第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午後81~85】

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81 社会福祉士及び介護福祉士法に基づき、介護福祉士が一定の条件を満たす場合に行うことができる医療行為はどれか。

1.摘便
2.創処置
3.血糖測定
4.喀痰吸引
5.インスリン注射

解答4

解説

1~3.5.× 摘便/創処置/血糖測定/インスリン注射は、医療行為であるため、介護福祉士が代わりに実施することは認められていない。ただ、患者本人が行う場合は良い。ちなみに、医療行為とみなされない医療補助行為については、腋窩・外耳道体温測定、自動血圧測定、パルスオキシメーターの装着、軽微な傷の手当などが挙げられている。
4.〇 正しい。喀痰吸引は、介護福祉士が一定の条件を満たす場合に行うことができる医療行為である。医療行為とは、医師や医師の指示を受けた看護師等しかすることができない(業務独占)のが原則である。例外として、在宅患者のために一定の介護福祉士などが厚生労働省令で定める医療行為ができる。平成24年4月から『社会福祉士及び介護福祉士法』の一部改正によって、介護福祉士または喀痰吸引等研修を受けた介護職員等が医師の指示のもと、喀痰吸引等の医療行為を実施できることになった。

介護福祉士とは?

介護福祉士とは、社会福祉士及び介護福祉士法を根拠とする国家資格である。身体が不自由な高齢者、身体もしくは精神に障害がある方に対し、食事や入浴、排泄の介助など日常生活を営むためのサポートをおこなう。介護福祉士の喀痰吸引について、平成27年度以降、資格取得者が社会福祉士及び介護福祉士法に基づき行えるようになった。しかし、それ以前であっても介護職員等と同様に喀痰吸引等研修を受けることにより、認定特定行為業務従事者として実施可能とされた。なお、この改正で認められた医療行為は、口腔内の喀痰吸引・鼻腔内の喀痰吸引・気管カニューレ内部の喀痰吸引・胃痩または腸痩による経管栄養・経鼻経管栄養である。

 

 

 

 

 

82 精神障害者のリカバリ(回復)について正しいのはどれか。

1.ストレングスモデルが適用される。
2.目標に向かう直線的な過程である。
3.精神疾患が寛解した時点から始まる。
4.精神障害者が1人で達成を目指すものである。
5.精神障害者が病識を獲得するまでの過程である。

解答1

解説

アルコール依存症の治療

 アルコール依存症の集団精神療法では、自己の飲酒問題を認め、断酒の継続を行うことが治療上極めて有効である。自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていく。断酒継続のための自助グループ(当事者グループ)としてよく知られているものに、断酒会とAA(Alcoholics Anonymous:アルコール依存症者匿名の会)がある。断酒会は日本独自のもので、参加者は実名を名乗り、家族の参加も可能である。AAはアメリカで始まり、世界各地にある。匿名で参加し、家族は原則として同席しない。

1.〇 正しい。ストレングスモデルが適用される。ストレングスモデルとは、患者がもつ性格・技能・環境・関心などのよい点(ストロングポイント)に着目して、それを伸ばし、回復に向かわせるような取り組みを行うことをいう。ストレングスモデルが発展した背景として、 精神障害者は、属する社会からの継続的な抑圧、支援するはずの専門家の行為によっての「抑圧」を受
け、その「抑圧」は同情や思いやりによって生じていた。そのため、患者自身や取り巻く環境の強みに焦点を当てて患者の生活をサポートしていこうという考え方(ストレングスモデル)が発展した。
2.× 目標に向かう直線的な過程とはいえない。なぜなら、精神疾患は改善・増悪を繰り返しながら、長期にわたって携わることが多いため。
3.× 精神疾患が「寛解した時点」ではなく、寛解前から始まる。寛解とは、病気の症状が軽くなっている状態である。リカバリでは、症状の有無ではなく、患者が生きがい自尊心を取り戻して生活していけるかどうかが重要である。
4.× 精神障害者が、「1人」ではなくチーム(本人を含め医療従事者や家族)で達成を目指すものである。時には、自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていく。
5.× 精神障害者が、「病識を獲得するまで」ではなく、「自尊心を取り戻し希望をもって主体的に日常・社会生活が行えるように回復するまで」の過程である。

 

 

 

 

83 健常な成人の心臓について、右心室と左心室で等しいのはどれか。2つ選べ。

1.単位時間当たりの収縮の回数
2.拡張時の内圧
3.収縮時の内圧
4.心室壁の厚さ
5.1回拍出量

解答1・5

解説

(※図引用:「Medical Note 様HPより」)

1.〇 正しい。単位時間当たりの収縮の回数は、右心室と左心室で等しい。なぜなら、右心室も左心室もほぼ同時に収縮するため。ちなみに、右心室は肺循環を、左心室は体循環を形成する。全身に血液を循環させるため、左心室のポンプ作用は右心室と比べ強力である。
2~3.× 拡張時の内圧/収縮時の内圧は、左心室の方が右心室より圧力が高い。なぜなら、左心室は肺以外の体全体に血液を送り出す体循環を担い、より大きな圧力を必要とするためである。
4.× 心室壁の厚さは、左心室の方が右心室より厚い。なぜなら、左心室は肺以外の体全体に血液を送り出す体循環を担い、より大きな圧力を必要とするためである。つまり、左心室壁は、強力なポンプ作用(心筋力)を生み出す必要があるため。
5.〇 正しい。1回拍出量は、右心室と左心室で等しい。なぜなら、右心室と左心室はそれぞれ肺動脈と大動脈に血液を送り出すが、その量が同じでないと、どこかの部位に貯留することになるため。

