第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午後86~90】

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86 Aさん(50歳、女性)は、急に体が熱くなったり汗をかいたりし、夜は眠れなくなり疲れやすさを感じるようになった。月経はこの1年間で2回あった。
 Aさんのホルモンで上昇しているのはどれか。2つ選べ。

1.エストロゲン
2.プロラクチン
3.プロゲステロン
4.黄体形成ホルモン<LH>
5.卵胞刺激ホルモン<FSH>

解答4/5

解説

本症例のポイント

・Aさん(50歳、女性)
・急に体が熱くなったり汗をかいたり。
・夜は眠れなくなり疲れやすさを感じる。
・月経はこの1年間で2回あった。
→本症例は、更年期障害が疑われる。更年期とは、閉経の5年前から5年後までの約10年、つまり、生殖期から非生殖期への間の移行期のことをさすことが多い。閉経の年齢は人によって異なり、40歳代前半に迎える人もいれば、50歳代後半になっても迎えない人もいる。更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

1.× エストロゲン(卵胞ホルモン)は、卵巣機能の低下によって低下する。エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。
2.× プロラクチンとは、乳腺刺激ホルモンともいい、脳の下垂体から分泌され、妊娠すると高くなり乳腺を成長させ乳汁産生を行う。一般的に出産後など授乳期間中において、乳頭の刺激で高くなり乳汁を分泌する。
3.× プロゲステロン(黄体ホルモン)は、卵巣機能の低下によって低下する。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすい状態にする作用を持つ。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、性周期が規則的で健常な成人女性において、着床が起こる時期に血中濃度が最も高くなるホルモンである。着床が起こる時期とは、月経の黄体期である。黄体期は、排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期である。
4.〇 正しい。黄体形成ホルモン<LH>が、Aさんのホルモンで上昇している。黄体形成ホルモン とは、下垂体前葉から分泌され、卵巣に影響し排卵を起こす上で重要な役割を担う。また、思春期に増加し、精巣においてテストステロン、卵巣においてエストロゲンの分泌を増加させる。更年期によるプロゲステロンの分泌低下に働きかけるため上昇する。(ネガティブフィードバック)
5.〇 正しい。卵胞刺激ホルモン<FSH>が、Aさんのホルモンで上昇している。卵胞刺激ホルモンとは、卵胞期に増加する。卵胞刺激ホルモンは、脳下垂体前葉から分泌される。卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンを性腺刺激ホルモンと呼ぶ。卵胞刺激ホルモンは、卵巣の卵胞の成熟を促進し、エストロゲンの分泌を刺激する。更年期によるエストロゲンの分泌低下に働きかけるため上昇する。(ネガティブフィードバック)

ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック

【ネガティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンが低下する → ネガティブフィードバック
②エストロゲンレベルが低下したらゴナドトロピンが上昇する → ネガティブフィードバック

【ポジティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンも上昇する → ポジブフィードバック
※ポジブフィードバックは一定条件が整わないと発現しません。ヒトではストラジオールが 200 pg/ml 以上に達し、それが 48 時間以上持続した時のみ発現します。間脳や下垂体でどのような現象が起きているかは考慮する必要がありません。

(※一部引用:「ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック」より)

 

 

 

 

 

87 医療現場における暴力について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.精神科に特有のものである。
2.病室環境は誘因にならない。
3.目撃者は被害者に含まれない。
4.暴力予防プログラムに合わせて対処する。
5.発生を防止するためには組織的な体制の整備が重要である。

解答4/5

解説

1.× 精神科に「特有のもの」ではなく、あらゆる場面において発生する可能性がある。院内暴力は以前から精神科や救急外来で多いが、近年ではすべての診療科や介護関連施設でも増えている。ちなみに、特有とは、そのものだけが特別に備わっていること、特別にそれだけが所有すること、またそのさまを意味する。
2.× 病室環境も誘因になる。なぜなら、劣悪な病室環境の場合、ストレスとなるため。
3.× 目撃者も被害者に含まれる。なぜなら、医療現場における暴力を見たり聞いたりした人も、自責の念をもったりショックを受けたりと、心理的影響があるため。
4.〇 正しい。暴力予防プログラムに合わせて対処する。院内暴力の対策として対応マニュアルの作成が重要視されており、それに基づく対処が必要である。主に精神科医療領域の現場における暴力に対し、専門的な知識・技術に基づいた包括的な対処技能を習得することは有効である。
5.〇 正しい。発生を防止するためには、組織的な体制の整備が重要である。組織として暴力の発生予防に関する対策の方針を明確にし、対策マニュアルなどを作成することも必要である。例えば、CVPPP(包括的暴力防止プログラム)が該当する。

CVPPP(包括的暴力防止プログラム)とは?

