第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午後86~90】

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86 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)に基づく五類感染症はどれか。2つ選べ。

1.後天性免疫不全症候群(AIDS)
2.腸管出血性大腸菌感染症
3.つつが虫病
4.日本脳炎
5.梅毒

解答1・5

解説

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律とは?

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法、感染症法、感染症新法)は、感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本の法律である。平成10年(1998年)に制定された。主な内容は、①1~5類感染症の分類と定義、②情報の収集・公表、③感染症(結核を含む)への対応や処置。

【「感染症法」の対象となる感染症】
①1類感染症(7疾患:エボラ出血熱 ・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう(天然痘) ・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱)
対応:原則入院・消毒等の対物措置(例外的に建物への措置,通行制限の措置も適用対象とする)

②2類感染症(6疾患:・急性灰白髄炎(ポリオ)・結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS))
対応:状況に応じて入院・消毒等の対物措置

③3類感染症(5疾患:・コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症(0157等)・腸チフス ・パラチフス)
対応:・特定職種への就業制限・消毒等の対物措置

④4類感染症(44疾患:※一部抜粋。・E型肝炎・A型肝炎 ・黄熱・Q熱・狂犬病・チクングニア熱・鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)・炭疽 ・ボツリヌス症 ・マラリア ・野兎病・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・デング熱・ジカウイルス感染症・日本脳炎・その他感染症(政令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開,提供・媒介動物の輸入規制・消毒等の対物措置

5類感染症(46疾患:※一部抜粋。・インフルエンザ(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除く)・ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)・クリプトスポリジウム症・後天性免疫不全症候群(AIDS)・性器クラミジア感染症 ・梅毒・麻疹・百日咳・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症・その他感染症(省令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開情報提供

1.〇 正しい。後天性免疫不全症候群(AIDS)は、5類感染症に指定されている。ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。
2.× 腸管出血性大腸菌感染症は、3類感染症に指定されている。腸管出血性大腸菌とは、赤痢菌が産生する志賀毒素類似のベロ毒素を産生し、激しい腹痛、水様性の下痢、血便を特徴とする。特に、小児や老人では、溶血性尿毒症症候群や脳症(けいれんや意識障害など)を引き起こしやすいので注意が必要である。原因食品は、ハンバーグ、生肉、生レバー、井戸水などである。
3.× つつが虫病は、4類感染症に指定されている。つつが虫病とは、ツツガムシ(ダニの一種)に刺されることによって感染する疾患である。ツツガムシに刺されて5~14日の潜伏期の後に、全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱などを伴って発症する。体温は段階的に上昇し数日で40℃にも達する。
4.× 日本脳炎は、4類感染症に指定されている。日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスにより発生する疾病で、蚊を介して感染する。以前は子どもや高齢者に多くみられた病気である。初期症状として、突然の高熱・頭痛・嘔吐などで発病し、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こす病気で、後遺症を残すことや死に至ることもある。
5.〇 正しい。梅毒は、5類感染症に指定されている。梅毒とは、性感染症の一種で、梅毒トレポネーマという細菌が粘膜から感染することによって起こる。感染後3~6週間前後の潜伏期間後に性器、肛門、口などの感染部位にしこり、びらん、潰瘍などが現れるが、治療をしなくても一定期間が過ぎると最初の症状は消える。感染後数ヶ月すると手のひらや足の裏を含めた全身に赤い斑点(バラ疹)が広がる。本症例のように、梅毒血清反応、梅毒トレポネーマ抗体血清検査<TPHA>がいずれも陽性であれば、早期に母体にペニシリン系抗菌薬の投与を開始する。期間は4~6週間である。

 

 

 

 

 

87 感覚性失語のある成人患者とのコミュニケーションで適切なのはどれか。2つ選べ。

1.短文で話しかける。
2.身振りを加えて話す。
3.多くの話題を提供する。
4.耳元に近づき大きな声で話す。
5.open-ended question(開かれた質問)を用いる。

解答1・2

解説

感覚性失語とは

感覚性失語は、ウェルニッケ失語ともいう。話し方は滑らかであるが、言い間違いが多かったり、言葉が支離滅裂になったりして、自分の言いたいことが思うように伝えられなくなってしまうという特徴がある。したがって、復唱・言語理解は不良、言葉の流暢性は良好である。

1.〇 正しい。短文で話しかける/身振りを加えて話す。なぜなら、感覚性失語(ウェルニッケ失語)は、復唱・言語理解は不良、言葉の流暢性は良好であるため。視覚(イラストや写真、ジェスチャーなど)で代償することで円滑となりやすい。
3.× 「多くの話題」ではなく、提供する話題は1つに絞る。なぜなら、感覚性失語(ウェルニッケ失語)は、復唱・言語理解は不良、言葉の流暢性は良好であるため。脳内で処理できる情報量を超えてしまわないように、短文で話す。
4.× 耳元に近づき大きな声で話す必要はない。なぜなら、感覚性であっても運動性であっても、失語症は聴覚に問題があるわけではないため。耳元に近づき大きな声で話す場合は、難聴に対し用いられることが多い。
5.× 「open-ended question(開かれた質問)」ではなく、closed question(閉ざされた質問)を用いる。closed question(閉ざされた質問)とは、「はい」/「いいえ」では答えられる質問である。

