題86 高齢者の睡眠で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.単相性の睡眠になる。
2.浅い眠りが少なくなる。
3.総睡眠時間が延長する。
4.中途覚醒の回数が増加する。
5.入眠するまでに時間がかかる。

解答4・5

解説

高齢者の睡眠の特徴

高齢者は、社会的な刺激が少ない状況におかれ、身体的・精神的活動能力が低下しているため、日中の活動量は減り、熟睡が困難になる。また、身体的要因や疾患のために夜間睡眠が妨げられやすくなる。さらに、加齢や脳の器質的障害に伴うサーカディアンリズムの変化が生じる。

1.× 単相性の睡眠とはならない。睡眠には、①レム睡眠(脳が活発に動いている)と、②ノンレム睡眠(大脳が休息している)がある。単相性睡眠の特徴をもつ時期は、新生児である。1回ごとの睡眠が40~60分で、小刻みに何回も寝る。1日合計睡眠時間は、およそ16時間にもなる。これを多相性睡眠と呼ぶ。一方、 11時ごろから6時ごろまでが、単相性睡眠となることも知られている。
2.× 浅い眠り(第1・2段階のノンレム睡眠)が「少なく」ではなく多くなる。ちなみに、深い眠り(第3・4段階のノンレム睡眠)は、少なくなり熟睡感の低下につながる。
3.× 総睡眠時間が「延長」ではなく短縮する。なぜなら、加齢に伴い、日中の活動量は減り、熟睡が困難になるため。また、身体的要因や疾患のために夜間睡眠が妨げられやすくなる。さらに、加齢や脳の器質的障害に伴うサーカディアンリズムの変化が生じる。
4~5.〇 正しい。中途覚醒の回数が増加する/入眠するまでに時間がかかる。なぜなら、加齢に伴い、日中の活動量は減り、熟睡が困難になるため。また、身体的要因や疾患のために夜間睡眠が妨げられやすくなる。さらに、加齢や脳の器質的障害に伴うサーカディアンリズムの変化が生じる。ちなみに、中途覚醒とは、一度入眠したあと、翌朝起床するまでの間に何度も目が覚めてしまうことである。

 

 

 

 

 

問題87 高齢者の血液検査の結果で成人の基準値と比較して値が高くなるのはどれか。2つ選べ。

1.血小板数
2.尿素窒素
3.白血球数
4.食後血糖値
5.AST〈GOT〉

解答2・4

解説
1.× 血小板数は、加齢に伴う変化は見られにくい。血小板とは、出血の際の一次止血や血液凝固機能に関与する。血液中の細胞成分である。
2.〇 正しい。尿素窒素は、高齢者の血液検査の結果で成人の基準値と比較して値が高くなる。なぜなら、加齢により腎機能が低下するため。尿中への尿素窒素排泄が減少する。ちなみに、尿素窒素とは、血液のなかの尿素に含まれる窒素成分のことで、蛋白質が利用された後にできる残りかすといえる。通常は腎臓でろ過されて尿中へ排出されるが、腎臓の働きが低下すると、ろ過しきれない分が血液のなかに残る。つまり、尿素窒素の数値が高くなるほど、腎臓の機能が低下していることを表している。一般的には、透析治療によって尿酸が除去されるため、透析患者の血中尿素窒素(BUN)は透析前よりも透析後に低下することが期待される。しかし、この低下の程度は患者や透析条件によって異なり、必ずしも正常値より大きく低下するとは限らない。
3.× 白血球数は、加齢に伴う変化は見られにくい。白血球数とは、5種類の白血球の総数である。高齢者は、感染症や炎症に対する免疫応答が低下するため、病気の発症時に白血球数が上昇しにくいことはある。
4.〇 正しい。食後血糖値は、高齢者の血液検査の結果で成人の基準値と比較して値が高くなる。なぜなら、加齢により、インスリン抵抗性の増加や、インスリン分泌能力の低下が起こるため。ちなみに、食後血糖値とは、食後2時間後の状態で測定した血糖の値である。食事をしたり、糖分を負荷して、しっかりインスリンが働いているかを評価する。食前血糖値が良好でも、食後血糖値の状態が悪い場合は注意が必要である。
5.× AST〈GOT〉は、加齢に伴う変化は見られにくい。ASTとは、肝細胞でつくられる酵素である。GOTやALT、γ-GTPをトランスアミナーゼと呼ぶ。肝臓でアミノ酸の代謝にかかわる働きをしている。肝細胞が破壊されると血液中に放出されるため、その量によって肝機能を調べることができる。

