第109回(R8) 助産師国家試験 解説【午後21~25】

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21 新生児の呼吸窮迫症候群〈RDS〉のリスク因子となる母体合併症はどれか。

1.糖尿病
2.橋本病
3.気管支喘息
4.重症筋無力症

解答

解説

呼吸窮迫症候群とは?

呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。症状として、肺胞がしぼみ、呼吸がうまく出来ず、多呼吸の症状が現れる。息を吸うときに肋骨や胸骨の下が陥没するのが特徴(陥没呼吸)。 症状が悪化すると、呻吟、チアノーゼ、嗜眠、不規則呼吸および無呼吸となる。

1.〇 正しい。糖尿病は、新生児の呼吸窮迫症候群〈RDS〉のリスク因子となる母体合併症である。なぜなら、母体糖尿病では、胎児が高血糖となり、それに反応して胎児高インスリン血症が起こり、肺サーファクタント産生が遅れるため。
・肺サーファクタントとは、肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である。なお、肺サーファクタントは単一の成分ではなく、リン脂質を主成分とした混合物である。出生して肺呼吸が始まったときに肺サーファクタントが欠乏していると、肺胞内壁の水分が作り出す表面張力による肺を押しつぶすような力に対抗できない。肺がつぶれて伸展できず呼吸が障害される(新生児呼吸窮迫症候群の原因)。

2.× 橋本病は、肺サーファクタント不足を直接起こす疾患ではない
・橋本病とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。また、甲状腺クリーゼとは、甲状腺中毒症(甲状腺ホルモン高値)の治療が不十分であったり治療を受けていない場合に、肺炎などの感染症や大怪我・手術などのストレスをうけると、甲状腺ホルモンの過剰な状態に耐え切れなくなり、複数の臓器の機能が低下し、死の危険が切迫した状態になることを指す。症状として、高熱、頻脈、意識朦朧、心臓や肝臓の急速な機能低下、呼吸停止、全身性の黄疸がみられる。生命が危険な状態にあるため、入院し呼吸や血圧の管理、血中の甲状腺ホルモンを減らす必要がある。

3.× 気管支喘息は、肺サーファクタント不足を直接起こす疾患ではない
・気管支喘息とは、主に気管支に炎症が起きている状態である。炎症により気管支が狭くなったり(狭窄)、刺激に対して過敏な反応を示したりする。喘息は乳幼児期に発症することが多く、全体の60~70%が2~3歳までに発症する。子どもの喘息の多くは思春期の頃には症状がよくなっていきますが、そのうちの約30%は大人になっても続くといわれている。

4.× 重症筋無力症は、肺サーファクタント不足を直接起こす疾患ではない。妊婦が重症筋無力症の場合、胎盤を通過した自己抗体により、新生児に哺乳力低下、筋緊張低下、啼泣微弱、呼吸筋力低下などが一過性にみられることがある。これは呼吸障害を起こしえるが、呼吸窮迫症候群〈RDS〉の本態である肺サーファクタント不足とは異なる。

重症筋無力症とは?

重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用 される。

(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

22 鵞口瘡について正しいのはどれか。

1.痛みは伴わない。
2.カンジダ感染である。
3.口腔内の赤い皮疹が特徴である。
4.3歳以降で発生頻度は低くなる。

解答

解説

鵞口瘡とは?

鵞口瘡とは、乳幼児の口の粘膜にできるカンジダというカビの感染症である。おもに新生児、乳児にみられ、不潔な乳首などを介して感染すると考えられている。そのほか、抗生物質の長期投与を受けた小児や、先天性あるいは後天性に免疫不全状態にある小児にみられる。カンジダ菌は常在菌のため、通常は人の体において増えすぎることなく、ほかの菌とバランスを保って生息している。しかし、新生児や乳幼児は免疫機能が低いため、出産時や哺乳の際に感染したカンジダ菌が異常に増殖すると、鵞口瘡を発症しやすくなる(※読み:がこうそう)。

1.× 痛みは伴わない「と断言できない」。なぜなら、鵞口瘡は軽症では痛みが乏しいことが多い一方で、炎症が強い場合には口腔内の不快感や痛み、哺乳不良を伴うことがあるため。

2.〇 正しい。カンジダ感染である。なぜなら、鵞口瘡は、Candida albicansなどのカンジダ属真菌が口腔内で増殖して起こる口腔カンジダ症であるため。
・カンジダとは、皮膚・口腔・腸管・腟などに存在することがある常在真菌である。通常は問題を起こさないが、新生児・乳児では免疫機能が未熟であるため、口腔内で増殖して鵞口瘡を起こすことがある。

