第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午後46~50】

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46 高次脳機能障害のある患者が買い物に行った際に示す行動で失行はどれか。

1.何を買いに来たのか忘れる。
2.買い物かごの使い方が分からない。
3.献立に合わせた買い物ができない。
4.スーパーと自宅の往復で道に迷う。

解答

解説

失行とは?

失行とは、麻痺や運動機能の障害はないが、意識した動作が正しく行えない状解である。頭頂葉の障害で起こりやすい。

1.× 何を買いに来たのか忘れる。
これは、記憶障害に該当する。

2.〇 正しい。買い物かごの使い方が分からない
これは、失行に該当する。
・観念失行とは、複合的な運動の障害であり、日常使用する物品が正当に使用できない失行のことである。優位半球頭頂葉を中心とする広範囲な障害で生じる。例えば、タバコに火をつける、お茶を入れる、歯磨きをするなどの手順が困難になる。

3.× 献立に合わせた買い物ができない。
これは、遂行機能障害に該当する。
・遂行機能障害とは、物事を計画し、順序立てて実行するという一連の作業が困難になる状態である。遂行機能障害に対する介入方法としては、解決方法や計画の立て方を一緒に考える問題解決・自己教示訓練が代表的である。

4.× スーパーと自宅の往復で道に迷う。
これは、見当識障害に該当する。
・見当識障害とは、「今がいつか(時間)」「ここがどこか(場所)」がわからなくなる状態である。自分の周囲の状況や、 自分が置かれている状況(人や時間、 場所)が正しく理解できなくなる。

 

 

 

 

 

47 乳房温存療法で放射線治療を受ける乳癌患者への説明で適切なのはどれか。

1.「頭髪の脱毛が生じます」
2.「嚥下障害が予測されます」
3.「皮膚にマーキングを行います」
4.「同居家族への被曝に注意してください」

解答

解説
1~2.× 頭髪の脱毛/嚥下障害は「生じない」。なぜなら、乳房温存療法の放射線治療は、乳房とその周辺(胸壁、腋窩リンパ節領域など)に限定して放射線を照射するため。
・放射線治療による脱毛は、放射線が頭髪に照射された場合に起こる副作用である。
・放射線治療による嚥下障害は、放射線によって口腔、咽頭、食道といった食物の通り道に異常を期待した場合に生じる。

3.〇 正しい。「皮膚にマーキングを行います」と説明する。なぜなら、放射線治療は、病変部に正確に放射線を照射するため。したがって、治療計画を立てる際に、CTなどの画像診断で確認した治療範囲を、患者さんの皮膚に直接ペンで印(マーキング)をつけたり、小さな刺青(タトゥー)のように印をつけたりする。

4.× 同居家族への被曝に注意する必要はない。なぜなら、放射線は体内で留まることはなく、照射が終われば患者さんの体から放射線が出ることはないため。乳房温存療法の放射線治療で用いられるのは、通常、体外から放射線を照射する「外部照射」である。

 

 

 

 

 

48 臨死期にある患者に出現する呼吸の変化で正しいのはどれか。

1.過呼吸
2.奇異呼吸
3.Kussmaul〈クスマウル〉呼吸
4.Cheyne-Stokes〈チェーン-ストークス〉呼吸

解答

解説

臨死期とは?

臨死期とは、臨終が差し迫った時期である。症状として、るい痩、ADL(日常生活活動)低下、食欲低下、水分摂取量減少、尿量減少、皮膚虚血、意識レベルの低下、死前喘鳴、下顎呼吸、末梢チアノーゼ、チェーンストークス呼吸、橈骨動脈触知不可などが見られる。

1.× 過呼吸とは、過換気のことであり、一般的に不安(パニック)、痛み、代謝性アシドーシス(例:糖尿病性ケトアシドーシス初期)などによって呼吸が速く深くなる状態を指す。

2.× 奇異呼吸とは、胸郭運動が一部において連動していない様子である。一側性の気道閉塞や気胸などが要因となる。

3.× Kussmaul〈クスマウル〉呼吸とは、深く大きい呼吸のことである。代謝性アシドーシスでみられる。
・代謝性アシドーシスとは、HCO3−が減少(腎不全・下痢など)することで酸性に傾くことである。代償的に換気を増大させる(呼吸性アルカローシスにする)ことで、重炭酸イオン緩衝系をアルカリ性側に傾けようとする。

