第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午後81~85】

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81 腹圧性尿失禁のケアとして適切なのはどれか。2つ選べ。

1.下腹部を保温する。
2.骨盤底筋群訓練を促す。
3.定期的な水分摂取を促す。
4.恥骨上部の圧迫を指導する。
5.尿意を感じたら早めにトイレへ行くことを促す。

解答2/5

解説

腹圧性尿失禁とは?

腹圧性尿失禁とは、おなかに力が入ったときに漏れてしまうタイプの失禁のことをいう。40代以上の女性に多いのが特徴の一つである。特に出産を経験した女性では、分娩時の骨盤底筋へのダメージにより、腹圧性失禁を起こすようになる。骨盤底筋は、骨盤の底にある筋。内臓や子宮、膀胱などを本来のあるべき位置に収まるように、下から支える役割を担う。しかし、骨盤底筋が弱くなると、内臓や子宮、膀胱などの臓器が下がり、骨盤内の臓器で一番下側にくるのが膀胱であるため、常に内臓や子宮に押されている形になる。すると、少しの力がお腹にかかっただけで、膀胱を圧迫してしまい、尿漏れが起こすといったメカニズムである。

1.× 下腹部を保温することは、過活動膀胱のような切迫性尿失禁の場合の保温は効果的である。切迫性尿失禁とは、膀胱が自身の意思に反して収縮することで、急に排尿したくなりトイレに行くまでに我慢できずに漏れてしまう失禁である。原因として膀胱にうまく尿がためられなくなる過活動膀胱が多く、脳血管障害など排尿にかかわる神経の障害で起きることもある。過活動性膀胱に対して、電気刺激療法や磁気刺激療法が有効とされる。
2.〇 正しい。骨盤底筋群訓練を促す。腹圧性尿失禁の原因は、膀胱や子宮などを支えている骨盤底筋の低下がある。ちなみに、骨盤底筋とは、子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。座位や膝立て背臥位などで、上体の力を抜いてお尻の穴を引き上げて「きゅっ」とすぼめ、5秒キープする動作を10~20回ほど繰り返す方法と、すぼめたりを繰り返す方法の2種類ある。
3.× 定期的な水分摂取を促すことは、尿路感染症の予防に有効である。尿路感染症の原因として、そのほぼすべてが細菌によるものでウイルス、真菌または寄生虫である。尿路感染症の85%以上は、腸または腟から移動してきた細菌によって引き起こされる。尿道や膀胱の中で感染がとどまっていると尿道炎や膀胱炎を起こり、細菌が腎臓まで侵入すると尿管炎や腎盂腎炎を起こす。
4.× 恥骨上部の圧迫を指導することは、導尿などで尿を出し切る(排尿)ために行う。
5.〇 正しい。尿意を感じたら早めにトイレへ行くことを促す。なぜなら、膀胱に尿が充満した状態での咳や運動は、膀胱内圧が尿道内圧を上回り、尿失禁につながるため。

過活動膀胱とは?

過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿や尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。明らかな神経学的異常に起因する神経因性過活動膀胱と、原因を特定できない非神経因性過活動膀胱に分けられる。原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれている。有病率は高齢になるほど高くなる。過活動膀胱では、膀胱訓練や骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。

骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。座位や膝立て背臥位などで、上体の力を抜いてお尻の穴を引き上げて「きゅっ」とすぼめ、5秒キープする動作を10~20回ほど繰り返す方法と、すぼめたりを繰り返す方法の2種類ある。

膀胱訓練とは、排尿の間隔を徐々に延長し、膀胱にためることができる尿量を徐々に増やしていくものである。最初は30秒程度からスタートし、徐々に我慢する時間を延ばしていく。

 

 

 

 

 

82 手段的日常生活動作<IADL>はどれか。2つ選べ。

1.食事
2.洗濯
3.入浴
4.更衣
5.買い物

解答2/5

解説

手段的日常生活動作(IADL)とは?

手段的日常生活動作(IADL)とは、日常生活上の、より高度で複雑な動作のこと(買い物、洗濯、掃除、金銭管理、服薬管理など)である。
ADLは、①BADL(基本的日常生活動作)と、②IADL(手段的日常生活動作)に大別される。
①BADL:食事、排泄、入浴、整容など基本的な欲求を満たす身の回りの動作。
②IADL:買い物、洗濯、電話、服薬管理などの道具を用いる複雑な動作。

1.3~4.× 食事/入浴/更衣は、BADL(基本的日常生活動作)である。
2.5.〇 正しい。洗濯/買い物は、IADL(手段的日常生活動作)である。手段的日常生活動作(IADL:Instrumental Activities of Daily Living)とは、日常生活動作(ADL)のなかでも、道具を使う、段取りを考えて行うなど、複雑で判断力を要する身体活動のことである。

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【5問】手段的日常生活動作についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

83 開放性損傷はどれか。2つ選べ。

1.切創
2.打撲傷
3.擦過創
4.皮下出血
5.内臓損傷

解答1/3

解説

開放性損傷とは?

