第94回(H23) 助産師国家試験 解説【午前1~5】

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1 ICM(国際助産師連盟〉が示す基本的助産業務に必須な能力はどれか。

1.専門医の診察を必要とする女性を判別し、照会する。
2.助産師が中心となり女性の健康に関する方法を決定する。
3.文化的背景が異なる女性に対して同一のケアを提供する。
4.学童に必須な健康のために質の高い包括的なケアを提供する。

解答

解説

基本的助産業務に必須な能力 2010 年

①母子のケアの社会的、疫学的、文化的な能力
②妊娠前のケアと家族計画の能力
③妊娠中のケア提供能力
④分娩と出産時のケア提供能力
⑤産褥期の女性のためのケア提供能力
⑥新生児のための 新生児のための出産後ケアの能力
⑦自然及び人工妊娠中絶関連ケアのファシリテーション能力

(※参考:「国際助産師連盟 国際助産師連盟 基本的助産業務に 基本的助産業務に必須な能力 2010 年」)

1.〇 正しい。専門医の診察を必要とする女性を判別し、照会する。なぜなら、異常や合併症を早期に認識し、助産師の対応範囲を超える場合には適切な専門職(医師など)へつなぐことが求められるため。助産師は、正常な妊娠・分娩・産褥を自律して支援する専門職であるが、「すべてを助産師だけで管理する」という意味ではない。つまり、助産師は「正常を支える+異常を見抜く+必要時に紹介する」。

2.× 「助産師」ではなく女性本人が中心となり女性の健康に関する方法を決定する必要がある。なぜなら、女性自身が自分のケアに関する中心的な意思決定者であるため。助産師はその意思決定を支援することが求められている。つまり、意思決定の主役は「助産師」ではなく「女性本人」である。

3.× 文化的背景が異なる女性に対して、「同一」ではなく個々のケアを提供する。なぜなら、文化的安全性や多様性を尊重する必要があるため。個々の文化・価値観・希望を尊重し、個々の女性のニーズに応じたケアを提供することが求められている。

4.× 「学童に必須な健康」ではなく主として女性・妊産婦・新生児・乳児、および性と生殖に関する健康のために質の高い包括的なケアを提供する。つまり、「学童への包括的ケア」を中心的能力としていない。ちなみに、、学童期の健康管理は学校保健などの領域が中心となる。

(※引用:「ICM 助産師の定義」日本助産師会様HPより)

 

 

 

 

 

2 女性の性ホルモンの変動で正しいのはどれか。

1.思春期には、性ホルモンが低濃度のまま初経が発来する。
2.妊娠初期には、妊娠黄体から分泌される性ホルモンが妊娠維持に寄与する。
3.産褥期には、性ホルモンによって乳腺の機能が抑制される。
4.更年期には、性ホルモンの低下に伴いFSHの分泌は減少する。

解答

解説

主な性ホルモンの一覧

・エストロゲン(卵胞ホルモン)は、卵巣で分泌され、女性らしい体づくり・子宮内膜を増殖する。
・プロゲステロン(黄体ホルモン)は、黄体・胎盤で分泌され、子宮内膜を維持し、妊娠を保つ。
・テストステロン(アンドロゲン)は、精巣・副腎で分泌され、男性らしい体づくり・精子形成を促す。

1.× 思春期には、性ホルモンが「低濃度のまま」でなく高濃度となり初経が発来する。なぜなら、初経は、視床下部-下垂体-卵巣系が成熟し、エストロゲン分泌が増加する過程で発来するため。

2.〇 正しい。妊娠初期には、妊娠黄体から分泌される性ホルモン(プロゲステロンやエストロゲン)が、妊娠維持に寄与する。なぜなら、妊娠初期には胎盤のホルモン産生機能がまだ十分ではなく、妊娠黄体から分泌されるプロゲステロンが子宮内膜を維持して妊娠継続を支えるため。

