第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午後61~65】

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61 精神科デイケアの目的で最も適切なのはどれか。

1.陽性症状を鎮静化する。
2.家族の疾病理解を深める。
3.単身で生活できるようにする。
4.対人関係能力の向上を目指す。

解答4

解説

精神科デイケアとは?

精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。病院内に設置されていることが多い。目標に向けて提供するリハビリテーションは変わるが、おもにレクリエーションや社会生活技能訓練(SST)などを行う。

1.× 陽性症状を鎮静化より優先度が高いものが他にある。なぜなら、陽性症状を鎮静化は、主に薬物療法で行われるため。例えば、統合失調症の陽性症状とは、幻覚、妄想、自我障害など、患者さんが体験するものである。精神科デイケアでは、多くの人が集まる場所であり、ストレスと刺激にさらされる可能性がある。
2.× 家族の疾病理解を深めるより優先度が高いものが他にある。なぜなら、家族の疾病理解を深めることは、主に心理教育プログラムで行われるため。基本的に、精神科デイケアが対象にしているのは患者本人であるため、家族へのアプローチは難しい。ちなみに、心理教育プログラムとは、病気の概要や治療方法・経過を知ることで病気に対する理解を深め、今後の日常生活での対処法、再発防止について学ぶものである。
3.× 単身で生活できるようにするより優先度が高いものが他にある。なぜなら、精神科デイケアの利用者の目的はさまざまであるため。精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。一概に利用者全員「単身で生活できるようにする」ことを目的としていない。
4.〇 正しい。対人関係能力の向上を目指す。精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。病院内に設置されていることが多い。目標に向けて提供するリハビリテーションは変わるが、おもにレクリエーション社会生活技能訓練(SST)などを行う。ちなみに、社会生活技能訓練(SST)は、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つ(認知行動療法の一つ)である。精神科における強力な心理社会的介入方法である。患者が習得すべき行動パターンを治療者(リーダー)が手本として示し、患者がそれを模倣して適応的な行動パターンを学ぶという学習理論に基づいたモデリング(模倣する)という技法が用いられる。

 

 

 

 

 

62 健康保険法による訪問看護サービスで正しいのはどれか。

1.サービス対象は75歳以上である。
2.訪問看護師が訪問看護計画を立案する。
3.要介護状態区分に応じて区分支給限度基準額が定められている。
4.利用者の居宅までの訪問看護師の交通費は、診療報酬に含まれる。

解答2

解説

健康保険法とは?

訪問看護は、『介護保険法』、『健康保険法』、『高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)』のいずれかの適応で利用できる。ちなみに、健康保険法とは、労働者及びその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する医療保険給付等について定めた日本の法律である。

1.× サービス対象は、「75 歳以上」ではなく全年齢対象である。健康保険法による訪問看護サービスの対象者は、疾病や障がいなどがあり、居宅で療養をしながら生活をされている方で、主治医が訪問看護を必要と認めた方である。小児から高齢者まで、年齢等を問わず訪問看護を必要とする全ての方を対象である。ご本人だけでなく、ご家族の介護相談や健康相談にも応じる。ちなみに、要支援者または要介護者は、原則、介護保険が適用される(※参考:「訪問看護とは(医療・福祉関係者向け)」公益財団法人 日本訪問看護財団HPより)。
2.〇 正しい。訪問看護師が訪問看護計画を立案する主治医からの訪問看護指示書を受けて、訪問看護師は、利用者のニーズに応じて訪問看護計画を立案し、利用者の健康状態の管理や医療処置の提供などのサービスを提供する。
3.× 要介護状態区分に応じて区分支給限度基準額が定められているのは、『健康保険法』ではなく、『介護保険法』による訪問看護である。介護保険法とは、1997年12月に公布された法律で、40歳以上で介護が必要になった人の自立生活を支援するために、国民が負担する保険料や税金を財源として、日常生活の行為にかかるさまざまな介助やリハビリなどのサービスにかかる給付を行うことを目的にしている。加齢に伴って生じる心身の変化による疾病等により介護を要する状態となった者を対象として、その人々が有する能力に応じ、尊厳を保持したその人らしい自立した日常生活を営むことができることを目指している。
4.× 利用者の居宅までの訪問看護師の交通費は、診療報酬に「含まれず」保険適用外である。なぜなら、診療報酬とは、医師や看護師などから受ける医療行為に対して、保険制度が支払う料金であるため。

訪問看護とは?

訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。

 

 

 

 

63 Aさん(75歳、男性)。1人暮らし。慢性閉塞性肺疾患(COPD)のため、2年前から在宅酸素療法を開始し、週に2回の訪問看護を利用している。訪問看護師はAさんから「最近、洗濯物を干すときに息が苦しくて疲れるが、自分でできることは続けたい」と相談された。
 Aさんの労作時の息苦しさを緩和する方法について、訪問看護師が行う指導で適切なのはどれか。

1.労作時は酸素流量を増やす。
2.呼吸は呼気より吸気を長くする。
3.動作に合わせて短速呼吸をする。
4.腕を上げるときは息を吐きながら行う。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(75歳、男性、1人暮らし、慢性閉塞性肺疾患
・2年前:在宅酸素療法を開始
・週2回:訪問看護を利用。
・Aさん「洗濯物を干すときに息が苦しくて疲れる」と。
→慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。

(図引用:「息切れを増強させる4つの動作のイラスト(慢性呼吸器疾患)」看護roo!看護師イラスト集)

1.× 労作時は酸素流量を増やす必要はない。なぜなら、医師の指示なく酸素流量を増加すると、CO2ナルコーシスを引き起こす恐れがあるため。必要があれば、必ず主治医へ報告し、指示を仰ぐ。ちなみに、CO2ナルコーシスとは、呼吸の自動調節機構に異常が生じ、肺胞の換気が不十分となった場合に二酸化炭素(CO2)が体内に蓄積され、意識障害などの中枢神経症状が現れる病態である。慢性閉塞性肺疾患の患者は、慢性的に血中CO2濃度が上昇しており、体内のCO2濃度を感知する中枢化学受容体での感受性が鈍くなっている。したがって、普段の呼吸運動は低酸素を感知している酸素の受容体(末梢化学受容体)からの刺激によって起こっている。しかし、高濃度の酸素を投与されると酸素の受容体は体内に酸素が十分にあると判断し、呼吸中枢を抑制して呼吸運動が減弱する。その結果、体内に高度のCO2蓄積が起こり、意識障害などの中枢神経症状が起こる。
2.× 逆である。呼吸は、「呼気より吸気」ではなく、吸気より呼気を長くする。特に口すぼめ呼吸を指導する。口すぼめ呼吸とは、呼気時に口をすぼめて抵抗を与えることにより気道内圧を高め、これにより末梢気管支の閉塞を防いで肺胞中の空気を出しやすくする方法である。鼻から息を吸い、呼気は吸気時の2倍以上の時間をかけて口をすぼめてゆっくりと息を吐く。これにより末梢気道の閉塞を防いで肺胞中の空気を出しやすくなる。①気道の虚脱を抑える、②呼吸数の減少と一回換気量の増大、③動脈血ガス所見の改善、④換気血流の不均等分布の改善などの効果がある。
3.× 動作に合わせて短速呼吸をする必要はない。※短息呼吸の漢字の間違いと思われる。短息呼吸とは、「ハッハッハ」と小刻みに短くする呼吸である。出産に際して行われるものが代表的である。慢性閉塞性肺疾患では、吸気より呼気を長くしながら動作をすることが望ましい。例えば、歩行の場合、歩き出す前に息を吸い、4歩で「息を吐き」、2歩で「息を吸う」などである。
4.〇 正しい。腕を上げるときは息を吐きながら行う。なぜなら、腕を上げる動作は、胸郭の動きが制限され、息苦しくなりやすいため。息を吐きながらゆっくりと動作を行うよう指導する。また、本症例は、「洗濯物を干すときに息が苦しくて疲れる」と言っていることから、どのように洗濯物を干しているのか観察する必要がある。立って行っている場合は座って行える環境にしたり、洗濯竿の高さを低くすれば、手を高く上げずに済む。

 

 

 

 

 

64 Aさん(80歳、男性)は、20年前に大腸癌でストーマを造設し、現在週1回の訪問看護を利用している。訪問看護師は、訪問時にAさんから「2日前から腹痛がある」と相談を受けた。Aさんのバイタルサインは、体温36.4 ℃、呼吸数24/分、脈拍84/分、血圧138/60mmHgである。
 訪問看護師がAさんの腹痛をアセスメントするための情報で最も優先度が高いのはどれか。

1.排便の有無
2.身体活動量
3.食物の摂取状況
4.ストーマ周囲の皮膚の状態

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(80歳、男性)
20年前大腸癌でストーマを造設
・現在:週1回の訪問看護を利用。
・Aさん「2日前から腹痛がある」と。
・体温36.4 ℃、呼吸数24/分、脈拍84/分、血圧138/60mmHg。
→20年前にストーマを造設した人が、最近腹痛を訴えた場合、①腸閉塞、②腸炎、③腸重積などが考えられる。①腸閉塞は、ストーマ周辺の腸管が狭くなることにより、腸内容物が流れにくくなるため腹痛が発生することがある。また、吐き気や嘔吐、腹部膨満感、便秘などの症状も現れる場合がある。②腸炎は、ストーマ周辺の皮膚の炎症や感染が原因で、腹痛が発生することがある。腹痛のほか、発熱、下痢、脱水症状、発疹などの症状も現れる場合がある。腸重積は、ストーマ周辺の腸管がねじれたり、ひだが折り畳まれたりして、腸内容物が通らなくなる状態が生じることがある。腹痛のほか、吐き気、嘔吐、腹部膨満感、便秘などの症状が現れる場合がある。

