第94回(H23) 助産師国家試験 解説【午前11~15】

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11 老年期の女性に多い疾患で正しいのはどれか。

1.子宮脱では高率に子宮頸部の短縮をきたす。
2.骨粗鬆症の治療には黄体ホルモン製剤が有効である。
3.萎縮性膣炎の治療にはエストリオール製剤が有効である。
4.妊娠・出産回数が多いことは子宮体癌の危険因子になる。

解答3

解説

エストロゲンとは?

エストロゲンとは、主に卵巣から分泌される女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

1.× 子宮脱では高率に子宮頸部の「短縮」ではなく延長をきたしやすい。なぜなら、子宮脱では骨盤底支持組織の脆弱化によって子宮が下降するため。したがって、子宮頸部が牽引されて延長することがある。
・子宮脱とは、子宮を骨盤内で支える筋肉や靱帯が弱くなり、子宮が膣の中へ下がったり、外へ出たりする状態である。加齢や出産、肥満、慢性的なせき・便秘などが主な要因で、股の違和感や圧迫感、尿漏れ、排尿・排便のしにくさを伴うことがある。治療には骨盤底筋体操、膣内に器具を入れて支える方法、手術などがあり、症状や生活への影響に応じて選択する。

2.× 骨粗鬆症の治療には、黄体ホルモン製剤が有効「とはいえない」。なぜなら、閉経後骨粗鬆症は、主にエストロゲン低下による骨吸収亢進が原因であるため。したがって、黄体ホルモン単独には十分な骨量維持作用が期待できない。
・黄体ホルモン製剤とは、女性ホルモンの一つであるプロゲステロンと同じ働きをする薬である。子宮内膜の状態を整えたり、排卵や内膜の増殖を抑えたりする作用があり、月経不順、月経困難症、子宮内膜症、不妊治療、更年期のホルモン補充療法などに用いられる。

3.〇 正しい。萎縮性膣炎の治療にはエストリオール製剤が有効である。なぜなら、萎縮性膣炎は、閉経後のエストロゲン低下によって膣粘膜が菲薄化・乾燥することで生じるため。
・エストリオールとは、出血の改善に有効な腟錠の成分で、卵胞ホルモン(エストロゲン)で、更年期障害の症状、腟炎、子宮腟部びらんなどに用いられる。

4.× 妊娠・出産回数が多いことは、子宮体癌の「危険因子」ではなくリスクを低下させる。なぜなら、妊娠中は排卵が停止し、プロゲステロン優位の状態となるため。したがって、子宮内膜が長期間エストロゲン単独刺激を受ける機会が減少する。ちなみに、子宮体癌は、エストロゲンへの長期間の曝露と関係する。子宮体癌の主な危険因子は、①未産、②肥満、③排卵障害、④早発月経(晩発閉経)、⑤エストロゲン単独投与などである。

 

 

 

 

 

12 過期妊娠で正しいのはどれか。

1.胎児の成長は停止する。
2.周産期死亡率は増加する。
3.頻度は全妊娠の約10%である。
4.胎便吸引症候群〈MAS〉のリスクは変化しない。

解答2

解説

過期妊娠とは?

過期妊娠とは、妊娠42週以降も妊娠が続く状態である。妊娠が長引きすぎると胎盤が胎児に十分な栄養を届け続けることができなくなり、胎児機能不全を起こす可能性がある。この状態を過熟と呼ぶ。ほかにも、巨大児、羊水減少、胎便吸引症候群などのリスクがある。

1.× 胎児の成長は停止する「わけではない」。なぜなら、過期妊娠でも、胎盤機能が保たれていれば胎児の成長は続くため。巨大児となることがある一方、胎盤機能が低下すれば発育が障害されることもある。胎盤機能不全が進むと、皮下脂肪が減少し、皮膚が乾燥した過熟児となることがある。

2.〇 正しい。周産期死亡率は増加する。なぜなら、妊娠週数が進みすぎると胎盤機能低下や羊水減少が生じるため。したがって、胎児低酸素・臍帯圧迫・胎便吸引などの危険が増加する。
・周産期死亡率とは、妊娠満22週以後の死産数と早期新生児死亡数を合計したものを出生数と妊娠満22週以後の死産数を加えたもので除したものである。【求め方】周産期死亡率 = 年間周産期死亡数 ÷(年間出生数 + 年間の妊娠満22週以降の死産数)× 1000