開放性損傷とは、皮膚の損傷が皮下組織や筋肉にまで及ぶもの。例えば、ガラスや刃物などによる切創、挫滅創などである。
非開放性損傷とは、閉鎖性損傷ともいい、皮膚の損傷が表皮、真皮にまでにとどまるものを指す。例えば、絞扼、圧迫、骨折、牽引、阻血、電撃傷などである。

1.〇 正しい。切創は、開放性損傷である。切創とは、機械的外力などにより生体組織が損傷を受けた状態で、鋭利な刃物などの鋭器により直線状に損傷された開放性損傷である。
2.× 打撲傷は、非開放性損傷である。打撲傷とは、挫傷ともいい、体表に創がなく、打撃などの外力により内部の軟部組織が損傷したものである。
3.〇 正しい。擦過創は、開放性損傷である。擦過創とは、擦り傷のうち皮膚を超えて皮下組織にまで損傷が及ぶ開放性損傷である。
4.× 皮下出血は、非開放性損傷である。皮下出血とは、血管から流れ出た血が皮膚の中にたまり皮膚が紫色や青黒いあざになる状態をいう。 紫斑とも呼ぶ。捻挫や打ち身が原因であることが多い。
5.× 内臓損傷は、非開放性損傷である。内臓損傷とは、腹腔内臓器損傷ともいい、内臓が打撲や挫傷、裂傷などの外傷を受けて、炎症などを引き起こすことをいう。

 

 

 

 

 

84 児童憲章について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.児童がよい環境の中で育てられることを定めている。
2.児童の権利に関する条約を受けて制定された。
3.児童が人として尊ばれることを定めている。
4.保護者の責務を定めている。
5.違反すると罰則規定がある。

解答1/3

解説

児童憲章とは?

児童憲章とは、日本国憲法の精神に基づき、児童に対する正しい観念を確立し、すべての児童の幸福を図るために定められた児童の権利宣言である。児童憲章の前文には、「児童は、人として尊ばれる。児童は、社会の一員として重んぜられる。児童は、よい環境の中で育てられる」とある。

1.〇 正しい。児童がよい環境の中で育てられることを定めている。児童憲章とは、日本国憲法の精神に基づき、児童に対する正しい観念を確立し、すべての児童の幸福を図るために定められた児童の権利宣言である。
2.× 児童憲章は、「児童の権利に関する条約」より先に制定された。児童の権利に関する条約は、1989年(平成元年)に国連総会で採択された。児童憲章は、1951年(昭和26年)に制定された。ちなみに、児童の権利に関する条約とは、児童の権利について定める国際条約である。通称は子どもの権利条約。締約国は規定された児童の権利を保障する義務を負うことになる。
3.〇 正しい。児童が人として尊ばれることを定めている。児童憲章の前文には、「児童は、人として尊ばれる。児童は、社会の一員として重んぜられる。児童は、よい環境の中で育てられる。」とある。
4.× 「保護者の責務」ではなく、社会の責務や子どもの権利について定めている。責務とは、責任と義務、また、責任をもって果たさなければならない仕事という意味である。
5.× 法律ではないため、罰則規定はない。児童に対する正しい観念の確立と児童の幸福を目指す憲章である。

 

 

 

 

 

85 急性中耳炎で内服薬による治療を受けた5歳の男児および保護者に対して、治癒後に行う生活指導で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.片側ずつ鼻をかむ。
2.耳垢は毎日除去する。
3.入浴時は耳栓を使用する。
4.大声を出させないようにする。
5.発熱時は耳漏の有無を確認する。

解答1/5

解説

急性中耳炎とは?

急性中耳炎とは、細菌やウイルスなどの病原体が鼻やのどから中耳へと耳管を通って侵入し、そこでも感染することで生じる病気である。症状は、中耳に膿が溜って腫れることで、ズキズキとした激しい耳の痛み、発熱、耳だれ(耳漏)、耳がつまった感じなどである。急性中耳炎は乳幼児期に多く、上気道感染に引き続き経耳管感染で起こる疾患である。

1.〇 正しい。片側ずつ鼻をかむ。なぜなら、左右の鼻を一度にかむと、細菌やウイルスが含まれている鼻汁が鼻の奥に追い込まれ、副鼻腔炎になる可能性が高まるため。その予防のために片方ずつ静かに鼻をかむ習慣をつける。
2.× 耳垢は、毎日除去する必要はない。なぜなら、耳掃除は中耳炎の予防にはならないため。月に1~2回行えば十分である。むしろ、毎日行うことの方が、外耳道炎を起こす危険性がある。
3.× 入浴時は、耳栓を使用する必要はない。なぜなら、耳に水が入ったからといって、中耳炎にはならないため。中耳炎の症状が強い時期(耳痛、発熱、耳だれ)の場合、耳栓をしたり、湯船に潜ったりしないように指導する必要がある。
4.× 大声を出させないようにする必要はない。なぜなら、大声を出したからといって、中耳炎にはならないため。滲出性中耳炎が発症している場合、日常生活では、①テレビの音が大きい、②大きな声でおしゃべりする、③呼んでも返事をしない、④「耳がふさがった感じがする」という症状や訴えをしやすい。
5.〇 正しい。発熱時は耳漏の有無を確認する。なぜなら、耳漏(みみだれ)は、鼓膜が穿孔して分泌液が流れ出ている状態であるため。急性中耳炎とは、細菌やウイルスなどの病原体が鼻やのどから中耳へと耳管を通って侵入し、そこでも感染することで生じる病気である。症状は、中耳に膿が溜って腫れることで、ズキズキとした激しい耳の痛み、発熱、耳だれ(耳漏)、耳がつまった感じなどである。急性中耳炎は乳幼児期に多く、上気道感染に引き続き経耳管感染で起こる疾患である。

 

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