第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午前101~105】

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次の文を読み100~102の問いに答えよ。
 Aさん(70歳、女性)は夫(68歳)と2人で暮らしている。BMI26で左股関節の変形性関節症のため関節可動域の制限と疼痛があり、外出時はT字杖を使用している。症状が強いときに消炎鎮痛薬を服用しているが、日常生活動作は自立している。Aさんは過去に転倒したことはないが、左右の下肢の差が3cmあり、立ち上がるときにふらつくことがある。自宅で座って過ごす時間が長い。Aさんは定期受診のため夫に付き添われて外来を受診した。

101 外来で、診察終了後にAさんから「少し話がある」と言われた女性のB看護師は、空いている診察室で面談した。Aさんから「男性の医師には聞けなかったのですが、性交はやめておいた方がよいでしょうか。股関節の痛みが強くなることはないのですが、夫も心配していました」と相談があった。
 このときのB看護師のAさんへの対応で適切なのはどれか。

 1.「同年代の変形性関節症の方に聞いてみてはいかがですか」
 2.「股関節に負担がない体位について説明します」
 3.「性交時は潤滑剤を使いましょう」
 4.「性交は避けた方がよいでしょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(70歳、女性、BMI26左変形性股関節症
・2人暮らし:夫(68歳)
・関節可動域の制限と疼痛:外出時はT字杖を使用。
・Aさん「性交はやめておいた方がよいでしょうか股関節の痛みが強くなることはない」と。
→本症例は、左変形性股関節症である。左股関節に負担がかかるとさらなる症状の増悪になりかねない。性交は夫婦仲のコミュニケーションと考えている家族もおり、一概に禁止するのではなく、負担を減らした日常生活指導を行う。

 1.× 「同年代の変形性関節症の方に聞いてみてはいかがですか」と伝える必要はない。なぜなら、変形性関節症の進行度が異なるため。変形性関節症全員が当てはまるものではないため。また、Aさんは「男性の医師には聞けなかった」。プライバシーや尊厳の尊重が必要である。
 2.〇 正しい。「股関節に負担がない体位について説明します」とAさんに対応する。なぜなら、左股関節に負担がかかるとさらなる症状の増悪になりかねないため。負担を減らした日常生活指導を行う。
 3.× 「性交時は潤滑剤を使いましょう」と伝える必要はない。なぜなら、潤滑剤は、膣の感想を防ぎ、痛みや不快感を与えないようにするものであるため。
 4.× 「性交は避けた方がよいでしょう」と伝える必要はない。なぜなら、股関節に負担をかけなければ性交を行えるため。また、性交は夫婦仲のコミュニケーションと考えている家族もおり、一概に禁止するのではないため。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み100~102の問いに答えよ。
 Aさん(70歳、女性)は夫(68歳)と2人で暮らしている。BMI26で左股関節の変形性関節症のため関節可動域の制限と疼痛があり、外出時はT字杖を使用している。症状が強いときに消炎鎮痛薬を服用しているが、日常生活動作は自立している。Aさんは過去に転倒したことはないが、左右の下肢の差が3cmあり、立ち上がるときにふらつくことがある。自宅で座って過ごす時間が長い。Aさんは定期受診のため夫に付き添われて外来を受診した。

102 B看護師は、Aさんが処置室前の待合室でT字杖を持ち、椅子から立ち上がろうとしているのを見かけた。B看護師が声をかけると、Aさんは「夫が会計をしていますが、急にトイレに行きたくなって」と慌てていた。夫はAさんから2mほど離れた所で会計をしているため、Aさんの様子に気がついていない。待合室は患者や家族で混雑しており、外来にある車椅子は別の患者が使用中だった。
 AさんへのB看護師の声かけで適切なのはどれか。