3.× 頻度は、全妊娠の「約10%」ではなく約5%である。なぜなら、過期妊娠が約5%とされるのは、多くの妊婦が妊娠37~41週の間に自然に陣痛が始まり、42週まで妊娠が続く人が少ないため。

4.× 胎便吸引症候群〈MAS〉のリスクは、「変化しない」のではなく上昇する。なぜなら、妊娠週数が進むほど胎便排出が起こりやすくなるため。さらに胎児低酸素によって胎便排出やあえぎ呼吸が誘発されることも要因とされる。
・胎便吸引症候群とは、出生前または周産期に肺に胎便(暗緑色の、無菌の便)を吸い込んだ新生児にチアノーゼや呼吸困難(呼吸窮迫)がみられることである。酸素不足などのストレスによって反射的にあえぎ、胎便を含む羊水を肺に吸い込んでしまうことなどで起こる。多呼吸、羊水混濁が特徴である。胸部エックス線の所見の特徴では、①両肺野にびまん性の策状影、②縦郭気腫などのエアリーク所見、③両側肺の過膨張がみられる。

 

 

 

 

 

13 前置胎盤で正しいのはどれか。

1.常位胎盤よりも癒着胎盤の頻度が高い。
2.母体年齢が低いと発症頻度が増加する。
3.既往帝王切開妊婦での発症頻度が低い。
4.常位胎盤よりも低出生体重児の頻度が低い。

解答1

解説

前置胎盤とは?

前置胎盤とは、胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着してしまい、そのために胎盤が子宮の出口(内子宮口)の一部もしくは全部を覆っている状態のことをいう。頻度として、全分娩の約1%弱を占めている。一般的に前置胎盤は無症状であるが、典型的な症状として①腹痛を伴わない突然の性器出血(警告出血)や大量性器出血があげられる。これらの症状は、お腹が大きくなり張りやすくなる妊娠28週以降に増加するといわれている。

1.〇 正しい。前置胎盤では、常位胎盤よりも癒着胎盤の頻度が高い。なぜなら、前置胎盤では、胎盤が子宮下部に付着しているため。子宮下部は子宮内膜の脱落膜が十分に形成されにくく、特に帝王切開などの手術瘢痕がある場合は、胎盤絨毛が子宮筋層へ侵入しやすくなる。また、前置胎盤と帝王切開既往は併存することが多く、これも癒着胎盤の頻度を高める要因である。
・「常位胎盤での低出生体重児の割合」を一律に示す値はないが、日本の単胎妊娠ではおおむね8%前後が目安である。日本の大規模出生コホートでは、自然妊娠の単胎児で出生体重2,500g未満は8.1%であった。

2.× 母体年齢が「低い」ではなく高いと、発症頻度が増加する。なぜなら、高年齢になるほど妊娠・分娩歴や子宮内操作歴が増え、子宮内膜・脱落膜に変化が生じる機会が多くなるため。
【前置胎盤の代表的な危険因子】高年妊娠、多産、帝王切開既往、子宮手術歴、人工妊娠中絶・子宮内容除去術などの既往、喫煙などがある。

3.× 既往帝王切開妊婦での発症頻度が「低い」ではなく高い。なぜなら、帝王切開による子宮内膜・子宮下部の瘢痕が、次回妊娠時の胎盤の異常付着に関係するため。帝王切開回数が増えるほど、前置胎盤や癒着胎盤のリスクは増加する。

4.× 常位胎盤よりも低出生体重児の頻度が「低い」ではなく高い。なぜなら、前置胎盤では妊娠中の出血や母体・胎児の状態悪化によって、早産・早期帝王切開となることが多いため。前置胎盤では、胎盤が子宮口付近にあるため妊娠後半に出血を起こしやすく、母児の安全のため早めに帝王切開となることが多い。実際、前置胎盤では37週未満の早産が約46%と報告されている。

 

(※図引用:「前置胎盤・癒着胎盤」日本産婦人科医会より)

 

 

 

 

 

14 晩期産褥出血で正しいのはどれか。

1.全分娩例の5~7%に生じる。
2.2/3は機能性出血と分類される。
3.出血の時期は分娩後1~2週が多い。
4.胎盤ポリープが原因の場合、子宮収縮薬が有効である。

解答3

解説

晩期産褥出血とは?

