第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前46~50】

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46 がん診療連携拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」の業務はどれか。

1.就労の斡旋
2.がん検診の実施
3.がんについての情報提供
4.セカンドオピニオン外来の開設

解答3

解説

がん相談支援センターとは?

がん相談支援センターとは、全国にある、どなたでも無料・匿名で利用できるがんに関する相談窓口である。全国の「がん診療連携拠点病院」や「小児がん拠点病院」「地域がん診療病院」に設置されている。主な業務内容として、①がんの病態や治療に関する情報提供、②治療可能な地域の医療機関に関する情報収集や提供、③がんの療養上の相談、④セカンドオピニオンの提示を受けることが可能な医師の紹介などである。

(※参考:「がん相談支援センターとは」がん情報サービス様HPより)

1.× 就労の斡旋は、ハローワーク(公共職業安定所)が行う。ハローワーク(公共職業安定所)とは、就職困難者の支援など地域の総合的雇用サービス機関であり主な業務として、①職業相談、②職業紹介、③求人確保、④事業主に対する助言・窓口業務、⑤就職後の障害者に対する助言・指導 などがあげられる。
2.× がん検診の実施は、『健康増進法(第19条の2)』に基づき、健康増進事業として市町村で行われる。 健康手帳の交付や、健康相談、健康教育、訪問指導、がん検診や肝炎ウイルス検診が行われている。ちなみに、健康増進法とは、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。
3.〇 正しい。がんについての情報提供は、がん診療連携拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」の業務である。がん相談支援センターとは、全国にある、どなたでも無料・匿名で利用できるがんに関する相談窓口である。全国の「がん診療連携拠点病院」や「小児がん拠点病院」「地域がん診療病院」に設置されている。主な業務内容として、①がんの病態や治療に関する情報提供、②治療可能な地域の医療機関に関する情報収集や提供、③がんの療養上の相談、④セカンドオピニオンの提示を受けることが可能な医師の紹介などである。(※参考:「がん相談支援センターとは」がん情報サービス様HPより)
4.× セカンドオピニオン外来の「開設」ではなく紹介である。また、患者には医療や医療サービスを自由に選択する権利、自由にセカンドオピニオンを受けることができる権利を有している。ちなみに、セカンドオピニオンとは、診断や治療について、主治医以外の医師の意見を求めることを指す。主治医の意見に不安や悩みを抱えている患者に提案することが多い。

 

 

 

 

 

47 胸腔ドレーン挿入中の患者の看護で適切なのはどれか。

1.ミルキングは禁忌である。
2.持続的に陽圧となっているか観察する。
3.ドレーンチューブに触れた後は手指衛生を行う。
4.ドレーンバッグは挿入部より高い位置に設置する。

解答3

解説

胸腔ドレーンとは?

胸腔ドレーンは、胸腔内に貯留した空気や胸水などの液体を除去する治療法である。疾患や手術によって胸腔内に貯留した液体(血液、胸水、膿など)や気体を胸腔外へ排除することで、肺の拡張を促すこと、および胸腔内の情報を得ることができる。液体や気体が胸腔内に溜まると、肺が膨らまなくなり、換気が十分に行われない。

 

1.× ミルキングは、「禁忌」ではなく適応である。ミルキングとは、たまった排液の排出を促すことで、ドレーンチューブの閉塞を防ぐために、定期的にチューブに陰圧をかけ、たまった排液の排出を促すことをいう。ただし、ドレーン全体をミルキングすることにより、胸腔内を一過性に過陰圧状態にする危険性があるため、日常業務としてのミルキングは行わない。
2.× 持続的に、「陽圧」ではなく陰圧となっているか観察する。肺自体は表面の肺胸膜の弾性のために常に縮小しようとするため、胸腔の中は常に陰圧である(安静時で約-5cmH2O)。ドレナージは、持続的に陰圧(-10~15cmH2O)をかけて胸腔内に貯留したものを吸引する仕組みである。ドレーン刺入部の皮膚トラブルやドレーンチュー ブの屈曲・ずれなどがないか観察する。水封室を確認し、陰圧や呼吸性移動、気泡(エア リーク)の状態などをチェックする。
3.〇 正しい。ドレーンチューブに触れた後は手指衛生を行う。なぜなら、感染予防のため。処置の前後には手指衛生を行う。逆行性感染だけでなく、合併症である①挿入時の肋間動静脈・肋間神経損傷(血管損傷すれば出血、神経損傷すれば疼痛、感覚異常)、②挿入時先端による肺や心臓の損傷、③ドレーンからの逆行性感染、膿胸が挙げられる。
4.× ドレーンバッグは挿入部より、「高い」ではなく低い位置に設置する。なぜなら、ドレーンバッグは挿入部より高い場合、胸水が流れ込み膿胸や排液の逆流による逆行性感染が生じやすくなるため。また、ドレナージボトルが転倒すると、水封室の水が移動して外気が胸腔に逆流し、肺虚脱や逆行性感染の危険性もある。