急性心筋梗塞後に上昇する血液検査所見

【血液検査】
・WBC:2~3時間上昇(7日に正常化)
・CK:2~4時間上昇(3~7日に正常化)
・トロポニンT:3~4時間上昇(14~21日に正常化)
・AST:6~12時間上昇(3~7日に正常化)
・LD(LDH):12~24時間上昇(8~14日に正常化)
・CRP:1~3日上昇(21日に正常化)
・ESR:2~3日上昇(5~6週)

 ※急性心筋梗塞を来した場合、血液検査にて心筋壊死所見を示すデータがみられるのは、通常、発症2時間以降である。WBC、CKの異常が最も早く出現する。

 

 

 

 

 

問題88 精神保健における三次予防はどれか。2つ選べ。

1.うつ病患者のリワーク支援を行う。
2.災害時の精神的支援を行うボランティアを育成する。
3.自殺企図をして未遂だった人の希死念慮を確認する。
4.精神障害者の長期入院による自発性の低下を予防する。
5.統合失調症のアンチ・スティグマ・キャンペーンを行う。

解答1・4

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。
一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。

(※健康日本21において)

1.〇 正しい。うつ病患者のリワーク支援を行うことは、三次予防である。リワーク支援とは、うつ病などで休業している人や休職と復職を繰り返している人に対して、復職への準備として、実際の仕事で使うスキル(パソコン操作やプレゼンテーションなど)に慣れていくためのプログラムを提供して、円滑に復職できるようにするものである。
2.× 災害時の精神的支援を行うボランティアを育成することは、一次予防である。一次予防は、疾病や障害が発生する前に、そのリスクを低減する予防方法である。災害時の精神的支援を行うボランティアを育成することで、災害が発生した際に、被災者の精神的なストレスを軽減し、精神疾患の発生を防ぐことが目的である。
3.× 自殺企図をして未遂だった人の希死念慮を確認することは、二次予防である。二次予防は、病気や障害が発生した初期に、早期発見・早期治療を行う予防方法である。自殺企図をして未遂だった人の希死念慮を確認することで、適切な支援や治療を提供し、自殺の再発を防ぐことが目的である。
4.〇 正しい。精神障害者の長期入院による自発性の低下を予防することは、三次予防である。精神障害者の長期入院による自発性の低下を予防することで、症状の悪化を防ぎ、患者の社会復帰やQOLの向上を目指すことが目的である。
5.× 統合失調症のアンチ・スティグマ・キャンペーンを行うことは、一次予防である。一次予防は、疾病や障害が発生する前に、そのリスクを低減する予防方法である。統合失調症のアンチスティグマキャンペーンを行うことで、社会全体が統合失調症患者に対する偏見や差別を減らし、患者のストレスや孤立感を軽減することを目指す。これにより、精神疾患の発生リスクを低減させることが期待されます。ちなみに、アンチスティグマキャンペーンとは、統合失調症に関する一般の理解を拡げ、それによって精神障害者への偏見や差別を減らすことを目指している活動のことを指す。

 

 

 

 

 

問題89 Aちゃん(小学4年生、女児)は父親(40歳、会社員)、母親 (40歳、会社員)、弟(小学2年生)と4人で暮らしている。交通事故で頸髄損傷となり、訪問看護を利用して在宅療養を開始した。Aちゃんはこれまで通っていた小学校に継続して通学することを希望している。
 Aちゃんの家族への看護師の対応で適切なのはどれか。 2つ選べ。

