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31 Aさん(37歳、初産婦)は妊娠30週2日に妊婦健康診査で来院した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。1日に数回の子宮収縮の自覚がある。血圧128/78mmHg。血液検査データは、Hb11.8g/dL、Ht34%。75gOGTTで空腹時血糖90mg/dL、1時間値177mg/dL、2時間値165mg/dL。尿蛋白(-)、尿糖+であった。子宮底長25cm。子宮口は閉鎖、子宮頸管長32mm。児は骨盤位で推定胎児体重1,450gである。
このときのアセスメントで適切なのはどれか。
1.正常経過
2.切迫早産
3.妊娠性貧血
4.妊娠糖尿病
5.胎児発育不全〈FGR〉
解答4
解説
・Aさん(37歳、初産婦、妊娠30週2日)
・既往歴、家族歴:特記すべきことはない。
・1日に数回の子宮収縮の自覚がある。
・血圧128/78mmHg。
・血液検査データ:Hb11.8g/dL、Ht34%。75gOGTTで空腹時血糖90mg/dL、1時間値177mg/dL、2時間値165mg/dL。尿蛋白(-)、尿糖+。
・子宮底長25cm。子宮口は閉鎖、子宮頸管長32mm。
・児は骨盤位で推定胎児体重1,450g。
→ほかの選択肢が消去できる理由もあげられるようにしよう。
1.× 正常経過とはいえない。なぜなら、本症例の75gOGTTの2時間値165mg/dLで妊娠糖尿病の診断基準を満たしているため。
・妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。日本糖尿病学会においては、妊娠中は、朝食前血糖値70~100mg/dL以下、食後2時間血糖値120mg/dL以下、HbA1c:6.2%未満を目標とする。
2.× 切迫早産と判断しにくい。なぜなら、本症例は、子宮収縮の自覚はあるが、子宮口は閉鎖し、子宮頸管長32mmであり、早産に向かう明らかな所見が乏しいため。
・切迫早産とは、妊娠22週以降37週未満に下腹部痛、性器出血、破水などの症状に加えて、外測陣痛計で規則的な子宮収縮がみられ、内診では子宮口開大子宮頸管の展退などが認められ、早産の危険性が高いと考えられる状態である。
3.× 妊娠性貧血と判断しにくい。なぜなら、本症例のHb:11.8g/dL、Ht:34%であり、妊娠中の貧血と判断する値ではないため。
・妊娠性貧血とは、妊婦に認められる貧血の総称であり、ヘモグロビン濃度(Hb値)が11g/dL未満、あるいはヘマトクリット値(Ht値)が33%未満で診断される。妊娠性貧血は、全妊娠の20%に発症し、その大部分は妊娠に起因する鉄欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血または両者を合併したものである。
4.〇 正しい。妊娠糖尿病が該当する。なぜなら、本症例の75gOGTTの2時間値が165mg/dLで、妊娠糖尿病の診断基準である153mg/dL以上を満たしているため。
・妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。日本糖尿病学会においては、妊娠中は、朝食前血糖値70~100mg/dL以下、食後2時間血糖値120mg/dL以下、HbA1c:6.2%未満を目標とする。
5.× 胎児発育不全〈FGR〉と判断しにくい。なぜなら、妊娠30週2日で推定胎児体重1,450gは、明らかに小さいとはいえないため。
・胎児発育不全とは、平均と比べて成⻑が遅くなっていることをいい、胎盤由来の妊娠合併症の代表的なものである。子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態で、妊娠週数に対して胎児が明らかに小さい場合をいい、胎児発育曲線において「-1.5SD以下」の場合に診断される。

(※引用:「胎児計測と胎児発育曲線について」産婦人科学会様HPより)
32 Aさん(42歳、初産婦)は順調な妊娠経過であったが、妊娠38週の妊婦健康診査で妊娠高血圧症候群と診断されたため、分娩誘発で経腟分娩した。産褥1日、突然「胃のあたりが痛い」と訴え、苦悶様表情を浮かべている。意識は清明で呼吸数24/分、脈拍100/分、血圧160/104mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(roomair)である。
直ちに行うべき検査はどれか。
1.頭部CT検査
2.血液ガス分析
3.肝機能の血液検査
4.胸部エックス線撮影
5.上部消化管内視鏡検査
解答3
解説
・Aさん(42歳、初産婦)
・妊娠38週:妊娠高血圧症候群と診断された。
・分娩誘発で経腟分娩した。
・産褥1日:突然「胃のあたりが痛い」と訴え、苦悶様表情を浮かべている。
