第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午前106~110】

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次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、会社員)は、夫(30歳、会社員)と2人で暮らしている。2023年2月5日からの月経を最後に無月経となり、妊娠の可能性を考えて受診した。医師の診察の結果、妊娠と診断された。

106 Naegele〈ネーゲレ〉概算法を用いてAさんの分娩予定日を求めよ。
 解答:2023年①②月③④日

 ①0~1
 ②0~9
 ③0~3
 ④0~9

解答1112

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、会社員)
・2人暮らし:夫(30歳、会社員)
2023年2月5日からの月経を最後に無月経となり妊娠。

ネーゲレ概算法とは、最終月経日から出産予定日を概算する計算方法である。
【計算方法】
①最終月経があった月から3を引き(※もしくは9をたす)
・4~12月の場合:3を引く。
・1~9月の場合:9を足す。
②最終月経の開始日に7を足す。

【本症例の場合】
最終月経の開始日が2月5日の場合
出産予定日=11(2+9)月12(5+7)日

したがって、2023年11月12日となる。

 

 

 

 

 

次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、会社員)は、夫(30歳、会社員)と2人で暮らしている。2023年2月5日からの月経を最後に無月経となり、妊娠の可能性を考えて受診した。医師の診察の結果、妊娠と診断された。

107 診察後、Aさんから看護師に妊娠中の生活や体重の管理について質問があった。Aさんは「缶ビール2本を週に1回、コーヒーを1日に6杯以上飲んでいます。友人に勧められて半年前から1日240μgの葉酸のサプリメントを飲んでいます」と話す。Aさんは身長160cm、非妊時体重62kgである。
 看護師のAさんへの説明で適切なのはどれか。

 1.「飲酒は中止しましょう」
 2.「妊娠中の体重増加は7kg未満にしましょう」
 3.「コーヒーは今までどおりに飲んでも大丈夫です」
 4.「葉酸は妊娠前と同じ量を摂るようにしましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、会社員)
・2人暮らし:夫(30歳、会社員)
・2023年2月5日からの月経を最後に無月経となり妊娠。
缶ビール2本(週1回)コーヒー(6杯/日以上)
・半年前:1日240μgの葉酸のサプリメント。
・身長160cm、非妊時体重62kg。
→妊娠中の生活や体重管理など説明できるようにしておこう。

 1.〇 正しい。「飲酒は中止しましょう」とAさんへ説明する。なぜなら、妊娠中の女性が飲酒すると、胎盤を通じてアルコールが胎児の血液に入り、生まれてくる赤ちゃんに体重の減少・脳の障害など、さまざまな悪影響が出てくる原因となる可能性があるため。
 2.× 妊娠中の体重増加は、「7kg未満」と決まっておらず、妊娠前の体格によって推奨体重増加量が異なる。本症例の場合、身長160cm、非妊時体重62kg(=BMI:24.2、標準体重)である。したがって、体重増加量の指導の目安は10~13kgである。
 3.× コーヒーは、「今までどおり」ではなく、制限が必要な量である。妊婦のカフェイン摂取は、1日300㎎までが望ましい。ちなみに、コーヒー1杯で60㎎のカフェインが入っているといわれている。コーヒー、紅茶、日本茶にはリラックス効果があるため、妊娠しているからといって禁止する必要はないが、カフェインと代謝物質は、胎盤を通過しやすく、羊水と胎児の血中に移行する。胎児は肝臓機能が未熟であり、カフェインを代謝するのに時間がかかり、長時間高濃度のカフェインにさらされ、胎盤の血管収縮や胎児心拍数の増加をきたす可能性がある。したがって、妊娠中にカフェインを摂りすぎると、流産したり、胎児の成長に影響を及ぼし低体重になったりするおそれがある。また、胎児の成長に必要な鉄分の吸収を阻害する可能性がある。
 4.× 葉酸は、妊娠前と「同じ量」ではなく多く摂取する必要がある。妊娠の計画・可能性がある女性は、普段の食事以外に1日400μgの葉酸を摂ることが望ましい。妊娠初期に葉酸の摂取が不足すると、胎児の先天異常である神経管閉鎖障害の発症リスクが高まる。ちなみに、葉酸とは、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるビタミンである。

妊娠前の体格や妊娠中の体重増加量については?