1.〇 正しい。排便の有無が、最も優先度が高い。20年前にストーマを造設した人が、最近腹痛を訴えた場合、①腸閉塞、②腸炎、③腸重積などが考えられる。①腸閉塞は、ストーマ周辺の腸管が狭くなることにより、腸内容物が流れにくくなるため腹痛が発生することがある。また、吐き気や嘔吐、腹部膨満感、便秘などの症状も現れる場合がある。②腸炎は、ストーマ周辺の皮膚の炎症や感染が原因で、腹痛が発生することがある。腹痛のほか、発熱、下痢、脱水症状、発疹などの症状も現れる場合がある。腸重積は、ストーマ周辺の腸管がねじれたり、ひだが折り畳まれたりして、腸内容物が通らなくなる状態が生じることがある。腹痛のほか、吐き気、嘔吐、腹部膨満感、便秘などの症状が現れる場合がある。
2~4.× 身体活動量/食物の摂取状況/ストーマ周囲の皮膚の状態より優先度が高いものが他にある。なぜなら、腹痛の原因を探る必要があるため。Aさんのバイタルサインは正常範囲内と考えられるが、20年前にストーマを造設した人が、最近腹痛を訴えた場合、①腸閉塞、②腸炎、③腸重積などが考えられる。まずは排便の有無を優先されるべきである。

イレウス(腸閉塞)とは?

 イレウス(腸閉塞)とは、何らかの原因により、腸管の通過が障害された状態である。主に、①機械的イレウス(腸閉塞とも呼び、腸内腔が機械的に閉塞されて起こる)、②機能的イレウス(腸管に分布する神経の障害により腸内容が停滞する)に大別される。

①機械的イレウスには、器質的異常を伴うものをいい、単純性イレウスと絞扼性(複雑性)イレウスに分類される。機械的イレウスは血流障害の有無によって、さらに単純性イレウスと複雑性イレウスに分類される。絞扼性(複雑性)イレウスは、腸間膜血行の停止により腸管壊死を伴うイレウスであり、急激に病状が悪化するため緊急に手術を要する。

②機能的イレウスとは、器質的な異常がなく、腸管の運動麻痺や痙攣により腸管の内容物が停滞することである。長期臥床、中枢神経疾患、腹膜炎、偽性腸閉塞が原因となることが多い。麻痺性イレウスと痙攣性イレウスに分けられる。

 

 

 

 

65 Aさん(70歳、男性)。1人暮らし。脳出血の手術後、回復期リハビリテーション病棟に入院中である。神経因性膀胱のため、膀胱留置カテーテルを挿入している。要介護2で、退院後は看護小規模多機能型居宅介護を利用する予定である。
 退院後にAさんが行う膀胱留置カテーテルの管理で適切なのはどれか。

1.蓄尿バッグに遮光カバーをかぶせる。
2.カテーテルは大腿の内側に固定する。
3.外出前に蓄尿バッグの尿を廃棄する。
4.カテーテルと蓄尿バッグの接続は外さない。

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(70歳、男性、1人暮らし、脳出血手術後
・回復期リハビリテーション病棟に入院中。
・神経因性膀胱:膀胱留置カテーテルを挿入。
要介護2(身の回りの管理が困難で、生活をするうえで見守りや介助が必要)
・退院後の予定:看護小規模多機能型居宅介護を利用。
→神経因性膀胱とは、排尿に関与する神経の障害によって膀胱機能に異常が生じた病態である。膀胱留置カテーテルとは、尿道に留置する方法である。長期の留置により、膀胱が膨らみにくくなるため、他の方法が選択できるのであれば、長期留置は避けるべきである。

1.× 蓄尿バッグに遮光カバーをかぶせる優先度は低い。なぜなら、本症例から「尿が見られなくない」といった希望は聞かれていないため。ちなみに、蓄尿バッグにカバーをかける目的は、消臭や目隠しである。
2.× カテーテルは、「大腿の内側」ではなく、下腹部に固定する。なぜなら、男性の場合、大腿部に固定するとカテーテルにより尿道損傷を起こすおそれがあるため。一方、女性の場合は太ももに固定する。男女ともに、カテーテルにゆとりがないと、体動のたびにカテーテルが引っ張られて、抜去しやすくなったり、尿道粘膜が摩擦によって損傷される危険性がある。女性の場合、膣から離すことで、膣分泌物によるカテーテル汚染を防ぐ。
3.〇 正しい。外出前に蓄尿バッグの尿を廃棄する。なぜなら、蓄尿量が多いと移動の妨げや尿の重みで抜去につながるおそれがあるため。また、本症例は要介護2であるため、外出先で蓄尿バックの廃棄を行うより、普段慣れているスタッフや環境で行った方が安全である。ちなみに、蓄尿バッグの尿の破棄は、12時間ごとまたは蓄尿バッグの8割ほどどの尿がたまったときに実施する。頻回な蓄尿バッグの開放は、かえって感染リスクにつながる。
4.× 普段、カテーテルと蓄尿バッグの接続は外さないが、留置カテーテルの閉塞などのトラブルにより外すこともある。しかし、普段は、カテーテルと蓄尿バッグの接続を不用意に外して接続部が不潔になると、逆行性の尿道感染をおこすおそれがあるため、外さないように指導する必要がある。つまり、状況に応じて外すことも考えられるため、今回の選択肢の中から考えると優先度が高いものが他にある。

 

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