4.〇 正しい。Cheyne-Stokes〈チェーン-ストークス〉呼吸は、臨死期にある患者に出現する呼吸の変化である。
・Cheyne-Stokes 呼吸(チェーンストークス呼吸:交代性無呼吸)とは、小さい呼吸から一回換気量が漸増し大きな呼吸となった後、一回換気量が漸減し呼吸停止(10~20秒程度の無呼吸)がおこり、その後再び同様の周期を繰り返す呼吸である。中枢神経系が障害(脳出血、脳梗塞、尿度億章、薬物中毒など)され、呼吸中枢の感受性が低下した場合や脳の低酸素状態の際に見られる。

(※図引用:「異常呼吸」日本臨床検査医学会様HPより)

 

 

 

 

 

49 超音波ガイド下で肝生検を受ける成人への説明で正しいのはどれか。

1.「検査前の絶食は不要です」
2.「検査はうつぶせで実施します」
3.「検査中は指示に合わせて息を止めてください」
4.「検査後すぐに歩行できます」

解答

解説

生検とは?

生体組織診断(生検)とは、病気の診断や経過予後の判定のために、患部の一部を針やメスなどで採取して、顕微鏡などで拡大して調べる検査である。例えば、針生検では、細胞診よりも太い針を病変部に刺し、その中に組織の一部を入れて、からだの外に取り出し検査する。

ちなみに、乳がんの検査では、最初に、目で見て確認する視診と、触って確認する触診、マンモグラフィ、超音波(エコー)検査を行う。乳がんの可能性がある場合には、病変の細胞や組織を顕微鏡で調べて診断を確定する。ちなみに、超音波検査やマンモグラフィなどの画像診断で、良性か?悪性か?、はっきりしないしこりや癌の可能性があるしこりに対して行われる。

(※引用:「大津赤十字病院消化器科」より)

1.× 検査前の絶食が必要である。なぜなら、検査中の合併症として、出血や胆汁漏、消化管穿孔などのリスクがあげられ、これらが起こった場合、緊急処置や手術が必要になる可能性があるため。胃内容物を空にしておくことで、緊急時の嘔吐による誤嚥や、消化管穿孔時の腹膜炎のリスクを軽減することができる。

2.× 検査は、「うつぶせ(腹臥位)」ではなく仰向け(背臥位)で実施する。なぜなら、肝臓は主に右の肋骨の下に位置しているため。したがって、針を安全に穿刺するためには、肝臓が体表に近く、超音波で確認しやすい体位をとる必要がある。一般的には、仰向けにて右腕を頭上に挙げて検査する。

3.〇 正しい。「検査中は指示に合わせて息を止めてください」と説明する。なぜなら、肝臓は呼吸によって上下に動くため。針を正確に目的の部位に穿刺し、組織を採取するためには、肝臓の動きを最小限に抑える必要がある。

4.× 検査後、「すぐ」ではなく2時間後に歩行できる。なぜなら、肝生検は出血のリスクが高い検査であり、検査後は安静にして出血や合併症の発生を観察する必要があるため。特に、穿刺部位からの出血がないか、バイタルサインに異常がないかなど観察される。

 

 

 

 

 

50 Aさん(42歳、男性)は、同僚との飲酒中に上腹部から背部の激しい痛みと嘔吐があり、救急搬送された。搬送時の心電図には異常を認めない。
 Aさんの状態をアセスメントするための血液検査項目で優先度が高いのはどれか。

1.アルブミン
2.トロポニン
3.中性脂肪
4.リパーゼ

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(42歳、男性)
・同僚との飲酒中上腹部から背部の激しい痛み嘔吐
・搬送時の心電図:異常を認めない
→本症例は、急性膵炎が疑われる。急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。男性では50歳代に多く、女性では70歳代に多い。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。
検査:膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。
【治療】
軽症例:保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)
重症例:集中治療[臓器不全対策、輸液管理、栄養管理(早期経腸栄養)、感染予防、腹部コンパートメント症候群対策]

(※参考:「急性膵炎」MSDマニュアル家庭版より)

1.× アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。主に血液検査で測定する。

2.× トロポニンとは、心筋に特異的に含まれる物質で、心筋が障害を受けたときに血液中で増える物質で、筋収縮の機序としては、①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。

3.× 中性脂肪とは、食事から摂取した栄養のうち、体内でエネルギーとして使われる脂肪のことである。運動により、エネルギー消費量が増加し、内臓脂肪と皮下脂肪がエネルギー源として利用される。

4.〇 正しい。リパーゼは、血液検査項目で優先度が高い。なぜなら、リパーゼは、膵臓に特異性が高く、急性膵炎の診断において非常に感度と特異度の高いマーカーとされているため。
・リパーゼとは、中性脂肪を脂肪酸とグリセリンに加水分解する反応を触媒する酵素である。膵臓から分泌される消化酵素であり、膵臓に炎症が起こると血液中に大量に放出され、その活性が著しく上昇する。

 

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