3.× 産褥期には、性ホルモンによって乳腺の機能が「抑制」ではなく促進される。なぜなら、妊娠中は高濃度のエストロゲンとプロゲステロンが乳汁分泌を抑制しているが、胎盤娩出後にこれらが急低下することでプロラクチンによる乳汁産生が可能になるため。
・産褥期(さんじょくき)とは、出産後のカラダが元の状態に戻るまでのおよそ6~8週間の期間をいう。一般的に産後6〜8週間ほどの期間をいう。乳汁の分泌や後陣痛、悪露の排出、子宮復古などがおこる。手足のむくみや産褥熱、産褥性心筋症などに注意を払う必要がある。

4.× 更年期には、性ホルモンの低下に伴い、FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌は「減少」ではなく上昇する。なぜなら、エストロゲンの低下によって視床下部・下垂体に対する負のフィードバックが弱くなるため。負のフィードバックとは、簡単にいうと、「エストロゲンが十分あるから、FSH(卵胞刺激ホルモン)をこれ以上出さなくてよい」と抑制する仕組みである。更年期になると卵巣機能が低下して、エストロゲン分泌が減少する。すると、この抑制が弱くなるため、「FSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)上昇」となる。

 

 

 

 

 

3 胎児への放射線の影響で正しいのはどれか。

1.閾線量未満であっても奇形発生のリスクはある。
2.胎児の発癌に関する放射線の感受性は成人と同じである。
3.妊娠10週以降の閾線量以上の被ばくでは精神発達遅滞のリスクがある。
4.閾線量以上の被ばくでは妊娠4週未満よりも妊娠4~10週の方が胎児死亡のリスクが高い。

解答

解説

(図引用:「放射線被爆と先天異常」日本産婦人科医会HPより)

胎芽・胎児への影響

 胎芽・胎児の発育期は、着床前期(受精0~8日)、主要器官形成期(受精9日~60日)、胎児期(受精60~270日)に分けられ、時期により発生する異常が異なる。

1.× 閾線量未満であった場合、奇形発生のリスクは「ない」。なぜなら、放射線による胎児奇形には、「影響が現れ始める一定の線量=閾線量が存在する」ため。たとえば、妊婦が通常の診断用X線検査を1回受けたからといって、「少しでも被ばくしたから胎児奇形が起こる」と考えるものではない。
・閾線量とは、放射線による影響が現れ始める最低限の被ばく線量のことである。主に、皮膚の紅斑、脱毛、白内障などの確定的影響(組織反応)に対して用いられる。閾線量を下回る場合には基本的に症状は生じないが、閾線量を超えると線量が増えるほど症状の程度が重くなる。なお、がんや遺伝的影響などの確率的影響には、一般に閾線量はないと考えられている。

2.× 胎児の発癌に関する放射線の感受性は、成人と「同じ」ではなく高い。なぜなら、胎児は、細胞分裂が非常に活発で、組織・臓器が発達途中にあるため。したがって、放射線の影響は成人より受けやすい。

3.〇 正しい。妊娠10週以降の閾線量以上の被ばくでは、精神発達遅滞のリスクがある。なぜなら、妊娠10週ごろ以降は、胎児の大脳・中枢神経系が急速に発達する時期であるため。

4.× 逆である。閾線量以上の被ばくでは、「妊娠4~10週」よりも「妊娠4週未満」の方が胎児死亡のリスクが高い。なぜなら、着床前の初期胚は、放射線によって少数の細胞が障害されるだけでも胚全体が生存できなくなりやすいため。

 

 

 

 

 

4 ディック・リードの理論で正しいのはどれか。

1.緊張が痛みを増強する。
2.痛みに閾値が存在する。
3.一点を見つめることで痛みが緩和する。
4.分娩経過の知識があると恐怖が増強する。

解答

解説

ディック・リードの理論とは?