1.「妊娠前の体格と妊娠予後」について尋ねられたら,以下の情報を提供する.
①やせ女性は切迫早産,早産,貧血および低出生体重児分娩のリスクが高い.
②肥満女性は妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,帝王切開分娩,巨大児などのリスクが高い.

2.「妊娠中の体重増加量」について尋ねられたら,以下の情報を提供する.
妊娠前の体格によって推奨体重増加量が異なる
②妊娠期に体重増加量が著しく少ない場合には,低出生体重児分娩や早産のリスクが高まり,体重増加量が著しく多い場合には,巨大児分娩,帝王切開分娩のリスクが高まる.

3.妊娠中の栄養指導では以下に留意する.
①バランスのとれた栄養素の摂取を勧める.
②妊娠前の体格(自己申告妊娠前体重を用いた BMI 値)に応じて指導する.
③増加量を厳格に指導する根拠は必ずしも十分ではないと認識し,個人差を考慮したゆるやかな指導を心がける.
④授乳期間中の必要カロリー量について問われた場合,「妊娠前より増加する」と説明する.

(一部引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P45 」日本産科婦人科学会より)

 

 

 

 

 

次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、会社員)は、夫(30歳、会社員)と2人で暮らしている。2023年2月5日からの月経を最後に無月経となり、妊娠の可能性を考えて受診した。医師の診察の結果、妊娠と診断された。

108 妊娠30週2日。Aさんは妊婦健康診査を受け、妊娠経過に異常はなく児の発育も順調と診断された。診察後、Aさんから看護師に「最近、腰が痛くなることがあります。腰痛への対処法はありますか」と質問があった。
 看護師のAさんへの説明内容で適切なのはどれか。

 1.安静にする。
 2.椅子に浅く座る。
 3.Sims〈シムス〉位で休む。
 4.柔らかいマットレスや布団で寝る。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、会社員)
・2人暮らし:夫(30歳、会社員)
・妊娠30週2日:妊娠経過に異常はなく児の発育も順調。
・Aさん「最近、腰が痛くなる」と。
→腰痛への対処法を指導しよう。

 1.× 安静にする必要はない。むしろ、腰痛には妊娠体操が効果的である。妊婦体操とは、妊娠12~16週に行う安定期に入った妊娠中の女性に適した運動である。マタニティ・エクササイズとも呼ばれ、体操により、肩こりや腰痛などを解消する。 ストレスの発散、体重増加防止、産道の柔軟性向上に寄与する。
 2.× 椅子に浅く座る優先度は低い。むしろ、深く座ったほうが猫背や不良姿勢、ディスクワークのような姿勢にならず、腰に負担がかからず腰痛予防に寄与する。
 3.〇 正しい。Sims〈シムス〉位で休む。Sims位とは、腹臥位に近い側臥位である。お腹を押しつぶすことなく敷布団に預けることができるため、重苦しさを感じにくい寝姿勢である。膣や直腸の診察に用いる体位で、妊婦特有の違和感をやわらげる効果も期待できる。
 4.× 「柔らかい」ではなく適度な硬さのマットレスや布団で寝る。なぜなら、柔らかいマットレスは、体幹の沈み込み、頸部だけでなくその他の関節に負担がかかるため。

 

 

 

 

 

次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)は妊娠39週4日で男児を正常分娩した。出生体重3,000g、身長48.0cm。出生直後、児に付着していた羊水を拭き取り、インファントラジアントウォーマーの下で観察を行った。その後、温めておいた衣服を着せてコットに寝かせ、コットを空調の風が当たらない場所に配置した。

109 看護師の行為で対流による児の熱喪失を予防したのはどれか。

 1.羊水を拭き取った。
 2.インファントラジアントウォーマーの下で観察を行った。
 3.温めておいた衣服を着せた。
 4.コットを空調の風が当たらない場所に配置した。

解答

解説

用語の説明

・インファントラジアントウォーマー:新生児の体温が奪われないように温める機械であり、周囲の物体に熱が移動して喪失する伝導の予防策である。

・ベビーコット(コット):サイズ60cm×70cm程度のベッドである。ベビーベッドとの違いは、大きさでベビーベッドは120cm×70cmで、サイズが半分ほどしかない。