MEMO

open-ended question(開かれた質問)は、5W1HでいうWhen(なぜ)、How(どうやって・どのように)に該当する。したがって、患者が症状や来院理由を自由に話せるため、相手からより多くの情報を引き出したい場面で有効である。

closed-ended question(閉じられた質問)は、5W1Hでいう(When(いつ)、Where(どこで)、 Who(誰が)、What(何を)や、はい/いいえで答えられる限定された質問である。したがって、相手の考えや事実を明確にしたい場面などで有効である。

 

 

 

 

88 交通事故によって脊髄損傷で入院した下肢に麻痺のある成人患者。
 職場復帰に向けて、看護師が患者に説明する内容で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.自己導尿は自宅で行う。
2.仕事中は飲水を制限する。
3.車椅子には体圧分散マットを使用する。
4.残業する場合の休憩時間は不要である。
5.職場の担当者に自分の病気について伝える。

解答3・5

解説

間欠自己導尿とは?

間欠自己導尿とは、何らかの原因によって自分で尿を出せなくなった場合に、一定時間ごとに尿道から膀胱にカテーテルを入れて、膀胱内に溜まった尿を排泄する方法である。

1.× 自己導尿は、「自宅だけ」でなく、自宅以外でも行えるよう準備しておく。なぜなら、導尿の回数は、導尿回数は1日5~6回程度(2~4時間ごと)を目安とし、1回の導尿量は300mL以下にするため。尿失禁や尿路感染症を防ぐために定期的に行う。また、導尿を行う場合には実施する前に手洗いをし、消毒綿などで陰部を清潔にしてからカテーテルを挿入するように指導する。本症例は、職場復帰を目指しているため、職場でも実施できるようにする必要がある。
2.× 仕事中は飲水を、「制限する」のではなく摂取を促す。なぜなら、水分制限により脱水や尿路感染症、血栓のリスクが上昇するため。
3.〇 正しい。車椅子には、体圧分散マットを使用する。なぜなら、本症例には下肢に麻痺があり、褥瘡の発生リスクが高いため。体圧分散マットを使用して褥瘡を予防できる。褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚・皮下組織の損傷のことである。仙骨部、大転子部、足関節外果、踵部などの骨の突出している場所に好発する。頚髄完全損傷では、自分で除圧できないこと、感覚障害を合併していることより、褥瘡が生じやすい。したがって、仰臥位の褥瘡好発部位は、仙骨部が最も多く、次いで踵骨部、肩甲骨部、後頭部などがある。
4.× 残業する場合も休憩時間は必要である。なぜなら、長時間座位は、褥瘡の他にも深部血栓静脈症などのリスクが上昇するため。残業によって身体的にも精神的にも負荷がかかる。
5.〇 正しい。職場の担当者に自分の病気について伝える。なぜなら、本症例は職場復帰に向けている。職場の理解と適切な支援を得るためにも、自分の状態と復帰した際にはどのような支援が必要かについて職場の担当者に伝える。必要であれば、職場の環境整備や部署の移動も行わなければならない。

尿路感染症とは?

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」日本臨床検査医学会より)

 

 

 

 

 

89 人工肛門を造設した患者へのストーマケアの指導内容で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.装具の交換は便が漏れない限り不要である。
2.装具をはがした時は皮膚保護材の溶解の程度を観察する。
3.洗浄後のストーマはドライヤーで乾かす。
4.装具の穴はストーマと同じ大きさにする。
5.装具を貼る時は腹壁のしわを伸ばす。

解答2・5

解説

ストーマとは?

ストーマとは、自然の排泄経路以外に設けた排泄口である。ストーマには大きく分けて、①消化管ストーマ(人工肛門)と②尿路ストーマ(人工膀胱)があり、人工肛門や人工膀胱保有者を「オストメイト」という。