晩期産褥出血とは、現在は後期分娩後異常出血と呼ばれ、分娩後24時間以降に起こる異常な性器出血である。特に産後1~2週ごろに多い。原因には、胎盤や卵膜の遺残、胎盤ポリープ、子宮復古不全、子宮内感染などがある。出血量が多い場合は貧血やショックにつながるため、速やかな評価と治療が必要である。

1.× 全分娩例の「5~7%」ではなく約1%程度生じる。なぜなら、後期分娩後異常出血は、比較的まれな合併症であるため。通常は分娩後に胎盤が完全に排出され、子宮収縮によって止血されるため、これらの異常が起こる例は少なく、発生頻度も低い。

2.× 2/3は「機能性出血」ではなく器質性出血と分類される。なぜなら、晩期産褥出血では、明らかな原因疾患を伴う出血(胎盤遺残、子宮内膜炎、子宮復古不全、子宮動脈仮性動脈瘤など)が多いため。晩期産褥出血では、原因となる病変の有無によって機能性出血と器質性出血に分類される。
・機能性出血とは、胎盤遺残や胎盤ポリープなどの明らかな器質的病変がないのに起こる出血である。産後のホルモン変化や子宮内膜の回復過程の乱れなどが関係すると考えられる。

3.〇 正しい。出血の時期は分娩後1~2週が多い。なぜなら、産後1~2週ごろは、胎盤付着部の治癒・子宮復古が進行する時期であるため。胎盤遺残や感染、胎盤付着部の復古不全があると出血が顕在化しやすい。

4.× 胎盤ポリープが原因の場合、子宮収縮薬が「有効」ではなく根本的な治療になりにくい。なぜなら、胎盤ポリープに対し原因となる組織自体への処置が必要であるため。一方、子宮収縮薬が有効なのは代表的には子宮復古不全である。
・胎盤ポリープとは、胎盤組織などが子宮内に遺残して形成された病変である。現在、胎盤遺残を含む妊娠組織遺残として扱われる。日本産婦人科医会では、胎盤遺残の治療として子宮内容除去が第一選択とされ、状況により子宮鏡下切除や子宮動脈塞栓術なども検討される。

 

 

 

 

 

15 在胎39週、3400g経膣分娩によって出生した新生児。生後2日目に39℃台の発熱と全身性の皮疹がみられた。活気はあり、その他の身体所見で異常を認めない。血小板5.4万/μl、CRP1.2mg/dl。皮膚の写真を下に示す。
 原因で考えられるのはどれか。

1.大腸菌
2.リステリア菌
3.B群溶血性レンサ球菌〈GBS〉
4.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)

解答4

解説

本症例のポイント

・新生児(在胎39週、3400g経膣分娩)。
・生後2日目:39℃台の発熱と全身性の皮疹。
・活気はあり、その他の身体所見で異常を認めない。
・血小板5.4万/μl、CRP1.2mg/dl。
・皮膚の写真:全身性の皮疹(全身性紅斑)
→本児は、新生児TSS様発疹症(NTED)が考えられる。新生児TSS様発疹症(NTED)は、黄色ブドウ球菌の産生する毒素が原因で起こる急性疾患で、生後早期に発熱や発疹の症状が現れる。成熟児は自然に症状が軽快するが、早期産児では重症化することがあり、NICUでの管理となる。

1.× 大腸菌は考えにくい。なぜなら、本症例のような特徴的な全身性紅斑を伴う新生児TSS様発疹症(NTED)の原因ではないため。一方、大腸菌による新生児感染症では、敗血症や髄膜炎などの全身感染が中心となである。

2.× リステリア菌は考えにくい。なぜなら、先天性リステリア感染では、重症敗血症や呼吸障害を伴い、皮疹も多発性の丘疹・結節性病変であることが多いため。

3.× B群溶血性レンサ球菌〈GBS〉は考えにくい。なぜなら、GBS感染症では、肺炎・敗血症(早発型)、髄膜炎(遅発型)などが中心であるため。

4.〇 正しい。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が最も考えられる。なぜなら、新生児TSS様発疹症(NTED)では、生後早期に高熱、びまん性の全身性紅斑、血小板減少を認める一方、全身状態が比較的保たれるという特徴があり、本症例と一致するため。新生児TSS様発疹症(NTED)は、黄色ブドウ球菌(特にMRSAが産生するTSST-1)によって引き起こされる。

 

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