 

 

 

 

48 慢性心不全患者の生活指導で、心臓への負担を少なくするのはどれか。

1.肺炎球菌ワクチン接種の回避
2.蛋白質を制限した食事
3.食直後の散歩
4.排泄後の休息

解答4

解説

慢性心不全とは?

慢性心不全とは、心臓だけではなく、全身症状(息切れや脱力感など)をきたし、日常生活に支障をきたしている状態である。代表的な症状は、動悸・動作時の息切れ・呼吸困難・体のむくみ・体重増加などあり、さらに悪化すれば、夜間に急に息が苦しくなって目が覚めたり、じっとしていても息が切れることもある。日常生活の指導では、①塩分の過剰摂取を控える、②息切れしないように休みながら活動する、③適度な運動で体力をつける等が挙げられる。

1.× 肺炎球菌ワクチン接種は、「回避」ではなく積極的に受けるように指導する。なぜなら、約30%を占める肺炎球菌性肺炎で有意に死亡率を低下させるため。他にも、65歳以上の高齢者、特に慢性肺疾患(肺気腫、気管支喘息等)や心臓病(虚血性心疾患、慢性心不全)、肝硬変症、人工透析をうけている患者さんは肺炎球菌ワクチン接種を推奨している。また、効果は5年間持続し、インフルエンザワクチンの接種と合わせると相乗効果がある。
2.× 慢性心不全患者は、「蛋白質」ではなく塩分を制限した食事を指導する。なぜなら、塩分(ナトリウム)は、循環血液量が増加して心臓に負担がかかるため。軽症の慢性心不全では一日7g程度に制限する。日常生活の指導では、①塩分の過剰摂取を控える、②息切れしないように休みながら活動する、③適度な運動で体力をつける等が挙げられる。ちなみに、蛋白質制限が必要になる疾患は、慢性腎臓病患者である。なぜなら、食事で摂取されるタンパク質は、老廃物である窒素代謝物を作り、これを無理に処理しようとしてさらに腎機能が低下するため。
3.× 食直後の散歩は、好ましくない。なぜなら、食後は消化管の血液需要が増加し、心臓への負荷が増大するため。他にも、朝目覚めてからすぐの時間帯や空腹時も控えるべきである。食後1時間~2時間たって落ち着いたときに、息切れしない適度な運動負荷で体力をつけることが望ましい。
4.〇 正しい。排泄後の休息は、心臓への負担を少なくする。心不全の患者さんは、利尿剤を服用しているため、便が硬くなり便秘になりやすい。便秘になると、通常より排便時に息をこらえたり、力まなければならない。そのときには血圧や脈拍が上昇しやすく、心臓に負担がかかりやすい。したがって、排泄後にすぐに動くのではなく、休息を入れることで心臓への負担を少なくなる。

 

 

 

 

 

49 Crohn(クローン)病の患者の食事指導で適切なのはどれか。

1.「食物繊維を多く含む食事にしましょう」
2.「蛋白質の多い食事にしましょう」
3.「脂肪分の多い食事にしましょう」
4.「炭水化物を控えましょう」

解答2

解説

Crohn病とは?

