第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午前81~85】

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81 成人の人体図を下図に示す。
 意識清明で不整脈のある成人の脈拍測定時に一般的に使われる部位はどれか。

1.A
2.B
3.C
4.D
5.E

解答3

解説
1.× A(総頸動脈)は、血圧低下時や血圧低下時、特にC(橈骨動脈)やE(大腿動脈)で触れない場合に使用される。収縮期血圧60mmHgまで触れる。注意するべきポイントとして、頸動脈洞反射を予防するため、両側を圧迫せず片側ずつ触知する。
2.× B(上腕動脈)は、主に血圧測定時の聴診に使用される。上腕動脈は臥位でも座位でも心臓と同じ高さであることから測定値の変動が少ない。肘窩の内側(上腕二頭筋臆付着部あたり)で触知できる。
3.〇 正しい。C(橈骨動脈)は、意識清明で不整脈のある成人の脈拍測定時に一般的に使われる。示指、中指、薬指の3指で脈拍数や不整脈の有無を知るために使用される。収縮期血圧が80mmHg以上で触れられる。
4.× D(尺骨動脈)より優先度が高いものが他にある。橈骨動脈が選択される理由として、皮膚に近い部位にあり、走行部位の個人差が比較的少なく、衣服におおわれることが少ないためである。
5.× E(大腿動脈)は、血圧低下時に使用される。収縮期血圧70mmHgまでなら触れられる。また、大腿動脈はカテーテル検査に用いられる。鼠径部を露出する必要があり簡便ではないため、一般的な脈拍測定は橈骨動脈を用いる。血圧が低く橈骨動脈が触れない場合は、総頸動脈や大腿動脈を触知する。

頸動脈洞反射とは?

頸動脈洞反射(ツェルマーク・へーリング反射)とは、頸動脈を刺激することにより生じる迷走神経反射のことである。脈拍を抑えることを目的として利用されることがある(頸動脈洞マッサージ)。つまり、副交感神経優位になる。
求心路:舌咽神経
遠心路:迷走神経

 

 

 

 

 

 

82 感染徴候のない創部の治癒を促進する要因はどれか。

1.圧迫
2.痂皮
3.湿潤
4.消毒
5.浮腫

解答3

解説

近年、創傷治療は「創面を消毒し、ガーゼをあてて乾燥させる」従来の方法から、「創面を消毒しない,乾燥させない」方法へと大きく変化している。

(※図引用:「これからの正しい創傷治療―湿潤療法の取り組み―」安藤 善郎)

1.× 圧迫は、RICE処置(筋や腱の急性炎症時)に用いられる。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。
2.× 痂皮(読み:かひ)は、創傷治癒促進の要因とはならない。痂皮(読み:かひ)とは、一般的にかさぶたを意味する。血小板や赤血球などを絡め取りながら凝固した血栓である。創面の細胞が乾燥、壊死し、血葉成分や血小板などとともに凝固、固着した状態である。主な役割は、①傷口の止血や保護、②細菌や異物の進入を防ぐことである。
3.〇 正しい。湿潤は、感染徴候のない創部の治癒を促進する要因である。創傷治癒には創部の乾燥を防止し、創傷被覆剤を貼付するなど湿潤環境を保持することが大切である。創傷治癒を促進させるためには、ドレッシング剤などを使用し、創部の湿潤環境を維持するようにする。
4.× 消毒は、創傷治癒促進の要因とはならない。消毒薬は、細菌だけに作用するのではなく、創傷修復に必要な細胞に対しても毒性がある。そのため、過度な消毒は創傷治癒を遅延させる。創傷は、消毒よりも創傷周囲の皮膚を洗浄し、過剰な水分を取り除いた(洗浄)後、湿潤環境を保持する。
5.× 浮腫は、創傷治癒を遅らせる局所因子となる。なぜなら、浮腫は、皮膚・軟部組織の非薄化と脆弱化、組織耐久性の低下につながるため。浮腫の原因として、心不全や創部感染、血清アルブミンの低下などの低栄養状態で生じる。創傷治癒を遅らせる要因として、他にも慢性疾患、血管不全、糖尿病、神経損傷、栄養障害、老化などがあげられる。

 

 

 

 

83 小児期における消化器の特徴で正しいのはどれか。

1.新生児期は胃内容物が食道に逆流しやすい。
2.乳児期のリパーゼの活性は成人と同程度である。
3.ラクターゼの活性は1歳以降急速に高まる。
4.アミラーゼの活性は12~13歳で成人と同程度になる。
5.出生直後の腸内細菌叢は母親の腸内細菌叢の構成と同一である。