1.特別支援学校に転校するよう勧める。
2.弟の退行現象に注意するよう説明する。
3.Aちゃんが利用できる社会資源を紹介する。
4.Aちゃんのケアは主に母親が行うよう助言する。
5.事故については家族の間で話題にしないよう指導する。

解答2・3

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(小学4年生、女児)
・4人暮らし:父親(40歳、会社員)、母親 (40歳、会社員)、弟(小学2年生)。
・交通事故で頸髄損傷
・訪問看護を利用して在宅療養を開始。
・Aちゃんの希望:これまで通っていた小学校に継続して通学する。
→訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。

1.× 特別支援学校に転校するよう勧める優先度は低い。なぜなら、Aちゃんの希望は、これまで通っていた小学校に継続して通学することであるため。もちろん家族の意見や希望も聞く必要はあるが、Aちゃんの希望とニーズを尊重し、通学をサポートする方法を検討する。ちなみに、特別支援学校とは、障害者等が「幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準じた教育を受けること」と「学習上または生活上の困難を克服し自立が図られること」を目的とした日本の学校である。
2.〇 正しい。弟の退行現象に注意するよう説明する。なぜなら、弟は小学2年生であり、今後、Aちゃんに費やす時間が多くなると考えられるため。大きな変化(Aちゃんの在宅療養)やストレスを経験すると、特に兄弟・姉妹は退行現象を示すことがある。ちなみに、退行とは、ある程度の発達を遂げた者が、より低い発達段階に「子供がえり」して、未熟な行動をすることをいう。
3.〇 正しい。Aちゃんが利用できる社会資源を紹介する。なぜなら、在宅療養や復学にあたって、今後、金銭的にも身体的にも負担が強くなると考えられるため。社会資源とは、生活するうえでおこるさまざまな問題の解決を担う福祉制度や施設などのことである。 例えば、制度は①高額医療制度、②傷病手当、③生活保護などで、施設は、①居宅介護、②ショートステイ、③グループホームなどである。これらについて情報提供することは、患者本人を含む家族の支援につながる。
4.× Aちゃんのケアは主に母親が行うよう助言する優先度は低い。なぜなら、特に母親のみが行わなければならない理由がないため。設問文から、父親も母親も会社員である。介護による介護疲れや精神的・身体的負担をかけないためにも、必要なところは社会資源を使ってサポートしていく。
5.× 事故については家族の間で話題にしないよう指導する優先度は低い。なぜなら、今後の生活の課題や社会資源を利用するためにも、どうしても避けられない話題であるため。また、事故については、当人たちが決めればよいことで、担当の看護師が決めるべきことではない。

 

 

 

 

 

問題90 500Lの酸素ボンベ(14.7MPa 充填)の内圧が10MPaを示している。この酸素ボンベを用いて3L/分で酸素吸入を行う。使用可能な時間は何分か。
 ただし、小数点以下の数値が得られた場合は、小数点以下第1位を四捨五入すること。

解答1、1、3

解説

500Lの酸素ボンベ(14.7MPa 充填)の内圧が10MPaを示している。この酸素ボンベを用いて3L/分で酸素吸入を行う。使用可能な時間は何分か。

問題の解き方

①酸素残量を求める。

②3L/分酸素吸入下での使用時間を算出する。

①酸素残量を求める(ボンベの容量(L)×内圧/充填圧)。
ボンベの容量:500L
内圧: 10MPa
充填圧:14.7MPa

500(L) × 10(MPa)/14.7(MPa)
=340(L)

②3L/分酸素吸入下での使用時間を算出する。
使用可能時間:酸素残量÷1分間の酸素流量(L/分)

340(L) ÷ 3(L/分)
=113.3(分)

小数点第1位を四捨五入し、113分である。

 

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