3.× 口腔内には、「赤い皮疹」ではなく白い斑点や白苔が特徴である。特に、舌・頬粘膜・口唇内側などに白い斑点や白苔がみられる。

4.× 「3歳以降」ではなく生後6か月以降で発生頻度は低くなる。なぜなら、乳児期早期は免疫機能や口腔内の正常細菌叢が未熟で、カンジダ菌が増殖しやすいため。したがって、成長に伴って免疫機能と細菌叢が発達し、菌の増殖が抑えられる。

 

 

 

 

 

23 母子健康手帳について正しいのはどれか。

1.産後ケアの記録欄がある。
2.身体発育曲線は男女共通である。
3.様式は児童福祉法に規定されている。
4.交付を受けるにあたって、妊娠の届出は任意である。

解答

解説

母子健康手帳とは?

母子健康手帳とは、母子保健法に定められた市町村が交付する、妊娠、出産、育児の一貫した母子の健康状態を記録する手帳のことである。母子健康手帳の制度化は、母子保健法:昭和41年(1966年)である。

(※引用:「母子健康手帳の様式」こども家庭庁様HPより)

1.〇 正しい。産後ケアの記録欄がある。(※上図参照)なぜなら、こども家庭庁の母子健康手帳の府令様式では、「産後ケアを利用した時に記入してもらいましょう」と記載され、その下に「産後ケアの記録」として、年月日、方法、場所、備考を記録する欄がある。方法には、宿泊・デイサービス・訪問などが示されている。
・産後ケアとは、出産後に母親の休息、授乳支援、育児相談、心身のケアなどを受けられる支援である。例えば、産後に疲労が強い、授乳がうまくいかない、育児に不安がある場合には、産後ケア事業の利用を案内する。

2.× 身体発育曲線は、「男女共通」ではなく男女別である(※下図参照)。なぜなら、乳幼児の身長・体重・頭囲などの発育には性差があるため。したがって、乳児身体発育曲線、幼児身体発育曲線、頭囲の発育曲線、幼児の身長体重曲線が、男女で別々に掲載されている。

3.× 様式は、「児童福祉法」ではなく母子保健法の施行規則に規定されている。母子保健法施行規則の第七条(母子健康手帳の様式)と記載されている(※参考:「母子保健法施行規則」e-GOV法令検索様様HPより)。
・母子保健法とは、母性、乳幼児の健康の保持および増進を目的とした法律である。母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。各種届出は市町村長または特別区、指定都市の区長に届け出る。
・児童福祉法とは、児童の福祉を担当する公的機関の組織や、各種施設及び事業に関する基本原則を定める日本の法律である。児童が良好な環境において生まれ、且つ、心身ともに健やかに育成されるよう、保育、母子保護、児童虐待防止対策を含むすべての児童の福祉を支援する法律である。

4.× 交付を受けるにあたって、妊娠の届出は「任意」ではなく義務である。母子保健法の第十六条(母子健康手帳)において、「市町村は、妊娠の届出をした者に対して、母子健康手帳を交付しなければならない」と記載されている(※引用:「母子保健法」e-GOV法令検索様HPより)。

(※図引用:「子供の成長・発達」成長科学協会HPより)

 

 

 

 

 

24 妊娠による身体の変化で正しいのはどれか。

1.腟壁はリビド着色する。
2.子宮頸部の軟化は子宮体部より早く始まる。
3.Piskacek〈ピスカチェック〉徴候は妊娠5か月に顕著となる。
4.乳輪に形成されるMontgomery〈モントゴメリー〉腺は第2次乳輪である。
5.子宮の着床部位が膨隆して触れることをHegar〈へガール〉第1徴候という。

解答

解説
1.〇 正しい。腟壁はリビド着色する。なぜなら、妊娠によって骨盤内の血流が増加し、腟壁や子宮頸部がうっ血して暗紫色〜青紫色に見えるため。
・リビド着色とは、妊娠によって増加するエストロゲンにより血管の怒張やうっ血が生じ、それにより子宮膣部や膣壁の色が「妊娠初期は紅紫色、末期には暗い藍紫色」に変化することをいう。

2.× 逆である。「子宮体部」の軟化は「子宮頸部」より早く始まる。なぜなら、妊娠初期は、胎児を育てる子宮体部で血流増加や筋層の肥大、組織の水分増加が早く起こるため。したがって、軟化も早く始まる。一方、子宮頸部は胎児を子宮内に保持する役割があり、妊娠中は硬さを保つ必要があるため、軟化は比較的遅れる。
・グーデル徴候とは、妊娠初期に血流増加や組織の水分増加によって、硬かった子宮頸部が唇のように軟らかくなる変化である。妊娠4~6週頃からみられるが、妊娠を確定する徴候ではない。

