第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午後56~60】

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56 閉経について正しいのはどれか。

1.月経は永久に停止する。
2.子宮機能の低下で生じる。
3.原発性無月経のことである。
4.月経が3か月みられない時点で閉経と判定する。

解答1

解説

閉経とは?

閉経とは、卵巣の活動性が次第に消失し、ついに月経が永久に停止した状態である。月経が来ない状態が12か月以上続いた時に、1年前を振り返って閉経としている。日本人の平均閉経年齢は約50歳であるが、個人差が大きく、早い人では40歳台前半、遅い人では50歳台後半に閉経を迎える。

1.〇 正しい。月経は永久に停止する。閉経とは、卵巣の活動性が次第に低下し(エストロゲン分泌低下)、ついには月経が永久に停止した状態である。なお、更年期は閉経の前後5年間を指す。日本人の平均閉経年齢は約50.5歳といわれている。
2.× 「子宮」ではなく卵巣の機能低下で生じる。エストロゲンとは、卵巣から分泌され、女性らしさをつくる作用を持つ。成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。
3.× 原発性無月経のことではない。原発性無月経とは、正常な成長と第二次性徴が認められる患者において15歳までに月経が起こらないことである。しかし、13歳までに月経が開始せず、思春期の徴候(例、何らかのタイプの乳房の発達)がみられない場合は、原発性無月経の評価を行うべきである。
4.× 月経が、「3か月」ではなく、12か月以上みられない時点で閉経と判定する。日本人の平均閉経年齢は約50歳であるが、個人差が大きく、早い人では40歳台前半、遅い人では50歳台後半に閉経を迎える。

月経の種類

無月経(月経がない状態)には①原発性、②続発性、③その他のものがある。

①原発性無月経:正常な成長と第二次性徴が認められる患者において15歳までに月経が起こらないことである。しかし、13歳までに月経が開始せず、思春期の徴候(例、何らかのタイプの乳房の発達)がみられない場合は、原発性無月経の評価を行うべきである。

②続発性無月経:規則的な月経周期の確立後に6カ月以上または月経周期で3周期以上の期間、月経がない状態である。しかし、以前の周期が規則的であった患者では月経が3カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われ、以前の周期が不規則であった患者では月経が6カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われる。

③その他:解剖学的原因(妊娠を含む)、慢性無排卵、卵巣不全など

(※参考:「無月経」MSDマニュアルプロフェッショナル版様より)

 

 

 

 

 

57 正常な胎児の分娩機転について正しいのはどれか。

1.骨盤内嵌入時、胎児の背中は母体の背側にある。
2.胎児の前頭部が先進する。
3.胎児の顔は母体の背側を向いて娩出される。
4.肩甲横径が骨盤の横径に一致する方向で娩出される。

解答3

解説

1.× 骨盤内嵌入時(第1回旋)、胎児の背中は「母体の背側」ではなく左右いずれかに位置している。嵌入とは、児頭大横径が骨盤入口部を超えて下降することをいう(※読み:かんにゅう)。正常な第1回旋では、第一胎向か第二胎向にある。
2.× 胎児は、「前頭部(大泉門)」ではなく後頭部(小泉門)が先進する。後頭位(反屈位)とは、小泉門が先進する状態である。一方、前頭位とは、大泉門が先進する状態である。
3.〇 正しい。胎児の顔は、「母体の背側」を向いて娩出される。つまり、第3回旋において、先進する後頭部は、母体の腹側(恥骨側)に回る。
4.× 肩甲横径は、骨盤の「横径」ではなく縦径に一致する方向で娩出される。つまり、第4回旋において、母親に対し児は横向きで出てくる。なぜなら、骨盤出口部は縦径が長いため。胎児の肩甲の長軸である横径を、母の骨盤の縦径に一致させて娩出する。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

 

 

 

 

58 母子保健施策とその対象の組合せで正しいのはどれか。

1.育成医療:結核児童
2.養育医療:学齢児童
3.健全母性育成事業:高齢妊婦
4.養育支援訪問事業:特定妊婦

解答4

解説

肺結核とは?

肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

1.× 育成医療の対象は、「結核児童」ではなく身体に障害のある児童である。育成医療とは、『障害者総合支援法』の自立支援医療のひとつである。身体に障害のある児童又はそのまま放置すると将来障害を残すと認められる疾患がある児童(18歳未満)で、確実な治療効果が期待できる方が指定医療機関において医療を受ける場合に給付が受けられる制度である。
2.× 養育医療は、「学齢児童」ではなく入院治療を必要とする対象者に該当する乳児(出生時体重が2000g以下だった乳児、低体温、強い黄疸などの症状を示す乳児)である。養育医療とは、入院治療を必要とする対象者に該当する乳児(出生時体重が2000g以下だった乳児、低体温、強い黄疸などの症状を示す乳児)に対して、健やかに成長できるよう、その養育に必要な医療を給付するものである。 指定医療機関において、診察・医学的処置・治療等の給付が受けられる。ちなみに、学齢児童とは、保護者が小学校に就学させる義務のある者のこと(6~12歳)のこと。
3.× 健全母性育成事業は、「高齢妊婦」ではなく、「思春期の男女(保護者を含む)」である。健全母性育成事業とは、思春期における問題及び対応が将来の結婚生活や健康に重大な影響を与えることに鑑み、思春期の男女を対象として、思春期に特有の医学的問題等の相談に応じるとともに、母性保健知識の普及を行うことにより母性の健康保持増進に資することを目的とする事業のことである。
4.〇 正しい。養育支援訪問事業は、要支援児童や特定妊婦である。福祉法第6条5項に「養育支援訪問事業とは、厚生労働省令で定めるところにより、乳児家庭全戸訪問事業の実施その他により把握した保護者の養育を支援することが特に必要と認められる児童(第八項に規定する要保護児童に該当するものを除く。以下「要支援児童」という。)若しくは保護者に監護させることが不適当であると認められる児童及びその保護者又は出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦(以下「特定妊婦」という。)(以下「要支援児童等」という。)に対し、その養育が適切に行われるよう、当該要支援児童等の居宅において、養育に関する相談、指導、助言その他必要な支援を行う事業をいう」と規定されている(※一部引用「福祉法第6条5項」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、特定妊婦とは、妊娠中から家庭環境におけるハイリスク要因を特定でき、出産前の支援が必要な妊婦のことである。ハイリスク要因には、収入基盤の不安定さ、親が知的・精神的障害者、若年の妊婦、妊婦健康診査未受診、妊娠届の未提出などがある。

 

 

 

 

 

59 精神保健活動における二次予防に該当するのはどれか。

1.地域の子育てサークルへの支援
2.休職中のうつ病患者への復職支援
3.企業内でのメンタルヘルス講座の開催
4.学校を長期間欠席している児童への家庭訪問

解答4

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。

一次予防:「生活習慣を改善して健康増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。

(※健康日本21において)

1.× 地域の子育てサークルへの支援/企業内でのメンタルヘルス講座の開催は、一次予防である。
2.× 休職中のうつ病患者への復職支援は、三次予防である。
4.〇 正しい。学校を長期間欠席している児童への家庭訪問は、二次予防である。なぜなら、長期間欠席しているということは、何らかの健康問題を抱えている可能性(精神的な疾患にまで悪化していないという前提)があり、その児童へかかわることによって問題の早期発見・早期治療につながるため。

 

 

 

 

60 統合失調症の幻覚や妄想に最も関係する神経伝達物質はどれか。

1.ドパミン
2.セロトニン
3.アセチルコリン
4.ノルアドレナリン

解答1

解説

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

1.〇 正しい。ドパミンは、統合失調症の幻覚や妄想に最も関係する神経伝達物質である。ドパミンとは、運動調節や意欲・学習などに関わる脳内の神経伝達物質である。脳内のドパミン量が不足するとパーキンソン病になり、過剰になると統合失調症になると考えられている。 統合失調症の治療薬は、ドパミンD2受容体に結合して不活性化させる。
2.× セロトニンは、うつ病と関連が深い神経伝達物質である。脳内だけに分泌される神経伝達物質で、交感神経を刺激し、血圧を上昇させる作用がある。ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある伝達物質でもある。
3.× アセチルコリンは、パーキンソン病との関連が深い神経伝達物質である。アセチルコリンは、副交感神経や運動神経に働き、血管拡張、心拍数低下、消化機能亢進、発汗などを促す。また、学習・記憶、睡眠などに深くかかわっている。パーキンソン病では脳内のドーパミンが不足して脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、相対的にアセチルコリンの活性が強くなって運動機能の障害が起こす。
4.× ノルアドレナリンは、うつ病と関連が深い神経伝達物質である。うつ病は、この神経伝達物質のうちセロトニンノルアドレナリンという物質が減少してしまい、情報がスムーズに伝わらなくなる。セロトニンやノルアドレナリンは意欲や活力を伝える働きをしているため、この情報の伝達がスムーズにできなくなると憂うつや意欲の低下など、うつ病の症状が現れるようになる。

ノルアドレナリンとは?

ノルアドレナリンとは、激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質である。ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態となる。副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらす。

 

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