解答1

解説

1.〇 正しい。新生児期は胃内容物が食道に逆流しやすい。なぜなら、新生児の胃はI字型(縦型で噴門部が未発達)であるため。授乳前後に排気(げっぷ)させて嘔吐による誤飲を防ぐ。
2.× 乳児期のリパーゼの活性は、成人と「同程度」ではなく少なくなっている。 成人は、膵臓からのリパーゼによる脂肪の消化が主体であるが、乳児期はリパーゼのはたらきがあまり活発ではないため、舌や胃壁からもリパーゼが分泌され、脂肪の消化を助けている。ちなみに、リパーゼとは、中性脂肪を脂肪酸とグリセリンに加水分解する反応を触媒する酵素である。脂肪の分解酵素であるリパーゼの活性は、2~3歳で成人と同程度になる。
3.× ラクターゼの活性は、1歳以降急速に「高まる」のではなく低下する。乳汁の乳糖分解に必要なラクターゼの活性は、出生時には成人と同程度になり、哺乳期(生まれてから離乳期までの乳を主食としている時期)に急速に高まる。ちなみに、ラクターゼとは、乳糖を分解するための専用の酵素である。
4.× アミラーゼの活性が成人と同程度になるのは、「12~13歳」ではなく2~3歳頃である。アミラーゼの活性は新生児期には低いが、生後2~3か月頃から増加し、2~3歳で成人と同程度になる。アミラーゼとは、でんぷんを分解して糖にする酵素である。体内では主に、膵臓、耳下腺(唾液腺)から分泌される。
5.× 出生直後の腸内細菌叢は、母親の腸内細菌叢の構成と同一ではない。なぜなら、出生直後の腸内細菌叢は母親との接触をうけて、徐々に腸内細菌叢を形成するため。出生直後の腸内は無菌状態であり、生後2~3日頃から腸内細菌叢が形成される。母乳栄養児ではビフィズス菌が多い。ちなみに、腸内細菌(叢)とは、ヒトや動物の腸の内部に生息している細菌のことである。

 

 

 

 

 

 

84 感覚受容にリンパ液の動きが関与するのはどれか。2つ選べ。

1.嗅覚
2.聴覚
3.味覚
4.振動感覚
5.平衡感覚

解答2・5

解説
1.× 嗅覚は、吸い込まれた空気に含まれている「におい」の分子が上鼻道にある嗅毛を震わせることで、「におい」として認識される。嗅上皮にある嗅細胞が「におい」の情報を中枢に伝える。
2.〇 正しい。聴覚は、リンパ液の動きが関与する。聴神経を介して中枢に送られるまでに、耳小骨によって伝えられた鼓膜の震動が内リンパと外リンパに伝えられる。聴覚をつかさどるのは、内耳にある蝸牛である。蝸牛はリンパ液で満たされている。リンパ液の振動が有毛細胞を振動させ、鼓膜の振動を電気信号に変換し中枢へ伝える。
3.× 味覚は、舌表面にあるざらざらした突起のくぼみにある味蕾で感知されることで味を感じる。味蕾に物質が接することで刺激され、味の情報が神経を介して中枢に伝えられる。
4.× 振動感覚は、末梢神経の中の感覚神経が関連し、中枢神経系へ伝えることで振動を感じる。振動感覚とは、触覚・圧覚と同様に皮膚受容感覚である。
5.〇 正しい。平衡感覚は、リンパ液の動きが関与する。耳内の前庭と三半規管であり、内リンパ液と外リンパ液が関連する。平衡感覚をつかさどるのは、内耳の前庭と三半規管であり、どちらもリンパ液で満たされている。身体の回転などによりリンパ流が生じると、有毛細胞が刺激され水平・垂直方向の直線加速度と回転加速度(角加速度)を感知する。

 

 

 

 

85 血液のpH調節に関わっているのはどれか。2つ選べ。

1.胃
2.肺
3.心臓
4.腎臓
5.膵臓

解答2・4

解説

1.× 胃は、血液のpH調節には関わっていない。胃は、食道と腸をつないでいる袋状の臓器で、主な働きとしては、①食べたものをためておく、②食べたものを消化する、③消化された食べものを少しずつ腸に送り出す、④ビタミンB12の吸収に必要な糖タンパク質を分泌するなどである。
2.〇 正しい。は、血液のpH調節に関わっている。なぜなら、肺は呼気へCO2を排出する臓器であるため。CO2排出が亢進するとpHは上昇して呼吸性アルカローシス、逆にCO2が蓄積するとpHは低下して呼吸性アシドーシスとなる。
3.× 心臓は、血液のpH調節には関わっていない。なぜなら、心臓は血液を体内に循環させるポンプの役割を果たしているため。
4.〇 正しい。腎臓は、血液のpH調節に関わっている。なぜなら、腎臓は尿中へHCO3-を排泄する臓器であるため。腎臓の機能が低下すると代謝性アシドーシスとなる。過剰な酸や塩基を排出することで、血液のpHを変化させる。
5.× 膵臓は、血液のpH調節には関わっていない。膵臓の働きは、①食べ物を消化する膵液を作り、十二指腸に送り出す、②血液中の糖分の量を調節するホルモンを作り、血液の中に送り出すなどである。膵臓から分泌される消化液にはさまざまな消化酵素とともに胃酸を中和するアルカリ性の重炭酸塩が含まれている。膵臓の膵液はpH7.5 〜8.8のアルカリ性で、十二指腸に送られ胃液で酸性になった食材を中和する働きをする。

腎機能低下によって起きる病態

腎機能低下によって起きる病態として、

①老廃物(クレアチニン・アンモニアなど)の濾過能低下。
②体液の貯留(浮腫)
③ナトリウム・カリウム・カルシウム・リンなどの電解質バランスの調節障害。
④尿中への酸排泄能低下や尿毒症物質の蓄積に伴う酸塩基平衡の異常。
⑤ビタミンD3活性化の低下
⑥エリスロポエチン産生能の低下

などが挙げられる。

 

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