・意識清明、呼吸数24/分、脈拍100/分、血圧160/104mmHg、SpO2:98%。
→本症例は、HELLP症候群が疑われる。HELLP症候群とは、妊娠中あるいは産褥期に溶血(hemolysis)、肝酵素上昇(elevated liver enzymes)、血小板減少(low platelet)を呈し、多臓器障害をきたして母体生命を脅かす重篤な妊産婦救急疾患である。原因は、妊娠高血圧症候群の重症型である。主な症状は上腹部(心窩部あるいは右季肋部)痛であり、嘔気や嘔吐、強い倦怠感を伴うこともある。今回妊娠時に高血圧を発症した妊娠高血圧症候群であり、妊娠高血圧症候群は重症になると血圧上昇、蛋白尿に加えてけいれん発作(子癇)、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、HELLP症候群などを引き起こすことがある。直ちに行う検査としては、HELLP症候群の3徴候である①溶血、②肝酵素上昇、③血小板減少を血液検査所見で確認する。
1.× 頭部CT検査より優先されるものがほかにある。なぜなら、Aさんは意識清明で、けいれん、強い頭痛、視覚異常、片麻痺などの中枢神経症状が示されていないため。
・頭部CT検査とは、脳内の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位(急性)は高吸収域(白)としてうつる。
2.× 血液ガス分析より優先されるものがほかにある。なぜなら、AさんのSpO2は98%で、酸素化は保たれており、呼吸不全や重度代謝性アシドーシスを強く疑う所見が乏しいため。
・血液ガス分析とは、血液中に含まれる酸素や二酸化炭素の量、pHを測定する検査である。主に呼吸器疾患(呼吸性アシドーシス、呼吸性アルカローシス、代謝性アシドーシス、代謝性アルカローシスなど)などを精査するために実施する。
3.〇 正しい。肝機能の血液検査が、直ちに行うべき検査である。なぜなら、本症例(妊娠高血圧症候群)は、突然の心窩部痛が出現しており、HELLP症候群が疑われるため。血液検査によって、AST・ALT上昇、LDH上昇、血小板減少があればHELLP症候群をさらに強く疑うことができる。
4.× 胸部エックス線撮影より優先されるものがほかにある。なぜなら、AさんのSpO2低下、強い呼吸困難、胸痛、肺雑音など、肺水腫や肺塞栓症を強く疑う所見が示されていないため。
・胸部エックス線撮影とは、胸部にX線を照射し、体内を通過するX線量の違いを画像として記録する検査である。主に肺、心臓、大動脈、胸膜、肋骨などを観察し、肺炎、気胸、胸水、心拡大などの異常を調べる。短時間で簡便に実施でき、撮影時は大きく息を吸って止めるのが一般的である。
5.× 上部消化管内視鏡検査より優先されるものがほかにある。なぜなら、本症例(妊娠高血圧症候群の産褥婦)で突然の心窩部痛を訴える場合、まず除外すべきはHELLP症候群であるため。
・上部消化管内視鏡検査とは、口または鼻から先端にカメラが付いた細い管を挿入し、食道・胃・十二指腸の内部を直接観察する検査である。胃炎、胃潰瘍、食道炎、がん、出血などの有無を調べることができる。必要に応じて組織を採取する生検や、出血を止める処置も行われる。一般に「胃カメラ」と呼ばれる検査である。
33 精液検査の結果で異常な値はどれか。2つ選べ。
1.液量:1.0mL
2.総運動率:60%
3.精子生存率:70%
4.前進運動率:10%
5.形態正常精子:20%
解答1・4
解説
1.〇 正しい。液量:1.0mLは異常値である。
・精液量とは、1回の射精で採取された精液全体の量である。WHOの下限参考値は1.4mLである。
2.× 総運動率60%は異常値ではない。
・総運動率とは、前方へ進む精子と、その場で動くなど前進しない精子を合わせた割合である。WHOの下限参考値は42%である。
3.× 精子生存率70%は異常値ではない。
・精子生存率とは、検査した精子のうち、生きている精子が占める割合である。WHOの下限参考値は54%である。
4.〇 正しい。前進運動率:10%は異常値である。
・前進運動率とは、精子が直線状または大きな円を描きながら前方へ進む割合であり、卵子まで到達する力を評価する指標である。WHOの下限参考値は30%である。
5.× 形態正常精子20%は異常値ではない。
・形態正常精子率とは、精子の頭部・中片部・尾部の形が一定の基準を満たしている割合である。WHOの下限参考値は4%である。
34 子宮内胎児死亡の原因検索として行われる検査で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.羊水検査
2.胎盤の病理検査
3.夫婦の染色体検査
4.臍帯動脈血液ガス分析
5.母体の抗リン脂質抗体の検査
解答2・5
解説