 1.「車椅子を探してきます」
 2.「ご主人をお呼びしましょう」
 3.「トイレまで一緒に行きましょう」
 4.「転ばないように気を付けて行ってくださいね」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(70歳、女性、BMI26、左変形性股関節症
・日常生活動作:自立
過去に転倒したことはない
・左右の下肢の差が3cmあり、立ち上がるときにふらつく
・椅子から立ち上がろうとしている。
・Aさん「夫が会計をしていますが、急にトイレに行きたくなって」と慌てていた。
・夫は、Aさんの様子に気がついていない(2mほど離れた所で会計中)。
・待合室は患者や家族で混雑しており、外来にある車椅子は別の患者が使用中
→本症例は、過去に転倒したことはないが、立ち上がるときにふらつく。待合室は患者や家族で混雑していることから、ふらついた際に他者にあたってしまったり、けがをさせてしまう恐れがある。したがって、なんらかのリスク管理は必要になると考えられる。

 1.× 「車椅子を探してきます」と伝えるより優先度が高いものが他にある。なぜなら、外来にある車椅子は別の患者が使用中と確認できているため。本症例は、「急にトイレに行きたくなって」と慌てていることから、車椅子を見つけ持ってくる時間も不明確である。
 2.× 「ご主人をお呼びしましょう」と伝えるより優先度が高いものが他にある。なぜなら、夫は、2mほど離れた所で会計中であるため。本症例は、「急にトイレに行きたくなって」と慌てていることから、夫が会計を中断しすぐ戻ってこられるか不明確である。
 3.〇 正しい。「トイレまで一緒に行きましょう」とAさんへ声かけする。なぜなら、待合室は患者や家族で混雑していることから、ふらついた際に他者にあたってしまったり、けがをさせてしまう恐れがあるため。付き添うことで、安全にトイレを遂行できると考えられる。
 4.× 「転ばないように気を付けて行ってくださいね」と伝えるより優先度が高いものが他にある。なぜなら、待合室は患者や家族で混雑していることから、ふらついた際に他者にあたってしまったり、けがをさせてしまう恐れがあるため。

 

 

 

 

 

次の文を読み103~105の問いに答えよ。
 Aちゃんは出生前診断で羊水過多があり先天性食道閉鎖症の疑いを指摘されていた。在胎37週5日に帝王切開で出生、出生体重2,780g、Apgar〈アプガー〉スコア1分後8点、5分後9点である。出生後、Aちゃんは先天性食道閉鎖症と診断された。

103 出生直後のAちゃんにみられるのはどれか。

 1.腹部エックス線写真の鏡面像
 2.口腔内の泡沫状唾液の流出
 3.胆汁性の嘔吐
 4.噴水状の嘔吐

解答

解説

本症例のポイント

・Aちゃんは出生前診断:羊水過多先天性食道閉鎖症
・在胎37週5日:帝王切開、出生体重2,780g
・Apgarスコア:1分後8点、5分後9点。
→羊水過多とは、羊水量が800 mLを超える場合であり、母体の糖尿病や児が羊水をうまく飲めない消化管閉鎖などが原因となることが多い。診断方法は超音波検査によるamniotic fluid index(AFI)の計測であり、AFIの正常範囲は5~24cmであり、24cm以上は羊水過多を意味する。
→先天性食道閉鎖症とは、食道が途切れている(閉鎖している)病気である。原因不明で、5000人に1人の頻度である。気管と食道が分離するときに何らかの異常が起きて発生するといわれている。したがって、気管とつながりがあることが多く、そのつながりを気管食道瘻という。気管食道瘻とも呼ぶ。

 1.× 腹部エックス線写真の鏡面像は、イレウス(腸閉塞)でみられる。単純X線写真において、立位または左側臥位をとると、腸管内容物のうち液性成分は下に、気体成分は上に移動し、水平に液面像を形成する(ガスと液体の境界線)。これをニボー像(鏡面像)という。
 2.〇 正しい。口腔内の泡沫状唾液の流出は、出生直後のAちゃんにみられる。なぜなら、先天性食道閉鎖症は、食道が胃に通じていないことから、ミルクを飲めず、呼気と混合されるため。したがって、肺炎などの肺合併症を起こしやすい。
 3.× 胆汁性の嘔吐は、イレウス(腸閉塞)でみられる。胆汁性嘔吐とは、胆汁が混じっている嘔吐のことを指す。嘔吐物は苦味があり、黄緑色をしている。十二指腸乳頭部より遠位部腸管の閉塞で起こるとされ、外科的疾患が原因であることが多い。 何らかの原因で腸閉塞が起こっていること示唆している。小腸閉鎖、腸回転異常などが疑われる。
 4.× 噴水状の嘔吐は、幽門狭窄症でみられる。噴水状嘔吐とは、ドバっと噴水状にみられる嘔吐のことを指す。生後2~3週ころから哺乳ごとに見られ、体重増加が少ない場合には精密検査が必要である。これは胃の出口である幽門の筋肉が肥大したために胃の内容物が流れにくくなり、逆蠕動で噴水状の頻回の嘔吐が起きる。内科治療に反応しない場合には手術が適応となる。