CVPPP(包括的暴力防止プログラム)とは、病状により不穏な状態にある患者さんの気持ちに寄り添い、尊厳と安全を守りながら必要な医療を提供するためのプログラムである。医療の場で起こる暴力や攻撃的な患者に対して、適切に関われるかという治療的なプログラムである。主に精神科での対応として用いられるが、一般病院向けにアレンジした研修も開催されている。

 

 

 

 

 

88 精神医療におけるピアサポーターの活動について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.訪問活動は禁止されている。
2.活動には専門家の同行が条件となる。
3.ピアサポーター自身の回復が促進される。
4.精神保健医療福祉サービスの利用を終了していることが条件となる。
5.自分の精神障害の経験を活かして同様の体験をしている人を支援する。

解答3/5

解説

ピアサポートとは?

ピアサポーターとは、障害や疾病など同じような境遇にある人が、自身の体験をもとに相談や同じ仲間として社会参加や地域交流など問題の解決を支援する活動を行う。同じ立場の当事者同士が体験を語り合うことで支え合うことをいいその当事者のことである。

1.× 訪問活動は、禁止されていない。なぜなら、精神障害者の自宅に出向いて生活支援を行うため。ピアサポーターの具体的な活動として、がんサロンや認知症カフェなどのセルフヘルプグループ(自助会)、糖尿病や腎不全などの慢性疾患、後遺障がい、精神障がい、依存症、ひきこもり、犯罪被害者など、さまざまな苦しみを抱える当事者やその家族が対等な立場で支え合い、問題の解決を図ることである。
2.× 活動には、必ずしも専門家の同行が条件とならない。なぜなら、ピアサポーターの役割の一つに、専門家では提供できない当事者ならではの支援やサービスを提供することがあげられるため。
3.〇 正しい。ピアサポーター自身の回復が促進される。自らの体験に基づいて仲間の精神障害者を支援することで、ピアサポーター自身のさらなる回復が期待できる。
4.× 精神保健医療福祉サービスの利用を終了していることが、必ずしも条件となるわけではない。なぜなら、精神障害の症状は、変化しやすく長期化しやすいため。ちなみに、精神保健医療福祉サービスとは、精神疾患や障害のために日常生活や就労に支障があると認められ通院による精神医療を継続的に要する程度の症状の方を対象とした制度である。
5.〇 正しい。自分の精神障害の経験を活かして、同様の体験をしている人を支援する。ピアサポーターとは、障害や疾病など同じような境遇にある人が、自身の体験をもとに相談や同じ仲間として社会参加や地域交流など問題の解決を支援する活動を行う。同じ立場の当事者同士が体験を語り合うことで支え合うことをいいその当事者のことである。

 

 

 

 

 

89 6%A消毒液を用いて、医療器材の消毒用の0.02%A消毒液を1,500mL作るために必要な6%A消毒液の量を求めよ。
 ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。

解説:①.②mL
①: 0~9
② :0~9

解答①5.②0mL

解説

①希釈率を求める。

希釈率とは、液体・気体などの物質が、他の液体・気体によって薄められる割合である。
まず、6%を0.02%にするには、何倍希釈すればよいか?を考える。

原液の濃度 ÷ 希釈後の濃度
= 6 (%) ÷ 0.02(%)
= 300

つまり、300倍希釈すればよいということがわかる。

 

②希釈率から元の薬液量を求める。

300倍に希釈すると、1,500mLになると考えればよいので、

1,500(mL) ÷ 300
= 5.0mL

 

したがって、答え①.②mLは、①5、②0となる。

 

 

 

 

 

90 体重9.6kgの患児に、小児用輸液セットを用いて体重1kg当たり1日100mLの輸液を行う。
 このときの1分間の滴下数を求めよ。
 ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第1位を四捨五入すること。

解説:①②滴/分
①: 0~9
② :0~9

解答①4.②0

解説

①体重9.6㎏の患者に、必要な1日の輸液量を計算する。
9.6 ㎏ × 100 mL/㎏
960 mL

 

②1時間あたりの輸液量を計算する。
960 mL ÷ 24h
=40 mL/h

 

③1時間あたりの滴下数を計算する。小児用輸液セットは1mLで60滴である。
40 mL/h × 60滴/ml
=2,400 滴/h

 

④分間あたりの滴下数を計算する。
2,400 滴/h ÷ 60分
= 40 滴/分

 

したがって、したがって、答え①.②滴/分は、①4、②0となる。

 

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