3.× Piskacek〈ピスカチェック〉徴候は、「妊娠5か月」ではなく妊娠6〜12週頃に顕著となる。
・Piskacek<ピスカチェック>徴候とは、妊娠初期には子宮の増大が均等に進まず、着床部が膨隆し柔らかくなる徴候である。妊娠6〜12週頃に著明となる。

4.× 乳輪に形成されるMontgomery〈モントゴメリー〉腺は、「第2次乳輪」とはいわない。なぜなら、両者は異なる変化であるため。
・Montgomery腺とは、乳輪にある皮脂腺が妊娠により肥大して小結節状に目立つものである。乳頭・乳輪を保護し、授乳に備える変化として妊娠中に目立ちやすくなる。
・第2次乳輪とは、妊娠に伴う色素沈着により、本来の乳輪の周囲までさらに広く暗褐色に着色して見える領域をいう。

5.× 子宮の着床部位が膨隆して触れることを「Hegar〈へガール〉第1徴候」ではなくPiskacek<ピスカチェック>徴候という。
・Hegar〈ヘガール〉徴候とは、妊娠初期に子宮体部と子宮頸部の間にある子宮峡部が著しく軟らかくなる徴候である。双合診で子宮を前後から挟むと、指先同士が触れそうに感じられる。妊娠4~8週頃にみられる。

 

 

 

 

25 出生後1週以内の新生児における異常所見はどれか。

1.睡眠時間が20時間/日
2.ヘモグロビン値が10g/dL
3.安静時の呼吸数が40回/分
4.新生児中毒性紅斑が体幹に3個
5.大泉門の大きさが長径20mm×短径10mm

解答

解説
1.× 睡眠時間が20時間/日の場合、異常とはいえない。なぜなら、新生児は新生児は覚醒と睡眠のリズムが未熟であるため。したがって、1日の多くを睡眠に費やし、16〜20時間程度眠ることがある。

2.〇 正しい。ヘモグロビン値が10g/dLの場合、異常所見といえる。なぜなら、出生後1週以内でヘモグロビン値が10g/dLの場合、低すぎにより新生児貧血を疑うため。新生児は胎内の低酸素環境に適応して赤血球が多いため、成人より高値である。
・出生後1週以内のヘモグロビン(Hb)値は、おおむね13.5~22.5g/dLである。
生後0~3日:14.5~22.5g/dL
生後3日~1週:13.5~21.5g/dL

3.× 安静時の呼吸数が40回/分の場合、異常とはいえない。なぜなら、新生児の正常呼吸数はおおむね40〜60回/分であるため。新生児は体重当たりの酸素消費量が多い一方、肺が小さく、1回の呼吸で取り込める空気量が少ない。そのため、必要な酸素を確保し二酸化炭素を排出するには、成人より呼吸回数を増やす必要がある。

4.× 新生児中毒性紅斑が体幹に3個の場合、異常とはいえない。何個以上なら異常という基準はなく、多数でも正常範囲である。数よりも、発熱・哺乳不良・元気消失、出血斑や大きな水疱、手掌・足底の発疹などを伴う場合に、感染症などを疑う。
・中毒性紅斑とは、生後数日間に、胸や背中などに赤い斑点やブツブツ、小さな水ぶくれなどができる新生児特有の皮膚トラブルである。新生児中毒性紅斑の原因は不明であるが、胎内環境から胎外環境への急激な変化に適応する過程で起きる、生理的な変化だと考えられている。2週間ほどで自然に治るのが特徴である。

5.× 大泉門の大きさが長径20mm×短径10mmの場合、異常とはいえない。なぜなら、大泉門の大きさには個人差があるため。新生児の大泉門は、前後径と横径の平均で約0.6~3.6cmが正常範囲で、平均は約2.1cmである。大きさの観察項目よりも、膨隆していないか、著しく陥没していないか、閉鎖が早すぎないかが重要で、大泉門の膨隆があれば頭蓋内圧亢進、陥没があれば脱水を疑う。

大泉門とは?

大泉門とは、頭蓋骨にある冠状縫合、矢状縫合、前頭縫合が十字形に合する所にできる最も大きい泉門のことである。生後2年で閉鎖する。出生前後の児の頭は、成人とは異なり骨化が未完成で、結合部位が膜で覆われている。

 

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