イレウス(腸閉塞)とは?

 イレウス(腸閉塞)とは、何らかの原因により、腸管の通過が障害された状態である。主に、①機械的イレウス(腸閉塞とも呼び、腸内腔が機械的に閉塞されて起こる)、②機能的イレウス(腸管に分布する神経の障害により腸内容が停滞する)に大別される。

①機械的イレウスには、器質的異常を伴うものをいい、単純性イレウスと絞扼性(複雑性)イレウスに分類される。機械的イレウスは血流障害の有無によって、さらに単純性イレウスと複雑性イレウスに分類される。絞扼性(複雑性)イレウスは、腸間膜血行の停止により腸管壊死を伴うイレウスであり、急激に病状が悪化するため緊急に手術を要する。

②機能的イレウスとは、器質的な異常がなく、腸管の運動麻痺や痙攣により腸管の内容物が停滞することである。長期臥床、中枢神経疾患、腹膜炎、偽性腸閉塞が原因となることが多い。麻痺性イレウスと痙攣性イレウスに分けられる。

 

 

 

 

 

次の文を読み103~105の問いに答えよ。
 Aちゃんは出生前診断で羊水過多があり先天性食道閉鎖症の疑いを指摘されていた。在胎37週5日に帝王切開で出生、出生体重2,780g、Apgar〈アプガー〉スコア1分後8点、5分後9点である。出生後、Aちゃんは先天性食道閉鎖症と診断された。

104 Aちゃんは、出生当日に胃瘻造設、気管食道瘻切断と食道端々吻合術を受け、無事に終了した。術後2日、人工呼吸器管理下で胸腔ドレーンが挿入されている。
 このときの看護で適切なのはどれか。

 1.頸部を伸展させた体位を保持する。
 2.摂食嚥下機能の獲得のため支援を開始する。
 3.親がAちゃんを自由に抱っこするのを見守る。
 4.唾液の吸引時には吸引チューブの挿入を吻合部の手前までにする。

解答

解説

本症例のポイント

・Aちゃんは出生前診断:羊水過多先天性食道閉鎖症
・出生当日:胃瘻造設気管食道瘻切断食道端々吻合術
・術後2日:人工呼吸器管理下、胸腔ドレーンが挿入。
→本症例は、出生当日に手術し、術後2日である。負担にならないよう手術後のケアに努めよう。不安であれば主治医の先生にしっかり相談することを心がける。

 1.× 頸部を「伸展」ではなく屈曲させた体位を保持する。なぜなら、本症例は、出生当日に手術し、術後2日であることから、胎児の姿勢が望ましいと考えられるため。Swaddling(スワドリング,包み込み)や Facilitated Tucking(FT,ファシリテイテイッド・タッキング)を推奨する。Swaddling(スワドリング,包み込み:乳児の四肢が過度に動くことを防ぐために、ブランケットでしっかり包み込むこと)や FT(ファシリテイテイッド・タッキング:ケア提供者の両手を使い、片方の手で乳児の頭部、もう片方の手で四肢を屈曲させて、胎児姿勢のように包み込むこと。
 2.× 摂食嚥下機能の獲得のため支援を開始するのは時期尚早である。なぜなら、本症例は術後2日、胃瘻造設、人工呼吸器管理下であるため。嚥下開始時期は、主治医の先生にしっかり相談することを心がける。
 3.× 親がAちゃんを自由に抱っこするのを見守るのは時期尚早である。なぜなら、本症例は術後2日、胃瘻造設、人工呼吸器管理下であるため。様々なチューブやモニターのケーブルがあるため抱っこも注意が必要である。
 4.〇 正しい。唾液の吸引時には吸引チューブの挿入を吻合部の手前までにする。なぜなら、手術後の術創部を傷つけないようにするため。

