第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午前86~90】

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86 エックス線を用いて行う検査はどれか。2つ選べ。

 1.脳波検査
 2.筋電図検査
 3.頭部CT検査
 4.サーモグラフィ
 5.上部消化管造影検査

解答

解説
 1.× 脳波検査とは、頭皮に電極を取り付けて脳の活動状態を調べる検査で、てんかんや脳腫瘍、脳出血などの診断に用いられる。
 2.× 筋電図検査とは、筋肉や神経に異常がないかについて、筋肉が収縮する時や神経を電気で刺激するなどの筋肉や神経の信号の伝わり方を記録する検査である。筋肉を随意的に収縮してもらったり、神経に電気的刺激をしたりすることにより、神経や筋肉に生じる電気的活動を記録する。この記録を評価することにより、神経や筋肉に疾患があるかを調べることができる。
・神経原性変化があると高振幅、長持続、多相性の波形に。
・筋原性変化があると低振幅、短持続、多相性の波形に。
 3.〇 正しい。頭部CT検査は、エックス線を用いて行う検査である。頭部CT検査とは、脳内の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位は低吸収域(黒)としてうつる。
 4.× サーモグラフィとは、物体から放射される赤外線を分析し、温度分布を表した画像や映像、またはその画像を取得するために利用する装置を指す。
 5.〇 正しい。上部消化管造影検査は、エックス線を用いて行う検査である。消化管造影検査とは、硫酸バリウム製剤を口や肛門、瘻孔から注入し、X線透視により形態を検査するもののことである。

 

 

 

 

 

87 全身麻酔下で胃全摘出術を受ける患者に対する無気肺の予防法はどれか。2つ選べ。

 1.腹帯の装着
 2.抗菌薬の使用
 3.ハフィング法
 4.弾性ストッキングの装着
 5.インセンティブ・スパイロメトリーの使用

解答

解説

無気肺とは?

無気肺とは、何らかの原因によって、肺含気量の減少および、これに基づく肺容量減少を呈した病態をいう。無気肺の一般的な原因は、気管支の閉塞である。

 1.× 腹帯の装着は、妊婦さんのお腹に巻く帯のことで、保温効果や胎児を転倒などの衝撃から守るなどといった効果がある。
 2.× 抗菌薬の使用は、細菌の増殖を抑制したり殺したりする働きのある化学療法剤のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。
 3.〇 正しい。ハフィング法は、全身麻酔下で胃全摘出術を受ける患者に対する無気肺の予防法である。ハフィング(huffng)とは、排痰法のひとつである。ハフィングと咳により、喉元にあがってきた痰を体外へ出す際に行う。「ハッ!ハッ!」と声を出さずに勢いよく息を吐く方法で、痰を一気に押し上げる働きをする。痰を排出することで、無気肺の一般的な原因でもある気管支の閉塞を予防できる。
 4.× 弾性ストッキングの装着は、リンパ浮腫や深部静脈血栓症の予防につながる。なぜなら、弾性ストッキングの圧迫によって、血管内の逆流防止弁が正常に作用することになり、血栓予防や血液のよどみ(うっ滞)を回避することができるため。
 5.〇 正しい。インセンティブ・スパイロメトリーの使用は、全身麻酔下で胃全摘出術を受ける患者に対する無気肺の予防法である。インセンティブスパイロメトリは、長く吸気を持続させる。インセンティブスパイロメトリは、最大吸気持続訓練(気管支清浄化療法)に用いる訓練機器である。

 

 

 

 

 

88 肝硬変による肝性脳症で生じるのはどれか。2つ選べ。

 1.浮腫
 2.異常行動
 3.くも状血管腫
 4.羽ばたき振戦
 5.メドゥーサの頭

解答

解説

肝性脳症とは?

肝性脳症とは、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気である。長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生する。 原因として、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発される。正常な肝なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる。肝性脳症は多くの場合、治療により予後良好である。主に、①ラクツロース、②抗菌薬が用いられる。①合成糖であるラクツロースは、下剤として作用し、食物が腸を通過する速度を速めることで、体に吸収されるアンモニアの量が減少させる。②口から投与しても腸から吸収されない抗菌薬(リファキシミンなど)を処方することにより、腸に残り、消化中に毒素を作り出す細菌の数を減らす効果が期待できる。(※参考「肝性脳症」MSDマニュアル家庭版)