1.× 装具の交換は、「便が漏れない限り不要」ではなく、漏れる前に交換すべきである。通常の目安は、短期タイプで1~3日、中期タイプでは3~5日である。
2.〇 正しい。装具をはがした時は、皮膚保護材の溶解の程度を観察する。なぜなら、皮膚保護材の溶解の程度は、ストーマ装具の交換の目安になるため。そのときに、便漏れや皮膚障害による過度な溶解が起こっていないか確認する。溶解が10mmを超える場合には、皮膚保護剤の緩衝作用効果が低下して皮膚障害を招く可能性があるため交換頻度の変更が必要である。
3.× 洗浄後のストーマは、「ドライヤーで乾かす」必要はない。洗浄後はガーゼで水分を軽く吸い取った後、自然乾燥させてから皮膚保護材を装着する。なぜなら、ストーマは腸の粘膜が腹壁に固定されている状態であり、過度にドライヤーで乾燥させることは粘膜の損傷につながり、出血や炎症などのリスクを増大させるため。
4.× 装具の穴は、「ストーマと同じ大きさ」ではなく、ストーマより2~3mm大きく切る。なぜなら、ストーマの大きさは腸管の嬬動運動や浮腫によって日々変化するため。また、面板がストーマと重なり傷つけてしまう可能性もある。ちなみに、一般的なタイプの面板は、4日に1回交換である。面板とは、ストーマ周囲の皮膚に粘着する皮膚保護剤の着いた部分をいう。
5.〇 正しい。装具を貼る時は、腹壁のしわを伸ばす。なぜなら、腹壁を伸展させずに皮膚保護材を貼ると、しわのすきまから便が漏れたり、腹壁が伸びたときに剥がれたりする原因となるため。

 

 

 

 

90 妊娠36週の妊婦にNST(non-stress test)を行うため、分娩監視装置を装着することになった。
 妊婦への説明で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.「胎児の健康状態を判定します」
2.「所要時間は10分です」
3.「排尿を済ませて下さい」
4.「仰向けで行います」
5.「固定用ベルトを1本使用します」

解答1・3

解説

ノンストレステストとは

ノンストレステスト(non-stress test:NST)とは、一般的に妊娠34週以降において、分娩監視装置を用いて子宮収縮や胎児心拍、胎動の状態で調べ、胎児の健康状態を判定するものである。陣痛(子宮収縮)などのストレスがない状態で妊婦に行う検査である。胎児は、20~40分ごとに睡眠と覚醒を繰り返すため通常40~60分間計測を行う。一過性頻脈とは、胎児が体を動かすとき(胎動があるとき)、一時的に心拍数が多くなることをいい、一定範囲で出るのが正常である。妊娠中、20分間のノンストレステスト< NST >をしている間に、心拍数15bpm以上15秒以上の一過性頻脈が2回以上あれば、胎児の状態は「良好な状態:well-being」と判断される。

1.〇 正しい。「胎児の健康状態を判定します」と妊婦に説明する。妊娠中、20分間のノンストレステスト< NST >をしている間に、心拍数15bpm以上15秒以上の一過性頻脈が2回以上あれば、胎児の状態は「良好な状態:well-being」と判断される。
2.× 所要時間は、「10分」ではなく、通常40~60分間計測を行う。なぜなら、胎児は、20~40分ごとに睡眠と覚醒を繰り返すためである。
3.〇 正しい。「排尿を済ませて下さい」と妊婦に説明する。なぜなら、検査時間が長引くこともあり、安静な状態で検査をする必要があるため。また妊婦は、①子宮増大に伴う膀胱圧迫による内圧の上昇、②循環血漿量の増加に伴う尿量の増加、③妊娠後期にはこれに加え児頭の下降などの理由から、頻尿となりやすい。
4.× 「仰向け」ではなく、セミファーラー位側臥位で行う。なぜなら、検査中、仰臥位低血圧症候群を予防するため。仰臥位低血圧症候群とは、妊娠末期の妊婦が仰臥位になった際、子宮が脊柱の右側を上行する下大静脈を圧迫することにより右心房への静脈還流量が減少、心拍出量が減少し低血圧となることである。多くの場合、妊娠末期の妊婦が帝王切開の準備のため腰椎麻酔をおこなった後に生じやすい。
5.× 固定用ベルトは、「1本」ではなく2本使用する。なぜなら、2つのセンサーがずれないようにベルトで固定する必要があるため。1本は、胎児心拍計(超音波ドプラ)を固定し、もう1本は、陣痛計(トランスデューサー)を固定する。陣痛計(トランスデューサー)は、子宮収縮状況を測定する機器である。

胎児のwell-beingの評価

胎児のwell-beingの評価には、主にバイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)が用いられることが多い。バイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)とは、超音波検査とNST(分娩監視装置による胎児心拍の観察)を用いて胎児のwell-beingを評価する方法である。胎児の各状態をチェックして点数評価し合計点で胎児の状態を診断する。

①胎児の呼吸運動:【正常な状態(2点)30分間に30秒以上続く運動が1回以上】【異常な状態(0点)無いとき】

②胎動:【正常な状態(2点)30分間に身体の大きな動きが3回以上】【異常な状態(0点)2回以下】

③筋緊張:【正常な状態(2点)30分間に手足の動きが1回以上】【異常な状態(0点)認めない】

④羊水量:【正常な状態(2点)直径2cm以上の羊水ポケットが1ヶ所以上】【異常な状態(0点)2cm以下】

⑤non-stress test:【正常な状態(2点)20~40分間中に15bpm以上の一過性頻脈が2回以上】【異常な状態(0点)2回未満】

 

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