 

 

 

 

 

次の文を読み103~105の問いに答えよ。
 Aちゃんは出生前診断で羊水過多があり先天性食道閉鎖症の疑いを指摘されていた。在胎37週5日に帝王切開で出生、出生体重2,780g、Apgar〈アプガー〉スコア1分後8点、5分後9点である。出生後、Aちゃんは先天性食道閉鎖症と診断された。

105 Aちゃんは3歳6か月になった。現在は胃瘻を閉鎖し経口摂取をしているが、吻合部の狭窄による嚥下困難が生じ、これまでに食道バルーン拡張術を2回行った。現在も症状が残っていて、固形物の通過障害が軽度ある。身長92.5cm(25パーセンタイル)、体重11.5kg(3パーセンタイル)で、半年後に保育所へ入園する。両親が「Aはあまり体重が増えません。保育所ではみんなより食事に時間がかかるのではないかと心配です」と外来看護師に話したため、今後の対応について両親、看護師および医師で話し合った。
 Aちゃんの摂食に関する対応で適切なのはどれか。

 1.再度、胃瘻を造設する。
 2.食事を保育士に介助してもらう。
 3.昼前に保育所から帰宅し、家で昼食を摂る。
 4.同じクラスの子ども達と同量を食べられるよう訓練する。
 5.Aちゃんに適した食事形態の提供が可能か保育所に確認する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(3歳6か月、出生前診断:羊水過多先天性食道閉鎖症
・胃瘻を閉鎖し経口摂取:吻合部の狭窄による嚥下困難。
・これまでに食道バルーン拡張術を2回行った。
・現在:症状残存、固形物の通過障害が軽度ある。
・身長92.5cm(25パーセンタイル)、体重11.5kg3パーセンタイル
・半年後に保育所へ入園する。
・両親「Aはあまり体重が増えません。保育所ではみんなより食事に時間がかかるのではないかと心配です」と。

→パーセンタイル値は、乳幼児の身長・体重・頭囲・胸囲について評価するための指標のひとつである。計測値を小さいものから大きいものへと順番に並べ、全体を100として何番目であるかを表したものである。10パーセンタイルから90パーセンタイルまでは正常範囲とされる。

 1.× 再度、胃瘻を造設する必要はない。なぜなら、現在、胃瘻を閉鎖し経口摂取しているため。ただ、吻合部の狭窄による嚥下困難、固形物の通過障害が軽度あるため、どのような食事形態が適切なのか、どのような支援が必要なのか考える必要がある。
 2.× 食事を保育士に介助してもらう優先度は低い。なぜなら、本症例は食事動作が問題とは言えないため。嚥下困難(固形物の通過障害)であるため、食事形態を調整する必要がある。
 3.× 昼前に保育所から帰宅し、家で昼食を摂る優先度は低い。なぜなら、家で食事して現在の体重であり、嚥下困難(固形物の通過障害)の改善は見込めないため。また、食事は他の字との交流の大切なきっかけでもある。
 4.× 同じクラスの子ども達と同量を食べられるよう訓練する優先度は低い。なぜなら、本症例の体の構造的(吻合部の狭窄による嚥下困難)にたくさん食べることが困難であるため。
 5.〇 正しい。Aちゃんに適した食事形態の提供が可能か保育所に確認する。なぜなら、本症例は固形物の通過障害がみられるため。吻合部狭窄とは、消化管のつなぎ目、消化管のむくみや癒着、ねじれなどが原因となって、つなぎ目 やその周囲の消化管が狭くなることをいう。ちなみに、保育所とは、保育を必要とする乳幼児を預かり、保育する施設である。緊急時には、保育所の職員が注射することも想定される。

誤嚥しやすい食べ物

①サラサラした液体、②口腔内でバラバラになりまとまりにくい物、③水分が少なく,パサパサした物、④口腔内や咽頭に貼り付きやすい物、⑤粘りの強い物、⑥すべりのよすぎる物、⑦硬い物などである。

 

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