 

 

 

 

 

84 難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)において国が行うとされているのはどれか。2つ選べ。

1.申請に基づく特定医療費の支給
2.難病の治療方法に関する調査及び研究の推進
3.指定難病に係る医療を実施する医療機関の指定
4.支給認定の申請に添付する診断書を作成する医師の指定
5.難病に関する施策の総合的な推進のための基本的な方針の策定

解答2・5

解説

1.× 申請に基づく特定医療費の支給は、「国」ではなく、都道府県が行う。これは5条にて、「(特定医療費の支給)都道府県は、支給認定を受けた指定難病の患者が、支給認定の有効期間内において、特定医療のうち、指定特定医療を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該支給認定を受けた指定難病の患者又はその保護者に対し、当該指定特定医療に要した費用について、特定医療費を支給する」と記載されている(※参考:「難病法」e-GOV法令検索様HPより)。

2.〇 正しい。難病の治療方法に関する調査及び研究の推進は、国が行う。これは27条にて、「(調査及び研究の推進)国は、難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保を図るための基盤となる難病の発病の機構、診断及び治療方法に関する調査及び研究並びに難病の患者の療養生活の質の維持向上を図るための調査及び研究を推進するものとする」と記載されている(※参考:「難病法」e-GOV法令検索様HPより)。
3.× 指定難病に係る医療を実施する医療機関の指定は、「国」ではなく、都道府県知事が行う。これは5条に規定されている。
4.× 支給認定の申請に添付する診断書を作成する医師の指定は、「国」ではなく、都道府県知事が行う。これは6条に規定されている。
5.〇 正しい。難病に関する施策の総合的な推進のための基本的な方針の策定は、国(厚生労働大臣)が行う。これは第4条に規定されている。

『難病法』とは?

『難病法』とは、難病の患者に対する医療などに関する施策を定め、良質・適切な医療の確保、療養生活の質の維持向上を図ることを目的としている。この目的に沿って定められている8つの基本方針は以下のとおりである。

【難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針】
①医療等の推進の基本的な方向
②医療を提供する体制の確保に関する事項
③医療に関する人材の養成に関する事項
④調査及び研究に関する事項
⑤医療のための医薬品及び医療機器に関する研究開発の推進に関する事項
⑥療養生活の環境整備に関する事項
⑦医療等と福祉サービスに関する施策、就労の支援に関する施策その他の関連する施策との連携に関する事項
⑧その他、医療等の推進に関する重要事項

【難病と指定難病の定義】
・発病の機構が明らかでない。
・治療方法が確立していない。
・希少な疾病である。
・長期の療養を必要する。
【指定難病】
・患者数が一定の人数に達しない。
・客観的な診断基準が確立してない。

【医療費助成制度について】
①都道府県・指定都市の窓口に申請する。
②医療費助成の対象者:指定難病に罹患し、重症度分類等による病状の程度が一定以上であるとして認定を受けた者。
③患者の自己負担は2割で、自己負担上限額(月額)が設定されている。
④自己負担上限額は、応能負担(世帯の所得に応じて設定)されている。
⑤医療費助成は、都道府県・指定都市が指定する指定医療機関が行う特定医療に対して行われる。
⑥特定医療費の支給に要する費用は、都道府県と国が50%ずつ負担している。
(※参考「指定難病の要件について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

85 急性期の患者の特徴で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.症状の変化が乏しい。
2.エネルギー消費量が少ない。
3.身体の恒常性が崩れやすい。
4.生命の危機状態になりやすい。
5.セルフマネジメントが必要となる。

解答3・4

解説

急性期とは?

急性期とは、症状が急に現れる時期、病気になり始めの時期である。急性期は、全身の生体反応と機能低下が起こり、合併症が発現するおそれがある。このため、回復過程における経過を予測して系統的な観察を行い、正常範囲に経過しているのか、それとも逸脱して悪化していくおそれがあるのかを判断し、異常を察知すれば早期に対処する必要がある。

1.× 症状の変化が「乏しい」のではなく、短時間のうちに大きく変化しやすい。なぜなら、急性期は、身体への侵襲により、痛みや発熱、呼吸困難感などのさまざまな症状が起こるため。
2.× エネルギー消費量が「少ない」のではなく、増加する。なぜなら、急性期は、侵襲やストレスに対し交感神経が優位になりやすく、呼吸や循環、代謝などが亢進しエネルギー消費量が増大しやすいため。
3~4.〇 正しい。身体の恒常性が崩れやすい/生命の危機状態になりやすい。なぜなら、症状が変化しやすい急性期において、生体は限界を超えた侵襲が加わり、循環機能や呼吸機能など生命の維持に必要な身体機能に支障をきたしやすいため。ちなみに、恒常性とは、温度や光などのさまざまな外部からの刺激を受けても、生存のために血圧・体温など体内の環境がほぼ一定に維持されるシステムのことである。ホメオスタシスともいう。
5.× セルフマネジメントが必要となるのは、「急性期」ではなく慢性期である。セルフマネジメントとは、直訳すると「自己管理」となる。 医療の分野では、慢性疾患の患者自身が、自分の疾患や治療を理解した上で、体調管理や感情のコントロールを行うことをいう。

 

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