 1.× 羊水を拭き取ったことは、「蒸散(じょうさん)」による熱喪失の予防となる。蒸散とは、液体から気体に変化する過程を指す。
 2.× インファントラジアントウォーマーの下で観察を行ったことは、幅射(ふくしゃ)による熱喪失の予防となる。輻射とは、物質を介さず温度の高い方から低い方へ熱が伝わる現象のことである。
 3.× 温めておいた衣服を着せたことは、伝導による熱喪失の予防となる。伝導とは、物質を介して熱が伝わることをいう。簡単にいうと、直接触れることによる熱の移動である。
 4.〇 正しい。コットを空調の風が当たらない場所に配置したことは、対流による熱喪失の予防となる。対流とは、液体や気体の流れに乗って熱が移動することをいう。

熱伝導形態

熱には3つの熱伝導形態があり、①熱伝導、②対流熱、③熱放射である。
①熱伝導は、物質を介して熱が伝わることをいう。(簡単にいうと、直接触れることによる熱の移動)
②対流熱は、液体や気体の流れに乗って熱が移動することをいう。
③熱放射は、温度差がある物体の間で、熱が移動することをいう。
④エネルギー変換熱は、電磁波や超音波など体内で吸収されて熱エネルギーに変換することをいう。

 

 

 

 

 

次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)は妊娠39週4日で男児を正常分娩した。出生体重3,000g、身長48.0cm。出生直後、児に付着していた羊水を拭き取り、インファントラジアントウォーマーの下で観察を行った。その後、温めておいた衣服を着せてコットに寝かせ、コットを空調の風が当たらない場所に配置した。

110 産褥3日。Aさんは児の啼泣に合わせて横抱きで母乳を与えている。Aさんの乳房の型はⅢ型、熱感が出てきている。乳管は左右とも4本開通している。「抱き方は色々あると聞きました。今の方法以外の授乳の仕方はありますか」と相談を受けた。
授乳の仕方を図に示す。
 Aさんに適した授乳の仕方はどれか。

1.添え乳
2.たて抱き
3.フットボール抱き
4.交差横抱き

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦)
・妊娠39週4日:男児(正常分娩、出生体重3,000g、身長48.0cm)
・産褥3日:児の啼泣に合わせて横抱きで母乳を与えている。
乳房の型はⅢ型、熱感が出てきている。
・乳管は左右とも4本開通している。
→乳房Ⅲ型の本症例に対し、乳房のタイプにあった授乳介助と効果的な吸着(ラッチオン)が行えるように支援する。児の下顎が乳房に埋もれこむようにすることで効果的な吸着(ラッチオン)が行えるようになる。①口が大きく開く、②唇が外向き、③下顎が乳房に触れている、④乳房の上方に比べ下方を深く含んでいるといった深い吸い方ができると乳頭亀裂などのトラブルが少なくなる。

【乳房の形と抱きやすい姿勢】
Ⅰ型(a<b):縦抱き
Ⅱa型(a≒b):横抱き
Ⅱb型(a>b):フットボール抱き(脇抱き)
Ⅲ型(a>>b):添え乳(or脇抱き)

1.× 添え乳より優先度が高いものが他にある。添え乳は、乳房の型はⅢ型に有効ではあるが、児の上に覆いかぶさってしまった場合に、児が窒息になるリスクがあるためあまり勧めないことが多い。
2.× たて抱きより優先度が高いものが他にある。なぜなら、縦抱きは、乳房の型はⅠ型に有効ではあるため。
3.〇 正しい。フットボール抱きがAさんに適した授乳の仕方である。なぜなら、フットボール抱きは、乳房の型Ⅱb型(ab)に有効であるが、Ⅲ型(a>>b)も状況によって推奨されるため。
4.× 交差横抱きより優先度が高いものが他にある。交差横抱きとは、授乳する方の腕と反対の腕(横抱きとは反対)で赤ちゃんを抱いて授乳する方法である。 この抱き方だと、母乳をあげる時に、一方の手は必要に応じて乳房を支えて、乳児が哺乳しやすいよう形を整えることができるため、乳房を楽に含ませることができる。したがって、吸啜になれていない初期に行うことが多い。

(※図引用:「産褥婦さんの乳房のタイプ」看護師イラスト集HPより)

 

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