クローン病とは、小腸や大腸などの粘膜に、慢性的な炎症を引き起こす病気のことで、クローン病は10~20歳代で発症するケースが多く、主に小腸や大腸に炎症が現れる。現在のところ、はっきりした発症原因はよく分かっていない。一般的な症状は腹痛と下痢である。しかし、口から肛門まで全ての消化器官に炎症を引き起こす可能性があるため、症状は人によって大きく異なる。栄養の消化吸収障害、炎症による消耗に伴う必要エネルギーの増加などが起こるため、食事・栄養管理は重要である。したがって、クローン病の食事療法は高カロリー低脂肪食低残渣食が基本とされている。低残渣食とは、胃腸に負担をかけないように調整した食事のことで、日常の食事で胃腸にもっとも負担をかける成分は食物繊維で、それを制限し負担をかけやすい脂肪の多い物・刺激の強い物・極端に冷たい物などを控えた食事のことである。必要エネルギーの補給のほか、腸管の安静と食事性アレルゲンの除去を目的として栄養療法を行う。治療では小腸や大腸などの炎症や、過剰な免疫作用を抑える薬物療法が中心に行われる。

1.3.× 食物繊維/脂肪分を多く含む食事は、行わないように指導する。クローン病の食事療法は高カロリー低脂肪食低残渣食が基本とされている。低残渣食とは、胃腸に負担をかけないように調整した食事のことで、日常の食事で胃腸にもっとも負担をかける成分は食物繊維で、それを制限し負担をかけやすい脂肪の多い物・刺激の強い物・極端に冷たい物などを控えた食事のことである。
2.〇 正しい。「蛋白質の多い食事にしましょう」と食事指導する。なぜなら、クローン病の人はタンパク質の吸収が悪く、吸収されても腸管から漏れ出す、代謝が亢進するなどの理由で、低タンパク血症(主な症状は浮腫、貧血、食欲不振、慢性下痢など)になる恐れが高いため。
4.× 炭水化物を控える必要はない。なぜなら、栄養の消化吸収障害、炎症による消耗に伴う必要エネルギーの増加などが起こるため。クローン病の食事療法の原則は、高カロリー・低脂肪・低残渣である。

 

 

 

 

50 高カリウム血症の患者でみられるのはどれか。

1.Trousseau(トルソー)徴候
2.心電図でのT波の増高
3.腸蠕動音の低下
4.四肢の麻痺

解答2

解説

高カリウム血症とは?

高カリウム血症とは、血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることである。通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。原因としては、①カリウム摂取の増加、②腎臓からのカリウム排泄を障害する薬剤、③急性腎障害または慢性腎臓病などで起こりえる。症状として、悪心、嘔吐などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などが現れる。

1.× Trousseau(トルソー)徴候は、低カルシウム血症の患者にみられる徴候である。上腕をマンシェットで圧迫して血流を遮断すると、手の攣縮(助産師の手)が出現する。
2.〇 正しい。心電図でのT波の増高は、高カリウム血症の患者でみられる。高カリウム血症の心電図上の特徴として、①高く尖鋭化したT波(テント状T波)、②P波の減高(波の高さが下がること)・消失、③R波の減高などを認める。
3.× 腸蠕動音(腸管運動)の低下の原因は、活動性の低下や筋力の低下により起こる。高齢者や臥床がちな患者や、ストレスなどにより副交感神経が過緊張状態となることで起こる。他にも、大腸がんや術後狭窄、癒着、腫瘍の増大による狭窄などで起こる。
4.× 四肢の麻痺は、低カリウム血症でみられる症状である。低カリウム血症の症状として、筋力低下、筋肉のけいれん、ひきつり、麻痺、不整脈を起こすことがある。一方、高カリウム血症では、四肢のしびれがみられる。

電解質異常とは?

電解質異常とは、体内の電解質バランスが崩れることによって引き起こされる病気のことである。電解質とは、体内の液体に存在するイオン(带電粒子)のことで、主なものにナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)などがある。電解質異常は、体液の浸漏や脱水、腎臓や腸の異常、薬剤などによって引き起こされる。症状は異常によって異なる。

(図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

 

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