ディック・リード(Dick Read)の理論は、「恐怖 → 緊張 → 疼痛 → さらに恐怖」という悪循環を説明したものである。したがって、分娩に関する正しい知識を得て恐怖を軽減し、心身をリラックスさせることが疼痛緩和につながる。

1.〇 正しい。緊張が痛みを増強する。なぜなら、恐怖によって筋肉が緊張し、その緊張が疼痛を強めるという「恐怖・緊張・疼痛」の悪循環が生じるため。

2.× 「痛みに閾値が存在する。」という考え方は、ディック・リード理論の中心概念ではない。なぜなら、ディック・リードが重視しているのは、恐怖や緊張と分娩痛との関係であるため。

3.× 「一点を見つめることで痛みが緩和する。」という考え方は、ディック・リード理論の中心概念ではない。例えば、ディック・リード法では、①妊娠・分娩についての教育、②恐怖の除去、③リラクゼーション、④自然な分娩への理解などが重視される。

4.× 分娩経過の知識があると恐怖が、「増強」ではなく軽減する。なぜなら、ディック・リードは、分娩に対する無知や誤解が恐怖を生み、その恐怖が緊張と疼痛を増強すると考えたため。

 

 

 

 

 

5 在胎40週、2200gで出生した男児。出生時の身長46cm、頭囲29cm。診察所見で眼裂の狭小、小下顎、不明瞭な人中および薄い上唇が認められた。
 最も疑われるのはどれか。

1.18トリソミー
2.21トリソミー
3.先天性風疹症候群
4.胎児性アルコール症候群

解答

解説

ポイント

・在胎40週、2200gで出生した男児。
・出生時の身長46cm、頭囲29cm
・診察所見で眼裂の狭小、小下顎、不明瞭な人中および薄い上唇が認められた。
→本児は、胎児性アルコール症候群疑われる。胎児性アルコール症候群とは、妊娠中の母親の習慣的なアルコール摂取によって生じていると考えられている先天性疾患の一つ。 神経発達症の一種である。典型は、①胎児発育不全、②中枢神経障害(小頭症など)、③特徴的顔貌(短い眼裂、平滑・不明瞭な人中、薄い上唇)である。

1.× 18トリソミーでは、本症例の不明瞭な人中および薄い上唇が見られにくい
・18トリソミーとは、エドワーズ症候群ともいい、余分な18番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種である。通常は知的障害と出生時低身長のほか、重度の小頭症、心奇形、後頭部突出、変形を伴う耳介低位、やつれたような特徴的顔貌などの様々な先天奇形で構成される。

2.× 21トリソミーでは、本症例の眼裂狭小・平滑な人中・薄い上唇は見られにくい
・21トリソミーとは、ダウン症候群ともいい、第5指中節骨異形成、房室中隔欠損、十二指腸閉鎖の他にも①特異な顔貌、②多発奇形、③筋緊張の低下、④成長障害、⑤発達遅滞を特徴とする。また、約半数は、先天性心疾患や消化管疾患などを合併する。特異顔貌として、眼瞼裂斜上・鼻根部平坦・内眼角贅皮・舌の突出などがみられる。

3.× 先天性風疹症候群では、典型的には白内障・先天性心疾患・感音性難聴が中心となるため。
・先天性風疹症候群とは、風しんウイルスの胎内感染(垂直感染)によって先天異常を起こす感染症である。 3徴は、白内障、先天性心疾患、難聴である。その他先天性緑内障、色素性網膜症、紫斑、脾腫、小頭症、精神発達遅滞、髄膜脳炎、骨のX線透過性所見、生後24時間以内に出現する黄疸などを来しうる。臨床的特徴として、先天異常の発生は妊娠週齢と明らかに相関し、妊娠12週までの妊娠初期の初感染に最も多くみられ、20週を過ぎるとほとんどなくなる。

4.〇 正しい。胎児性アルコール症候群が最も考えられる。なぜなら、胎児性アルコール症候群では、胎児発育不全・小頭症などの中枢神経障害に加え、「短い眼裂・平滑な人中・薄い上唇」という特徴的顔貌を認めるため。

 

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