 1.× 浮腫は、主に体液のうち間質液が異常に増加した状態で生じる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
 2.4.〇 正しい。異常行動/羽ばたき振戦は、肝硬変による肝性脳症で生じる。肝性脳症の症状として、脳機能障害の症状(特に覚醒レベルの低下や錯乱など)がみられる。発症初期には、論理的思考、人格や行動に微妙な変化が現れ、気分が変化したり、判断力が鈍ったりすることもある。また正常な睡眠パターンが崩れ、抑うつ、不安、または怒りっぽくなったり、集中力の低下がみられたりすることもある。ちなみに、羽ばたき振戦とは、手関節を背屈させたまま手指と上肢を伸展させ、その姿勢を保持するように指示すると、「手関節及び中指関節が急激に掌屈し、同時に、元の位置に戻そうとして背屈する運動」が認められる。手関節や手指が速くゆれ、羽ばたいているようにみえるので、このように呼ばれる。肝性脳症やウィルソン病、呼吸不全(CO2ナルコーシス)など代謝性神経疾患で出現する。
 3.× くも状血管腫は、主に肝硬変で生じる。例えば、肝臓が障害を受けると、エストロゲンの排出が障害される。したがって、エストロゲンが過剰になり、エストロゲンの作用で毛細血管が拡張し、くも状血管腫や手掌紅班が見られるようになる。他には、女性化乳房や睾丸萎縮などが見られるようになる。
 5.× メドゥーサの頭は、主に肝硬変で生じる。メドゥーサの頭とは、肝硬変が進行すると、お腹の皮膚の静脈が膨れ上がり、放射状にコブのような模様のことを指す。

 

 

 

 

 

89 高齢者の健康障害の特徴はどれか。2つ選べ。

 1.原因を特定しやすい。
 2.症候が定型的である。
 3.若年者と比較して個人差は少ない。
 4.薬物による有害事象が出現しやすい。
 5.原疾患とは関連のない老年症候群が発生しやすい。

解答

解説

一般的な高齢者の身体的特徴

①予備力の低下
②内部環境の恒常性維持機能の低下
③複数の病気や症状をもっている
④症状が教科書どおりには現れない
⑤現疾患と関係のない合併症を起こしやすい
⑥感覚器機能の低下

(※参考:「高齢者の身体と 疾病の特徴」日本医師会様HPより)

 1~3.× 原因を特定し「にくい」。症候が「定型的」ではなく不定形である。若年者と比較して個人差は「少ない」のではなく大きい。なぜなら、複数の病気や症状、薬の服用など様々な要因が考えらえるため。例えば、肺炎の一般的な症状といわれる高熱・咳・白血球増多も高齢者の場合50~60%しかみられないといわれている。
 4.〇 正しい。薬物による有害事象が出現しやすい。なぜなら、高齢者は身体の中の①水分の割合が少なくなり、②脂肪が多くなるため。つまり、脂肪にとける薬が身体の中にたまりやすくなる。また、高齢者は予備力が低下しており、ほかに内部環境として、①体温調節能力の低下、②水・電解質バランスの異常、③耐糖能の低下、④血圧の変化などをきたしやすい。
 5.〇 正しい。原疾患とは関連のない老年症候群が発生しやすい。老いの変化は、①社会的・環境的要因、②身体的要因、③心理的要因が密接に関係している。老いの変化は今まで育った社会背景、生活習慣などの諸因子が相互に作用した結果であり、個人差が大きい。ちなみに、老年症候群とは、老化現象に伴い肉体的・精神的な機能が低下して、高齢者に特有の症状・病態、さらに心身の障害に陥り、治療に加えて介護・看護を要する症状・徴候の総称である。老年症候群の徴候として、①生活機能低下、②うつ状態、③転倒、④失禁、⑤低栄養などである。

 

 

 

 

 

90 薬剤投与に関する重大な医療事故が発生した。
 このときの看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

 1.患者の状況を確認して安全を確保する。
 2.事故発生状況の詳細を看護記録に残す。
 3.薬剤投与に使用した物品は直ちに処分する。
 4.患者の容態が落ち着いてから上司に報告する。
 5.患者および家族に事故状況を説明するのは、原因が判明した後にする。

解答

解説
 1.〇 正しい。患者の状況を確認して安全を確保する。なぜなら、さらなる二次的な事故を予防するため。ルート抜去や注射器など危険なもの安全確保が必要である。
 2.〇 正しい。事故発生状況の詳細を看護記録に残す。なぜなら、記録に残すことで再発防止につながるため。
 3.× 薬剤投与に使用した物品は直ちに処分する必要はない。なぜなら、証拠隠滅を疑われるため。
 4.× 患者の容態が「落ち着いてから」ではなく速やかに上司に報告する。なぜなら、患者の容体が落ち着かない場合も考えられるため。つまり急変し直ちに処置が必要となる場合もある。
 5.× 患者および家族に事故状況を説明するのは、原因が判明した「後」と規定されているものではない。むしろ、原因が不明な場合でも、まずは患者・家族に起こってしまった事実を報告し、謝罪が必要なケースが多い。

 

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