子宮内胎児死亡の原因検索とは、胎児が子宮内で死亡した原因を明らかにし、次回妊娠での再発予防につなげるための検査である。胎児・胎盤・臍帯の観察や病理検査、母体の血液検査などを行う。胎盤の病理検査では血流障害や感染を調べ、抗リン脂質抗体検査では胎盤に血栓を生じさせる抗リン脂質抗体症候群の有無を確認する。
1.× 羊水検査は、子宮内胎児死亡の原因検索として常に行う代表的検査ではない。
・羊水検査とは、羊水穿刺により羊水中に浮遊する胎児細胞を分析し、染色体の数や構造の異常などを診断する検査である。15~16週以降の胎児染色体異常・遺伝子異常に適応となり、ほぼ100%で確定診断が可能である。
2.〇 正しい。胎盤の病理検査は、子宮内胎児死亡の原因検索として行われる検査である。なぜなら、胎盤は胎児への酸素・栄養供給を担う臓器であるため。したがって、胎盤病理では、胎盤梗塞、絨毛膜羊膜炎、胎児血管灌流異常、母体血管灌流異常、血栓、臍帯異常、胎盤早期剝離の所見などを確認できる。
ACOGの死産管理資料でも、死産評価で最も有用な検査として胎盤病理検査が挙げられています。
3.× 夫婦の染色体検査は、子宮内胎児死亡の原因検索として常に行う代表的検査ではない。
・染色体検査とは、遺伝する病気を発症した家族がいるが、自分が同じ病気を将来発症するかどうかや遺伝子の変異を持つ保因者かどうかを確認するために行われる。流産を繰り返すときなどに実施する。
4.× 臍帯動脈血液ガス分析は、子宮内胎児死亡の原因検索として常に行う代表的検査ではない。なぜなら、臍帯動脈血液ガス分析は、出生直後の新生児の酸塩基状態を評価する検査であるため。
・臍帯動脈血液ガス分析とは、分娩直後に臍帯の動脈から血液を採取し、pH、酸素・二酸化炭素濃度、乳酸、塩基過剰などを調べる検査である。臍帯動脈血は胎児から胎盤へ戻る血液であり、出生直前の胎児の酸素不足や酸血症の程度を客観的に評価できる。新生児仮死の判断や、出生後に集中治療が必要かを検討するために用いられる。
5.〇 正しい。母体の抗リン脂質抗体の検査は、子宮内胎児死亡の原因検索として行われる検査である。なぜなら、抗リン脂質抗体症候群は、胎盤機能障害や血栓形成を介して、流産・死産・胎児発育不全・妊娠高血圧症候群などを起こすことがあるため。
・抗リン脂質抗体症候群とは、自己免疫疾患であり、リン脂質(またはリン脂質と結合した蛋白)に対する自己抗体により引き起こされる様々な病態の総称である。抗リン脂質抗体症候群(APS)には、基礎疾患を伴わないもの(原発性APS)と伴うもの(続発性APS)があり、続発性APS は全身性エリテマトーデス(SLE)を基礎疾患とする場合が多い。主症状は動静脈の血栓症と妊娠合併症である。
母体の抗リン脂質抗体検査とは、母体の血液を採取し、ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、抗β2グリコプロテインⅠ抗体を調べる検査である。これらの抗体は胎盤の血管に血栓を生じさせ、流産、胎児発育不全、子宮内胎児死亡などを起こす抗リン脂質抗体症候群に関係する。陽性の場合は、原則として12週間以上空けて再検査し、持続的な陽性か確認する。
35 直接哺乳の際に、児が適切に吸着できているのはどれか。2つ選べ。
1.母親は乳頭の痛みを感じる。
2.児の口唇が外向きに広がっている。
3.児の顎が乳房に押し込まれていない。
4.児の頰はくぼみがなく丸みを帯びて見える。
5.母親は乳頭を強く引っぱられる感覚がない。
解答2・4
解説
児の下顎が乳房に埋もれこむようにすることで効果的な吸着(ラッチオン)が行えるようになる。①口が大きく開く、②唇が外向き、③下顎が乳房に触れている、④乳房の上方に比べ下方を深く含んでいるといった深い吸い方ができると乳頭亀裂などのトラブルが少なくなる。
1.× 母親は乳頭の痛みを感じるのは、不適切な吸着のサインである。なぜなら、乳頭痛は、児が乳頭だけを浅く吸っている吸着不良のサインであるため。浅い吸着では、乳頭の先端に圧が集中し、痛み、亀裂、出血、痂皮形成などが起こりやすくなる。
2.〇 正しい。児の口唇が外向きに広がっているのは、適切な吸着のサインである。なぜなら、口唇が外向きに開いていると、児が乳頭・乳輪を深く含み、乳房に密着できていることを示すため。
3.× 児の顎が乳房に押し込まれていないのは、不適切な吸着のサインである。なぜなら、児の顎が乳房に密着していることで、乳房を深く含み、効果的に吸啜できるため。
4.〇 正しい。児の頰はくぼみがなく丸みを帯びて見えるのは、適切な吸着のサインである。なぜなら、児が乳房を深く含み、口腔内で陰圧と舌の動きを適切に使えていると判断できるため。
5.× 母親は乳頭を強く引っぱられる感覚がないのは、不適切な吸着のサインである。なぜなら、児が母乳を吸うときには乳房を口腔内へ引き込むため。したがって、母親は吸われる・引かれる感覚を感じることがある。
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